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BUSINESS REVIEW #004 · CARNEXT DATA

EVは、なぜ「残価」が
普及の壁になるのか。

充電器、航続距離、車両価格。EV普及の課題として語られるものは多い。だが、購入者が数年後の「出口」を想像できなければ、購入時点の実質コストも判断できない。中古EVの価値を見えにくくする“バッテリーの情報格差”から考える。

公開日 · 2026.08.24 · MOBILITY REVIEW · FACT / ANALYSIS / HYPOTHESIS

中古価格が、購入時の判断をつくる。を表現した編集イメージ(AI生成)
MOBILITY / AI EDITORIAL IMAGEISSUE 004

01 / CARNEXT DATA

EVを買う人の73%が、
「売るときの価格」を見ている。

カーネクストが2026年8月、EV購入者・検討者300人を対象に行った調査では、73.0%がEV購入時に「将来いくらで売れるか」を重要と回答しました。

FUTURE RESALE VALUE73.0%「将来いくらで売れるか」が重要

非常に重要23.7%+やや重要49.3%

PRICE PERCEPTION57.3%ガソリン車より中古価格が下がりやすいと思う

「分からない」も20.7%

TOP CONCERN60.0%購入をためらう理由は「バッテリー劣化」

充電設備不足51.3%、車両価格41.0%

この調査は「実際のEV中古価格が何%下がったか」を測定したものではありません。EV購入者・検討者300名の意識・不安を示す調査として読みます。

FACT
将来売却価格を重要視する回答が73.0%。57.3%がEVはガソリン車より中古価格が下がりやすいと回答しています。
ANALYSIS
消費者にとってEVは、購入価格だけでなく「数年後にいくら回収できるか」が購入判断の一部になっています。
HYPOTHESIS
新車補助や充電インフラだけでは、「出口価格が分からない」という心理・金融上の障壁を取りこぼす可能性があります。
SOURCE / カーネクスト調査 2026.08 →

02 / RESIDUAL VALUE

「残価」は、売るときの話ではない。
買う瞬間の価格でもある。

自動車の実質負担は、購入時の価格だけでは決まりません。数年後に売却する前提なら、「購入額から将来の売却額を引いた差額」が所有コストの大きな部分になります。

クルマの実質コストを単純化すると

BUY購入価格
EXIT将来の売却価格
RUN保有・利用コスト

税・保険・金利・補助金などは省略した概念式です。

オリックス自動車、EVolity、パナソニックHDは、中古EVの客観的なバッテリー評価が十分でないことでリセール価格が低くなる傾向があり、その結果リース時の残価が低く設定され、月額料金が高くなることがEV導入障壁の一因になると説明しています。

SOURCE / ORIX × EVolity × Panasonic HD →

03 / INFORMATION ASYMMETRY

同じ年式・同じ走行距離でも、
EVには「見えない差」がある。

中古車の価格は年式、走行距離、事故歴、車両状態などで評価されます。EVではそこに、駆動用バッテリーという高価で状態を外から判断しにくい部品が加わります。

CONVENTIONAL USED CAR

見えやすい情報

  • 年式
  • 走行距離
  • 修復歴
  • 車両状態
  • 整備履歴
USED EV

バッテリー情報

  • SOH / 残存容量
  • 充電・使用履歴
  • 温度・利用環境
  • 想定航続距離
  • 将来の劣化見通し

MODEL / INFORMATION ASYMMETRY

問題は「バッテリーが劣化すること」より、
劣化の程度を市場が共有できないこと。

状態を共通指標で測り、買い手・売り手が同じ情報を持てるなら、個体ごとの差を価格へ反映しやすくなります。

04 / SOH

そこで重要になるのが、
バッテリーの「SOH」。

SOH(State of Health)は、新車時のバッテリー容量を100%としたときに、現在どの程度の容量が残っているかを見る指標の一つです。

SOHを「車両状態」の一部として見せる

0%50%100%
SOHバッテリー健全度
CAPACITY現時点の想定残容量
RANGE想定航続可能距離

日産は2026年2月、リーフの一部中古車を対象に「日産バッテリー状態証明書」のトライアルを開始しました。SOH、残容量、想定航続可能距離をメーカーが公式に証明する仕組みです。

