NEWS & DOCUMENTARYAIと人間のこれから。
RAXUS AIAIのいまを確かめて届ける。
LATEST EDITION

Microsoft、NscaleのLoughton AIデータセンター計画から撤退 電力接続の遅れを報道、両社は協力関係の継続を表明

AIインフラ企業のNscaleは、英国エセックス州ロートン(Loughton)でMicrosoftと進めていたAIデータセンター「AI Campus」計画から、Microsoftが撤退したと2026年10月18日にThe Telegraphが報じた。報道を受けて両社が交付した声明のうち、Microsoftは「この決定は単一のサイトに関わるもの」と述べてNscaleとの協力関係の継続を明言し、NscaleはLoughton計画自体の継続と代替電源の検討を表明した。撤退の背景には、サイトへの送電網接続が当初の2026年の目標に間に合わない見通しになったことが報じられている。

Nscaleは2025年9月16日、Microsoft、NVIDIA、OpenAIとの英国でのAIインフラ協調の一環として、Microsoftとの間でLoughtonの「AI Campus」に関する「コミットメント(commitment)」を交わしたと発表した。公式発表によると、同サイトは稼働時に英国最大のAIスーパーコンピュータとなり、AI容量50MWを最大90MWまで拡張でき、2027年第1四半期にNVIDIA GB300を2万3,040基導入してMicrosoftのAzureサービスを英国で支える役割を担う予定だった。Microsoftのナデラ最高経営責任者(CEO)も発表文の中で、「2万3,000基を超えるGPUで動く英国最大のスーパーコンピュータ」を発表できることを誇りに思うと述べた。

この計画は、Nscaleが2025年1月にLoughtonで約30億ドルを投じてAI・HPC容量50MW、電力最大90MWのデータセンターを建設すると発表していたものを、Microsoftの参加で拡張する形だった。撤回の前例もある。DCD(Data Center Dynamics)によると、OpenAIは2026年4月、Nscaleと進めていたStargate UK構想から離脱しており、その際も規制とエネルギーコストへの懸念が挙げられていた。

電力接続をめぐる説明の食い違い

撤退の背景として、The TelegraphとDCDはサイトへの送電網接続の遅れを挙げる。DCDによると、このサイトの系統接続は全国規模の送電網事業者National Grid経由では2030年代にならないと見込まれ、National GridはDCDに対し、報道で触れられた2026年の目標時期について合意したことはないと説明した。一方、City AMの報道では、配電事業者UK Power Networksが、上流の送電網容量の問題で2026年の目標に間に合わせられないと述べていたとされる。どの時点でどの事業者が何に合意していたかを示す書面は公表されておらず、現時点で確定した説明はない。

Nscaleの広報担当者はThe Telegraphに、Loughton計画と英国の双方に対するコミットメントを維持しており、英国でのその他の拡張候補地に加え、当サイトの代替電源も検討していると述べた。DCDとCity AMが引用した回答の原文は次のとおりである。

「われわれはLoughton計画と英国の双方に対するコミットメントを維持しており、英国でのその他の拡張候補地に加え、当サイトの代替電源も検討している。Microsoftとの関係は強固で長期的であり、この不幸なロンドン全体の送電網問題は、われわれの他の契約に影響しない。」

We remain committed to both the Loughton project and the UK and we are exploring alternative power sources for the site, in addition to other expansion sites in the UK. Our relationship with Microsoft remains strong and long-term, and this unfortunate London-wide grid issue has no impact on our other contracts.

Nscale広報担当者、The Telegraphへの回答。DCDとCity AMが2026年10月19日掲載の記事で引用

Microsoftの広報担当者はCity AMに次のように述べた。

「われわれは、堅牢なデジタルインフラの構築と世界のAI成長への支援を含め、Nscaleとのパートナーシップへのコミットメントを維持している。この決定は、単一のサイトに関わるものだ。」

We remain committed to our partnership with Nscale, including work to build robust digital infrastructure and support AI growth globally. This decision relates to a single site.

