NEWS & DOCUMENTARYAIと人間のこれから。
RAXUS AIAIのいまを確かめて届ける。
LATEST EDITION

米上院、データセンター費用負担法案の審議入り進まず 賛成57票

米上院は2026年9月30日、大規模データセンター向けの設備増強費用を扱う「Ratepayer Protection Act」の審議入り動議について、討論を終結させる提案を否決した。賛成57票、反対43票で、必要な60票に届かなかった。法案は州などに費用負担基準の採否を検討させる内容で、採用は義務づけない。

採決の対象は、9月16日に下院を通過したH.R.9340だ。上院ではジョン・ハステッド議員が7月16日に同名のS.5028を提出しているが、9月30日の採決記録はH.R.9340を対象としている。

上院の公式記録は、審議入り動議への討論を終えるclotureの否決と記している。法案本体の可否を決める採決は行われておらず、新しい料金制度も発効していない。

図解下院通過後、上院の手続きで止まる
  1. 下院通過H.R.9340

    Ratepayer Protection Actが下院を通過

  2. 57対43上院の討論終結

    審議入り動議への討論終結を否決。賛成は必要な60票に届かず

上院点呼採決第254号とH.R.9340の下院通過版に基づく。9月30日の採決対象は審議入り動議へのclotureで、法案本体の採決ではない。

100MWは同じ敷地で合算したピーク需要

H.R.9340は、1978年の公益事業規制政策法に大口需要家向けの料金基準を追加する案だ。対象施設に電力を供給するために必要な発電・送電・配電設備の増強について、電力会社が追加費用の全額をその需要家から回収する基準を設ける。契約を解約したり、電力の購入をやめたりした場合も回収の対象とする。

対象は、法案成立日以後に電力購入契約などを申し込むか締結する非住宅の需要家だ。データ保存や計算サービスのIT設備と関連システムを主な用途とし、同じ敷地やキャンパスにある施設のピーク電力需要が合計100MW以上になることを条件とする。AI専用施設に限った定義ではない。

基準には事前の費用確保も含まれる。電力会社が設備を増強する前に、需要家から増強費用を賄う財務保証か拠出を受ける内容だ。

州に求めるのは基準の検討と採否の決定

法案が成立した場合、州の料金規制当局と州の料金規制を受けない電力事業者は、1年以内に基準の検討を始めるか、検討のための聴聞日を設定する。2年以内に検討を終え、採否を決める必要がある。

連邦議会予算局の評価も、州の規制当局は現行法の下で料金基準を採用するか拒否できると説明している。成立によって全国の対象施設に同じ費用負担ルールが直ちに適用される仕組みではない。

州が成立前に同等の基準を導入済みの場合や、規制当局などが導入の検討手続きを行った場合には、期限付きの検討義務に例外がある。州議会が導入について採決済みの場合も含まれる。

図解成立した場合の採否判断
  1. 01 成立日

    期限の起点

    H.R.9340が成立した場合

  2. 02 1年以内

    検討開始

    検討を始めるか聴聞日を設定

  3. 03 2年以内

    採否を決定

    検討を終え、採用するか判断

州の料金規制当局と州の料金規制を受けない電力事業者が行う手続き。採用は義務づけず、成立前に同等の基準を導入・検討・採決していた場合には例外がある。2026年9月30日の採決でこの期限は始まっていない。

連邦規則による負担を求める代替案も

マーティン・ハインリック上院議員は、州の検討に委ねる方式では不十分だと主張し、9月17日に代替案の「GRID Savings Act of 2026」、S.5199の可決を求めた。これも全会一致による可決には至っていない。

S.5199は、連邦エネルギー規制委員会のFERCに大口需要の送電系統への接続ルールを定めさせる案だ。新設・拡張する非住宅の需要が対象となる。所有・支配・提携関係のある施設について、同じ敷地か電力設備を共用する隣接地の需要を合算する。単一の接続点で要求・予測するピーク需要が150MW以上となる場合が対象だ。接続設備と需要家専用設備の費用は100%を需要家に負担させる。送電網の共用部分の増強費は、送電料金との精算を含めて扱う。ERCOT域内だけの送電には適用しない。

需要予測と、料金の負担は分けて見る

Berkeley Labが2026年6月18日に公表した「2025 Update」では、米国のデータセンターによる2030年の年間電力使用量を、基準ケースで649TWhと推計した。2030年の全米電力使用量の予測に対して11.8%に当たる。機器の出荷台数や寿命、推論サーバーの稼働率などの不確実性を組み合わせた上下限は、521〜843TWh、9.5〜15.3%だ。

