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上場廃止で株はどうなる?TOB後の株主の3択

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上場廃止で株式と株主に起きること

上場廃止とは、証券取引所での株式売買が終了することです。会社が消滅するわけでも、株式が無効になるわけでもありません。株主総会での議決権、配当の受け取り、残余財産分配請求といった株主としての地位は、非上場会社の株式としてそのまま続きます。

変わるのは「株を売れる場所」です。市場がなくなれば、いつでも誰かに売って現金化する手段が失われます。資産としては残るのに、換金には相手探しと価格交渉が必要になる——これが上場廃止の本質的な影響です。

東京証券取引所は2022年の市場再編で、流通株式比率(取引所外に散在する株式の割合)が水準を下回ることを上場廃止基準に位置づけました。最終基準はプライム市場で35%未満、スタンダード市場で25%未満、グロース市場で15%未満で、段階的な引上げ措置を経て適用されます。買収者がTOBと残余株式の取得手続で流通株式をほぼゼロにすれば、完全子会社化として上場廃止に進みます。

なお、TOBは必ずしも上場廃止を目的としません。過半数まで取得して経営権だけを取るTOB(上場維持)もあれば、100%取得を前提とするTOB(非公開化)もあります。どちらの設計かで、株主の選択肢は大きく変わります。

TOBから上場廃止までの流れ

公開買付け(TOB)は、金融商品取引法に基づく制度化された買収手続です。不特定多数の株主に同一条件で買い付けを提示し、応募の意思表示を集めます。完全子会社化を狙うTOBの場合、典型的な流れは次のとおりです。

  1. 公表——買収者と発行会社がTOBを公表します。買付価格、買付期間、最低買付条件、発行会社の意見表明(応募推奨か反対か)が同時に開示されます。
  2. 公開買付けの実施——開始公告から通常20〜30営業日程度の買付期間で応募を受け付けます。最低買付数に達しない場合は買付期間が延長されます。
  3. 成否の判断と決済——条件達成が確認されると代金決済が行われ、応募した株式の売買代金が支払われます。
  4. 残余株式の取得手続——応募しなかった株主の株式を、売渡請求・全部取得条項付種類株式・現物配当などの法定手続で取得し、100%子会社化します。
  5. 上場廃止——全株取得が確定した後、上場廃止手続が進み、廃止日をもって取引が終了します。

注目すべきは、上場廃止日はTOBの公告時点では確定していないことです。TOBの成立、決済、残余株式の取得が順次進んで初めて非公開化が現実になります。2007年の阪急阪神ホールディングスによる阪急ホールディングス(旧阪急電鉄)の完全子会社化のように、TOB→残余株式手続→上場廃止という流れは日本のM&Aで確立された型です。また近年は、まず9割程度をTOBで取得した上で残余株式を同一価格で取得する2段階の仕組みも使われ、上場を維持したまま少数株主だけを集約する設計が可能になりました。

TOB後の株主の3択

完全子会社化が予定されたTOBの公告が出たとき、株主に残される道は次の3つに整理できます。

選択肢①:TOBに応じて現金化する

買付価格は通常、直前の市場価格にプレミアムを上乗せした水準に設定されます。応募すれば売却益が確定し、以後の企業価値の変動リスクから離れます。応募期間と価格改定の有無を確認した上で、税引後の手取り額で評価するのが基本です。

選択肢②:応募せず、株式を持ち続ける

TOBへの応募は自由意思なので、応募しない選択も可能です。この場合、上場廃止後は非上場会社の株主になります。将来の企業価値の成長を取り続ける反面、流動性の喪失や後述のスクイーズアウト手続への直面という代償を引き受けます。

選択肢③:残余株式の手続に対応して、価格を争う

応募しなかった株主に対しては、後から残余株式の取得手続が来ます。このとき株主には、提示された対価の妥当性を確認し、納得できなければ価格決定の申立てで争うという行動の余地が残されています。「売るか持つか」の2択ではなく、「どの価格で、どの手続を経て売るか」まで含めた判断です。

持ち続けるとどうなるか

選択肢②の実態を正しく理解することが、3択の判断軸になります。上場廃止後も株主としての権利は残りますが、非上場会社では株主構成と手続の自由度が一段と上がります。

  • 流動性の喪失——市場価格が消えるため、理論価格の把握自体が難しくなります。売却は会社・買収者・他の株主との相対交渉に限られ、成立までの時間と不確実性が増します。
  • 会社の手続の変化——非公開化に伴い、定款変更で取締役会の廃止や株式譲渡制限が設けられることがあります。少数株主の提案権・訴訟提起権など、会社法上の少数株主権の行使要件(所有株式数の割合)は非公開会社の枠組みで判定されます。
  • 相続と評価——非上場株式は相続税・贈与税の評価対象になり、一定の大口株主が保有する場合は純資産価額方式などで評価されます。市場で売れない株式を評価額どおりの納税資金で相続するのか、という実務上の難しさが生じます。
  • 将来の可能性——再上場や配当政策の充実が実現すれば保有の対価は大きい一方、再上場は稀で、買い手のいない状態が長期化するリスクもあります。

