01 / OVERVIEW
何が発表されたか。
2026年10月20日、三菱電機とABBは配電制御機器事業の合弁会社設立を発表した。
2026.10.20
51% / 49%
824億円
DEAL PRICE
824億円と790億円は、別の説明
2つの数字は同じ取引の異なる範囲の価額である。790億円には国外の関連販売事業の完全所有が含まれる。
| ケース | 価格 | 条件 | 位置づけ(2026年10月21日) |
|---|---|---|---|
| 三菱電機 適時開示 | 824億円 | 未開示 | 会社分割で承継する新会社株式51%の譲渡価額2026-10-20 (S1) |
| ABB 公式発表 | 790億円 | 51%株式と国外関連販売事業の完全所有を含む (S2) | 本取引の価額としてABB側が公表した数値2026-10-20 (S2) |
DEAL PROGRESS
取引の現在地
- 01発表
両社が合弁会社設立を発表した(2026-10-20)。
公表済み (S1) (S2) - 02当局承認など
実行の条件は、国内外の競争法当局その他の関係当局による許認可・承認と、契約上の前提条件の充足。
条件 - 03会社分割・51%譲渡
新会社への事業承継と、新会社株式51%のABBへの譲渡。
2027-10-01実行予定 (S1)
本稿執筆時点(2026年10月21日)は実行前。予定は当局承認などの条件に従属する。
全履歴(3件)を開く
2026.10.20
配電制御機器事業の合弁会社設立を発表。51%譲渡・譲渡価額824億円・2027年10月1日実行予定。 (S1)
2026.10.20
取得価額は790億円と公表。新会社株式51%と国外の関連販売事業の完全所有を含む。(S2)
2027.10.01(予定)
当局承認などの条件を満たした場合に実行する。執筆時点では未了。 (S1)
三菱電機は同日の適時開示で、配電制御機器事業を会社分割により新会社へ承継し、新会社株式の51%をABBへ譲渡すると発表した。譲渡価額は824億円、譲渡後の持分はABB51%、三菱電機49%の予定である。 (S1) (S2)
実行は2027年10月1日の予定で、当局承認などの条件を満たした場合に進む。本稿執筆時点(2026年10月21日)は発表翌日であり、会社分割も株式譲渡も実行前である。二次情報のM&A Onlineも同日付で本件を速報している。 (S1) (S3)
価格は2種類の数字で公表された。三菱電機側の824億円は、会社分割で承継する新会社株式51%の譲渡価額である。(S1) ABB側の790億円は、新会社株式51%に加えて日本国外の関連販売事業(対象売上の約15%)の完全所有を取得する価額である。(S2) 範囲が異なるため、両数値の差額を価格差として扱わない。(S1) (S2)
- FACT
- 2026年10月20日、三菱電機は配電制御機器事業を会社分割により新会社へ承継し、新会社株式の51%をABBへ譲渡すると適時開示した。譲渡価額は824億円、実行は2027年10月1日の予定で、当局承認などを条件とする。譲渡後の持分はABB51%、三菱電機49%となる予定である。 (S1)
- ANALYSIS
- 過半の51%を譲りながら49%を残す設計は、三菱電機が資本の負担を減らしつつ国内事業とのつながりを保ち、ABBが主導権を持って日本の配電制御機器市場に入る構造と読める。ただし公表された目的は対象事業の更なる成長と競争力強化であり (S1)、それ以上の経緯の説明はない。この設計の読みは本稿の分析である。
- HYPOTHESIS
- 仮説として、ABBの海外販売網と対象事業の国内開発・製造基盤が組み変われば、事業の競争力は実行後に変わる可能性がある。ABB側は相乗効果で収益性を高め、5年以内の営業EBITAマージン20%以上を見通しとして公表した (S2)。その実現の検証は、2027年10月1日の実行後まで始まらない。
2026年10月21日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
03 / BACKGROUND
なぜ切り出すのか。