この割合の分母には、北米電力信頼度協会の全米電力需要予測を使っている。推計はデータセンター全体の年間電力使用量を扱い、暗号資産の採掘は除く。法案の100MWというピーク需要条件とは対象も単位も異なり、この推計から家庭への料金転嫁額は分からない。

出典

  1. 米上院・第254号点呼採決の公式記録2026年9月30日12時51分の採決記録。H.R.9340の審議入り動議に対するcloture、賛成57票・反対43票、必要多数5分の3、Rejectedを確認。2026年10月1日確認。
  2. H.R.9340・Ratepayer Protection Actの下院通過版米政府出版局掲載、2026年9月16日下院通過版EH。第2条で増強費用の全額回収、契約終了時の扱い、財務保証、IT用途、同一敷地・キャンパスの合計ピーク100MW、成立後の契約申込み・締結、検討期限と既存の州措置への例外を確認。2026年10月1日確認。
  3. S.5028・Ratepayer Protection Actの上院提出版米政府出版局掲載、2026年7月16日上院提出版IS。ハステッド議員の同名案と法案番号を確認。9月30日の採決対象はこの案ではなくH.R.9340。2026年10月1日確認。
  4. 連邦議会予算局・H.R.9340の費用評価2026年9月9日公開、7月21日の下院委員会報告決定版を評価。州規制当局に基準の採否検討を求める一方、現行法では採用・拒否の判断ができると説明。対象施設の詳細は後のEH版で確認した。2026年10月1日確認。
  5. S.5199・GRID Savings Act of 2026の上院提出版米政府出版局掲載、2026年7月30日上院提出版IS。第2条の新設・拡張する非住宅需要、単一接続点で合計ピーク150MW以上、FERCの規則策定、接続・専用設備費の100%負担、共用増強費と送電料金の精算、ERCOT域内送電の除外を確認。2026年10月1日確認。
  6. ハインリック議員・GRID Savings Actを求めた公式発表2026年9月17日公開。州の任意採用では不十分という同議員の主張、S.5199の全会一致可決の要求とモレノ議員の異議を確認。料金上昇に関する演説中の数値は記事に使用していない。2026年10月1日確認。
  7. Berkeley Lab・米国データセンター電力使用量報告2025 Update2026年6月18日公開。DOE掲載PDFの物理ページ1で公開日、7で概要、8〜11で方法と結果を確認。2030年の基準ケース649TWh・11.8%、複合不確実性521〜843TWh・9.5〜15.3%。分母はNERCの全米予測。暗号資産採掘を除き、100MW以上の法案対象施設だけの推計ではない。2026年10月1日確認。

出典の確認日 2026.10.01

KEEP EXPLORING

あわせて読みたい記事と映像

AIと社会の記事一覧
  1. 米上院議員、AI Agentの侵入被害で開発・運用者の責任を問う法案

    Josh Hawley、Chris Murphy両上院議員は10月1日、AI Agent Accountability Actを発表した。AIエージェントによる不正アクセスを巡り、開発者と運用者の民事・刑事責任を定める提案だ。成立した法律ではない。

    記事を読む
  2. 英国政府、AI Biosecurity Lab設立を発表 政府1億ポンドとOpenAI・Anthropic最大2億ポンド相当の支援

    英国内閣府は2026年10月24日、生物学的脅威の早期検知と医療対策の研究を担う独立非営利組織「AI Biosecurity Lab(AIBL)」の設立を発表しました。政府資金1億ポンドに、OpenAIとAnthropicによる最大2億ポンド相当の企業コミットメントを組み合わせて発足させます。ただし企業分の大半は現金ではなく、計算資源やモデルクレジット、審査付きモデルアクセスです。組織は発表された段階で、稼働日や拠点は公表されていません。

    記事を読む
  3. 英国政府、AIサイバー防衛に計1億3000万ポンド National Cyber Shieldに6000万ポンド、脆弱性把握のNERVセンターに7000万ポンド

    英国財務省(HM Treasury)は2026年10月24日、エージェント型AI(agentic AI)でサイバー防衛を強化するNational Cyber Shieldに6000万ポンド、国内の脆弱性をAIツールで把握するNERV(National Exposure and Real-Time Vulnerability)センターに7000万ポンドを割り当てると発表しました。2施策の合計は1億3000万ポンドです。Cyber Shieldには英国のAI・サイバーセキュリティ企業を支援する2500万ポンドのチャレンジ基金が含まれ、重要インフラなどへの導入に向けた規制サンドボックスの検討も進めます。発表は来週の予算案に先立つものです。

    記事を読む