「2027年問題」とは何か
2027年問題とは、中小企業の非上場株式にかかる贈与税・相続税の納税を猶予する法人版事業承継税制(特例措置は平成30年度改正で創設、一般措置は平成31年度改正)が、2027年12月31日をもって新規の適用申請を受け付けなくなることを指します。期限以降に新たにこの制度を使って株式を後継者へ承継することはできません。
さらに深刻なのは「申請ができなくなる」だけではない点です。制度の廃止後には、すでに適用を受けている人を含めて納税猶予の仕組みそのものが終了するスケジュールが法定されており、猶予していた税額に利子税が加わって納付義務が確定します。つまり2027年は「最終乗車の期限」と「既存利用者の納税開始へのカウントダウン」が重なる年なのです。
法人版事業承継税制の現行の仕組み
法人版事業承継税制は、中小企業の後継者が先代経営者から非上場株式を贈与・相続した際に、本来発生する贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。主な骨格は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の種類 | 法人版(一般措置・特例措置)。2027年問題で期限を迎えるのは特例措置を含む現行制度 |
| 猶予の対象 | 後継者が取得した非上場株式に係る贈与税・相続税のうち、特例措置では概ね80%が納税猶予の対象 |
| 適用総枠 | 特例措置は全体で1000億円の総枠(先着順)。枠の枯渇が今後の大きな不確実性 |
| 特例限度額 | 承継する株式の課税時評価額の3倍まで(設備投資等を一定の方法で行った場合は最大10倍) |
| 要件の中核 | 認定経営承継支援機関による事前確認、後継者による株式取得、申告期限後10年間にわたる継続的な指導・助言の受領と報告 |
猶予期間中は、認定経営承継支援機関から毎年指導・助言を受け、その内容を書面で報告する義務を継続して果たす必要があります。また、株式の譲渡や担保提供、後継者の死亡・離脱などの事由が生じれば、猶予税額の全部または一部について納付が必要になる場合があります。
廃止後に何が起こるか:納税猶予の打ち切り
現行法制では、制度廃止後の流れはおおむね次のように設計されています。
- 廃止日から10年間、猶予されていた納税額について納税が猶予され続ける(その間も引き続き認定経営承継支援機関の指導・助言と報告が必要)。
- 10年の猶予期間が満了すると、猶予税額+利子税を一括で納付します。利子税の負担は数年分に及ぶため、総額は猶予時点の税額を大きく上回り得ます。
- 途中で会社を畳む、経営が悪化する、要件を果たせないといった場合には、その時点で猶予税額+利子税の納付義務が確定します。
つまり制度を利用した後継者は、いずれ「承継した株式の評価額に応じた巨額の納税」を前提に資金計画を立てなければなりません。2027年以降は新規の猶予枠がもう得られないため、この納税資金問題は2027年問題の中核です。
撤回(納税資金)制度という出口
廃止後の納税負担を和らげるため、制度の撤回時に納税資金の確保を支援する措置も設けられています。大枠は次のとおりです。
- 廃止日から10年間をめどに、猶予税額に対応する納税資金(上限500億円の総枠)を前倒しで確保できる仕組みが用意されています。
- 納付時期は廃止日から10年後までの間に5年間で分割して行える(期限前納付も可能)。
- この資金を使って納付を行えば、利子税が課されないため、じっくり待つより資金計画的には有利です。
ただし納税資金の確保は会社のキャッシュフローに直接響きます。配当額の決定や事業計画への影響を踏まえ、撤回時期と資金調達のバランスを取る判断が必要です。
2027年までに経営者が取れる選択肢
2027年12月末までに適用申告を間に合わせるか、それとも制度を使わない別の承継戦略を選ぶか。主な選択肢は以下の3つに整理できます。
- 2027年内に法人版事業承継税制の適用申告まで進める。総枠1000億円の残量と手続きの所要期間(認定経営承継支援機関による事前確認・株式取得・申告)を踏まえ、早めに着手することが前提になります。
- 暦年贈与や遺言、株式を得意とするM&A(第三者承継)など、制度に頼らない承継設計に切り替える。後継者の確度や会社の将来性に不安がある場合、無理に制度を使って株を残すよりも、事業の売却や段階的な譲渡の方が適するケースもあります。
- 制度利用の前提となる会社側の準備を進める。株主構成の整理、種類株式の活用、事業承継計画の策定、評価額に影響する設備投資の検討など、2027年までの準備次第で承継のしやすさと税負担が大きく変わります。
どの選択肢を選ぶにしても、「2027年12月末」を逆算したタイムテーブルを持つことが最重要です。認定経営承継支援機関の確保だけで数か月かかることも珍しくありません。
対応チェックリストと専門家への相談
経営者が今すぐ取りかかるべき項目をチェックリストにまとめます。
- 後継者の意志と所要スキルが固まっているか(未定なら承継計画の策定から)
- 株式の評価額と、猶予見込額の概算を把握しているか
- 認定経営承継支援機関(公認会計士・税理士・金融機関・商工会議所など)に相談できているか
- 制度利用/不利用の判断基準(後継者の確度、会社の将来性、納税資金計画)を社内で共有しているか
- 制度を使わない場合の代替案(暦年贈与、遺言、M&A)を少なくとも1つ検討しているか
事業承継税制は要件の解釈や会社の状況によって結論が大きく変わります。最終判断の前には、必ず認定経営承継支援機関や顧問税理士などの専門家に相談してください。

