01 / OVERVIEW
何が発表されたか。
リログループがATIV Medicalの議決権90.0%を取得し、子会社化すると発表した。
2026.10.20
90.0%
16.2億円
2026年10月20日、リログループはATIV Medical Pte. Ltd.の普通株式242,910,000株を取得する契約を締結した。議決権所有割合は90.0%で、異動後の所有株式数も同じく242,910,000株と開示されている。会社の表現では子会社化であり、2026年10月30日の株式譲渡実行日(予定)を迎えるまでは完了しない。 (S1)
金額は2種類ある。ATIV Medicalの普通株式の取得価額は16.2億円。ここにアドバイザリー費用等(概算額)0.6億円を足した合計(概算額)が約16.8億円で、両方の数字が並ぶときはこの内訳の違いである。 (S1)
売主は法人株主2社及び個人株主3名と開示されている。主要な譲渡人として、CVC事業・教育事業の株式会社SEKAISHA、動画の作成及び配信業の株式会社としすみ、ATIV Medical代表者の藤井達樹の3者の概要が公表された。連結業績への影響は現在精査中で、公表すべき事項が生じた場合には速やかに公表するとしている。 (S1)
- 売主は法人株主2社及び個人株主3名 (S1)
- 残り10%の帰属は開示にない (S1)
- FACT
- 2026年10月20日、リログループはATIV Medical Pte. Ltd.の普通株式242,910,000株(議決権所有割合90.0%)を取得し、子会社化することを決めた。株式の取得価額は16.2億円、アドバイザリー費用等(概算額)は0.6億円、合計(概算額)は16.8億円。株式譲渡実行日は2026年10月30日(予定)で、本稿執筆時点(2026年10月21日)は実行前である。売主は法人株主2社及び個人株主3名と開示されている。 (S1)
- ANALYSIS
- 赴任前の段階からATIV Medicalの医療サービスを提供し、「赴任前から現地生活まで」を一続きにする、というのが会社の説明である。海外赴任支援という既存事業の前後に医療を接続する周辺領域の拡張と読める。この読み方は本稿の整理であり、両社の公式表現ではない。
- HYPOTHESIS
- 送客シナジーが実績として現れるかは、譲渡実行後の開示を待つしかない。リログループの赴任者顧客がATIV Medicalの医療サービスをどれだけ使うかは、まだ誰にも測れていない。
2026年10月21日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
02 / TIMELINE
意思決定の流れを追う。
2022.04.11
シンガポールで設立。代表者は藤井達樹。資本金は2,614,370SGD。 (S1)
2026年3月期
ATIV Medicalの連結売上高は2024年3月期の4,124,324SGDから2年で2.7倍になった。連結営業利益は1,458,813SGD。 (S1)
2026.10.20
リログループが取得を決定し、株式譲渡契約を締結した。株式の取得価額は16.2億円。 (S1)
2026.10.30(予定)
実行されると、リログループの所有割合は議決権の90.0%になる。執筆時点では未了。 (S1)
03 / BACKGROUND
なぜ海外赴任支援に医療を組み込むのか。
リログループは生活総合支援サービスの拡大を掲げ、赴任前から現地生活までの空白を医療で埋める構えを示した。
リログループは、福利厚生、借上社宅管理、海外赴任支援、賃貸管理、観光を事業とする。連結従業員は3,451人、連結グループ社数は77社(2026年3月末時点)。東証プライム市場に上場し、証券コードは8876である。 (S2)
同社は「世界規模で展開する『生活総合支援サービス産業』の創出」というビジョンを掲げる。ATIV Medicalは、日本人駐在員や旅行客等にヘルスケアサービスを東南アジア各国で提供する企業グループで、「海外在住の日本人コミュニティのために、安心と革新をリードするグローバルなヘルスケアエコシステムを構築する」ことをビジョンに据える。 (S1)
会社の説明では、赴任先での医療機関選定に不安を抱える赴任者に対し、赴任前の段階からATIV Medicalの医療サービスを提供することで、「赴任前から現地生活まで」を網羅する一連のバリューチェーンを構築できるという。海外赴任支援事業を起点とした高い送客シナジーを見込むとされ、この見込みの実績の開示はまだない。 (S1)
04 / SCHEME
スキームと資金。
取得の形式は既存株式の譲受けで、対価16.2億円と費用込み総額約16.8億円を区別して読む。
DEAL PRICE
金額は2種類ある
16.2億円(取得対価)と16.8億円(総額)は別の数字
| ケース | 価格 | 条件 | 位置づけ(2026-10-20) |
|---|---|---|---|
| 株式の取得価額 | 16.2億円 | 未開示 | ATIV Medical普通株式242,910,000株の対価2026-10-20 (S1) |
| アドバイザリー費用等 | 0.6億円 | 概算額 | 取得価額には含まれない2026-10-20 (S1) |
| 合計 | 16.8億円 | 概算額 | 16.2億円と0.6億円の合計2026-10-20 (S1) |
取得株式数は242,910,000株で、異動前のリログループの所有株式数は0株。取得後の所有割合は議決権の90.0%となる。残り10%の株式は今回の取得対象から外れており、譲渡後に誰が持つかは開示されていない。 (S1)
譲渡前のATIV Medicalの大株主は、株式会社SEKAISHAが40.1%、株式会社としすみが39.1%、藤井達樹が17.8%、メルティングポット3号投資事業有限責任組合が2.0%、五十嵐雄太が1.0%と開示されている。ただし、各譲渡人が株式をどれだけ譲ったか、16.2億円をどう分けたかは開示されていない。 (S1)
