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Instinct、10億ドル調達で評価額100億ドル 創業者は年間取引額10億ドル規模と説明

Instinctは2026年9月28日、Sequoia Capital、Benchmark Capital、CoatueからシリーズCで追加の10億ドルを調達したと発表した。会社発表の見出しは評価額を100億ドルとしている。招待制の早期アクセスを続ける同社について、創業者のNoah Shinnは同日のポッドキャストで、プラットフォーム上の年間取引額が10億ドル規模に達すると説明した。ただし算出方法は示されておらず、会社の売上高やGMVを示す数字とは確認できない。

1カ月で評価額は4倍に

8月26日に報じられたシリーズBは2億5,000万ドルで、Instinctの評価額は25億ドルとされた。このラウンドで累計調達額は3億5,000万ドルになったという。9月28日のシリーズC発表では、会社は追加で10億ドルを調達し、発表タイトルに評価額100億ドルを掲げた。報道された前回評価額と比べると約1カ月で4倍だが、非公開企業の資金調達時の評価額であり、売上や利用実績の伸びを示すものではない。シリーズCの評価額がプレマネーかポストマネーか、投資家ごとの出資額、資金の使途は公表資料から確認できない。

図解Instinctの大型ラウンドと評価額
  1. 25億ドルシリーズB評価額

    2億5,000万ドルを調達。累計調達額は3億5,000万ドルと報道

  2. 100億ドルシリーズC評価額

    10億ドルを追加調達。Sequoia、Benchmark、Coatueが参加

8月の数字はTechCrunchがWall Street Journalの報道として紹介。9月の調達額・投資家はInstinctの発表、評価額は発表タイトルによる。評価額の算定基準は公開資料に記載がない。

シリーズCの発表では、各社の役割や出資比率は示されていない。したがって、3社を「共同リード投資家」とは表現せず、参加した投資家として扱う。発表文は資金が「Instinctをより多くの人に届ける」ために役立つとするが、計算資源、人員、販売網などへの具体的な配分は明らかにしていない。

予約や買い物を、メッセージから実行する

Instinctは、利用者がテキストメッセージや電話で依頼すると、独自の電話番号とコンピューターを使って作業を進めるパーソナルアシスタントとして提供されている。会社は、旅行の計画、食料品の注文、使っていない定期購読の解約などを、依頼から完了まで扱うと説明する。公式サイトも、利用者が使うアプリや端末の情報をもとに、電話やメッセージで依頼できるサービスと紹介している。

9月28日の発表は、電話予約などオンラインで手続きが完結しない依頼を扱う「Instinct Concierge」と、利用者同士のアシスタントが予定を調整し、PDFや画像、表計算ファイルを共有する「Trusted Person Network」も紹介した。いずれも会社が説明する製品機能で、発表時点でサービスは早期アクセス中だ。一般提供の時期や、実際の利用者数は明らかにしていない。

取引額は売上高ではない

創業者のShinnは、投資家Patrick O’Shaughnessyの番組「Invest Like the Best」で、Instinctのプラットフォームを通る年間取引額が10億ドル規模に達すると説明した。番組ページは、利用者数が招待制の段階で、日次約10%の成長が続いているという本人の説明も紹介している。TechCrunchによると、取引額の算定方法や対象期間の詳しい説明はなかった。

ここでいう取引額は、Instinct自身の売上高ではない。予約や購入で利用者が支払う総額なのか、依頼が成立した金額の合計なのか、公開資料では定義されていない。取引額のうち旅行が占める割合についても、Shinnは番組で半分超と話したとTechCrunchが報じているが、算定基準は示されていない。ARR、つまり年間経常収益や、会計上の売上高も今回の資金調達発表では開示されていない。

Shinnは番組で広告モデルを採らず、事業者から手数料を受け取る「テイクレート」を構想していると話した。エージェントが利用者を商品やサービスにつなぐ対価として受け取る案だ。これは創業者が語った事業モデルの構想であり、実際の手数料収入や利益率を示す実績値ではない。取引が増えても、計算資源や人手を要する依頼の費用を上回る収益を得られるかは、別途確かめる必要がある。