「価値の不確実性」シミュレーター

実際の査定額ではなく、「状態」「診断情報の信頼性」「市場流動性」が揃うほど評価しやすくなる構造を示す教材用モデルです。

VALUE VISIBILITY SCORE75比較的評価しやすい

※実際の買取価格・残価を示すモデルではありません。

SOURCE / 日産 バッテリー状態証明書 →

05 / MARKET RESPONSE

2026年、メーカーも市場も
「EVの状態証明」に動き始めた。

2025.07

ORIX × EVolity × Panasonic HD

診断書付きEVを中古車入札会へ出品し、入札価格への影響を検証。

SOURCE

2026.02

日産:バッテリー状態証明書

SOH・残容量・航続距離をメーカーが公式に証明。

SOURCE

2026.03

三菱自動車:車両データ評価書

走行データやバッテリー健全度を用いて、より実態に即した車両評価・残価算定を目指す。

SOURCE

2026.06

日産 × eMotion Fleet

メーカー公式の状態書付き中古EVと運行管理を組み合わせ、データに基づく残価形成を目指す。

SOURCE

06 / SECONDARY MARKET

残価が低いと、
良い中古EVが国内に残らない。

経済産業省資料では、中古EVの海外輸出台数は2017年の約4,000台から2023〜2024年には約2万台規模まで増加しています。EVに搭載されたバッテリーも車両と一緒に国外へ出ていきます。

USED EV EXPORTS

約5倍

2017年 約4,000台 → 2023〜24年 約20,000台(資料掲載の概数)。

INDUSTRY ISSUE

約8割

eMotion Fleetは、国内の「優良な中古EV」の約8割が海外へ流出しているとの業界認識を示しています。

残価が見える市場ができると

状態を測るSOH / 履歴
適正に値付け不確実性↓
中古流通↑Liquidity↑
残価↑ / 安定Exit visibility
新車導入しやすいTCO / Lease

中古EV市場の整備は、新車EV市場と独立した施策ではありません。

SOURCE / 経済産業省 EVバッテリー流通 →

07 / BUSINESS MODEL LESSON

EVの競争は、「新車性能」から
ライフサイクル設計へ移る。

航続距離、充電速度、車両価格だけでなく、数年後にいくらで手放せるかまで含めて競争軸は広がります。

RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY

EVを売る会社だけでは、
EV市場は完成しない。

必要なのは、新車販売、充電、バッテリー診断、中古査定、オークション、輸出、再利用までをつなぐ市場インフラです。残価とは中古車の価格ではなく、EVのライフサイクル全体を評価する「市場の答え」だと考えられます。

08 / CARNEXT CONNECTION

カーネクストにとって、
「売却データ」はEV普及の入口になる。

カーネクストはオンラインで中古車の買取・売却を支援する「出口側」のプレイヤーです。EVの購入者が将来売却価格を重視するなら、買取・流通市場の情報は、次回購入の意思決定にもつながります。

CARNEXT × EV SECONDARY MARKET

「いくらで売れたか」が、
次に「何を買うか」を変える。

EVの状態情報と実取引価格が蓄積されれば、購入時に将来の出口を見通すための情報基盤へ発展する余地があります。

VALUATION車両状態 × 市場価格
DISTRIBUTION国内外の売却先ネットワーク
FEEDBACK売却価格 → 次の購入判断

MOBILITY × BUSINESS

市場の「出口」を理解すると、
事業の入口が変わる。

RAXUS BUSINESS REVIEWでは、実際に事業を展開する市場の構造変化を読み解きます。

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