2社の事情
対象は売上高約1,022億円の配電制御機器事業。三菱電機の資本再編と、ABBの日本事業強化が交わる。
対象となるのは、ブレーカーや制御機器を含む配電制御機器事業である。売上高は約1,022億円と公表されており、国内の開発・製造・サービスの基盤を持つ。 (S1)
ABBはスイスに本拠を置く電機・オートメーション企業で、配電機器を世界的に展開する。公式に掲げた目的は、日本での低圧配電・制御機器事業の強化である。 (S2)
相次ぐ事業単位の持分譲渡は、三菱電機が資本の入り方を事業ごとに組み直す一手と読める。ただし配電制御機器事業について会社分割と合弁化に至った経緯の説明は公表資料になく、この読みは本稿の分析にとどまる。 (S1)
三菱電機は2026年10月16日にも、車載機器事業を担う三菱電機モビリティの50%持分を鴻海精密工業へ譲渡すると発表した。本件の対象は配電制御機器、譲受先はABB、譲渡する持分は51%であり、事業も相手も異なる別の取引である。 (S1)
04 / SCHEME
会社分割と、
株式譲渡の2段構え
取引は、事業の切り出しと株式の譲渡という2段階で進む。
第1段階は会社分割である。配電制御機器事業を新会社へ承継させ、事業の法人格・契約・従業員関係を切り出す。第2段階で三菱電機は新会社株式の51%を、ABBの日本法人であるABB株式会社へ譲渡し、ABBが過半の株主となる。 (S1)
実行は2027年10月1日の予定である。条件は国内外の競争法当局その他の関係当局による許認可・承認、契約上の前提条件の充足である。(S1) 会社分割は三菱電機を分割会社、新会社を承継会社とする吸収分割であり、簡易吸収分割に当たるため株主総会の承認を得ずに行う。分割で新会社から三菱電機への対価の交付は行われない。(S1) 824億円は、対象事業の2025年度EBITDAと合意した評価倍率、現預金等の調整から算定した価額で、契約に基づく価格調整により変動し得る。(S1)
譲渡後の経営体制は一部が開示されている。新会社の取締役会は、ABB指名5名と三菱電機指名2名の計7名で構成する予定である。(S1) 実行後の新会社はABBの連結子会社、三菱電機の持分法適用会社となる見込みである。(S1) ABB側は、本取引に中期的に完全所有とする選択肢を設けたと説明する。(S2) 議決権設計や株主間契約の詳細は公表されていない。
- 残り49%は三菱電機が保持する予定 (S1)
- 議決権設計などの詳細は未開示
05 / COMPANIES
2社は、
何を持って入るのか
切り出す側と入る側で、持ち込む資源が違う。
三菱電機は総合電機メーカーであり、対象の配電制御機器事業は売上高約1,022億円(2026年3月期)を公表値として持つ。事業の強みは国内販路と、開発・製造・サービスの既存基盤である。譲渡後も新会社株式の49%を保持する予定で、事業からの完全撤退を含まない。 (S1)
ABBはスイスに本拠を置き、電力と産業向けの電機・オートメーションを世界的に展開する。配電機器は同社の既存領域で、日本では低圧配電・制御機器事業の強化を目的に掲げた。連結財務の最新数値は本稿で照合していないため、本稿では扱わない。 (S2)
総合電機。対象は配電制御機器(ブレーカー・制御機器等)
- 対象事業の売上高(2026年3月期)約1,022億円 (S1)
- 譲渡後も新会社株式49%を保持する予定 (S1)
スイス本拠。電力・産業向けの電機とオートメーション
- 公式目的は日本での低圧配電・制御機器事業の強化 (S2)
- 連結数値は本稿未照合
06 / SUMMARY
49%を残す三菱電機の
次の基準。
発表から実行までは1年近い期間があり、今の段階で確定している部分は限られる。
実行の条件は、国内外の競争法当局その他の関係当局による許認可・承認と、契約上の前提条件の充足である。個別の当局名までは示されていない。(S1)
見るべき材料は、承認の進捗と2027年10月1日の実行に絞られる。49%を保持し続ける三菱電機が、対象事業をどの基準で評価し直すのか。その最初の材料が、ABBとの合弁が示す51%という値付けである。


