01 / SCHEME
株式取得ではなく、
事業の承継である
今回の取引は「USEN WORKINGの買収」ではない。承継されるのはUcare事業だけである。
簡易吸収分割
330百万円(予定)
2026.12.01
承継会社はメドレー、分割会社はUSEN WORKING(U-NEXT HOLDINGS 100%子会社)。方式は簡易吸収分割で、USEN WORKINGという会社の株式は動かない。株式取得の場合の「取得比率」は本件では該当しない。
契約は2026-09-18に締結済みだが、効力発生日は2026-12-01予定である。承継が実際に効力を持つのはその日以降で、本稿の時点(2026-09-20)では承継は完了していない。
簡易吸収分割の一般的な手続き上の意味(承継側で株主総会決議を要しない等)に本文は踏み込まない。適時開示にある範囲の事実だけを書く。
- FACT
- メドレーは2026-09-17にUcare事業の簡易吸収分割による承継を適時開示。USEN WORKINGは2026-09-18に取締役会決議と吸収分割契約締結を発表。効力発生日は2026-12-01予定。(メドレー適時開示、USEN WORKING公式)
- FACT
- 分割対価は330百万円(予定)。価格調整により最終対価は変動しうる。価値算定はコストアプローチ等で、主たるアセットは「顧客事業所・ワーカー基盤と、それを支える運営体制」と開示。(適時開示)
- FACT
- Ucare事業の2025/8期売上高は584百万円。利益・EBITDAは非開示。(適時開示)
- FACT
- メドレー人材プラットフォームは顧客事業所約46.6万件・従事者会員333万人(2026年6月末)。(適時開示)
- FACT
- 売り手は「Ucare事業のさらなる事業成長」のため、医療・介護・福祉領域に知見を持つメドレーとのシナジーを判断したと説明。承継後もサービスは継続、既存契約内容に変更なし。(USEN WORKING公式)
- ANALYSIS
- 求人媒体(長期の就業)とスポットワーク(短時間の就業)を別サービスとして並べるのではなく、同一の医療・介護人材基盤の上で就業期間の幅を広げる取引と読める。
- ANALYSIS
- RMキャリアの連結子会社化完了(2026-08-03、メドレー公式)の直後の案件であり、人材サービスの提供形態を続けて広げる流れと読める。ただし両案件を結ぶ統合計画は開示されていない。
- ANALYSIS
- 売り手の公式理由は成長とシナジーであり、開示情報から業績不振や資金事情による売却とは読み取れない(読み取れないことと、不振でないと断定することは別)。
- HYPOTHESIS
- スポット勤務が職場や現場を知る機会として働き、その後の長期採用・定着につながる可能性がある。転換率・導線設計は未公表で、検証できる材料は現時点でない。
- HYPOTHESIS
- 既存の46.6万件・333万人へUcareを案内できれば、Ucare単独より需給のマッチング機会が増える可能性がある。クロスセル率・GMV・CAC等は非開示。
2026年9月20日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
02 / TIMELINE
意思決定の流れを追う。
2021.04
USEN WORKING公式に基づく。
2025.08期
メドレー適時開示に基づく。利益・EBITDAは非開示。
2025.12
USEN WORKING公式の紹介値。算定時点・母集団の解釈には注意が必要。
2026.06.30
メドレー適時開示に基づく。効力発生日までの増減を反映して確定する。
2026.08.03
メドレー公式に基づく。
2026.09.17
Ucare事業の簡易吸収分割による承継を公表。
2026.09.18
取締役会決議と吸収分割契約締結を公表。
2026.12.01(予定)
承継の効力発生予定日。本稿時点ではクロージング前。
03 / CONSIDERATION
330百万円は、
予定の数字である
対価の額よりも、その数字が何を表し、何を表さないかを分けて読む。
分割対価は330百万円(予定)。契約に基づく実行時の価格調整で最終対価は変動しうるため、確定額ではない。企業価値(EV)でもない。
価値算定はコストアプローチ等。評価対象の主たるアセットは「顧客事業所・ワーカー基盤と、それを支える運営体制」と開示されている。(fact)
2026-06-30時点ベースの承継予定資産・負債は、流動資産295百万円、固定資産70百万円、流動負債72百万円、固定負債なし。効力発生日までの増減を反映して確定するため、最終承継額ではない。
売上584百万円(2025/8期)は開示されているが、利益・EBITDAは開示されていない。売上と対価から倍率や回収年数を算出しても、それは前提のない数字であり、本稿では算出しない。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
330百万円は「予定」「調整前」。
利益指標がない以上、割安・割高の判断材料は開示されていない。
04 / BUYER PLATFORM
ジョブメドレーが
すでに持つ接点
買い手が何を持っているかを見ると、Ucareの位置づけが読みやすくなる。
メドレーの人材プラットフォームは、顧客事業所約46.6万件・従事者会員333万人(2026年6月末)。公式ビジョンは「働くをもっと広く支える」。
