01 / OVERVIEW
何が決まったか。
2026年10月21日、エス・エム・エスはストレスチェック代行サービス事業の切り出しと譲渡を決めた。買い手はウェルネス・コミュニケーションズ(WCC)である。
2026.10.21
179百万円
100%
非開示
DEAL PROGRESS
ポートフォリオ見直しからクロージングまで
- 01事業ポートフォリオ見直しの方針を開示
2026年4月28日、「企業価値最大化に向けたロードマップ」を開示。注力領域への経営資源の集中と事業ポートフォリオの見直しを進める方針を示した。
完了 (S1) - 02新設分割と株式譲渡を取締役会で決議
2026年10月21日、WCCとの株式譲渡契約を同日付で締結。効力発生・譲渡実行とも12月1日予定。
完了 (S1) - 03新会社「株式会社ストレスチェック」設立登記(分割効力発生)
2026年12月1日予定。資本金1百万円、発行済株式100株。執筆時点では未設立。
予定・未完了 (S1) - 04新会社株式100株のWCCへの譲渡実行
2026年12月1日予定のクロージング。実行後、新会社はSMS連結の範囲から除外される。
予定・未完了 (S1)
2026年10月21日の決議と、2026年12月1日予定の効力発生・譲渡実行を混同しない。執筆時点(2026年10月22日)では新会社の設立も譲渡も完了していない。 (S1)
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2026.04.28
注力領域への経営資源の集中と、事業ポートフォリオの見直しを進める方針を示した。 (S1)
2026.10.21
WCCとの株式譲渡契約を同日付で締結。効力発生・譲渡実行とも12月1日予定。 (S1)
2026.10.21
本件と同じ日に発表された別取引。承継の受け皿も条件も異なり、本稿では扱わない。 (S2)
2026-12-01(予定)
分割効力発生日。資本金1百万円、発行済株式100株。執筆時点では未設立。 (S1)
2026-12-01(予定)
クロージング。実行後、新会社はSMS連結の範囲から除外される。 (S1)
SMSは、ストレスチェック代行サービス事業を簡易新設分割で新設する新会社へ承継させ、その新会社の発行済株式100株の全部をWCCへ譲渡する。2026年10月21日の取締役会決議を経て、同日付でWCCとの株式譲渡契約を締結した。 (S1)
対象事業は、労働安全衛生法に基づくストレスチェックの実施代行を中心に、オンライン受検システムの提供、結果集計・分析、面接指導の調整までを担う。2026年3月期の外部顧客向売上高は179百万円で、SMS連結売上64,735百万円の0.3%にあたる。 (S1)
効力発生と譲渡実行はともに2026年12月1日の予定で、執筆時点ではいずれも未了である。譲渡価額は守秘義務により非開示。2027年3月期の連結業績への影響は軽微で、業績予想に変更はないとSMSは説明する。 (S1)
同日、SMSはデータヘルス事業のメドケア宛の会社分割を別途決議している。そちらは簡易吸収分割で、受け皿も条件も異なる別取引だ。本稿では、ストレスチェック事業の案件だけを扱う。 (S1) (S2)
- FACT
- 2026年10月21日、エス・エム・エスは取締役会で、ストレスチェック代行サービス事業を簡易新設分割により新設する完全子会社へ承継させ、その新会社の発行済株式100株の全部をウェルネス・コミュニケーションズ(WCC)へ譲渡することを決議した。同日付でWCCとの株式譲渡契約を締結している。分割の効力発生日と譲渡実行日はともに2026年12月1日の予定で、執筆時点(2026-10-22)では新会社の設立登記も譲渡の実行も完了していない。 (S1)
- ANALYSIS
- 二段階に分けた設計と、開示されない価格の両方が、この案件を読むときの条件になる。会社分割で一度株式を受け取り、その株を渡す流れは、事業を一括で売る形と承継の単位が違うと整理できる。 (S1)
- HYPOTHESIS
- 仮説として、契約上の地位と従業員の雇用を新会社ごと承継する設計は、サービスの継続性を買い手に保証しやすい条件設定と読める。ただし意図を裏づける開示はなく、クロージング後の統合の進み方で検証するしかない。 (S1)
2026年10月22日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
02 / BACKGROUND
なぜ、手放すのか。
背景にあるのは、SMSが2026年4月から進める事業ポートフォリオの見直しである。
SMSは2026年4月28日に「企業価値最大化に向けたロードマップ」を開示し、注力領域への経営資源の集中を進めるべく、事業ポートフォリオの見直しを行ってきたと説明する。今回の分割と譲渡は、その延長線上にある。 (S1)
対象事業は、医療機関・介護事業所に対するストレスチェックの実施代行を中心として、一定の顧客基盤を有する。そのうえでSMSは、注力領域との関連性と成長投資の優先順位を踏まえると、ウェルビーイング支援プラットフォーム「Growbase」を中核とするWCCの下で運営するのが最適であると判断したと述べる。 (S1)
SMSの2026年3月期連結は、売上高64,735百万円に対して当期純利益が△14,317百万円だった。連結比0.3%の事業を切り離す判断の裏には、限られた投資余力を注力領域へ寄せる事情があると読める。開示されたのは判断の結論であって、その理由を支える数値ではない。 (S1)
03 / SCHEME
二段階に分ける意味。
この取引は、新会社の設立と株式の譲渡という二段階で構成される。切り口の中心はここにある。
