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BUSINESS REVIEW #037 · SK-03 × CEホールディングス

1,650円、1,600円、1,501円。
三つの価格で分ける、
CEホールディングスの非公開化

2026年9月18日、SK-03(JCGI系のNIC Fund III関連買収SPC)によるCEホールディングス(証券コード4320)へのTOBが成立した。一般株主向け1,650円、創業者向け並行買付け1,600円、後続の自己株式取得ルートでは指定株主向け1,501円——株主属性ごとに出口を分ける複層設計を、開示事実と分析・仮説を分けて読む。TOB成立は非公開化完了ではなく、株式併合・自己株式取得・上場廃止は後続の手続きとして残る。

公開日 · 2026.09.18 TOB成立公表 · PRIVATE EQUITY REVIEW · FACT / ANALYSIS / HYPOTHESIS

株主ごとに、出口を設計する。を表現した編集イメージ(AI生成)
PRIVATE EQUITY / AI EDITORIAL IMAGEISSUE 037

01 / OVERVIEW

1株1,650円は直前終値を下回るのに、
なぜTOBは成立したのか。

2026年9月18日、SK-03によるCEホールディングスへのTOBが成立した。株価はTOB価格を上回っていたのに、株主の多数は応募した。この事実を「不当に安い」という結論だけで終わらせず、価格の内訳と非公開化の進み方を分けて読む。

TOB RESULT応募7,624,702株 > 下限3,768,300株・全部買付け

成立(2026.09.18公表)

VOTING STAKESK-03直接保有・TOB+創業者並行買付け後

54.42%見込み

SETTLEMENT非公開化プロセスは未完了(株式併合・自己株TOB・上場廃止は後続)

2026.09.29開始予定

SK-03は、日本企業成長投資株式会社(JCGI)が投資関連サービスを提供するNIC Fund III系列の買収目的会社(2026年6月9日設立)。TOB価格は1株1,650円で、公表前営業日の終値1,720円を下回る水準だった。それでも応募株式数は下限を大きく上回り、TOBは成立した。

CEホールディングスは電子カルテ「MI・RA・Is」などの医療ITを手掛け、2026年9期第3四半期累計の売上高は13,292百万円、営業利益は1,364百万円(通期予想は売上高16,000百万円・営業利益1,600百万円)。この取引を単純な「MBO」と呼ぶことはできない。買い手のSK-03はPE系の買収SPCであり、創業者・杉本惠昭氏は開示スキーム上、売却側の株主として整理されている。

FACT
SK-03株式会社は、株式会社CEホールディングス(証券コード4320)普通株式に対し1株1,650円でTOBを実施し、2026年9月18日に成立を公表した。応募株式数7,624,702株は買付予定数の下限3,768,300株を上回り、全部買付けとなる。決済開始は2026年9月29日を予定。TOBと同時並行で、創業者・杉本惠昭氏の保有株式1,450,800株を1株1,600円で買い付ける契約も締結されている。これらの結果、SK-03の直接保有議決権比率は54.42%見込みとなる。自己株式公開買付けと株式併合によるスクイーズアウト等の後続手続きは残っており、記事化時点でクロージングは完了していない。
ANALYSIS
1,650円は公表前営業日終値1,720円を下回る水準だが、TOBは下限を上回って成立した。一般株主向け1,650円、創業者向け並行買付け1,600円、そして開示されているスキームでは後続の自己株式取得ルートで指定株主向けに1,501円という価格差が設計されている。単純な高低の比較ではなく、税務・配当可能利益・主要株主との合意形成・支配権の確度を同時に調整する複層設計として読める。1,501円は一般株主が応募するTOB価格ではなく、後段の自己株式取得ルートに関わる価格である点は区別が必要。
HYPOTHESIS
本スキームが単一のTOB価格ではなく複数の価格・手続きを組み合わせたのは、創業者・機関投資家・取引先株主・一般株主という利害の異なる株主群を、それぞれ異なる条件で同時に退出させる必要があったためではないか。これは会社側が明言した狙いではなく、価格構造から読み取れる推測にとどまる。

2026年9月22日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓

02 / TIMELINE

意思決定の流れを追う。

2026.08.05

TOB開始を公表

1株1,650円、公開買付代理人は野村證券。同日、CEホールディングスは監理銘柄(確認中)に指定された。

2026.08.31

NECがTOB不応募・後続の自己株式取得ルートへの応募で合意

この変更に伴い、買付予定数の上限・下限も修正(下限は4,968,300株から3,768,300株へ)。EMシステムズ・日本事務器は全株応募契約を締結。

2026.09.18

TOB結果を公表、成立

応募株式数7,624,702株が下限3,768,300株を上回り、全部買付け。SK-03の直接保有議決権比率は54.42%見込みに。

2026.09.29

決済開始予定

TOBの決済が開始される予定。この時点でも株式併合・自己株式取得・上場廃止といった後続手続きは残る。

未確定

株式併合・自己株式取得・上場廃止(後続手続き)

