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BUSINESS REVIEW #061 · GMO × BTGT

タイの暗号資産事業を、
清算ではなく売却する。
GMOの撤退判断を読む

売るのはタイ全体ではなく、デジタルアセット事業を運営する会社の株式だ。譲渡価額と買い手の取得後計画は未開示。契約締結とクロージングを分け、売却という出口が残す選択肢を読む。

公開日 · 2026年9月24日発表 | 譲渡実行2026年10月31日予定・価額非開示 | 未クロージング

清算ではなく、次の所有者へ。を表現した編集イメージ(AI生成)
M&A / EXIT / AI EDITORIAL IMAGEISSUE 061

01 / OVERVIEW

清算ではなく、
売却を選ぶ。

GMOが手放すのはタイ全体ではない。Z.com EXを運営する会社の株式である。

ANNOUNCED株式譲渡契約を締結

2026.09.24

STAKE売主2社が保有する全株式を譲渡予定

7,349,446株

CLOSING譲渡実行予定・記事時点で未完了

2026.10.31

GMOインターネットの開示によれば、同社とGMO-Z.com Holdings (Thailand) Co., Ltd.は、GMO-Z.com Cryptonomics (Thailand) Co., Ltd.の合計7,349,446株を、BTGT Management (Thailand) Ltd.またはクロージング時に指定される法人へ譲渡する契約を2026年9月24日に締結した。譲渡価額は買い手の要請により非開示である。 (S1)

譲渡実行の予定日は2026年10月31日。したがって、本稿が扱うのは完了済みの売却ではなく、契約締結後・実行前の案件である。実行後は売主2社の保有が0株になる予定だが、記事時点ではまだその状態ではない。

対象会社はタイで暗号資産取引所「Z.com EX」を運営している。対象はGMOのタイにおけるデジタルアセット事業であり、本件だけから「GMOがタイ事業から完全撤退する」とは書けない。 (S3)

2026年3月18日にGMOが示したのは、タイのデジタルアセット事業からの撤退方針だった。選択肢は売却または清算。今回の契約は、その二択のうち売却側が具体化したものと位置づけられる。 (S2)

FACT
GMOインターネットとGMO-Z.com Holdings (Thailand)は、2026年9月24日、GMO-Z.com Cryptonomics (Thailand)の合計7,349,446株をBTGT Management (Thailand) Ltd.またはクロージング時に指定される法人へ譲渡する株式譲渡契約を締結した。譲渡実行は2026年10月31日予定で、譲渡価額は非開示。記事時点では未クロージングである。 (S1)
ANALYSIS
2026年3月18日に示された「売却または清算」という撤退方針が、会社を消滅させる清算ではなく、第三者への株式譲渡として具体化した案件と読める。売却は事業の継続可能性を残すが、買い手が何を引き継ぎ、どう運営するかまでを意味しない。
HYPOTHESIS
買い手にとって、既存の運営基盤や規制対応の蓄積がタイのデジタルアセット市場へ入る際の入口になりうる可能性はある。ただし、クロージング後のブランド、顧客、ライセンス、商品戦略は開示されておらず、取得目的を断定することはできない。

2026年9月24日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓

02 / TIMELINE

意思決定の流れを追う。

2021.02.22

Z.com EXのサービスを開始

GMO-Z.com Cryptonomics (Thailand)がタイで暗号資産取引所を運営する事業基盤を形成。 (S3)

2025.03

GMOグループ内で対象会社を移管

海外事業のグループ内再編で、対象会社をGMOインターネット側へ集約。外部企業による買収ではない。 (S4)

2026.03.18

撤退方針を公表

タイのデジタルアセット事業について、売却または清算を選択肢とする方針を決定。赤字だけを理由とする説明ではない。 (S2)

2026.09.22

BTGT Management (Thailand)を設立

買い手は株式譲渡契約締結の2日前に設立された投資持株会社。資本金は2,000,000THB。 (S1)

2026.09.24

株式譲渡契約を締結

売主2社が保有する合計7,349,446株の譲渡を契約。価額は非開示。 (S1)

2026.10.31(予定)

譲渡実行予定

この日が予定されている実行日。2026年9月24日の記事時点では、売主の保有はまだ0株になっていない。 (S1)

03 / TARGET

赤字の会社を、
株式で引き継ぐ。

売却対象は取引所サービスの名称ではなく、その運営会社の株式である。

GMO-Z.com Cryptonomics (Thailand)は2018年設立で、タイの暗号資産取引所「Z.com EX」を運営している。2025年の実績は、売上高11.02百万THB、営業損失74.16百万THB、当期純損失87.55百万THB、純資産11.40百万THB、総資産451.03百万THB。2021年のサービス開始時から、現地規制下で運営してきた事業基盤でもある。 (S1) (S3) (S5)