許可範囲とデータ利用も問われる

個人の代理として予約や購入を進めるには、利用者のアカウントやメッセージにアクセスする場面がある。Instinctのプライバシーポリシーは2026年8月26日改訂と記載し、許可に応じて連携アプリの情報、メールやメッセージ、決済情報などを扱うと説明している。利用情報は製品改善やAIモデルの評価・調整・学習にも使う一方、モデル学習への利用を設定画面で拒否できるとしている。連携を解除しても、取得済みデータが自動で消えるわけではない。

会社は資金調達発表の中で、処理環境の分離、期限の短いローカル認証情報、署名付きツール実行などの安全対策を実装していると説明した。これらは会社の説明であり、今回確認した公開資料に第三者監査や実環境での安全性評価は示されていない。TechCrunchは8月、初期のプライバシーポリシーに懸念が出て、その後ポリシーが更新されたと報じている。今後は機能の広がりとともに、どのデータにアクセスし、学習や実行にどう使い、連携解除後にどう削除できるかを利用者が確認できることが問われる。

10億ドルの調達と100億ドルの評価額は、個人向けAIエージェントへの投資家の期待を示す。一方、事業の持続性を見るには、年間取引額の定義、売上高と手数料率、利用者数、タスク当たりの計算コストが必要になる。現時点で確認できるのは大型資金調達と創業者が語った成長仮説であり、Agentic Commerceの収益性が実証された段階ではない。

出典

  1. Instinct Raises $1 Billion in Series C Funding from Sequoia, Benchmark and Coatue at $10 Billion ValuationInstinct名義の公式発表、2026年9月28日。Series Cで追加10億ドルを調達、Sequoia・Benchmark・Coatueが参加。発表タイトルの評価額、早期アクセス、製品機能、会社が説明するセキュリティ対策。2026年10月1日確認。
  2. Instinct: The Personal Agent, Episode 493Invest Like the Best / Colossus、2026年9月28日公開。創業者Noah Shinnのインタビュー。日次約10%成長、年間10億ドル超の取引額、テイクレート、旅行、計算資源などの話題と番組説明を確認。取引額の算出方法は記載されていない。2026年10月1日確認。
  3. Instinct official websiteInstinct公式サイト。テキストや電話を入口にし、独自の電話とコンピューターを使うパーソナルアシスタントという製品説明を確認。2026年10月1日確認。
  4. Privacy PolicySpear Street Technology, Inc. d/b/a Instinct、2026年8月26日改訂。接続されたサービスや通信、決済情報へのアクセス範囲、AIモデルの学習への利用、学習オプトアウト、連携解除後も取得済みデータが自動削除されない点を確認。2026年10月1日確認。
  5. Viral AI startup Instinct has raised $350M at a $2.5B valuationTechCrunch、2026年8月26日。Wall Street Journalを通じて会社が伝えたとするシリーズBの2億5,000万ドル、評価額25億ドル、累計調達3億5,000万ドルを確認。前回ラウンド比較に使用。2026年10月1日確認。
  6. Viral AI agent Instinct raises $1B Series C at a $10B valuationTechCrunch、2026年9月28日。会社発表の照合、シリーズCで会社が開示していない利用者数や成長指標、初期プライバシーポリシーの報道と更新状況を確認。2026年10月1日確認。
  7. Instinct founder said more than 50% of transactions on the platform are travel-relatedTechCrunch、2026年9月29日。番組内で創業者が述べた年間取引額や旅行構成比、算出方法が不明との報道を照合。2026年10月1日確認。
  8. Instinct’s powerful AI assistant is raising privacy and security concernsTechCrunch、2026年8月24日。初期の利用規約とプライバシー条件への懸念が報じられた経緯を確認。2026年10月1日確認。

出典の確認日 2026.10.01

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