スクイーズアウトと反対株主の権利

スクイーズアウト(少数株主の排除)は、買収者が残余株式を現金で取得して株主構成を100%に整える手続です。主な手法は次のとおりです。

手法概要
株式等売渡請求100%特別支配株主(全株主・発行済株式100%を保有する株主)が、残余株式の売渡を請求できる(会社法179条)。平成29年改正により現金対価での実行が可能になり、現在の主流。
全部取得条項付種類株式取得条項を付した種類株式を事前に発行しておき、株主総会の特別決議で全株を取得する。対価は金銭等で、適正な交付が必要。
現物配当会社が保有する子会社株式を配当として交付し、株主構成を変える手法。配当としての債権者保護や税務の論点が付随する。
株式併合株式数を併合して端数株を整理する手続。端数処理方法は法令で定められており、併合そのものを少数株主の排除手段として乱用することは困難になっている。

どの手法でも、株主に交付される対価は公正な価格でなければなりません。売渡請求では、価格決定の手続として中立算定機関の意見書や公聴会等の手続が用意される場合があり、対価に納得できない株主は裁判所に対する価格決定の申立て(決定申述)ができます。つまりスクイーズアウト自体は株主の同意を得られない場合でも実行できますが、価格は株主が争える領域として設計されています。

また、2段階の仕組みで残余株式を取得する場合、第1段階のTOB価格と第2段階の価格は同一でなければならないという原則があり、TOB段階の価格設定がそのまま株主の受け取る最終価格になります。このため、TOB価格の妥当性を公告段階で吟味することが、結果的に後の価格交渉の土台になります。

税金の扱い

TOBに応じた場合も、スクイーズアウトで株式を売渡した場合も、取得費を超える対価を受け取れば譲渡所得として課税されます。上場株式と同様に申告分離課税が適用され、税率は所得税15%と復興特別所得税、住民税5%を合わせて約20.315%です。保有期間による優遇区分はありません。

株式を持ち続ける間は譲渡課税は発生しません。ただし非上場株式では、相続時の評価(純資産価額方式等)と換金の難しさがセットで現れます。含み益が大きいほど評価額は上がり、市場がない株式を評価額相当の納税資金で相続するのかという計画が要になります。TOBの応募判断は「売却益の課税額」と「非上場株を抱える将来コスト」の比較で考えるのが実務的です。

株主が確認すべき公告の読み方

TOBの公表・開始公告では、次の項目を確認します。ここに株主の3択を決める材料が揃っています。

  • 買付価格とプレミアム——直近の株価・過去の株価水準に対する率。1株当たり金額と、引き上げ(価格改定)の可能性。
  • 買付期間と最低買付数——成立要件がどの水準に置かれているか。条件未達の場合の延長方針。
  • 上場維持か非公開化か——完全子会社化の予定があるか。ある場合、残余株式の取得手法(売渡請求・全部取得条項付種類株式等)と予定スケジュール。
  • 意見表明——発行会社が応募推奨とするか反対とするか、その理由。特別委員会や中立算定機関の意見書の内容。
  • 競合TOBの有無——他の買収者による価格競争が発生している場合、価格と条件が動く可能性。

判断の軸はシンプルです。税引後の確定金額(選択肢①)と、非上場株として抱える将来のリスク・リターン(選択肢②)を比べ、後者に残るスクイーズアウトの価格(選択肢③)まで読む。上場廃止は株主を強制的に退場させる制度ではなく、価格と手続が法律で用意された「出口」です。公告を構造的に読めることが、株主側の唯一の交渉力になります。

FAQ

よくある質問

TOBに応じなかった株式の価値はどうなりますか?

株式そのものは無効にならず、議決権・配当受取・残余財産分配などの株主としての権利は続きます。ただし取引所での売買ができないため、換金には会社や買収者、他の株主との個別の交渉(相対取引)が必要になり、事実上の流動性は大きく下がります。完全子会社化が予定されている案件では、その後のスクイーズアウト手続で買い取られる段階が来るのが通常です。

スクイーズアウトを拒否して株式を持ち続けることはできますか?

できません。100%特別支配株主による株式等売渡請求(会社法179条)は、少数株主の同意がなくても残余株式を取得できる制度です。ただし対価は公正な価格でなければならず、価格に折り合わない場合は裁判所に対する価格決定の申立て(決定申述)で争う道が残されています。

TOBの価格に不満がある場合はどうすればいいですか?

公開買付けへの応募は自由なので、応募せず保有を続ける選択が可能です。その場合、非上場株式としての流動性低下と、後続の完全子会社化手続の有無を確認した上で判断します。完全子会社化後の売渡請求等でも価格は「公正な価格」が基準なので、不当に低いと考える場合は決定申述で価格を争えます。

上場廃止後に株式を売る方法はありますか?

基本は相対取引です。買収者が残余株式の買取り手続(売渡請求・全部取得条項付種類株式・現物配当など)を用意している場合はそれを利用でき、用意されていない場合は会社や買収者への譲渡交渉になります。市場を通じた売却はできないため、売却先と価格の両面で制約が大きくなります。

税金の扱いはTOBに応じるかどうかで変わりますか?

TOBやスクイーズアウトで現金を受け取ると、取得費との差額(含み益)に譲渡所得として約20.315%の申告分離課税がかかります。保有を続ける間は譲渡課税は発生しませんが、相続時には非上場株式の評価(純資産価額方式等)が課題になり、納税資金の確保と換金の両面で計画が必要です。

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