第1段階は簡易新設分割である。SMSを分割会社として新設する新会社は、名称を株式会社ストレスチェックとし、資本金1百万円、発行済株式100株で設立される。承継の対象は、対象事業に属する資産と負債、契約上の地位、そして従業員との雇用契約である。新会社は発行する普通株式100株の全部をSMSへ割り当て、これを分割の対価とする。会社法805条の簡易新設分割に該当するため、株主総会の承認は不要である。 (S1)
第2段階は株式譲渡である。SMSが保有する新会社株式100株(議決権100%)の全部をWCCへ譲渡し、譲渡実行後には新会社がSMS連結の範囲から除外される。 (S1)
事業譲渡との違いは、承継の単位にある。会社分割は、事業に属する資産・負債・契約の地位・雇用契約を包括して新会社へ移す制度である。本件の開示も承継対象をこの範囲で列挙しており、契約や従業員の移転を一つずつ手当てする形とは、ここが違うと整理できる。 (S1)
- 分割対価は新会社普通株式100株(SMSが保有) (S1)
- 譲渡価額は守秘義務により非開示 (S1)
04 / UNDISCLOSED
開示された範囲と、残った論点。
決まっていることと、まだ決まっていないことを分けて置く。
開示されているのは、日程と枠組みである。効力発生日・新会社設立登記日は2026年12月1日予定、株式譲渡実行日(クロージング)は同日予定、株主総会承認は不要、2027年3月期連結業績への影響は軽微で予想変更なし。承継財産の帳簿価額は2026年3月末基準で資産30百万円、負債3百万円とされ、効力発生日までの増減を加除して確定する。 (S1)
非開示のまま残るのは、対価の周辺である。譲渡価額は当事者間の守秘義務により非開示とされ、対象事業の単体利益も開示されていない。アドバイザーの記載も、一次開示の範囲では確認できない。本稿では市場価値や類似案件からの推計を行わず、開示のない項目は未開示のまま扱う。 (S1)
新会社の役員体制も、譲渡実行後の分として今後決定する予定である。次の確認点は、12月1日予定の効力発生と譲渡実行が予定どおり実施されるか、そして譲渡実行後にWCCが新会社をどう運営するかである。 (S1)
2026年10月22日時点
- スキーム
- 開示済み
- 簡易新設分割+新会社株式譲渡(二段階) (S1)
- 分割効力発生日(新会社設立登記)
- 開示済み
- 2026-12-01予定 (S1)
- 株式譲渡実行日(クロージング)
- 開示済み
- 2026-12-01予定 (S1)
- 株主総会承認
- 開示済み
- 不要(会社法805条の簡易新設分割) (S1)
- 譲渡価額
- 未開示
- 当事者間の守秘義務により非開示 (S1)
- 対象事業の単体利益
- 未開示
- 開示は売上高のみ (S1)
- アドバイザー
- 未開示
- 一次開示の範囲で確認できず
- 譲渡後の新会社役員体制
- 次の確認点
- 譲渡実行後に今後決定予定 (S1)
- 2027年3月期連結業績への影響
- 開示済み
- 軽微・予想変更なし (S1)
05 / COMPANIES
売り手と買い手の規模。
売り手は2026年3月期連結売上64,735百万円のエス・エム・エス。買い手は同じく14,778百万円のウェルネス・コミュニケーションズ(WCC)である。
SMSは「高齢社会に適した情報インフラの構築」を目的とする事業を掲げ、2026年3月期連結で売上高64,735百万円、純資産26,724百万円。当期純利益は△14,317百万円だった。資本金は2,551百万円である。 (S1)
WCCは東証グロースに上場する(証券コード366A)。事業はクラウドとソリューションの2本柱で、企業と人のウェルビーイングを継続的に支援するプラットフォーム「Growbase」を中核に各種ソリューションを提供すると、SMSの発表文は説明する。2026年3月期連結は売上高14,778百万円、営業利益1,186百万円、純資産5,832百万円。大株主はSOMPOホールディングス32.08%、LHP Holdings 28.65%である(いずれも2026年3月31日現在)。 (S1)
対象事業の売上179百万円は、SMS連結の0.3%であり、WCCの連結売上に対しても約1.2%にあたる。この規模の小ささから、事業の持ち味が規模にはなく、ストレスチェック運営と顧客契約の基盤にあると読める。統合の効果は開示されていない。 (S1)
証券コード2175
高齢社会に適した情報インフラの構築を目的とする事業
- 売上高64,735百万円(2026年3月期連結) (S1)
- 当期純利益△14,317百万円(2026年3月期連結) (S1)
- 純資産26,724百万円(2026年3月期連結) (S1)
- 資本金2,551百万円 (S1)
- 今回の分割で対象事業を新会社へ承継させ、新会社株式の全部を譲渡する(2026-12-01予定)
東証グロース・366A
クラウド事業・ソリューション事業(Growbase)
- 売上高14,778百万円(2026年3月期連結) (S1)
- 営業利益1,186百万円(2026年3月期連結) (S1)
- 純資産5,832百万円(2026年3月期連結) (S1)
- 資本金1,301百万円 (S1)
- 2026年3月31日現在の大株主はSOMPOホールディングス32.08%、LHP Holdings 28.65%
- 譲渡実行後、本新会社はWCC子会社となる予定
06 / LESSON
100株の中身。
100株という最小の単位で、事業ごと渡る。
新会社の代表取締役には、SMSの従業員である園田一誠が設立時に就任する予定で、譲渡実行後の役員体制は今後決定する。クロージングまで約1か月で、設立も譲渡もまだ起きていない。 (S1)
取引の重みは財務規模にはない。見るべきは、Growbaseの中核にストレスチェック代行をどう組み込むかという統合の設計である。
仮説として、企業のストレスチェックという入口を得たWCCが、健康管理領域の提案力をどう変えるか。その答えが最初に表れる場所は、クロージング後の商品構成にある。


