01 / CASE
成長する会社は、
なぜ事業を売るのか。
企業成長というと新規事業や買収が注目されますが、同じくらい重要なのが「何をやめるか」です。
2026.09.09
<1%
日本へ集約
事業を持ち続けるには資本だけでなく、人材、会議、管理、システム、営業の注意力が必要です。規模が小さくても経営資源を消費します。
そのためポートフォリオ経営では、黒字か赤字かではなく「同じ資源を他で使った方が価値を生むか」を比較します。
- FACT
- 富士フイルムは9月9日、中国の刷版製造子会社の全株式と、日本・米国・カナダ・メキシコ以外の販売機能等の譲渡を発表。中国子会社は2026年末、販売機能は2027年前半までの譲渡を予定し、日本での生産と対象外地域での販売を継続します。
- ANALYSIS
- 譲渡対象の売上は連結売上高の1%未満。金額規模だけでなく、成熟事業の地域・機能を絞り、経営資源を再配分するポートフォリオ経営の一例です。
- HYPOTHESIS
- 大企業の事業売却は「赤字撤退」だけではなく、将来の成長率・資本効率・経営の複雑性まで比較して、残す領域を選ぶ行為と考える方が実態に近いでしょう。
2026年9月15日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
02 / TIMELINE
意思決定の流れを追う。
BEFORE
印刷市場の変化に合わせて体制見直しを継続。
2026.09.09
日本・米国・カナダ・メキシコ以外の販売機能も対象。契約は8月28日締結。
AFTER
継続市場を選び、体制を簡素化。
03 / PORTFOLIO
事業売却は、
企業価値の「引き算」ではない。
売上が減っても、資本効率や成長投資余力が上がれば企業価値は高まる可能性があります。
≠ Strategic importance
成熟市場で競争優位が薄い事業を縮小し、強い市場へ集中する。製造拠点を集約して固定費と複雑性を下げる。これらは利益率と経営速度を上げる手段です。
特に多角化企業では、事業の数より「経営が深く関与すべき事業の数」がボトルネックになります。
04 / CARVE-OUT
「全部売る」ではなく、
地域と機能を切り分けて売る。
今回の特徴は、刷版事業全体から完全撤退するのではなく、日本・北米などを残す点です。
- 製造
- 譲渡・供与の対象中国の刷版製造子会社の全株式をJRTへ
- 富士フイルム側に残る機能刷版材料の生産を日本国内へ集約
- 販売
- 譲渡・供与の対象日本・米国・カナダ・メキシコ以外の販売機能
- 富士フイルム側に残る機能日本・米国・カナダ・メキシコの販売
- 知財
- 譲渡・供与の対象ブランド・特許等の使用許諾
- 富士フイルム側に残る機能事業全体の全面撤退を意味しない
事業売却は会社単位でなくても構いません。地域、製品、顧客、製造機能などを切り分ければ、自社の強い部分を残しながら複雑性だけ減らせます。
カーブアウトでは契約、知財、ブランド、システム、従業員、顧客関係を分離する設計力が重要になります。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
「売る事業」を探すより、「残す理由」を問い直す。
ポートフォリオ見直しでは、全事業に「なぜ自社が持つべきか」を問う方が、資源配分の議論を始めやすくなります。
05 / LESSON
経営資源の再配分は、
新規投資だけでは完成しない。
成長領域へ投資するには、既存領域から資源を動かす必要があります。
撤退基準が曖昧な企業では、すべての事業が少しずつ資源を取り続け、新規事業も既存事業も中途半端になります。
売却・縮小・提携を通常の経営手段として持つことで、資源配分の選択肢は増えます。


