CSTは科学技術の横断的な課題について首相と閣内に助言する、政府の最上位の独立諮問機関です。書簡は2026年7月30日付でAI担当大臣のKanishka Narayan氏に宛てられ、共同議長のDame Angela McLean氏とLord Browne of Madingley氏が署名しました。首相や関係大臣、内閣官房長官にも写しが送られています。
「AI主権とは、AIの価値連鎖全体で十分な選択の余地(agency)を持ち、英国が選んだ成果を実現し、英国のための経済的・公共的価値を確保し、圧力下でも耐性を維持できることを指す。」
having sufficient agency across the AI value chain to deliver the UK's chosen outcomes, capture economic and public value for the UK, and maintain resilience under duress
そのうえで書簡は、AI主権は個別の技術やプロジェクトへの投資だけでは達成できない「システム全体の課題」だと整理しました。計画的で急を要する行動がなければ、英国は技術とその使い方を左右する国ではなく、「高価値なAI顧客」になると指摘しています。
1. 主権計画
- 概要
- 計算資源、データ、人材、モデル、ガバナンス、社会実装の全体像を素早く把握し、UK AI Sovereignty Planを策定。国家安全・医療・教育など公共目的の迅速な実証も求める
2. 統括体制
- 概要
- 主権の選択を束ねる単一の責任保有者(例: 内閣府AIタスクフォース責任者)を指定し、省庁間の調整と資金・実行の判断を担わせる
3. 土台への投資
- 概要
- TechFirstを補うAI人材・出向制度、導入と生産性の証拠基盤、低消費電力を含む計算研究。重要データセットを特定し、健康やクリエイティブデータなど2分野以上でアクセス方式を試す
4. モデルアクセスと国内能力
- 概要
- 主要な海外モデルへの信頼できるアクセスを維持しつつ、オープンウェイトモデルや国内の小型モデルを実証で試し、国家のAI計算資源の一部を配分。アラン・チューリング研究所の公益向け基盤モデル提案も検討対象
出典はCST書簡のAnnex A。提言の概要を同書簡の記載どおりに整理したもので、政府が決定した事項を示す図ではありません。
第1の提言では、生態系の地図を既存活動、依存関係、空白の特定に使うよう求めています。どの能力を英国が自ら持つべきか、他国と協力するか、強靭なアクセスを確保するかを判断する実務的な道具です。実証には、解決する問題、保有する主権的なデータ、必要なモデル能力、構築すべきシステム、獲得できる価値、成功の測り方の6つの問いに答えることを課しています。
第3の提言は、AI主権の土台をモデルだけでなく人材、組織、データ、信頼、実装に広げました。専門人材が英国に残り育つためのキャリア経路と実務経験の機会、AI導入と生産性に関する証拠の整備、基礎的な計算研究の支援を挙げています。
第4の提言は、最も強力なグローバルモデルへのアクセスを維持しながら、用途によっては国内で開発した専門的なシステムのほうが適する場合があると説明します。実証を通じて異なる種類のAIシステムの使い方を試し、国家的な技術の目利きを育てる考えです。脚注では、アラン・チューリング研究所が公開基盤モデルを国家的インフラとして整備する提案を紹介しています。
今回の公開は助言の段階であり、予算や調達、制度の決定は含まれていません。今後の確認ポイントは、政府による計画の採用、公共分野の実証の開始、人材とデータ面への予算措置です。書簡は、CSTが追加の独立した支援と助言を提供できるとしています。
出典
- GOV.UK「AI sovereignty: preserving UK agency in an AI-enabled world」2026年10月19日公開。公開日、発行主体(Council for Science and Technology)、書簡の位置づけ、4提言の要約。2026年10月20日に本文確認。
- 同書簡ウェブ版2026年10月19日公開。書簡の日付(2026年7月30日)、宛先、共同議長の署名、CSTの説明、Annex Aの提言詳細とアラン・チューリング研究所提案への言及。2026年10月20日に本文確認。
出典の確認日 2026.10.20