英国財務省は2026年10月24日、AI関連の投資パッケージを公表しました。この中で、英国AI企業に直接出資するSovereign AI Fundへの追加6,000万ポンドと、Sovereign AIのR&D Procurement Schemeへの追加6,000万ポンドを明らかにしています。直接投資では「Physical and Industrial AI」を新たな重点領域に加え、ロボティクス、自律システム、先進製造などの強みをもとに拡大する方針です。
Sovereign AI Fundは英国のAIスタートアップに出資する国家のファンドで、公式サイトは基金規模を5億ポンド、出資額を1社あたり最大1,000万ポンド、最大100万GPU時間の計算資源の提供と説明しています。10月24日の発表はこの既存の基金への追加で、新しい総額の断定は発表文にもサイトにもありません。
R&D Procurement Schemeは、研究段階を越えた実証段階のAI技術を政府が早期の顧客として試し、実環境での検証を後押しする制度です。2026年8月31日に1億ポンド規模の最初の4つの公募が始まっており、NHSの生産性、計算効率、防衛、AIエージェントの安全性試験が対象でした。今回の6,000万ポンドは制度の新設ではなく追加支援で、保健・ケア分野と、AIのセキュリティ・保証・安全な導入に関する課題解決に充てられます。
Sovereign AI Fund
- 仕組み
- 英国AI企業への直接投資
- 追加額
- 6,000万ポンド
- 今回の重点
- Physical and Industrial AI(ロボティクス、自律システム、先進製造など)
- 出資・契約の形
- 出資(1社あたり最大1,000万ポンド、公式サイトの説明)
R&D Procurement Scheme
- 仕組み
- 実証段階の技術を政府が調達して実証
- 追加額
- 6,000万ポンド
- 今回の重点
- 保健・ケアと、AIのセキュリティ・保証・安全な導入
- 出資・契約の形
- 公共調達(適切な場合は前払い、知的財産は企業が保持)
出典はHM Treasury発表(2026年10月24日付)、同発表(2026年8月31日付)、公式サイト。調達制度の前払いと知的財産の扱いは8月31日の最初の公募の説明です。6,000万ポンド同士の合算以外の総額表記は公表されていません。
10月24日の発表は、来週の予算案(Budget)でAIを盛り込む方針と合わせて示された広範なパッケージの一部です。同じ発表には、AIバイオセキュリティ向けの1億6500万ポンド、AI Security Instituteへの追加1億2000万ポンド、National Cyber Shieldの6,000万ポンド、NERVセンターの7,000万ポンドなどが並びます。このうちサイバー防衛と生体防衛の項目は別記事で扱ったもので、今回の1億2000万ポンドには含まれません。チップ設計人材の育成に1,800万ポンド、経済分析機関AI Economics Instituteに3年間で追加2,300万ポンド、地方のAIパートナーシップに3,000万ポンドなども別項目です。
新たに加わったPhysical and Industrial AIは、政府の説明では英国の研究基盤と、ロボティクス、自律システム、先進製造での強みをもとにします。出資の対象選定や、調達追加分の公募のテーマ、応募開始日、採択額、契約条件は10月24日時点で示されていません。
国家ファンドによる直接出資と公共調達を組み合わせると、企業は資金と最初の顧客を別々に確保できます。実環境での検証が前提になるロボティクスや製造のAIでは、動く現場へのアクセスが開発の律速になるため、調達側の追加が直接投資と噛み合う設計です。ただし公告は予算表明であり、支出の実行や採択結果を示すものではありません。効果は個別の投資と調達の決定が進んでからしか測れません。
出典
- Chancellor unveils Britain's ambitious plan for AI(HM Treasury、GOV.UK)2026-10-24公開。Sovereign AI Fundへの追加6,000万ポンド、Physical and Industrial AIの新重点領域、R&D Procurement Schemeへの追加6,000万ポンド(保健・ケアとAIセキュリティ等)、予算案でAIを扱う方針、パッケージの他項目(1億6500万ポンドのバイオセキュリティ、1億2000万ポンドのAISI追加、6,000万ポンドのCyber Shield、7,000万ポンドのNERV、1,800万ポンドのチップ設計アカデミーなど)を本文で確認。2026-10-25確認。
- £100 million competition to back British AI companies to fix public services(HM Treasury・Cabinet Office、GOV.UK)2026-08-31公開。1億ポンドのR&D Procurement Schemeの最初の4つの公募(NHS生産性、計算効率、防衛、エージェント安全性試験)、実証段階の技術を対象とする設計、適切な場合の前払い、企業による知的財産の保持を本文で確認。2026-10-25確認。
- UK Sovereign AI Fund(公式サイト)基金規模5億ポンド、出資額1社あたり最大1,000万ポンド、最大100万GPU時間の計算資源、Pre-SeedからGrowthまでの対象段階を確認。2026-10-25確認。
出典の確認日 2026.10.25