InfosysのJayesh Sanghrajka最高財務責任者は、契約更新時に求められる従来の効率化に加え、AIを使った生産性向上による価格下落圧力があると述べた。大口契約以外にも及ぶという。同社はこれを「AI-led deflation」と呼んでいる。
ただし、同社はAIによる売上減少の額や、価格を見直した契約の割合を公表していない。価格は全体としてなお上昇しているが、顧客の効率化要求と競争の激化により、値上げ幅が期初の想定を下回ったと説明した。
人月課金だけでは説明できない契約
作業時間に応じて請求するT&M契約では、AIで必要な時間が短くなれば、同じ仕事から得る売上が減る可能性がある。一方、Infosysの6月期財務諸表には、T&Mのほかに作業単位、固定価格、期間を定めた契約が記されている。固定価格契約による売上は全体の54%で、前年同期と同じだった。
契約価格の引き下げが、そのまま全社売上の減少になるとも限らない。Infosysは契約の範囲を見直し、周辺分野の追加業務を受注する場合があると説明する。TCSも7月9日の決算説明会で、効率化の利益を顧客に還元する一方、追加の仕事を得る事例があると述べた。
AI売上は伸びるが、公表値の単位は違う
TCSの4〜6月期のAI売上は年換算で26億米ドルとなり、前四半期比13.6%増えた。この数字は年間売上の確定実績ではない。同社はAI案件の多くが1〜2四半期で終わり、その後は新たな案件を獲得する必要があると説明している。
Infosysが公表した8.2%は、4〜6月期の全社売上50億8,200万米ドルに占めるAI売上の割合だ。対象は同社のAI戦略で定めた6領域の業務で、既存業務にAIを取り入れた売上は含めない。TCSの年換算額とInfosysの四半期売上比率は、単位や集計範囲をそろえた数字ではない。
TCS
- 全社売上・成長率
- 76億2,400万米ドル。為替の影響を除く前期比0.4%増。
- AI売上の公表値
- 年換算26億米ドル。年間の確定実績ではない。
- 営業利益率
- 24.0%。特別項目を除く。
Infosys
- 全社売上・成長率
- 50億8,200万米ドル。為替の影響を除く前期比1.0%増。
- AI売上の公表値
- 四半期売上の8.2%。既存業務へのAI導入分は含めない。
- 営業利益率
- 21.1%。前期比0.2ポイント上昇。
対象は2026年4〜6月期。TCSは7月9日、Infosysは7月23日に発表。AI売上は各社の公表値で、同じ尺度による比較ではない。
BPMでは基本料金と成果連動分を組み合わせる
業界団体NASSCOMの2026年版戦略レビューは、AIの効率化に伴い、成果に応じた料金やリスクを共有する契約への移行を報告する。同資料はインドの技術産業全体の2025〜26年度売上が3,150億米ドルを超えると見込む。IT受託サービスだけの規模ではない。
NASSCOM Communityに3月24日付で掲載された記事では、アナリストのPrajwal Pandey氏が、業務プロセスの運用を担うBPM分野の料金を説明している。基本料金に、費用削減や処理時間の短縮などの成果に応じた変動料金を組み合わせる方式だ。成果を測れても提供企業だけでは完全に制御できないため、この組み合わせが純粋な成果連動課金より実用的だとしている。
基本料金
- 料金の決め方
- 安定した運用を支える基礎部分。
- 記事で挙げられた対象
- 業務の継続的な運用。
成果連動分
- 料金の決め方
- 測定できる成果に応じて変わる部分。
- 記事で挙げられた対象
- 費用削減、処理時間の短縮、売上増加、顧客体験の指標。
Prajwal Pandey氏の2026年3月24日付NASSCOM Community記事に基づく。BPM分野の説明で、各社の採用割合は示されていない。掲載元は団体の公式見解を示す記事ではないと明記している。
売上と利益率にはAI以外も影響する
Infosysは4〜6月期の伸びが想定を下回った理由に、需要の弱さ、競争、顧客による案件終了などを挙げた。欧州製造業の案件を採算面から追わなかった判断と、別の顧客による契約終了については、AIとは関係がないと説明している。
利益率の変化もAIだけでは説明できない。Infosysの営業利益率は前期から0.2ポイント上がった。ルピー安が0.7ポイント押し上げる一方、AIの営業・マーケティング投資は0.5ポイント押し下げたという。TCSの営業利益率は前期から1.3ポイント下がり、同社は賃上げを主因に挙げた。
Infosysの従業員数は3月末の32万8,594人から6月末の32万8,062人に減り、四半期売上は増えた。ただし、売上を期末の人数で割るだけではAIの効果を測れない。買収で加わった従業員や稼働率、為替、契約内容の変化も含むためだ。
10月1日のReuters報道は決算前の予想
Reutersは10月1日、証券会社5社の見通しをもとに、7〜9月期もAIによる価格圧力と顧客の支出抑制が続くと報じた。Jefferiesによる大手6社の前期比売上成長率予想は0.7〜3.5%だ。これは決算実績ではない。
同報道は、TCSが10月8日に決算を発表するとしている。2026年10月1日時点で確認した両社の直近の四半期実績は4〜6月期だ。AIによる価格圧力の存在は会社の説明で確認できるが、業界全体の減収額や人月課金の廃止までは確認できない。
出典
- Infosys「Q1 FY2027 Earnings Conference Call」2026-07-23一次資料。価格圧力、全体の価格は上昇、AI売上の定義、非AI要因、利益率の内訳。PDFの14〜15、12〜13、6〜7ページなどを確認。2026-10-01確認。
- Infosys「AI Revenues at 8.2% in Q1; Resilient Operating Margin of 21.1%」2026-07-23一次資料。4〜6月期売上、為替の影響を除く成長率、AI売上比率、営業利益率。2026-10-01確認。
- Infosys「Q1 FY2027 IFRS USD Financial Statements」2026-07-23一次資料。注記2.16の契約方式と固定価格売上54%。PDFの26〜27ページを確認。2026-10-01確認。
- TCS「TCS begins FY27 with continued growth; wins multiple AI transformation deals」2026-07-09一次資料。4〜6月期の全社売上、為替の影響を除く成長率、年換算AI売上26億米ドル、特別項目を除く営業利益率。2026-10-01確認。
- TCS「Q1 FY2027 Earnings Conference Call」2026-07-09一次資料。顧客への効率化利益の還元と追加業務、AI案件の期間、賃上げによる利益率への影響。2026-10-01確認。
- NASSCOM Insights「Technology Sector in India: Strategic Review - 2026」2026-02-24団体の調査紹介。技術産業全体の年度売上は3,150億米ドルを超える見込み。成果に応じた料金とリスク共有への移行。全文レポートは未取得、公開紹介本文を2026-10-01確認。
- Prajwal Pandey(NASSCOM Community掲載)「The Reinvention of BPM: From Process Execution to Intelligence-Led Value」2026-03-24アナリストによるBPM分野の解説。基本料金と成果連動分の組み合わせ、成果指標の例。掲載元の注意書きでは団体の公式見解・推奨を示す記事ではない。2026-10-01本文確認。
- Infosys「Fact Sheet: Q1 FY2027」2026-07-23一次資料。3月末・6月末従業員数、売上、稼働率。従業員あたり売上をAI効果と同一視しないために参照。2026-10-01確認。
- Reuters(The Economic Times掲載)「AI pressure, client caution cloud Indian IT earnings in September quarter」2026-10-01報道。証券会社5社の7〜9月期決算前予想。前期比0.7〜3.5%の幅はJefferiesの予想で、実績ではない。2026-10-01本文確認。
出典の確認日 2026.10.01