01 / BACKGROUND
売られるのは接着剤の一部
テープとガラスは残る
対象は3法域にまたがる接着剤事業の一部で、残る事業との境界が発表の中で明示されている。
2026.10.21
接着剤事業の一部
非開示
2027年予定
Sikaが取得するのは、レゾナック株式会社と、台湾のResonac Li-Bond Materials (Taiwan)、中国のResonac Li-Bond Materials (Wuxi)が手掛ける接着剤事業の一部である。 (S1) 両社は2026年10月21日の同日に発表し、3法域にまたがる取引を1案件として進めると説明した。 (S1) (S2)
レゾナックが対象から外したのは、日本のテープ事業と低融点ガラス事業、それに台湾の一部のホットメルトと溶剤系製品である。 (S1) 「接着剤事業」という名前だけでは範囲が定まらず、移る事業と残る事業の両方を追う必要がある。譲渡の輪郭は、この2本の線で初めて正確になる。
契約はすでに結ばれたが、完了は2027年を予定する。売り手のレゾナックは2027年中、買い手のSikaは2027年半ばと表現し、同じ完了に幅がある。 (S1) (S3) 完了には条件の充足が前提で、当局承認の状況は後日の確認事項になる。本稿執筆時点(2026年10月23日)で取引は進行中である。
- FACT
- Sika Group(スイス・Sika AG)は2026年10月21日、レゾナック株式会社と連結子会社2社が手掛ける接着剤事業の一部を取得する契約を結んだ。日本の対象事業は吸収分割で新設の100%子会社へ移管され、その全株式がSikaへ譲渡される。台湾では連結子会社のResonac Li-Bond Materials (Taiwan)が持つ大埔美工場の全事業と、民雄工場のPU・エポキシ接着剤関連事業が事業譲渡の対象になる。中国では連結子会社のResonac Li-Bond Materials (Wuxi)の全持分がSikaへ移る。取得額は両社とも非開示で、完了は2027年を予定する。売り手表記は年中、買い手表記は半ばで、本稿執筆時点(2026年10月23日)では完了していない。 (S1) (S2) (S3)
- ANALYSIS
- 同じ1件の契約に3つの移管方法が並ぶのは、対象資産の形が法域ごとに異なるためと整理できる。日本では会社分割の制度で事業を切り出し、株式に変えてから渡す。台湾では工場ごと資産を受け渡し、中国では現地法人の持分ごと移る。Sikaが公表する取得目的が、日本の自動車OEMの顧客とアジア太平洋の生産網に集中している点は、買い手が求めた資産の輪郭がこの切り出し方と一致していたことの表れと読める。 (S2)
- HYPOTHESIS
- 仮説として、日本の対象事業をいったん新設の子会社へ切り出す2段構成は、譲渡後にレゾナックへ残るテープ事業や低融点ガラス事業との境界を明確にし、従業員や許認可の承継を整えるための準備だと見られる。この読みが当たるかは、新設子会社の設立時に開示される承継範囲で確かめられる。
2026年10月23日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
02 / TIMELINE
意思決定の流れを追う。
2026.10.21
レゾナックは対象範囲と3法域のスキーム、2027年中の完了予定を明示した。 (S1) Sikaは自動車向け接着剤の顧客基盤とアジアの生産網を広げる取得だと説明した。 (S2)
2026.10.23
買収契約の継続と完了時期を確認した。全社の1月から9月の売上はCHF 8.71bnで、対象事業の売上とは別の数値である。 (S4)
2027年(予定)
売り手表記は2027年中、買い手表記は2027年半ば。条件の充足が前提で、最終的な完了日は未開示。 (S1) (S3)
03 / SCHEME
1つの契約に
3つの移管方法が並ぶ
同じ取引の中で、日本は株式に変えて渡し、台湾は事業ごと、中国は持分ごと移す。
日本では、レゾナックが対象事業を吸収分割で新設の100%子会社へ移管し、その子会社の全株式をSikaへ譲渡する。 (S1) 事業は一度株式の形に変わってから移る2段構成である。
台湾では、Resonac Li-Bond Materials (Taiwan)の大埔美工場の全事業と、民雄工場のPU・エポキシ接着剤関連事業が事業譲渡の対象になる。 (S1) 工場単位で資産を受け渡す方法で、株式の譲渡を伴わない。中国では、Resonac Li-Bond Materials (Wuxi)の全持分がSikaへ移り、現地法人がそろって買い手の側へ入る。 (S1)
3つの方法は別々の取引に見えて、1件の契約として同時に進む。 (S1) どの法域で何が移るかは、この分け方を見ることで初めて確定する。