2026-08-03にはRMキャリア(旧リクルートメディカルキャリア)の連結子会社化を完了し、医師・薬剤師向けのアドバイザー型人材紹介・採用代行へ支援範囲を広げた。
2025/12期連結売上高36,786百万円、営業利益2,150百万円(適時開示記載)。Ucareの2025/8期売上584百万円は、同期連結売上高との単純比較は決算期が異なるため行わない。
直接採用、人材紹介、採用代行に続いて、短時間就業という提供形態が加わると読める。ただしこの3つとUcareを結ぶ統合の設計は開示されていない。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
買い手は多様な就業ニーズへの支援を、
段階的に広げている。
今回はその一手と読めるが、統合計画は未公表である。
05 / UCARE
介護に特化した、
面接なしの就業
承継の対象は、介護領域に特化して4年以上運営されてきた事業である。
Ucareは2021年4月開始の介護領域特化型ワークシェアリングサービス。介護施設・医療機関と介護資格を持つワーカーをITで直接つなぎ、面接なしで働ける仕組みを提供する。(USEN WORKING公式)
利用ワーカーの90%以上が介護関連資格を保有(同社2026-09-18発表)。
応募後保留機能、初勤務施設の複数日程応募制限など、介護現場特有のミスマッチや安全面の課題に対応する運営機能を持つと紹介されている(同社2025-12発表)。
メドレー適時開示は「介護領域における業界有数のスポットワーク事業者」と表現するが、順位・シェアは開示されていない。
承継後もUcareは継続提供され、既存のワーカー・介護施設・医療機関との契約内容に変更はない(USEN WORKING公式)。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
資格者中心の供給と運営機能が、
評価対象の「運営体制」の中身だと読める。
ただし順位やシェアは不明である。
06 / TIME AXIS
スポットから長期雇用へ、
同じ基盤で
本件の核は、就業期間の幅をどうつなぐかにある。
メドレーの開示目的は、既存の顧客事業所・従事者会員へUcareを案内してマッチング機会を増やすことと、将来的に「スポットワークから長期雇用まで」多様な就業ニーズに対応するサービスを提供することである。
長期の求人と短時間の就業を、別々のサービス・別々の利用者層として持つより、同じ会員・事業所基盤の上に置くほうが、利用者の就業ニーズの変化(まず単発で、あとで常勤で)に応じやすくなる。開示の言葉から読める構図である。
スポット勤務で職場を知る機会が生まれ、それが長期採用・定着につながる可能性がある。ただし、スポット→長期の転換率、ジョブメドレーとのクロスセル率、導線設計はいずれも未公表であり、この仮説を裏づける数字は今のところない。
リピーター比率について: USEN WORKINGは2025-12にUcareを「リピーター比率95%」と紹介している。これは同社の2025年時点の紹介値であり、施設側かワーカー側か等の算定母集団や現在値は当該ページで明示されていない。本稿は、この値をUcareの現在の定着率や長期就業への転換の根拠としては扱わない。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
「スポットから長期まで」は開示された狙い。
転換の実効性は、数字がまだ無いので判断できない。
07 / SELLER
売り手は
なぜ手放すのか
売却の理由は、開示された言葉の範囲で読む。
USEN WORKINGは、Ucare事業の「さらなる事業成長」のため最適な選択肢を検討し、医療・介護・福祉領域の知見とプロダクト基盤を持つメドレーとのシナジーにより、ユーザー・クライアントへの提供価値向上が期待できると判断した、と説明している。(fact)
業績や資金の事情に関する説明は開示に含まれていない。本稿は、その事情を推測しない。
会社全体を売るのではなく事業のみを移す形は、USEN WORKINGが他の事業を残しつつUcareだけを、同領域に接点の多い事業者に預けるものと読める。会社分割でなぜこの形を選んだかの詳細は非開示。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
公式理由は成長とシナジー。
それ以上の背景は読み取れない。
08 / WATCH
今後、
何を確認するか
開示済みの事実と未開示の項目を分けて、次の確認点を示す。
未開示(Packet記載): Ucareの営業利益・EBITDA・純利益、月次GMV、アクティブなワーカー数・施設数、最終対価、承継する従業員数と雇用条件、統合方針(ブランド・アプリ・データ)、ジョブメドレーとのクロスセル率、スポット→長期の転換率、アドバイザー名。
確認点: ①2026-12-01前後の承継完了の開示と最終対価、②次回以降の決算でのUcare業績の寄与・取得関連会計・セグメントの扱い、③Ucareからジョブメドレー等への導線の開示。
本稿は2026-09-20時点の開示に基づく。以降の開示で内容が変わりうる。
RAXUS VIEW / EDITORIAL TAKEAWAY
今回の取引は契約締結の段階。
実際の効果は、完了後の開示を待たないと評価できない。


