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米財務省、AI・先端半導体への対外投資規制の拡大案を公表 投資禁止の拡大とHBM・バイオ追加を提案

米財務省は2026年10月22日、米国人の対外投資に適用する安全保障規制を拡大する規則案(NPRM)を公表しました。2025年12月に成立したCOINS法の実装で、対象国のAI(SI)システム開発企業への投資禁止を広げ、高帯域幅メモリー(HBM)やバイオテクノロジーを新たな規制対象に加える提案です。現時点では規則案であり、意見募集の締切は2026年12月7日。最終規則と施行日は公表されていません。

現行のOutbound Investment Security Program(OISP)は、2025年1月2日施行の連邦規則31 CFR Part 850に基づき、米国人による対象国への一定の投資のうち半導体・量子・AI分野を禁止または届出の対象にしています。財務省の説明によると、COINS法は半導体・マイクロエレクトロニクス、AIシステム、量子情報技術、高性能計算・スーパーコンピューティング、極超音速システムの5分野の技術パラメータを財務長官に定めさせ、5分野以外の技術追加も認めています。今回の案では、長官の権限でバイオテクノロジーが追加されました。

「提案する規則は、既存の対外投資安全保障プログラムを強化し、米国の安全保障を脅かす重要技術を、敵対者が米国の投資で開発するのを防ぎます。」

The proposed regulations would strengthen the existing Outbound Investment Security Program to prevent our adversaries from using U.S. investment to develop critical technologies that threaten U.S. national security.

Scott Bessent米財務長官の声明、財務省プレスリリース、2026年10月22日付

AI分野の扱いが変わります。ファクトシートによると、規則案は対象国で「SI(Super Intelligence)システム」を開発する企業への米国人投資について、禁止の範囲を広げ、従来の届出区分を廃止する提案です。SIという用語は、2026年9月29日の行政命令14434が一定の公文書で「AI」の代わりに「Super Intelligence」を使うよう求めたことに伴う置き換えで、現行規則の「AI Systems」と同じ範囲を指します。超知能の実現や新しい技術区分の確認を意味するものではありません。

半導体分野では、EDAソフトウェア、製造・先端パッケージング設備、一部の先端ICの設計・製造、先端パッケージング技術への投資禁止を維持したうえで、耐放射線IC、フォトニックIC、HBMなどを禁止対象に追加します。禁止の対象外となるIC活動は、引き続き届出の対象です。高性能計算分野では、高帯域幅・低遅延インターコネクトの届出義務を新たに定めます。バイオテクノロジーは、ブレイン・コンピュータ・インターフェース、バイオ製造設備、バイオインフォマティクス工具、自動科学発見や実験用のハードウェア・ソフトウェアなどを、新しい禁止区分として加えます。

図解分野ごとの現行制度と規則案
  • AI(SI)システム

    現行OISP
    一部を禁止、他は届出
    規則案
    対象国のSIシステム開発企業への投資禁止に拡大。届出区分を廃止
  • 半導体

    現行OISP
    EDA、製造・パッケージング設備、一部の先端IC等を禁止
    規則案
    耐放射線IC、フォトニックIC、HBM等を禁止に追加。禁止外のIC活動の届出は維持
  • 量子

    現行OISP
    量子コンピュータ、主要部品、センシング、通信系を禁止
    規則案
    量子計算のアルゴリズム・アプリケーション開発を禁止に追加
  • 高性能計算

    現行OISP
    スーパーコンピュータを禁止
    規則案
    先端ICの追加を禁止に、高帯域幅・低遅延インターコネクトの届出を追加
  • 極超音速

    現行OISP
    対象外
    規則案
    システム・推進系・耐熱材料・試験施設を禁止に、センサー等を届出に追加
  • バイオ

    現行OISP
    対象外
    規則案
    生物由来材料、BCI、バイオ製造設備、自動科学発見向け機器等を禁止に追加

出典は米財務省のファクトシートとプレスリリース(2026年10月22日付、2026年10月24日確認)。規則案は意見募集段階であり、施行済みの規制ではありません。

対象国は中国(香港・マカオを含む)に加え、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシア、そして「マドゥロ政権下のベネズエラ」です。財務省のFAQは、2026年3月5日に米国がDelcy Rodríguez氏をベネズエラの元首として承認したため、マドゥロ政権は現存せず、現状ではベネズエラは対象国の定義に当たらないと説明しています。対象となる取引は、株式や転換可能な債務の取得、合弁事業、グリーンフィールド投資、海外ファンドへのLP出資などです。上場証券や投資信託、コミットメント2百万ドル以下など一定条件のLP出資には例外があります。直近12か月の合計が5万ドル以下の少額取引の例外は届出義務の免除に限られ、禁止取引一般の免責ではありません。

図解対外投資規制の経緯
  1. 31 CFR Part 850

    現行OISP規則の施行。半導体・量子・AIの一部を禁止または届出の対象に。

  2. COINS法成立

    2026会計年度国防授権法の一部として成立。対外投資制度の法定枠組み。

  3. 行政命令14434

    一定の公文書で「AI」を「Super Intelligence(SI)」に置き換えるよう各省庁に指示。

  4. 規則案を公表

    財務省がCOINS法実装の規則案(NPRM)を公表。AI投資禁止の拡大と対象技術の追加を提案。

  5. コメント期限

    regulations.govでの意見募集の締切。最終規則と施行日は未定。

出典は米財務省のプレスリリースとファクトシート(2026年10月22日付、2026年10月24日確認)。

違反には国際緊急経済権限法(IEEPA)の上限の民事罰が課され、財務長官は禁止技術に係る取引の売却命令を出せます。規則案は取引を事前に審査する仕組みを作らず、取引ごとに米国人自身が禁止、届出、対象外を判断する設計です。技術ライセンスや購入契約の多くは、技術移転を伴う場合を除いて対象外とされています。最終規則の施行まで、現行のPart 850は2025年1月2日以降の活動に適用され続けます。

投資規制の拡大が対象にするのは、輸出規制とは別の経路、資本の流れです。米国の投資家は、対象企業の国籍や支配関係、AI開発の内容、取引の形態、米国人の関与の有無を事前に確認する作業を迫られる可能性があります。日本企業への適用は、米国人に該当する役員・株主の関与や取引構造に依存し、個別の確認が必要です。制度が確定すれば、対象国のAI・半導体スタートアップが米国以外の資本に頼る構図が強まる可能性はありますが、その規模は現時点で測れていません。焦点は、コメント期間でのAIの定義と例外の修正、そして最終規則の施行日です。

出典

  1. Treasury Issues Proposed Rule to Implement Comprehensive Outbound Investment National Security Act(米財務省プレスリリース)2026-10-22付。NPRM公表、COINS法(FY2026 NDAA一部)の位置付け、5分野とバイオ追加、Bessent長官・Pilkerton次官補の声明、コメント手続き、最終規則が後日施行日を定めることを確認。
  2. FACT SHEET: Treasury Department Issues Notice of Proposed Rulemaking on Implementation of the COINS Act(米財務省ファクトシート・FAQ)SI/AIの用語置換(行政命令14434、91 FR 63129)と投資禁止拡大、半導体・HPC・極超音速・バイオの禁止・届出の内訳、対象国とベネズエラFAQ、例外(5万ドルは届出義務のみ)、IEEPA罰則、12月7日コメント期限を確認。
  3. Outbound Investment Security Program(米財務省)現行OISPの案内ページ。2026-10-22のNPRMと関連資料への導線、2025-01-02施行の現行規則(31 CFR Part 850)を確認。

出典の確認日 2026.10.24

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