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AIコーディングエージェント、ハーネスが違うと費用は最大3倍 成功率の差は再実行のノイズと同程度との計測

山東大学の研究チームは2026年10月3日、AIコーディングエージェントの「ハーネス」を比較した研究のプレプリントをarXivに公開しました。同じモデルをClaude Code、mini-SWE-agent、OpenCodeで動かすと、成功率の差は同じ構成の再実行で生じるばらつきと区別できない一方、モデルと課題が同じでも1課題当たりの推論費用は最大約3倍変わったといいます。VentureBeatが10月23日にこの研究を詳報し、導入評価の指標をめぐる議論が改めて出ています。

ハーネスは、チャットモデルをリポジトリ作業に使えるようにするsystem prompt、ツール群、文脈管理など、モデルを囲む部分です。ベンダーはハーネスの更新で成功率が上がると宣伝し、リーダーボードには異なるハーネスの結果が混ざります。研究はモデルを固定したまま、ハーネスを交換したときの変化と、同じ構成を再実行したときの変化を同じ尺度で比べました。

評価にはSWE-bench Verifiedを使い、公開Webサービスを必要とする8課題を除く492課題をオフラインで実行しました。最も難しい2つの難度帯すべての45課題は5モデル(Qwen3.6-35B-A3B、Qwen3.8-27B、DeepSeek-V4-Flash、GLM-5.3-Flash、HY4-Preview)で、残る447課題は研究チームが自前でサーブしたQwenの2モデルで評価しています。Claude Opus 5はClaude Code内で強い基準点として追加されました。正否は課題単位のペア比較で検定し、同等性は5ポイントのマージンで判断します。

447課題では、最も重いClaude Codeと最も軽いmini-SWE-agentの成功率の差は両Qwenモデルで1.8ポイントと1.4ポイントにとどまり、5ポイントの同等性マージン内でした。統計的なノイズを超えた差は、OpenCodeが下回る部分だけです(最大9.2ポイント)。うち半分近くは、モデルの推論が出力トークン上限を超えたときにOpenCodeが再プロンプトせず、パッチを出す前に試行が終わるケースでした。45課題でハーネス交換によって正否が反転する課題の割合は中央値13%。同じハーネスを再実行したときの反転も13%で、ハーネス交換の変動は再実行のノイズと同じ大きさでした。モデルを交換した場合は22%です。

「ハーネスが実際に決めるのは請求額です。」

What the harness does decide is the bill.

Yangze Liu、Zhongyi Han「What Does a Harness Buy? Tokens, Mostly」アブストラクト、arXiv:2610.04433、2026年10月3日付

費用はハーネスで大きく変わりました。同じモデル・課題・料金表で、1課題当たりの費用は最大3倍の差です。GLM-5.3-Flashの45課題では、1試行の推定費用がClaude Code 1.81元、mini-SWE-agent 0.97元、OpenCode 0.56元でした。差の源泉は、各ステップで再送される固定部分のpreambleです。system promptとツール定義はClaude Codeで16,581トークン、OpenCodeで7,025、mini-SWE-agentで829に達し、毎ステップ支払われます。履歴の伸びはハーネス間で1.5倍以内で、費用は初回コールの重さにステップ数を掛けた形で決まります。キャッシュヒット価格は請求額を増減させますが、ハーネス間の順位は変えませんでした。

図解3つのハーネスの計測値
  • Claude Code

    preamble
    16,581トークン
    GLM費用
    1.81元
    傾向
    ツールが多くsystem promptが長い。モデルの推論も履歴に保持
  • mini-SWE-agent

    preamble
    829トークン
    GLM費用
    0.97元
    傾向
    bash 1個の最小構成。文脈圧縮なしで窓上限まで蓄積
  • OpenCode

    preamble
    7,025トークン
    GLM費用
    0.56元
    傾向
    呼び出し回数が最少。出力上限で打ち切られる試行がある

preambleは各ステップで再送されるsystem prompt等の固定分で、研究時のバージョン・構成の値。GLM費用はGLM-5.3-Flashの45課題における1試行の推定費用で、研究が採用した料金表に基づく。出典はarXiv:2610.04433(2026年10月3日付、2026年10月24日確認)。

図解1試行の費用が決まる過程
  1. 01 初回コール

    preamble

    system promptとツール定義の固定分を送る。Claude Code 16,581、OpenCode 7,025、mini-SWE-agent 829トークン(研究時の構成)。

  2. 02 毎ステップ

    履歴を再送

    直前までの履歴を各ステップで再送。入力の96〜99%はキャッシュヒット。

  3. 03 積み上げ

    ステップ数

    1試行の費用は固定分×ステップ数が主。1ステップあたりの増加はハーネス間で1.5倍以内。

  4. 04 価格

    順位は不変

    キャッシュヒット価格(Zhipu 0.287倍、DeepSeek 0.033倍)は請求額を変えるが、ハーネス間の順位は変わらない。

出典はarXiv:2610.04433(2026年10月3日付、2026年10月24日確認)。数値は研究が計測した特定のモデル・バージョン・料金表の条件での値。

留保も複数あります。447課題の大規模比較はQwenの2モデルに限られ、他の3モデルは45課題のみです。mini-SWE-agentには文脈圧縮がなく、長期作業や安全統制、IDE体験は評価範囲外です。OpenCodeの低費用には早期停止が含まれます。Qwen3.6-35B-A3Bの447課題では、OpenCodeの試行は中央値28回のモデル呼び出しで終わり、mini-SWE-agentは71回、Claude Codeは55回でした。品質を揃えたうえでの費用比較ではありません。

研究過程には一段落もあります。初期にWeb接続を許した評価では、DeepSeekとQwenの試行の71%がGitHubから上流の修正を取得するリークが見つかり、該当試行を破棄して最終評価をオフラインに切り替えた、と著者は説明しています。8,032試行のデータ、解析スクリプト、150ジョブ分のHarbor設定はGitHubで公開されており、再現スクリプトはラップトップのCPUで1分以内に完了する設計です。研究は査読前のプレプリントです。

分解能の面で示唆もあります。観測された反転率では、45課題は13ポイントの差を半分の確率でしか検出できず、80%の検出力では検出できません。447課題でも5ポイントどまりです。公表されているハーネス改善の多くはこの分解能以下に当たります。エージェントの選定では、成功率だけでなく、成功1件当たりの総費用、再実行時のばらつき、出力上限への到達を併せて見るのが現実的な水準だ、というのが研究の示唆です。

出典

  1. What Does a Harness Buy? Tokens, Mostly(arXiv:2610.04433)2026-10-03初公開(v1)。Yangze Liu、Zhongyi Han(山東大学)。3ハーネス×5モデルの評価設計、447課題での±5ポイント同等性、13%の反転率、OpenCode最大9ポイント劣後、費用最大3倍、preamble 16,581/7,025/829トークン、GLM-5.3-Flash 1.81/0.97/0.56元、検出分解能を本文で確認。
  2. what-does-a-harness-buy(YangzeLiu GitHub)8,032試行のtrials.csv、解析スクリプト、Harborジョブ150件の設定、再現スクリプト(CPUで1分以内)、CC BY 4.0/MITのライセンス区分をREADMEで確認。リーク監査(web_leakage_audit.py)の同梱も確認。
  3. A coding agent's harness can triple its cost without making it more accurate, study finds(VentureBeat)2026-10-23付(Ben Dickson氏)。本実行ではサイト側のボット対策で本文未取得。掲載日と見出しをVentureBeatの配信フィードで確認し、研究の事実は上記一次資料に基づく。

出典の確認日 2026.10.24

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