RAXUS › GROWTH PARTNERSHIP › BUSINESS REVIEW › #137

SCREEN × ATOMIS

装置メーカーが、
材料の開発レイヤーへ

SCREENがAtomisに資本参加した。支配権を得る取引ではなく、MOF材料の設計・製造技術と、自社の表面制御技術を接続する戦略出資である。成果や製品化はまだ開示されていない。

公開日 · MATERIALS / SEMICONDUCTOR | 2026.10.08 発表 | 投資金額・出資比率非開示

装置の先に、材料の開発レイヤー。を表現した編集イメージ(AI生成)
MATERIALS / SEMICONDUCTOR / AI EDITORIAL IMAGEISSUE 137

01 / OVERVIEW

何が発表されたか。

SCREENはAtomisの第三者割当増資を引き受け、材料科学のスタートアップに資本参加した。

ANNOUNCEDSCREENが公式発表

2026.10.08

SCHEMEAtomisへの戦略出資

第三者割当増資

DISCLOSURE投資金額・出資比率・企業価値

非開示

SCREENホールディングスは2026年10月8日、Atomisが実施する第三者割当増資を引き受け、株式を取得したと公式発表した。取引の形は、非上場スタートアップへの戦略出資である。支配権取得や子会社化を示す発表ではない。 (S1) (S2)

SCREENが示した協業の方向は、Atomisが持つMOFの気体吸着・分離回収技術と、SCREENの表面制御技術を組み合わせることだ。ここで重要なのは、装置の完成品だけでなく、その性能やプロセスを左右する材料の層に資本関係で接続する点にある。後半の「開発レイヤー」という表現は、この構造に対する本稿の分析である。 (S1)

投資金額、企業価値、出資後議決権割合は非開示で、具体的な払込日も一次資料から確認できない。本稿は市場情報などから金額や比率を推計せず、確認できる取引構造と、まだ実証されていない可能性を分けて整理する。

FACT
2026年10月8日、SCREENホールディングスは、Atomisが実施する第三者割当増資を引き受け、株式を取得したと発表した。Atomisは京都大学発のスタートアップで、金属有機構造体(MOF)の設計・製造を手がける。SCREENは、AtomisのMOFによる気体の吸着・分離回収技術と、自社の表面制御技術を組み合わせる方向を示している。投資金額、企業価値、出資後議決権割合、具体的な払込日は本稿の一次資料では確認できない。 (S1) (S2)
ANALYSIS
本件はSCREENによるAtomisの支配権取得や子会社化ではなく、第三者割当増資への引受けによる戦略出資である。本稿では、装置メーカーが材料科学スタートアップとの資本関係を通じて、製品の外側にある材料の設計・製造へ開発接点を広げる動きと読む。「開発レイヤーを広げる」は本稿の整理であり、両社が公式に用いた評価ではない。
HYPOTHESIS
MOFの設計・製造とSCREENの表面制御を組み合わせられれば、半導体などのプロセスに新しい材料機能を組み込める可能性はある。ただし、環境負荷低減、具体的な製品、販売先、売上効果を裏づける用途別の実証やKPIは、今回の発表では示されていない。

2026年10月13日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓

02 / TIMELINE

意思決定の流れを追う。

2015

Atomisが設立

京都大学発のスタートアップとして、MOFのカスタム設計、独自合成法による製造・販売を展開している。 (S1)

2026.10.08

SCREENが戦略出資を発表

Atomisの第三者割当増資を引き受けて株式を取得したと発表。MOFの気体吸着・分離回収技術と、SCREENの表面制御技術を組み合わせる方向を示した。 (S1) (S2)

03 / SCREEN

装置メーカーが、
材料の層へ向かう。

SCREENは半導体・ディスプレー・印刷関連の製造装置や、表面処理・プロセス装置の技術を持つ。

SCREENホールディングスは、半導体製造装置、ディスプレー製造装置、印刷関連装置、表面処理・プロセス装置などを事業領域とする。今回の発表で焦点になったのは、その装置に使われる特定製品の発売ではなく、Atomisの材料技術との接続である。 (S1)

装置メーカーの競争力は、装置の機構だけで決まるとは限らない。表面状態の制御、気体の扱い、分離や回収の精度など、工程の中間にある技術が性能を左右する場合がある。本件は、SCREENが材料科学の外部知を資本参加によって開発接点に取り込もうとする例と読める。

ただし、SCREENのどの製品・工程にAtomisの技術を組み込むのか、共同開発の体制や開発目標が何かは、今回の発表からは特定できない。「装置性能が改善する」「新製品が出る」といった成果は、現時点では事実として書けない。