取得額は両社とも公表していない。 (S1) (S2) 対象事業だけの売上と利益も開示がなく、取引の規模を測る数値が揃わない。 (S1) 本稿は対価を推計しない。
- 日本のテープ事業、低融点ガラス事業、台湾の一部製品は対象外。 (S1)
- 取得対価は両社とも非開示。 (S1) (S2)
04 / PARTIES
買い手の規模は開示済み
売る事業の規模は非開示
Sikaの全社規模と対象事業の規模を、この章では混ぜて書かない。両者は別の数値である。
買い手のSika Groupは、建設と産業向けの特殊化学品を手掛けるスイス・バールのSika AGを頂点とする企業群である。 (S1) 2026年6月30日時点で103カ国に展開し、従業員は33,856人を数える。 (S1) 2026年1月から9月の全社売上はCHF 8.71bnだが、 (S4) この数字はSika全体のもので、今回買う接着剤事業の売上ではない。
対象事業は、自動車の内装やバックドア向けの産業用接着剤を中心に、溶剤系、無溶剤系、ホットメルトの各種を扱う。 (S2) 事業だけの売上や営業利益は公表がなく、Sikaの全社規模と並べて比べる数値が存在しない。 (S1)
Sikaは取得の目的として、日本の自動車OEM主要サプライヤーへのアクセス、アジア太平洋での製造ネットワークの統合、台湾でのバッテリー関連用途の拡大、既存顧客とのクロスセルを挙げる。 (S2) 目的の並びは、自動車向け接着剤の顧客とアジアの生産拠点を買いに来た構図と読める。
売り手のレゾナックは、対象事業を子会社2社とあわせて切り出し、日本に残すテープ事業と低融点ガラス事業を対象外として明示した。 (S1)
親会社はスイス・バールのSika AG。上場市場は本稿の出典に記載なし
建設・産業向け特殊化学品。接着剤とシーラント等を扱うグローバル企業 (S1)
- 展開国103カ国(2026年6月30日時点) (S1)
- 従業員33,856人(2026年6月30日時点) (S1)
- 全社売上(1月から9月)CHF 8.71bn(2026年1月から9月) (S4)
- CHF 8.71bnはSika全社の売上で、対象事業の売上ではない。 (S4)
上場市場と証券コードは本稿の出典に記載なし
接着剤事業の一部を日本と台湾、中国から切り出して譲渡。日本のテープ事業と低融点ガラス事業は対象外 (S1)
- 譲渡する資産新設100%子会社の全株式(日本) (S1)
- 対象子会社RLBT(台湾)とRLBWX(中国) (S1)
- 台湾の移管方法工場単位の事業譲渡 (S1)
- 対価未開示 (S1) (S2)
- 対象事業の単独売上と利益未開示 (S1)
- RLBTはResonac Li-Bond Materials (Taiwan)、RLBWXはResonac Li-Bond Materials (Wuxi)の略。 (S1)
05 / STATUS
開示されたこと
開かれないままのこと
この章は、公式資料が確定させた項目と、完了まで開かれない項目を分けて並べる。
公式資料が確定させたのは、対象範囲、3法域それぞれの移管方法、完了目標の年である。 (S1) (S3)
それ以外の条件は、次のボードのとおり開示を待つ状態にある。 (S1)
読者が完了までに確認すべき論点は3つに絞られる。当局承認など完了条件の充足、両社の完了公表、売却対価の後日開示である。 (S1) 値付けの数字が現れた時点で、初めて取引の規模が測れる。
2026年10月23日時点
- 取得対価
- 未開示
- 両社の公式資料に記載なし。推計を載せない (S1) (S2)
- 対象事業の単独売上と利益
- 未開示
- Sika全社の数字とは別の数値 (S1)
- 取得資産の評価額と詳細な契約条件
- 未開示
- 開示されていない。 (S1)
- アドバイザー
- 未開示
- 開示されていない。 (S1)
- 完了時期
- 開示済み
- 2027年予定。売り手表記は年中、買い手表記は半ば (S1) (S3)執筆時点で未完了。最終日は未開示
- 当局承認・完了公表・対価の後日開示
- 次の確認点
- 完了までの3つの確認点 (S1)
06 / TAKEAWAY
2027年の完了まで
対価は開示されない
契約の形は確定した。残るは値付けの開示と、条件の充足である。
Sikaが2026年に完成させた接着剤関連の取得は、トルコのAkkim買収と英国Azpects Groupの取得に続き、本件が3件目になる。 (S2) 同社が接着剤領域を地域単位で買い足す流れの一部と整理できる構成である。対価は後日の開示を待ち、そのとき3つのスキームを束ねた値付けが1つの数字にまとまるか、法域ごとに分かれるかが初めて分かる。読者が2027年に確かめるべきは、完了公表と、値付けの現れ方の2点である。


