部分TOBとは、買付予定数に上限を設け、買付後の議決権が3分の2未満となる範囲で行う公開買付けです。
上場廃止を伴わない資本参加が目的で、完全子会社化を狙う「全部買付型」のTOBとは設計思想が異なります。 応募が上限を超えた場合のあん分比例(プロラタ)方式や、上場維持基準との関係など、部分TOB固有の仕組みを整理します。
結論:部分TOBは「上限を付けて買付後3分の2未満」にとどめる手法
経営支配を一歩手前で止め、「関連会社化」「影響力の確保」「友好関係の構築」などを狙うときに使われます。 株主にとっては「売却機会」であると同時に「全員が売れるとは限らない取引」であり、応募超過時の扱いを読むことが通常のTOB以上に重要です。
買付可能範囲:買付後の所有割合が3分の2未満なら部分買付けが可能
金融商品取引法上、公開買付けで部分買付け(上限付きの買付け)ができるのは、買付後に予定される株券等所有割合が3分の2未満となる場合です(金商法27条の13第4項・施行令第14条の2の2)。 買付後の所有割合が3分の2以上となる買付けは全部買付義務の対象で、応募のあった株式をすべて買う必要があります(2024年改正金商法により、2026年5月1日からは市場の立会内取引もこの規制の対象に加わっています)。 したがって、上場維持を狙う部分TOBの上限設計は「3分の1以下」に限らず、カカクコムを巡る競争TOBの買付予定数49.9%のように、3分の1超・3分の2未満の設計も存在します。
応募が上限を超えたら:あん分比例(プロラタ)方式
応募株式等の総数が買付予定数の上限を超えた場合、超過数量については全部または一部の買付けが行われず、あん分比例方式に従って各応募者の買付数量が決まります。 たとえば上限1,000株に対して2,000株の応募があれば、理論上は全員の応募の2分の1が買われる計算です(端数調整は1単元単位等で行われます)。 「先着順」ではなく応募数量に応じた按分である点が、部分TOBの重要な特徴です。自らの応募のうち買われる割合は確定後に公告される結果で分かります。
上場維持と部分TOBの関係
買付後の所有割合が3分の2未満に留まる部分TOBでは、上場廃止基準(上場株式数・流通株式数等)に触れなければ上場が維持されます。 会社にとっては「支配権は取らないが議決権ベースで影響力を確保する」手段であり、日本取引所グループの上場規程が定める流通株式数等の基準を踏まえて買付上限が設計されます。 全部買付型TOBとの対比は次のとおりです。
全部買付型と部分TOBの比較表
| 観点 | 全部買付型TOB | 部分TOB(上限付き) |
|---|---|---|
| 買付後の所有割合 | 3分の2以上(全部買付義務) | 3分の2未満(3分の1以下や49.9%などの設計がある) |
| 上限の設定 | 不可(応募をすべて買う) | 可能(買付予定数が上限) |
| 不成立条項(下限) | 設定できる(自由設定) | 設定できる(自由設定) |
| 応募超過時 | 全量買付け | あん分比例方式で按分 |
| 上場 | 原則、上場廃止前提 | 基準を守れば上場維持 |
実例で見る部分TOB
- SBIによるBASEの部分TOB:買付価格340円、買付上限23,792,300株を設定し、上場維持と持分法適用関連会社化を狙う設計。上限付きTOBで「支配権は取らず資本関係を変える」典型例です(2026年10月7日Packet記載の公告時点情報)。
- カカクコムを巡る競争TOB:Kamgras 1の買付予定数49.9%(3分の1超・3分の2未満)という部分TOB設計そのものが注目された競争TOB。上限設計が取引の性格(上場維持か非公開化か)を規定する事例として参照できます(2026年10月1日時点整理)。
- フェローテック→日本抵抗器製作所:対照的な全部買付型。買付予定数1,237,203株(下限618,700株、上限なし)で完全子会社化・上場廃止を予定しており、上限付き部分TOBとの違いが分かりやすい比較軸になります。
まとめ:株主が注意すべき点
- 部分TOBは全員の株式が買われるとは限らない。あん分比例で按分され、一部だけ売却される可能性がある。
- 買付予定数(上限)と自己の保有株数を比べ、按分後の売却数量を試算しておく。
- 上場が維持される場合、残った株式は引き続き市場で売れる。一方、買付後の株価は大株主の出現で変動し得る。
- 応募撤回は買付期間中いつでも可能。ただし按分の結果は撤回期限後でないと確定しない。

