RAXUS › GROWTH PARTNERSHIP › BUSINESS REVIEW › #002

BUSINESS REVIEW #002 · COMPETITIVE STRATEGY

Uber Eats・出前館・Rocket Nowは、
何を争っているのか。

menuやWoltが日本市場から退く一方で、残るプレイヤーは単純な「クーポン合戦」ではない戦略を進めている。価格、地域密度、会員経済圏、物流ネットワーク。2026年の施策を並べると、それぞれが違う勝ち筋を描いていることが見えてくる。

公開日 · 2026.08.21 · STRATEGY REVIEW · FACT / ANALYSIS / HYPOTHESIS

安さを、注文密度と経済圏へ。を表現した編集イメージ(AI生成)
MARKET / COMPETITION / AI EDITORIAL IMAGEISSUE 002

01 / MARKET SNAPSHOT

2026年の競争は、
「安い」だけでは説明できない。

3社とも価格負担を下げている。しかし、その先に作ろうとしている経済圏は異なります。Uber Eatsは移動・配送まで統合、出前館はLYPと国内の注文頻度を強化、Rocket Nowは無料を武器に一気に密度を作ろうとしています。

UBER EATS

3A戦略で「生活インフラ」へ

Anywhere / Anything / Affordability。食事だけでなく配車・即時配送・小売物流まで横断。

18,000「お店と同じ価格」開始店舗(2026/3)

出前館

価格の壁を壊して、注文頻度を上げる

お店価格・送料無料・大型販促・LYPプレミアム。注文数とユニットエコノミクスの両立を狙う。

25,000お店価格対象店舗(2026/8/1時点)

ROCKET NOW

「無料」を入口に全国密度を急拡大

送料・サービス料0円。GOとの相互送客、ローソン、店舗広告など周辺レイヤーも追加。

420都市 / 46都道府県(2026/8)

02 / STRATEGY SWITCHER

同じ市場にいても、
3社は違う「ゲーム」をしている。

ECOSYSTEM COMPOUNDING

「食事のアプリ」ではなく、日常のオンデマンドOSへ。

Uber Eats Japanは2026年、郊外展開(Anywhere)、食料品・日用品拡大(Anything)、お手頃さ(Affordability)を「3A戦略」として明示。Uber OneはEats・配車・Courierを横断し、家族共有や海外利用まで拡張しています。

ACQUISITION店頭同価格・Uber Oneで価格障壁を下げる
FREQUENCY食事 × タクシー × Courierで利用場面を増やす
SUPPLYPPP / Uber Directで小売・物流網を広げる
SOURCE / Uber 3A戦略 →

03 / BATTLEFIELD

「どこで勝つか」を図にすると、
3社の違いが見える。

下図は公開情報をもとにした編集部の概念整理で、実測スコアではありません。横軸を「消費者価格の攻め」、縦軸を「複数サービスを束ねるエコシステム力」として置いています。

STRATEGY MAP

← 価格を持続可能性重視 ───── 消費者価格を強く攻める →

単一用途 ←── エコシステム統合 ──→ 複数用途

Uber EatsMulti-platform moat
出前館Frequency + LY
Rocket NowFree-fee wedge

※位置は公開施策を比較するための概念図。市場シェアや利益率を示すものではありません。

戦場Uber Eats出前館Rocket Now
価格会員価値
Uber One+店頭同価格
攻め
お店価格+送料無料
最も攻め
送料・サービス料0円
利用頻度配車・食・Courier横断リピート施策・LYP無料+GO相互送客
供給拡大PPP / Uber Direct / 小売シェアリングデリバリー全国420都市へ急拡大
選択体験「何でも届く」方向「デリバリーの名店」Google / 食べログ評価連携
収益化会員・取引・物流を束ねる注文総量とユニットエコノミクス発展中
加盟店広告を追加

04 / UBER EATS

Uberの強さは、
「Eatsだけで回収しなくていい」こと。

2026年のUber Oneは、Uber Eatsだけの割引会員ではありません。配車、プレミアム乗車、Courier、家族共有、海外利用まで拡張されました。つまり、獲得した1人のユーザーから複数の利用機会を作れます。