資本金は、2026年9月24日付のGMO開示では735.4百万THBと示されている。本稿では、別時点のタイSECページに表示される値ではなく、この取引の開示資料に記載された数値を優先する。 (S1)

赤字が続く会社の保有株式をすべて売却することで、GMO側は対象会社の事業運営と将来投資に関する負担を、買い手側へ移す選択肢を取ったと読める。ただし、撤退理由を赤字だけに還元することはできない。公式の説明はポートフォリオの見直しと市場環境を踏まえた方針である。 (S2)

04 / BUYER

買い手は、
取得のために設立された会社。

BTGT Management (Thailand)は、株式譲渡契約締結の2日前に設立された投資持株会社である。

BTGT Management (Thailand) Ltd.は2026年9月22日に設立された。資本金は2,000,000THBで、株主はBTGT Investment Holdings Limitedが51%、BTGT Holdings Limitedが49%。GMOの開示では、タイのデジタルアセット関連事業への参入を目的として設立されたと説明されている。 (S1)

BTGT Management (Thailand)をPEファンドと表現する根拠はない。本稿では、新設の投資持株会社という開示上の位置づけを使い、ファンドの属性や運用方針を推測しない。

買い手が契約締結の直前に設立された法人であることは、案件のための受け皿を用意した構造と整合する。ただし、設立の経緯や最終的な支配関係、クロージング時に指定される法人との関係は、開示資料の範囲を超えて断定できない。

新設法人が既存の運営会社を取得することで、BTGT側はタイ市場への参入に必要な資産や体制を一括して検討できる可能性がある。ただし、取得後にZ.com EXを継続するか、ブランドや顧客基盤をどう扱うかは未公表である。

05 / EXIT BY SALE

「売る」は、
事業を残すことと同じではない。

売却は清算よりも承継の余地を残すが、継続を保証する取引ではない。

清算を選べば、会社を畳み、事業・契約・顧客関係を個別に整理する必要がある。株式譲渡を選べば、法人格を維持したまま所有者を変える道が残る。本件の「Exit by Sale」は、GMOがタイのデジタルアセット事業から退出しつつ、運営基盤を次の所有者へ渡す可能性を残す設計と読める。

ただし、株式を売ることと事業が継続することは同義ではない。ライセンス、顧客、従業員、ブランド、サービス提供の条件がクロージング後にどうなるかは、現時点の開示から分からない。売却を選んだことだけを根拠に、Z.com EXの継続や成長を予測することはできない。

既存会社が持つ運営上の蓄積や規制対応の履歴に、買い手が事業価値を見いだした可能性はある。だが、取引の対価や取得後の計画が非開示である以上、「ライセンスを買った」「顧客基盤を引き継ぐ」といった表現は仮説の域を出ない。

2025年3月の移管はGMOグループ内の海外事業再編であり、今回の第三者売却とは性質が異なる。 (S4)

06 / UNDISCLOSED

価額も、
クロージング後も見えていない。

本件の評価を急がせないのは、売却価額と取得後の事業計画が開示されていないからだ。

譲渡価額は非開示である。純資産11.40百万THB、総資産451.03百万THB、2025年の営業損失74.16百万THB・当期純損失87.55百万THBから、価額を推計することはしない。非開示の価格を「割安」「損切り」と評価する根拠はない。 (S1)

BTGT側の取得後の事業計画、Z.com EXのブランド・サービスの扱い、顧客・従業員・契約・ライセンスの承継条件、取引のアドバイザーや詳細なクロージング条件も、記事時点では確認できない。今後は10月31日の譲渡実行、タイ側の登録情報、サービスの継続状況、買い手側の説明を確認する必要がある。

最大の未確定事項は、売却が成立するかどうかである。契約締結はクロージングではない。2026年9月24日時点では、譲渡実行予定日が2026年10月31日と示された段階にとどまる。

07 / LESSON

撤退の出口を、
「売却」として設計する。

本件の意味は、タイから完全に消えることではなく、デジタルアセット事業の出口を所有者の交代として設計した点にある。

GMOが2026年3月に示した売却または清算の選択肢は、9月24日の契約で売却側へ進んだ。これは、GMOがタイの全事業から撤退するという話ではなく、対象となるデジタルアセット事業について、清算以外の出口を選んだということだ。

事業売却は、売り手にとっては経営資源を手放す手段であり、買い手にとっては既存の会社・運営基盤を引き継ぐ入口になりうる。双方の意図が交差して初めて成立するため、売却方針だけで取引の成否や事業の将来を語ることはできない。

クロージング後もサービスが続くなら、今回の取引は「撤退」と「事業の承継」を同時に実現するケースになる可能性がある。その検証には、10月31日の実行確認と、その後のライセンス・サービス・業績に関する一次情報が必要だ。

本稿の結論は、売却が決まったということではなく、売却契約が締結されたということにある。2026年9月24日時点では、価額も取得後の計画も、そしてクロージングも未確定である。

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