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AI関連の低格付け企業、年初来880億ドル発行 集計範囲は非公表

Reutersは2026年9月30日、Goldman Sachsの推計として、AI関連の低格付け企業による債務発行が年初来880億米ドルに達したと報じた。Goldmanの公表資料にこの推計の対象や集計方法はなく、880億ドルを「レバレッジド・ファイナンス」全体の発行額と確認できる資料も見つからない。

Reutersは、880億米ドルの大半を米国の発行体が占めると伝えた。ただし、Goldman Sachsがどの発行体や金融商品をAI関連と分類したのか、低格付けの基準をどう定めたのかは記事に記されていない。Goldman Sachsの公開資料にも、880億ドルを再現できる一覧や算定ルールは見当たらない。

同じReuters記事は、Neuberger Bermanのデータとして、2025年1〜11月にAI関連のレバレッジド・ファイナンスが200億米ドルあったと報じた。この数字は別の運用会社の集計で、期間と対象範囲も異なる。880億ドルとの単純比較から市場の伸び率を出すことはできない。

Goldman Sachsの8月5日付公開インタビューは、AIの広い事業圏に関連する債務発行が年初来で約5,000億米ドルに近づき、ハイパースケーラーが約4割を占めると説明した。同社はテーマ別の信用バスケットを作っているが、公開資料は発行体の全リストや選定基準を示していない。Reutersが伝えた低格付け企業の880億ドルとは範囲が違い、足し合わせたり、同じ集計の内訳とみなしたりできない。

英国の金融政策委員会(FPC)が9月30日に公表した9月25日会合の記録は、Morgan Stanleyの推計として、2026年9月初め時点の世界のAI関連債務発行を約4,500億米ドルと記した。一方、JPMorganのアナリストは、2026〜30年のAI関連設備投資のうち債務で賄われる額を約4.1兆米ドルと予測している。前者は過去の発行額の推計、後者は5年間の設備投資とその資金構成の予測で、同じ指標ではない。

同記録はさらに、Morgan Stanleyが2026〜28年のデータセンター設備投資のうち、約7,000億米ドルをプライベート・クレジットで賄うと見積もったと紹介した。4.1兆ドルと7,000億ドルはいずれも金融機関の予測であり、すでに発行された債務額ではない。これらの数字はBoE自身の推計でもない。

図解報道・公表資料に出るAI関連の債務額
  • 880億ドルReutersが伝えたGoldman推計

    対象と時点
    低格付けのAI関連発行体。2026年年初来、主に米国。
    数字の意味
    債務発行額。商品範囲と判定基準は公開資料で確認できない。
  • 約5,000億ドルGoldman Sachs公開インタビュー

    対象と時点
    広いAI事業圏。2026年年初来。
    数字の意味
    債務発行額の推計。ハイパースケーラーは約4割。
  • 約4,500億ドルFPCが紹介したMorgan Stanley推計

    対象と時点
    世界のAI関連債務。2026年9月初め時点。
    数字の意味
    それまでの発行額の推計。
  • 400億ドル/120億ドルReutersが伝えたBNPデータ

    対象と時点
    米国のAIインフラ・ハイイールド債供給。2026年年初来/2025年通年。
    数字の意味
    期間とAI分類の範囲が異なる供給額。
  • 約4.1兆ドルFPCが紹介したJPMorgan予測

    対象と時点
    AI関連の設備投資。2026〜30年。
    数字の意味
    債務で賄われると予測する投資額で、発行済み債務ではない。

銀行、対象、期間、商品範囲が異なる。相互に足し合わせず、成長率の比較にも使わない。BoE FPC会合記録はMorgan StanleyとJPMorganの推計を紹介している。ReutersはGoldmanとBNPのデータを報じた。

米国のハイイールド債市場にもAIインフラ関連の発行が出ている。ReutersがBNP Paribasのデータとして伝えた供給額は、2026年年初来で約400億米ドル、2025年通年で120億米ドルだった。BNP Paribas Asset Managementの6月26日付インタビューでも、Jack Stephenson氏はAI関連債務が米国ハイイールド市場に約400億ドルあり、指数の2〜3%に相当すると述べた。ただし、6月の「AI関連債務」と9月報道の「AIインフラ供給」は定義や集計時点が同じとは限らない。

金利の見方にも幅がある。Reutersが取材した市場関係者は、BB+格付けの発行体が約9〜10%の利回りを支払い、さらに低い格付けの借り手では資金調達コストが14〜15%に達する場合があると述べた。14〜15%は低格付けの借り手が直面しうる上限の例で、市場平均ではない。Reuters記事は該当する発行体や取引の一覧、金利の算定条件を示していない。

