RAXUS › GROWTH PARTNERSHIP › BUSINESS REVIEW › #189

MITSUBISHI ELECTRIC × ABB

持分は51%と49%。
三菱電機とABBの
配電制御機器合弁を読む

824億円は三菱電機側の51%譲渡価額である。790億円は国外の関連販売事業の取得を含むABB側の価額で、含まれる範囲が違う。会社分割と株式譲渡の2段構えを、未完了の取引として読む。

公開日 · 2026.10.20 発表 | 51%譲渡価額824億円(三菱電機側開示)| 実行2027-10-01予定・当局承認等を条件

資料を挟んで議論する二人
M&A / JVISSUE 189

01 / OVERVIEW

何が発表されたか。

2026年10月20日、三菱電機とABBは配電制御機器事業の合弁会社設立を発表した。

ANNOUNCED両社が合弁会社設立を発表 (S1) (S2)

2026.10.20

STAKEABB51%・三菱電機49%の予定 (S1)

51% / 49%

PRICE51%譲渡価額・三菱電機側開示 (S1)

824億円

DEAL PRICE

824億円と790億円は、別の説明

2つの数字は同じ取引の異なる範囲の価額である。790億円には国外の関連販売事業の完全所有が含まれる。

824億円と790億円は、別の説明
ケース価格条件位置づけ(2026年10月21日)
三菱電機 適時開示824億円未開示会社分割で承継する新会社株式51%の譲渡価額2026-10-20 (S1)
ABB 公式発表790億円51%株式と国外関連販売事業の完全所有を含む (S2)本取引の価額としてABB側が公表した数値2026-10-20 (S2)
範囲が異なるため、両数値の差額を価格差として扱わない。824億円は契約に基づく価格調整により変動し得る。(S1) (S2)

DEAL PROGRESS

取引の現在地

  1. 01
    発表

    両社が合弁会社設立を発表した(2026-10-20)。

    公表済み (S1) (S2)
  2. 02
    当局承認など

    実行の条件は、国内外の競争法当局その他の関係当局による許認可・承認と、契約上の前提条件の充足。

    条件
  3. 03
    会社分割・51%譲渡

    新会社への事業承継と、新会社株式51%のABBへの譲渡。

    2027-10-01実行予定 (S1)

本稿執筆時点(2026年10月21日)は実行前。予定は当局承認などの条件に従属する。

全履歴(3件)を開く

2026.10.20

三菱電機が適時開示

配電制御機器事業の合弁会社設立を発表。51%譲渡・譲渡価額824億円・2027年10月1日実行予定。 (S1)

2026.10.20

ABBが公式発表

取得価額は790億円と公表。新会社株式51%と国外の関連販売事業の完全所有を含む。(S2)

2027.10.01(予定)

実行予定

当局承認などの条件を満たした場合に実行する。執筆時点では未了。 (S1)

三菱電機は同日の適時開示で、配電制御機器事業を会社分割により新会社へ承継し、新会社株式の51%をABBへ譲渡すると発表した。譲渡価額は824億円、譲渡後の持分はABB51%、三菱電機49%の予定である。 (S1) (S2)

実行は2027年10月1日の予定で、当局承認などの条件を満たした場合に進む。本稿執筆時点(2026年10月21日)は発表翌日であり、会社分割も株式譲渡も実行前である。二次情報のM&A Onlineも同日付で本件を速報している。 (S1) (S3)

価格は2種類の数字で公表された。三菱電機側の824億円は、会社分割で承継する新会社株式51%の譲渡価額である。(S1) ABB側の790億円は、新会社株式51%に加えて日本国外の関連販売事業(対象売上の約15%)の完全所有を取得する価額である。(S2) 範囲が異なるため、両数値の差額を価格差として扱わない。(S1) (S2)

FACT
2026年10月20日、三菱電機は配電制御機器事業を会社分割により新会社へ承継し、新会社株式の51%をABBへ譲渡すると適時開示した。譲渡価額は824億円、実行は2027年10月1日の予定で、当局承認などを条件とする。譲渡後の持分はABB51%、三菱電機49%となる予定である。 (S1)
ANALYSIS
過半の51%を譲りながら49%を残す設計は、三菱電機が資本の負担を減らしつつ国内事業とのつながりを保ち、ABBが主導権を持って日本の配電制御機器市場に入る構造と読める。ただし公表された目的は対象事業の更なる成長と競争力強化であり (S1)、それ以上の経緯の説明はない。この設計の読みは本稿の分析である。
HYPOTHESIS
仮説として、ABBの海外販売網と対象事業の国内開発・製造基盤が組み変われば、事業の競争力は実行後に変わる可能性がある。ABB側は相乗効果で収益性を高め、5年以内の営業EBITAマージン20%以上を見通しとして公表した (S2)。その実現の検証は、2027年10月1日の実行後まで始まらない。