Uberの複利ループ

Uber Eats食事・日用品
UberTaxi / Premium
Courier即時宅配
Uber One横断会員

単一サービスのCACではなく、「1ユーザー × 複数サービス × 継続会員」でLTVを作る構造と考えると、価格施策の意味が変わります。

FACT
Uber Eatsは2026年3月、「3A戦略」を示し、全国約1万8千店舗で「お店と同じ価格」を開始。日本事業は2023〜2025年に3年連続黒字、2026年1月に過去最高売上と発表しています。
ANALYSIS
価格低下は単なる防衛策ではなく、Uber Oneや配車へのクロスユースを増やすための入口として機能し得ます。
HYPOTHESIS
日本での長期的な強みは「飲食デリバリーのシェア」単体より、オンデマンド移動・配送ネットワークを共通資産として使えることにある可能性があります。

05 / DEMAE-CAN

出前館は、
「守る」のではなく再び取りにいっている。

出前館の2026年施策は、収益優先の縮小均衡ではありません。IRでは、市場拡大とNo.1を目指し、注文頻度を増やすための価格施策・会員施策を明示しています。

2026.03

全国で「お店価格」+送料無料

10,000店舗超から開始。送料体系もサービス料+送料へ変更。

2026.04

15,000店舗、参加店注文数は平均2.9倍

「お店価格」参加前との比較として会社発表。

2026.06

21,000店舗+LYPプレミアム

LINEヤフー経済圏との連携を強化。

2026.07

「デリバリーの名店」

レビューだけでなく、キャンセル率やドライバー待機時間も評価。

2026.08

25,000店舗+大型販促

価格だけでなく「時間価値」をメッセージに。

FACT
第1四半期IRでは「ユーザー数・注文頻度増加」と「1件あたり利益減少より利益総額の増大」を並べ、オーダー増とユニットエコノミクスの両立を掲げています。
ANALYSIS
これは「赤字だから節約する」戦略ではなく、価格障壁を下げて市場の再拡大局面に賭ける攻めの再投資と読めます。
HYPOTHESIS
Rocket Nowの価格攻勢に対し、「国内の既存加盟店・配達網・LY経済圏」を使って注文密度を先に高めることが防衛と成長の両方になる可能性があります。
SOURCE / お店価格15,000店舗・注文平均2.9倍 →

06 / ROCKET NOW

Rocket Nowは、
「無料の会社」では終わらない可能性がある。

注目すべきは0円そのものより、その後に追加されているレイヤーです。利用者、エリア、他サービスとの送客、コンビニ供給、加盟店向け広告。順序立てて見ると、典型的な“wedge → density → monetization”の形が見えます。

01 WEDGE

送料0円・サービス料0円・サブスク不要 / お店と同価格

02 SCALE

2026年6月 700万DL → 8月 46都道府県・420都市

03 ECOSYSTEM

GO相互送客 / 楽天ペイ / ローソン / 営業時間拡張

04 MONETIZATION

加盟店向けAI広告サービスを開始

FACT
Rocket Nowは送料・サービス料0円を掲げ、2026年6月に累計700万DL、8月に46都道府県・420都市へ拡大。GOとの相互プログラム、ローソン店内調理品の配送、加盟店向け広告を展開しています。
ANALYSIS
低価格によるユーザー獲得だけでなく、利用頻度・供給カテゴリ・広告収益を同時に追加していることが重要です。
HYPOTHESIS
消費者側の手数料を抑えた状態をどこまで維持できるかは不明ですが、先に密度を作り、加盟店広告など別レイヤーで収益化余地を広げる戦略である可能性があります。

07 / WIN CONDITION

では、勝敗は何で決まるのか。

この市場で重要なのは「一番安いサービス」を予測することではありません。安さで獲得したユーザーを、十分な注文密度と収益性へ変換できるかです。

どの条件が重要だと思う?

価格は「入口」になれる。

ただしクーポンや送料無料が止まった瞬間に離脱するなら、競争優位にはなりません。価格施策が注文頻度と地域密度へ転換されるかが次の論点です。

RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY

勝者は「安い会社」ではなく、
安さを複利に変えられる会社。

Uberはマルチサービス、出前館は国内密度とLY経済圏、Rocket Nowは価格破壊と急速な供給拡大。それぞれの施策は、最終的に「1回の注文を次の注文へどう変えるか」という同じ問いに収束します。

RELATED CASE

では、なぜmenuは
この競争から撤退したのか。

競合の攻め方を見たうえで、KDDI×menuの2021〜2026年のシナジー仮説と撤退判断を読むと、同じニュースが違って見えます。

BUSINESS REVIEW #001 を読む →
RAXUS BUSINESS REVIEW / EDITORIAL INTELLIGENCE