04 / ATOMIS

Atomisは、
MOFを設計し製造する。

Atomisは京都大学の研究成果を基盤に、MOFの設計・製造を事業化するスタートアップである。

Atomisは2015年設立。京都大学の北川進教授の研究成果を基盤に、金属有機構造体(MOF)のカスタム設計、独自の合成法による低コスト製造・販売を手がける。所在地は兵庫県神戸市で、代表取締役CEOは浅利大介氏と公表されている。 (S1)

MOFは多孔性の金属有機構造体で、Atomisはその設計・合成を強みとしている。SCREENの公式発表で示された接点は、MOFが持つ気体の吸着・分離回収の技術と、SCREENの表面制御技術である。 (S1) (S2)

Atomisは非上場で、売上高・利益や市場シェアは今回の一次資料から確認できない。したがって、本稿では「次世代材料領域の技術を持つ」という位置づけにとどめ、事業規模や市場浸透を推測しない。

05 / MOF

接点は、
気体を扱う材料技術。

両社の接点として公式に示されたのは、MOFの吸着・分離回収と表面制御の組み合わせである。

SCREENの日本語リリースは、Atomisが保有する特殊なMOFの吸着・分離回収技術と、SCREENの表面制御技術を組み合わせることで、両社の事業発展を目指すとしている。英語版も同じ方向を示す。 (S1) (S2)

この開示から確認できるのは、技術の組み合わせを目指す方針までである。用途、対象となる気体、既存装置との接続方法、性能目標、開発期間、商品化の条件は示されていない。

材料の設計・製造能力と装置側の表面制御を同時に扱えるなら、装置の後工程だけでなく、工程条件や材料選択の段階から開発を考えられる。これが本件を単なる資金提供ではなく、開発レイヤーへの資本参加として読む理由である。

06 / DEVELOPMENT

資本参加は、
開発の入口にすぎない。

ここから先は、公式に開示された技術接点を土台にした分析と仮説である。

SCREENにとっての本件の意味は、装置を納入する段階だけでなく、材料の設計・合成という上流側に開発接点を持つことにある。Atomisにとっては、材料技術を装置・プロセス側の課題と接続する相手が資本関係を持つ。双方の技術を組み合わせるための入口として、戦略出資が使われていると読める。

MOFの気体吸着・分離回収と表面制御の組み合わせが特定用途で機能すれば、半導体などのプロセスに新しい材料機能を組み込める可能性がある。さらに、用途別の実証が進めば、装置メーカーが扱う開発テーマの幅が広がる可能性もある。

ただし、これは仮説である。今回の発表には、共同開発の進捗、実験結果、用途別のKPI、試作品、販売先、売上・利益への影響は記載されていない。資本参加が成果に変わるかどうかは、今後の実証と開示で判断する必要がある。

07 / UNDISCLOSED

まだ、
分からないこと。

戦略出資の評価に必要な金額・比率・実行条件は、非開示または一次資料から確認できない。

投資金額、企業価値、出資後議決権割合は非開示である。第三者割当増資を引き受けたという取引構造は確認できるが、何株をいくらで取得したのか、株主としてどの権利を持つのかは本稿の一次資料からは分からない。金額・比率は推計しない。 (S1) (S2)

SCREENの発表は「取得しました」と完了形で書かれている一方、具体的な払込日は示していない。本稿では、発表日を払込日や受渡日と同一視しない。今後は、会社側の追加開示や法定開示で実行条件を確認する必要がある。(S1)

また、MOFによる環境負荷低減、新機能の実装、販売先の拡大、SCREENの売上への寄与も、今回のリリースからは結論づけられない。これらは用途別の実証、製品化、顧客採用、業績への反映が確認されて初めて評価できる論点である。

08 / LESSON

材料を押さえることは、
開発の選択肢を増やす。

資本関係の価値は、出資した瞬間ではなく、材料技術が装置・工程の成果へ変わったときに測られる。

本件から読み取れるのは、装置メーカーが外部の材料科学スタートアップと資本でつながり、技術の入口を広げようとする構造である。支配権を得るのではなく、非支配の戦略出資を通じて、協業の余地と開発接点を確保する設計と考えられる。

AtomisのMOF技術がSCREENの表面制御・プロセス技術と実際に接続し、再現可能な用途や製品として実証されれば、資本参加は開発テーマの拡張にとどまらず、事業の選択肢を増やす可能性がある。

その評価を急ぐ材料は、まだ揃っていない。共同開発の進捗、実証データ、製品への採用、顧客への提供、そして業績への反映が開示されるまで、本件は「材料の開発レイヤーへ接続した戦略出資」として捉えるのが適切である。

SOURCES

一次情報・参考情報

本記事はラグザス株式会社(RAXUS INC.)が一次開示資料に基づき編集・発行しています。

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