2026年10月21日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓

03 / BACKGROUND

なぜ切り出すのか。
2社の事情

対象は売上高約1,022億円の配電制御機器事業。三菱電機の資本再編と、ABBの日本事業強化が交わる。

対象となるのは、ブレーカーや制御機器を含む配電制御機器事業である。売上高は約1,022億円と公表されており、国内の開発・製造・サービスの基盤を持つ。 (S1)

ABBはスイスに本拠を置く電機・オートメーション企業で、配電機器を世界的に展開する。公式に掲げた目的は、日本での低圧配電・制御機器事業の強化である。 (S2)

相次ぐ事業単位の持分譲渡は、三菱電機が資本の入り方を事業ごとに組み直す一手と読める。ただし配電制御機器事業について会社分割と合弁化に至った経緯の説明は公表資料になく、この読みは本稿の分析にとどまる。 (S1)

三菱電機は2026年10月16日にも、車載機器事業を担う三菱電機モビリティの50%持分を鴻海精密工業へ譲渡すると発表した。本件の対象は配電制御機器、譲受先はABB、譲渡する持分は51%であり、事業も相手も異なる別の取引である。 (S1)

04 / SCHEME

会社分割と、
株式譲渡の2段構え

取引は、事業の切り出しと株式の譲渡という2段階で進む。

第1段階は会社分割である。配電制御機器事業を新会社へ承継させ、事業の法人格・契約・従業員関係を切り出す。第2段階で三菱電機は新会社株式の51%を、ABBの日本法人であるABB株式会社へ譲渡し、ABBが過半の株主となる。 (S1)

実行は2027年10月1日の予定である。条件は国内外の競争法当局その他の関係当局による許認可・承認、契約上の前提条件の充足である。(S1) 会社分割は三菱電機を分割会社、新会社を承継会社とする吸収分割であり、簡易吸収分割に当たるため株主総会の承認を得ずに行う。分割で新会社から三菱電機への対価の交付は行われない。(S1) 824億円は、対象事業の2025年度EBITDAと合意した評価倍率、現預金等の調整から算定した価額で、契約に基づく価格調整により変動し得る。(S1)

譲渡後の経営体制は一部が開示されている。新会社の取締役会は、ABB指名5名と三菱電機指名2名の計7名で構成する予定である。(S1) 実行後の新会社はABBの連結子会社、三菱電機の持分法適用会社となる見込みである。(S1) ABB側は、本取引に中期的に完全所有とする選択肢を設けたと説明する。(S2) 議決権設計や株主間契約の詳細は公表されていない。

FACT / 開示情報CAPITAL FLOW / 合弁の資本関係
51%を取得(予定)ABBスイス本拠・電機とオートメーション (S2)
会社分割で承継(予定)配電制御機器新会社対象事業売上高約1,022億円 (S1)
会社分割後、新会社株式51%を譲渡(予定)実行前・2027年10月1日予定(当局承認等を条件)
  • 残り49%は三菱電機が保持する予定 (S1)
  • 議決権設計などの詳細は未開示
出典は記事末尾の根拠資料一覧。未開示の条件を推計で補わない。

05 / COMPANIES

2社は、
何を持って入るのか

切り出す側と入る側で、持ち込む資源が違う。

三菱電機は総合電機メーカーであり、対象の配電制御機器事業は売上高約1,022億円(2026年3月期)を公表値として持つ。事業の強みは国内販路と、開発・製造・サービスの既存基盤である。譲渡後も新会社株式の49%を保持する予定で、事業からの完全撤退を含まない。 (S1)

ABBはスイスに本拠を置き、電力と産業向けの電機・オートメーションを世界的に展開する。配電機器は同社の既存領域で、日本では低圧配電・制御機器事業の強化を目的に掲げた。連結財務の最新数値は本稿で照合していないため、本稿では扱わない。 (S2)

FACT / 開示情報COMPANY SNAPSHOT
三菱電機

総合電機。対象は配電制御機器(ブレーカー・制御機器等)

  • 対象事業の売上高(2026年3月期)約1,022億円 (S1)
  • 譲渡後も新会社株式49%を保持する予定 (S1)
ABB

スイス本拠。電力・産業向けの電機とオートメーション

    • 公式目的は日本での低圧配電・制御機器事業の強化 (S2)
    • 連結数値は本稿未照合
    数値は出典に示された期・範囲のまま。未開示の項目を推計で補わない。

    06 / SUMMARY

    49%を残す三菱電機の
    次の基準。

    発表から実行までは1年近い期間があり、今の段階で確定している部分は限られる。

    実行の条件は、国内外の競争法当局その他の関係当局による許認可・承認と、契約上の前提条件の充足である。個別の当局名までは示されていない。(S1)

    見るべき材料は、承認の進捗と2027年10月1日の実行に絞られる。49%を保持し続ける三菱電機が、対象事業をどの基準で評価し直すのか。その最初の材料が、ABBとの合弁が示す51%という値付けである。

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