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Anthropic、Claudeが設計したサソリ毒結合タンパク質を公開 実験した211候補の17候補が結合基準を達成

Anthropicは2026年10月20日、内部研究モデルのClaudeがサソリ神経毒5種に結合するタンパク質(minibinder)を設計し、Adaptyv BioとTwist Bioscienceの実験で211候補のうち17候補が結合基準を満たしたと公開しました。64時間で31万8,484種の設計を生成し、主に自律的に進めたキャンペーンです。毒の中和は検証しておらず、抗毒素の開発段階には至っていません。211設計と結合データを公開しています。

この取り組みは、8月に公開した単一プロンプトでのタンパク質設計実験に続くものです。金融調査会社のCitrini Researchとともに「非専門家の集団でも、AIで健康に関する実際の問題に取り組めるか」を検証するなかで、題材に選ばれたのがサソリ神経毒でした。世界では年間120万人以上がサソリに刺され、3,250人以上が死亡しており、治療薬は高価で供給が限られることから、顧みられない熱帯病とされています。

設計の対象は、地域の異なる5種の神経毒です。メキシコのCn2、ブラジルのTs1、北アフリカのAaH IとAaH II、中東のLqhIIIで、いずれも神経細胞のナトリウムチャネルに結合して発火を乱す毒です。ClaudeはPDBとAlphaFoldデータベースから毒素の構造を選び、各毒素に結合の狙いとなるアミノ酸位置(ホットスポット)を5つ設定しました。

図解設計から実験判定までの流れ
  1. 01 対象の設定

    5種の毒素

    AnthropicとCitrini Researchが初期プロンプトを設計。ClaudeがPDBとAlphaFold DBから構造を選び、各毒素にホットスポット5か所を設定した

  2. 02 設計の生成

    318,484候補

    12の設計ツールを使い、64時間で主に自律的に生成。毒素や既知タンパク質に似た候補は除外した

  3. 03 スクリーニング

    553,052ペア

    設計と毒素のペアを複合体として構造予測し、Claudeが180候補を選定。チームがClaudeとともに31候補を追加した

  4. 04 実験

    211候補

    Adaptyv Bio(無細胞系)とTwist Bioscience(哺乳類細胞でFc融合)が表面プラズモン共鳴(SPR)で結合を測定した

  5. 05 判定

    17候補

    両ラボで結合の証拠がありKDが1µM以下、無関係なヒトタンパク質CLEC12Aへの非特異的な付着がない、という基準を満たしたのは17候補だった

出典はAnthropicの研究公開ページ。判定基準は同ページの記載どおり。LqhIIIはAdaptyv Bioのみで評価された。

結果の17候補は、すべて単一の毒素に結合する設計でした。複数毒素を狙った91候補で、2種以上に基準を達成したものはありません。内訳はCn2に7、AaH IIに4、AaH Iに4、LqhIIIに2で、Ts1はゼロでした。単一毒素向けに設計した60候補のうち結合体になった11候補(18%)という率は、過去のタンパク質設計キャンペーンと同程度だとAnthropicは述べています。

図解毒素別の実験結果
  • Cn2

    地域
    メキシコ
    達成候補数
    7
  • AaH II

    地域
    北アフリカ
    達成候補数
    4
  • AaH I

    地域
    北アフリカ
    達成候補数
    4
  • LqhIII

    地域
    中東
    達成候補数
    2
  • Ts1

    地域
    ブラジル
    達成候補数
    0

出典はAnthropicの研究公開ページ。17候補はすべて単一毒素向けで、複数毒素の基準達成候補はない。LqhIIIはAdaptyv Bioのみでの評価。

「ほぼあらゆる標的に対する結合体の設計は、もはや非現実的ではないように見える。」

Designing a binder against almost any target no longer seems unrealistic

スペイン国立がん研究センター(CNIO)博士研究員Susana Vázquez Torres氏、Anthropic研究公開ページ、2026年10月20日付

最有力の2候補は、Cn2に結合するCn2-B1とCn2-B2です。両ラボの測定で結合の強さ(KD)が一桁ナノモル範囲と強く、マウスでCn2を中和すると報告のある抗体LRとの競合実験では、LRと同じエピトープ(結合部位)付近に結合することが示唆されました。LRの結合部位は、Cn2がナトリウムチャネルにつかむ部分を覆っています。Anthropicは、この競合の結果から中和の可能性が高いとしつつ、細胞環境や動物での検証は行っていないと明記しています。

今回確認されたのは、毒素の遺伝子から作製した組換え毒素への結合です。培養細胞での中和(in vitro)も動物での効果(in vivo)も試験されておらず、抗毒素ができたと主張する段階ではありません。毒性中和に至るまでには、毒から精製した毒素への結合確認、パッチクランプ記録での機能評価、マウスでの防御試験、安全性・安定性・コストの課題が残ります。

Anthropicは211設計すべてと、予測構造・スコア・実験データをHugging Faceで公開しています。キャンペーンでは約1万GPU時間を使い、Claudeは調査データの分析、図の作成、最終報告の下書きまで担いました。外部の2専門家(CNIOのVázquez Torres氏、デンマーク工科大学のTimothy P. Jenkins氏)は、数日での設計と数週間での実験確認という速度が、顧みられない疾患の創薬を速めうる第一歩だと評価しています。

出典

  1. Anthropic「How Claude designed protein binders against scorpion neurotoxins」2026年10月20日公開。5種の毒素とホットスポットの設定、64時間・31万8,484設計・55万3,052ペアのスクリーニング・180+31=211候補、Adaptyv BioとTwist BioscienceでのSPR測定と判定基準、17候補の内訳(Cn2: 7、AaH II: 4、AaH I: 4、LqhIII: 2)、中和未検証の明記、Cn2-B1/B2のKDと抗体LRとの競合実験、技術報告とHugging Faceでのデータ公開。2026年10月21日に本文確認。

出典の確認日 2026.10.21

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