Microsoft広報担当者、City AM、2026年10月19日掲載

Microsoft側の声明は、Nscaleとの協力関係の継続を明言する一方で、単一のサイトに関する「決定」があったことを認める形になっている。ただし、決定の対象となった契約の形式や期間、効力発生日、Microsoft側の財務への影響は、両社とも公表していない。

IPOを控えたNscaleへの影響

Nscaleは現在、米国での新規株式公開(IPO)を準備している。DCDによると、同社は9月に米証券取引委員会(SEC)へ目論見書を公開しており、契約済み収益は約1,030億ドルで、そのうちMicrosoftが約40%を占める。今回の撤退の対象はLoughton拠点であり、契約収益全体に占める割合は小さいとDCDは伝えている。評価額は最大350億ドルと報じられてきたが、Business Timesの報道を引用したDCDの記事では、投資家の間で上場規模の縮小や160億〜190億ドルへの引き下げ提案が出ているとも伝えられている。

図解Loughton計画の経緯
  1. 50MW/最大90MWAI容量と拡張上限

    NscaleとMicrosoftがLoughton「AI Campus」に関するコミットメントを発表。稼働時に英国最大のAIスーパーコンピュータ、NVIDIA GB300を2万3,040基、2027年第1四半期に導入予定(Nscale公式発表)

  2. 撤退を報道The Telegraph

    The TelegraphがMicrosoftのLoughton撤退を最初に報じた。Nscaleは計画継続と代替電源の検討を声明(DCDとCity AMが報道と声明を引用)

  3. 単一のサイトMicrosoft声明

    Microsoft広報が「この決定は単一のサイトに関わるもの」と述べ、Nscaleとのパートナーシップの継続を明言(City AM掲載)

各項目の出典の公開日。2025年1月の建設計画と2026年4月のOpenAI離脱は月単位でしか確認できていないため、本文にのみ記載した。

出典

  1. Nscale announces UK AI infrastructure commitment in partnership with Microsoft, NVIDIA and OpenAI(Nscale公式発表)2025年9月16日公開。2026年10月20日確認。Loughton AI Campusの計画内容(AI容量50MWで最大90MW、GB300 2万3,040基を2027年第1四半期に導入、英国最大のAIスーパーコンピュータ)とMicrosoftとの「コミットメント」の語を確認
  2. Microsoft pulls out of Nscale deal for UK's largest AI data centre(City AM)2026年10月19日公開。2026年10月20日確認。Microsoft広報の声明、Nscale広報の声明、UK Power Networksの2026年目標に関する説明を確認
  3. Microsoft pulls out of delayed Nscale data center in Loughton, Essex(DCD)2026年10月19日公開。2026年10月20日確認。National Gridの見解、2030年代の系統接続見込み、Nscale広報の声明の引用、2025年1月の建設計画、OpenAIのStargate UK離脱、契約収益約1,030億ドルとMicrosoft構成比約40%を確認
  4. Microsoft axes AI deal in setback for UK data centre pioneer(The Telegraph)2026年10月18日公開。2026年10月20日確認。有料記事のため本文の直接取得はできず、DCDとCity AMが引用する報道内容と声明の範囲で確認

出典の確認日 2026.10.20

KEEP EXPLORING

あわせて読みたい記事と映像

企業・人物の記事一覧
  1. Nscale、Anthropicと最大446億ドルのGPU契約 融資と納入に条件

    Nscale Limitedは2026年9月18日にSECへ提出したForm S-1で、Anthropicと結んだ4件のGPUサービス契約について、Nscaleが受け取る支払いが最大約446億ドルになると開示した。金額はGPU設備の納入とサービス稼働などの条件付きだ。Nscaleは同じ目論見書で、契約履行に必要な資金調達の拘束力ある確約をまだ得ていないと説明している。

    記事を読む
  2. American Express、世界の職位の約5%削減へ――再編費用3億3,600万ドル、AIエージェントの接続は承認済みAPI/MCPに限定

    American Expressは2026年10月23日の2026年第3四半期決算で、3億3,600万ドルの再編費用を計上し、世界の職位の約5%を削減する見通しを明らかにしました。CEOはAIエージェントによる決済を成長領域と位置づける一方、外部エージェントの接続は承認済みAPIまたはMCPチャネルに限定する方針を示しています。

    記事を読む
  3. AmazonのJassy CEO、AWSの大型容量は2026年分が売約済み・2027年大半と説明 2026年の設備投資は約2,200億ドル

    AmazonのAndy Jassy CEOは2026年10月23日公開のa16zポッドキャストで、AWSの大口計算容量について2026年分は売約済み、2027年分は大半が売約済み、2028年分も相当部分が契約済みと述べました。オンデマンドやEC2、Bedrock向けには一定の容量を残すと説明しています。2026年のAmazon全社の設備投資は約2,200億ドルの見通しです。契約済み容量の金額や数量は公表されていません。

    記事を読む