01 / CASE
何を、いくらで取得する予定なのか。
BuySellが取得を予定しているのは、HKSビクトリージャパンの発行済株式400株の全部です。500百万円は株式の対価で、525百万円はそこにアドバイザリー費用等を加えた合計概算です。
500百万円
20店舗
クロージング前
売主はHKS株式の100.0%を持つ西元秀行氏です。取得後の議決権所有割合は100.0%となり、HKSはBuySellの完全子会社になる予定です。株式取得価額は500百万円、アドバイザリー費用等は25百万円で、合計概算は525百万円と開示されています。アドバイザーの名称は公表されていません。
「5.25億円で買収」と要約されることがありますが、株式の対価そのものは5億円で、5.25億円は費用等を含む概算の合計です。この金額を企業価値(EV)と読むことはできません。有利子負債や現預金の扱いなど、EVに換算する材料は開示されていないためです。
譲渡実行は2026年10月30日の予定で、本稿執筆時点はクロージング前です。実行の完了は、別途の開示で確認する必要があります。
- FACT
- 2026年9月17日、BuySell Technologies(東証グロース7685)は取締役会で、HKSビクトリージャパンの全株式400株を、株主の西元秀行氏(100%保有)から取得し完全子会社化することを決議しました。株式取得価額は500百万円、アドバイザリー費用等が25百万円で、合計概算は525百万円です。株式譲渡の実行は2026年10月30日の予定で、現時点ではクロージング前です。HKSは鹿児島を中心に九州・関東で「買取専門 東京市場」を20店舗(2026年9月時点)展開しています。
- ANALYSIS
- BuySellは2026年4月に、長崎県中心で「買取専門店 諭吉」を展開するDelightZを完全子会社化しており、今回のHKSと合わせて、九州で地域に根づいた買取ブランドを続けて取得することになります。全国ブランドで一店ずつ出店する代わりに、すでに地域で認知と立地を持つ会社を買う設計と読めます。ただし会社が明示しているのは「地方エリアのドミナント戦略の推進」までで、地理的ロールアップという呼称や連続取得の計画は本稿の整理です。
- HYPOTHESIS
- 九州で同型の地域ドミナント企業がさらに取得対象になる可能性はあります。ただし次の案件は公表されておらず、HKSの店舗網にBuySellのシステムや販路がどこまで接続されるか、それが収益性をどう変えるかも未開示です。本稿では改善幅などの予測値は置きません。
2026年9月20日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
02 / TIMELINE
意思決定の流れを追う。
2026.02期
売上高2,329百万円、営業利益89百万円、純資産162百万円。取得前に切り離す不動産賃貸事業を含む数値。
2026.04
長崎県中心で「買取専門店 諭吉」を展開。九州の地域ドミナント取得の1件目。
2026.08.25
HKS公式の新店情報。東武ストア内への出店を進め、2026年下半期から全国への出店スピードを加速する方針も示した。
2026.09.17
株式取得価額500百万円、費用等25百万円、合計概算525百万円。TDnetで適時開示。
2026.10.30
予定日であり、現時点ではクロージング前。実行後の議決権所有割合は100.0%。
2026.12.31
2026年12月期はB/Sのみ連結。
2027.12期1Q
2026年12月期へのP/L寄与はなく、会社は業績影響を軽微としている。
03 / DOMINANT
一店ずつ出すのではなく、
地域で勝っている店を買う。
会社が開示しているのは、鹿児島を中心とした九州での買取チャネル強化と、地方エリアのドミナント戦略の推進です。
BuySellの説明によると、HKSは鹿児島県内で大手・全国規模の買取業者に比する規模、高い知名度、顧客資産、優良な立地を持つ会社です。ただし鹿児島県内や全国のシェアといった定量的な市場地位は開示されておらず、「鹿児島で1位」のような表現はできません。
2026年4月のDelightZ(長崎県中心)に続く今回の取得で、BuySellは九州で地域に根づいた買取ブランドを続けて迎えることになります。全国共通の看板で新規出店を重ねる方法と比べると、すでに立地・人材・仕入れの接点を持つ会社を買う方法は、地域への浸透までの時間を短縮できる可能性があります。
会社の公式M&A方針は、リユース領域を最優先に、エリア・商材・チャネル・テクノロジーなど独自の強みを持つ企業を取り込むというものです。今回の案件は、そのうち「エリア」の強みを取り込む事例と位置づけられます。
HKSの側にも拡大の動きがあります。HKSは2026年8月25日の新店情報で、東武ストア内への出店を進め、2026年下半期から全国への出店スピードを加速する方針を示しました。売却先のグループ入りで、この出店方針がどう変わるかは開示されていません。
04 / PERIMETER
買う範囲は、
リユース事業に絞られている。
HKSの不動産賃貸事業は、株式取得の前に売買で切り離される予定です。
開示された財務数値は、2026年2月期で売上高2,329百万円、営業利益89百万円、経常利益92百万円、当期純利益56百万円、純資産162百万円、総資産512百万円です。この期の数字には、取得前に切り離される不動産賃貸事業が含まれます。会社は同事業の業績影響を軽微と説明しています。
切り離しの売却先、売却価額、取得価額への反映は開示されていません。そのため、純資産162百万円と株式取得価額500百万円を並べても、切り離し後の姿に対する比較にはなりません。倍率を使う場合は、どの財務数値を分母にするかの前提を明示する必要があります。
株式譲渡で取得しつつ、対象外の資産を事前に除く形は、取得対象をリユース事業に近づける設計と読めます。ただし、これが取引条件にどう効いたのかは未開示です。
05 / UNDISCLOSED
開示されていないもの。
この案件は、公表された範囲だけで「うまくいく」とも「割高」とも判断できません。
開示されていないのは、支払手段の詳細と取得資金の内訳、アドバイザー名、のれんと取得原価の配分(PPA)、統合後の個別KPI、HKS経営陣の処遇、不動産賃貸事業の売却先・売却価額、クロージング条件の詳細です。
会計面では、みなし取得日を2026年12月31日として、2026年12月期はB/Sのみ連結、P/Lは2027年12月期第1四半期から連結する予定です。BuySellの2026年12月期予想は売上高140,000百万円、営業利益15,600百万円で、会社はHKSの業績影響を軽微としています。
BuySellは統合(PMI)を「共通化・効率化・高度化」の3段階で進めると公式に説明し、基幹システムや販路共有などを挙げています。ただし、HKSにどの施策をいつ適用するかは今回の開示に含まれていません。
06 / LESSON
「概算の合計」と「予定」を、
「価値」と「完了」に変えない。
この案件を読むときは、金額の中身と、時点の違いを分けて押さえます。
株式対価500百万円と、費用等を含む合計概算525百万円は別の数字です。どちらも企業価値ではありません。同じ型の開示は、ほかの株式取得でも「対価+費用等=概算」の形で出てくるため、何が含まれる数字かを先に確認します。
また、譲渡実行日は予定、店舗数は2026年9月時点の値です。次の確認点は、10月30日前後の取得完了の開示、決算資料でののれん・PPAの扱い、HKS店舗のブランドやシステムの統合の進み方です。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
5億円と5.25億円、
予定と完了を分けて読む。
本件の評価は、取得完了、のれんの開示、統合の進捗といった今後の開示で更新されるべきものです。