資金の内訳は、株式の取得価額1,620百万円と、アドバイザリー費用等(概算額)60百万円である。合計1,680百万円は概算額とされているため、確定額とは書かない。アドバイザーの名称は開示にない。 (S1)
05 / BUYER
リログループは、何を持つ会社か。
1967年設立の生活支援サービス企業で、海外赴任支援は主力領域の一つである。
リログループは1967年3月設立。本社は東京都新宿区。主な事業内容は、福利厚生、借上社宅管理、海外赴任支援、賃貸管理、観光である。 (S2)
今回の取得は、2011年に始まった「第二の創業」の延長線上に位置づけられる。会社は、日本企業が世界で戦うために本業以外の業務を支援することを、事業の出発点に据えている。 (S1)
06 / TARGET
ATIV Medicalは、何をやっている会社か。
シンガポールに本拠を置き、東南アジアの日本人に医療をつなぐ会社である。
東証プライム・8876
福利厚生・借上社宅管理・海外赴任支援・賃貸管理・観光
- 連結従業員数3,451人(2026年3月末時点) (S2)
- 連結グループ社数77社(2026年3月末時点) (S2)
- ATIV Medical所有割合90.0%(譲渡実行後・予定) (S1)
医療機関向け経営コンサルティングサービス(シンガポール・2022年4月設立)
- 連結売上高10,965,919SGD(2026年3月期) (S1)
- 連結営業利益1,458,813SGD(2026年3月期) (S1)
- 連結純資産3,943,746SGD(2026年3月期) (S1)
- 金額はシンガポールドル。円換算は行わない (S1)
- 2024年3月期から3か年分の連結数値が開示されている (S1)
ATIV Medical Pte. Ltd.は2022年4月11日にシンガポールで設立された。代表者の藤井達樹は、譲渡前の持ち株比率17.8%の大株主でもある。登録上の事業内容は医療機関向け経営コンサルティングサービスである。 (S1)
開示された連結数値は3か年分ある。連結売上高は2024年3月期が4,124,324SGD、2025年3月期が8,003,355SGD、2026年3月期が10,965,919SGD。連結営業利益は同じく296,130SGD、993,413SGD、1,458,813SGDで、2026年3月期の連結純資産は3,943,746SGD、連結総資産は6,352,635SGDである。単位はシンガポールドルのまま記す。 (S1)
数値は会社の提出した連結数値で、円換算は本稿では行わない。取得価額16.2億円と純資産額の比較も、為替レートの選択で読みが変わるため、開示のままにしておく。
07 / READING
生活総合支援に医療を足す、と読める。
ここからは、開示された事実の範囲で書く本稿の分析と仮説である。
海外赴任支援は、赴任前の準備から現地での生活支援まで続く業務である。リログループが医療サービス会社の議決権を持つことで、赴任者の選択肢に現地での受診支援を組み込める可能性がある。ただし、どこまで業務を統合するかは、会社も精査中として具体的な統合計画を開示していない。 (S1)
売り手の顔ぶれから読めるのは、国内の投資事業会社と創業者側から事業会社へ株式が移る構造である。SEKAISHAはCVC事業と教育事業を手がけ、としすみは動画の作成及び配信業で、いずれもリログループとの事前関係は開示されていない。この構造の読みは本稿の分析であり、各譲渡人の意図は開示にない。 (S1)
仮説として、この買収の価値は送客シナジーの実績で決まる。赴任者顧客がATIV Medicalのサービスをどれだけ使うかは、譲渡実行後の開示を待つしかない。クロスセルの規模を測る数字は、現時点で存在しない。
08 / UNDISCLOSED
未開示と、次の確認点。
開示された範囲と残された空白を、項目ごとにそろえて確認する。
2026年10月21日時点
- 株式取得価額
- 開示済み
- 16.2億円 (S1)
- アドバイザリー費用等
- 開示済み
- 0.6億円・概算額 (S1)
- 譲渡実行日
- 次の確認点
- (S1)実行の実施確認
- 売主ごとの譲渡内訳
- 未開示
- 譲渡株式数・対価配分とも未開示
- 残り10%の帰属
- 未開示
- 譲渡後の株主構成は未開示
- 子会社化後の統合計画
- 未開示
- 会社は連結業績への影響を精査中 (S1)
- アドバイザー名称
- 未開示
開示済みなのは、取得株式数(242,910,000株)、議決権所有割合(90.0%)、株式の取得価額(16.2億円)、アドバイザリー費用等の概算額(0.6億円)、合計の概算額(16.8億円)、譲渡実行日(2026年10月30日予定)である。 (S1)
未開示のまま残るのは、売主ごとの譲渡株式数と対価の配分、残り10%の帰属、ATIV Medicalの子会社化後の具体的な統合計画、アドバイザーの名称である。連結業績への影響は、会社が現在精査中と述べている。 (S1)
次の確認点は、2026年10月30日予定の株式譲渡実行の実施確認と、その後の子会社化完了の公表である。実行されなければ、このスキームの前提から見直す必要がある。 (S1)
09 / LESSON
まとめ。
開示と未開示の線を引いた上で、取引の意味を読み手に引き渡す。
今回のスキームは、リログループとATIV Medicalの間に事前の資本関係、人的関係、取引関係がない状態から始まる初めての接続である。 (S1)
16.2億円と16.8億円の差0.6億円は小さく見えるが、この区分は今後の公表を読むときの基準になる。対価と費用が混ざった数字では、次の案件との比較ができない。
譲渡実行日2026年10月30日を迎えるまで、取得は予定のまま。赴任前の不安に現地の医療が上乗せされるのか、その検証は実行後に始まる。


