スクイーズアウトとは、TOBなどで大部分を取得した買い手が、残った少数株主の株式を金銭対価で強制的に取得して排除する手続です。
「少数株主排除」とも呼ばれます。上場廃止後の完全子会社化や、あらかじめTOBとセットで計画されるのが典型的で、少数株主は取得そのものを拒否できません。 ただし対価の妥当性は裁判所に争える、というのが制度の骨格です。本稿では3つの手続の違いと、少数株主側の残された手段を整理します。
結論:スクイーズアウトは「残った株主を金銭で外す」手続
手続の主役になるのは買付者(取得後の親会社・特別支配株主)で、少数株主には「金銭を受け取って退出する」か「対価の額を裁判所に争う」かという選択が残るだけです。 だからこそ、TOBに応募する・しないの判断では、その先に待つスクイーズアウトの対価がTOB価格と同額になるかまで読む必要があります。
3つの手続:株式等売渡請求・2段階スクイーズアウト・株式併合
- 株式等売渡請求(会社法179条):買付者が総株主の議決権の90%以上を取得した場合に使える、最も簡便な手続。対象会社の承認決議を経て、残る株主の株式全部を取得できます。
- 2段階スクイーズアウト(2023年12月導入の簡素化制度):TOBで90%超を取得した後90日以内に続く一定の株式取得について、手続を簡素化する制度。TOB+完全子会社化の所要期間を短縮します。
- 株式併合(会社法180条):議決権の3分の2超を握る買付者が株主総会の特別決議で株式併合を行い、端数処理の仕組みを通じて少数株主の株式を金銭対価で取得する方法。併合後1株に満たない株式を取得できるのは、9/10を超える株式を取得する場合に限られる(会社法180条3項)という「9/10ルール」が実務上の関門です。
90%に届くか届かないか、3分の2を超えるかどうかで使える手続が変わります。TOBの買付予定数や設計を見るときは、「成立後にどのスクイーズアウトが予定されているか」を必ず確認します。
対価の決まり方と価格決定申立て
株式等売渡請求の対価は、株式の公正価格を勘案して対象会社が承認決議で定めます(会社法179条)。少数株主はこの対価に不満があれば、裁判所への価格決定申立て(会社法183条3項)で価格の妥当性を争えます。 株式併合を利用する場合も、端数株を取得する対価について同様の争い方が残ります。取得自体は拒否できないものの、価格の争訟権は完全には奪われないのが制度設計です。
JCOM事件が確立した「TOB価格同額」の原則
最高裁平成28年7月1日決定(JCOM事件)以降、公正な手続で行われたTOBに続く取得では、特段の事情のない限りTOB価格と同額が公正な価格とされています。 実務でも2段階目の対価をTOB価格と同額にするのが原則的運用です。つまり、TOB価格そのものが少数株主の最終的な手取りをほぼ決めるため、スクイーズアウトの争点は事実上TOB価格の妥当性に収斂します。
手続比較表
| 観点 | 株式等売渡請求 | 2段階スクイーズアウト | 株式併合 |
|---|---|---|---|
| 必要な取得割合 | 総株主の議決権の90%超 | TOBで90%超取得後、90日以内 | 3分の2超(特別決議)+9/10超 |
| 根拠法 | 会社法179条 | 金商法(2023年12月施行の簡素化) | 会社法180条ほか |
| 手続の特徴 | 対象会社の承認決議で実行 | 標準手続の期間短縮 | 株主総会決議+端数処理 |
| 少数株主の手段 | 価格決定申立て | 価格決定申立て | 価格決定申立て |
実例で見る使い分け
- プロジェクトホールディングス(TX1子会社化):主要3株主との応募契約59.27%を足場にTOBを実施し、成立後のスクイーズアウトを予定した「成立前の設計」の典型例です。応募契約で成立を固め、その後の少数株主排除までセットで計画する構造を示しています。
- かどや製油:創業家側が不応募の方針を示した進行中のTOB。大株主の不応募が残る議決権構成と、後続手続の選択肢をどう読むかの実戦的な論点になります。
- フェローテックによる日本抵抗器製作所:TOB後の手続で完全子会社化・上場廃止を予定した案件。TOB価格1,901円が、そのまま少数株主の退出価格の基準になります。
まとめ:少数株主が確認すべきこと
- TOB公告の「買付後の予定割合」を見る。90%超の設計なら株式等売渡請求、3分の2前後なら株式併合の道が残る。
- 応募しない場合も、最終対価はTOB価格同額が原則(JCOM事件)。ただし手続の公正性や対価の妥当性は価格決定申立てで争える。
- 上場廃止後は市場で売る場所が消えるため、「待つことのコスト」(流動性・時価の喪失)も判断材料に含める。