非公開化の完了には、CEホールディングスによる自己株式公開買付けと株式併合によるスクイーズアウト等が必要。実施時期は記事化時点で確定していない。

03 / PRICE TIERS

1,650円、1,600円、1,501円。
同じ非公開化で、
株主ごとに違う出口が用意されている。

本件の複層設計を理解する鍵は、価格そのものより「誰が、どの手続きで、いくらで退出するか」が株主属性ごとに分かれている点にある。

一般株主が応募するTOBの価格は1株1,650円。これと並行して、創業者・杉本惠昭氏の保有株式1,450,800株は1株1,600円で買い付けられる契約になっている。さらに、開示されているスキームには、CEホールディングスによる自己株式公開買付けという後続ルートがあり、そこでは指定株主向けに1株1,501円という価格が設計されている(1,501円は一般株主向けTOB価格とは異なるルートの価格であり、混同してはならない)。

3つの価格が並ぶことは、単純な「高い・安い」の序列では説明しにくい。税務上の扱い、配当可能利益の範囲、主要株主との合意条件、支配権の確度——これらを同時に成立させるための設計として読める。NECが一般TOBに応募せず後続の自己株式取得ルートへの応募に切り替えた(2026年8月31日合意)ことも、株主ごとに異なる出口が用意されていたことを示す一例と言える。

(仮説)株主属性ごとに条件を分けたのは、一つのTOB価格では創業者・機関投資家・取引先株主・一般株主という利害の異なる株主群を同時に満足させられなかったためではないか。会社が公式にそう説明しているわけではなく、価格構造から読み取れる推測にとどまる。

04 / STRUCTURE

TOBは成立しても、
非公開化はまだ終わっていない。

TOBの成立と、非公開化の完了は同じではない。本件はまだクロージング前の段階にある。

TOB成立後、SK-03の直接保有議決権比率は54.42%見込みとなる(報道等で言及される「89%台」という数値は、直接保有比率とは定義が異なる別の集計であり、本稿では直接持分として扱わない)。決済開始は2026年9月29日を予定しているが、非公開化を完了させるには、この後にCEホールディングスによる自己株式公開買付けと、株式併合によるスクイーズアウト等の手続きが必要になる。

記事化時点で、自己株式TOB・株式併合・上場廃止の最終日程は確定していない。TOBが成立したことを「非公開化が完了した」と読み替えないことが、本件を正確に理解する前提になる。

05 / GOVERNANCE

14.6%を持つ株主は、
このTOBに反対していた。

本件では、成立したTOBに対して大株主の一角が異議を唱えていた。価格・プロセスの評価が株主間で割れていたことも、複層設計を読むうえでの背景になる。

議決権14.6%を保有すると表明していたAxium Capitalは、TOB価格・プロセスに反対し、マーケットチェックの実施を求めていた。Axium側は、条件次第では光通信グループが1株1,700円以上での競合提案に応募し得ると主張していたが、これはAxium側の主張であり、CEホールディングスやSK-03が確認した事実ではない。FA・第三者算定機関の役割分担についても、意見表明報告書等での確認が必要な部分が残る。

こうした反対があったにもかかわらずTOBが下限を超えて成立したことは、価格への評価が株主の間で一様ではなかったことを示している。少数株主保護や取締役会プロセスの妥当性は、本件のTOB成立とは別に検証されるべき論点として残る。

RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY

成立は、
合意ではない。

下限を超えて応募が集まったことは事実だが、それは全株主が同じ評価をしたことを意味しない。反対した株主がいたという事実も、複層設計の一部として記録しておく必要がある。

06 / LESSON

「成立」と「完了」を、
同じ言葉で語らない。

TOBに関する報道を読むときに持ち帰れる視点を整理する。

TOBの成立は、応募条件を満たしたという事実にすぎない。非公開化の完了(株式併合・自己株式取得・上場廃止)は別工程であり、本件のように後続手続きが多段になっているケースでは、どの時点の話をしているのかを常に確認する必要がある。

複数の価格が並ぶ取引では、どの価格がどの株主・どの手続きに対応するのかを分けて読む。1,650円・1,600円・1,501円を単純に比較して優劣をつけるのではなく、それぞれが誰の出口なのかを特定することが、取引の設計を理解する近道になる。また、取引全体のEV・総取得価額・借入条件は本稿執筆時点で会社から確定的に開示されておらず、推定しない。

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