個別の発行条件は借り手や資金使途で異なる。SoftBank Groupが9月に発行した米ドル建て無担保債は、S&PとFitchの日本法人からBB+格付けを受け、年限ごとの表面利率は8.625%、9.25%、9.75%だった。調達資金の使途には、OpenAIへの追加投資の第3かつ最終の100億米ドル分と一般事業目的が含まれる。この取引はAIデータセンター向け融資の利率でも、市場全体の平均でもない。

図解個別債のクーポンと報道された借入コスト
  • SoftBank Group2026年9月の米ドル債

    格付け・条件
    BB+の無担保債。3.5年、5.5年、7.5年の3本。
    利率と読み方
    表面利率は順に8.625%、9.25%、9.75%。個別発行の条件。
  • 低格付けの借り手Reutersが紹介した市場関係者の見方

    格付け・条件
    具体的な発行体、格付け、取引は示されていない。
    利率と読み方
    借入コストが14〜15%に達しうるとの見方。市場平均ではない。

SoftBankは個別の社債クーポン。Reutersの14〜15%は低格付け借り手が直面しうるコストとして報じられた値で、同条件の市場利回りとの比較ではない。Reuters記事は根拠となる銘柄や母集団を示していない。

債務の所在と金融安定リスク

FPCは、AI向け債務の増加に伴うレバレッジ、情報の不透明さ、循環的な資金関係が、リスクの把握を難しくし、期待が外れた場合の損失を大きくする可能性を挙げた。BoEの7月の金融安定報告も、リースや保証、簿外の特別目的会社を通じて債務の所在が見えにくくなる点を指摘する。一方、FPCは7月のAI株売りが中核市場へ波及せず、広範な金融不安の兆候もなかったと記録している。現時点で信用市場全体が危機にあるという説明ではない。

出典

  1. Reuters「AI borrowers face tough sell in risky corners of US credit market」2026-09-30Reuters報道のシンジケーション。Goldmanの低格付けAI関連発行推計880億ドル、BNPの米国AIインフラ・ハイイールド供給額、Neuberger Bermanの2025年レバレッジド・ファイナンス額、BB+利回りと低格付け借り手の14〜15%の可能性を確認。Goldman・BNPの全定義や取引一覧は記事にない。2026-10-01確認。
  2. Goldman Sachs「How AI Debt Is Reshaping Credit Markets」2026-08-05一次資料。Goldmanの公開インタビューと書き起こし。広いAI事業圏に関する年初来の債務発行推計は約5,000億ドルに近く、ハイパースケーラーは約4割。信用バスケットの存在を説明するが、公開ページに完全な分類基準・発行体一覧はない。2026-10-01確認。
  3. Bank of England Financial Policy Committee「Record of the Financial Policy Committee meeting」2026-09-30一次資料。第11段落はMorgan Stanleyの約4,500億ドル発行推計とJPMorganの2026〜30年約4.1兆ドルの債務によるAI設備投資予測、第12段落はMorgan Stanleyの2026〜28年データセンター向けプライベート・クレジット約7,000億ドル予測を紹介。第12段落はレバレッジ、情報の不透明さ、循環的な資金関係を論じ、第15段落はリスクの高い信用市場やプライベート・クレジット全般の脆弱性を記す。各社の推計はBoE自身の数字ではない。第8段落は7月の株式売りの市場波及を記録。2026-10-01確認。
  4. BNP Paribas Asset Management「Talking Heads: US high yield resilience against interest rate and spread volatility」2026-06-26一次資料。Jack Stephenson氏は米国ハイイールド市場のAI関連債務を約400億ドル、指数の約2〜3%と説明。Reutersが9月に伝えた「AIインフラ供給」の推計とは分類や時点が同じとは確認できない。2026-10-01確認。
  5. Bank of England「Financial Stability Report - July 2026」2026-07-07一次資料。AI企業への資金供給経路、リース・保証・簿外SPVによる債務の見えにくさ、資金調達コストと借入条件に関する金融安定評価。2026-10-01確認。
  6. SoftBank Group「USD and EUR Notes Offering」2026-09-24一次資料。米ドル建て無担保債のBB+格付け、3つの年限と表面利率8.625%、9.25%、9.75%、調達資金の使途を確認。個別発行の条件で、市場平均ではない。2026-10-01確認。

出典の確認日 2026.10.01

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