01 / OVERVIEW
何が始まり、
何がまだ起きていないか。
2026年10月22日の発表を経て、TOBは10月23日に始まった。確定したのは条件までで、結果はまだどこにもない。
2,020円
10.23〜12.07
66.67%
DEAL PROGRESS
TOBの現在地と、成立後の分岐
- 01発表・応募契約・賛同意見
2026年10月22日、HHH1がTOBを決定。パソナグループ・TQUILA LIMITEDと全株応募契約。サークレイスが賛同と応募推奨を決議。東証が監理銘柄(確認中)に指定。 (S1) (S2) (S3)
完了した事実 - 02TOB開始
2026年10月23日に買付期間が始まる(30営業日)。執筆時点は初日。 (S2)
開始済み・買付期間中 - 03買付期間終了
2026年12月7日(予定)。 (S2)
未到来の予定 - 04応募状況の公表と成立判定
期間終了後の開示で確定する。下限未満なら応募株券等の全部を買付けない。 (S2)
未到来の予定 - 05決済開始
2026年12月14日(予定)。 (S2)
未到来の予定 - 06スクイーズアウト・上場廃止
90%以上なら株式等売渡請求(2027年1月下旬頃)、90%未満なら株式併合(2027年3月下旬頃)を予定。 (S3)
成立が前提の予定
完了は当日までに確認できた開示事実、開始済みは進行中の買付期間、未到来は未実施の予定を示す。成立と上場廃止は現時点の事実ではない。
全履歴(5件)を開く
2026.10.22
パソナグループ(32.31%)・TQUILA LIMITED(30.80%)が全株応募を契約。サークレイスが賛同と応募推奨を決議。東証が監理銘柄(確認中)に指定。 (S1) (S2) (S3)
2026.10.23
買付期間の初日。1株2,020円、期間は12月7日までの30営業日。執筆時点で成立の事実はない。 (S2)
2026.12.07(予定)
終了後の応募状況の公表で成立の可否が確定する。下限未満なら全株を買付けない。 (S2)
2026.12.14(予定)
TOBが成立した場合の決済開始日。 (S2)
成立後(予定)
90%以上なら株式等売渡請求(2027年1月下旬頃)、90%未満なら株式併合(2027年3月下旬頃)の予定。時期のずれに注意。 (S3)
HHH1合同会社は2026年10月22日、サークレイスの普通株式の全て(自己株式を除く)と4種の新株予約権の全てを対象とする公開買付けを決定した。目的は、サークレイスの株主を公開買付者のみとし、対象会社を完全子会社化することである。 (S2)
背景として、対象会社は取締役会で本TOBへの賛同と株主への応募推奨を決議した。賛同理由として、同社単独では大規模なM&Aやサービス拡大に必要な資金調達の金額とスピードに限界があること、ヒルハウスの資本やM&A支援、投資先ネットワークを活用して中長期の成長投資と経営改革を進めたいことが開示されている。 (S3)
同じ10月22日、東京証券取引所はサークレイス株式を監理銘柄(確認中)に指定した。指定理由は、TOB成立後の上場廃止に向けた手続に該当する可能性を認めたためである。 (S1)
TOBは10月23日に始まり、買付期間は12月7日までの30営業日である。執筆時点(2026年10月23日)で成立した事実はなく、応募数も公表されていない。開始されたことと、成立したことは、別の段階にある。 (S2)
- FACT
- 2026年10月22日、HHH1合同会社(代表社員Inspire APAC Holdings Pte. Ltd.)は、サークレイス株式会社(東証グロース・5029)の普通株式の全て等を対象とする公開買付けを決定した。買付価格は1株2,020円、買付期間は2026年10月23日から12月7日までの30営業日、買付予定数の下限は2,970,800株で上限はない。筆頭株主パソナグループ(32.31%)と第2位株主TQUILA LIMITED(30.80%)は全株応募の契約を締結し、対象会社は賛同と応募推奨を決議した。東証は同日、監理銘柄(確認中)に指定した。執筆時点(2026年10月23日)でTOBは初日を迎えたばかりで、成立も上場廃止も起きていない。 (S1) (S2) (S3)
- ANALYSIS
- 応募契約2件の合計は2,812,600株で、潜在株式勘案後株式総数の63.11%にあたる(計算上)。成立下限の2,970,800株までは158,200株、約3.6%分が足りない。大株主2社の契約だけでは成立要件を満たせない設計であり、残りを他の株主の応募で埋められるかが、このTOBの最初の判定点になると整理できる。 (S2)
- HYPOTHESIS
- 仮説として、対象会社が挙げた賛同理由(単独では大規模なM&Aやサービス拡大に必要な資金調達の金額とスピードに限界)が本件で解消されれば、非公開化後に中長期の投資判断を進めやすくなる可能性がある。ただし取得後の経営体制は未定で、投資計画の開示はまだなく、この可能性を裏づける開示は現時点で存在しない。 (S3)
2026年10月23日時点の公開情報。以降の章は、開示事実を土台にしたRAXUSの分析・仮説です。根拠資料を見る ↓
03 / TERMS
確定しているのは、
ここまでの条件だ。
価格・下限・期間・決済日まで開示されている。総額だけは応募数が決める。
買付価格は普通株式1株あたり2,020円で、新株予約権は1個あたり1円である。支払いは現金である。 (S2) (S3)
買付予定数の下限は2,970,800株で、潜在株式勘案後株式総数4,456,145株の約66.67%にあたる。上限は設定されていない。応募が下限に満たなければ、応募株券等の全部の買付けを行わない。上限がないことは、応募が全て受け付けられることや、TOBが成立することを意味しない。 (S2)
買付期間は2026年10月23日から12月7日までの30営業日で、決済の開始日は12月14日予定である。 (S2)
資金は、公開買付者親会社から92億円を限度とする出資で全額を賄う予定で、借入れは予定されていない。 (S3) 買付代金の総額は応募数に依存して変わり、確定した取得対価はまだ存在しない。上限株数を全て買付けた場合の金額は、4,456,145株×2,020円で計算上約90億円となる。
DEAL PRICE
買付価格と買付予定数
価格は応募数で変わらない。買付代金の総額は応募数に依存し、確定しない。
| ケース | 価格 | 条件 | 位置づけ(2026年10月23日) |
|---|---|---|---|
| 普通株式 | 2,020円 | 固定・買付価格 | 開示値2026年10月22日 (S2) |
| 新株予約権(4種・1個あたり) | 1円 | 固定・買付価格 | 開示値2026年10月22日 (S2) |
| 買付代金の上限 | 約90億円 | 上限株数4,456,145株を全て買付けた場合 | 計算値・未確定 |
04 / PATH
二つの応募契約でも、
下限には届かない。
成立条件の芯は、残り15万8,200株を誰が埋めるかにある。
公開買付者は10月22日、筆頭株主パソナグループ(1,440,000株・32.31%)と第2位株主TQUILA LIMITED(1,372,600株・30.80%)との間で、保有株の全株について応募する契約を結んだ。いずれもサークレイスのその他の関係会社である。 (S2)
両契約を合計すると2,812,600株で、潜在株式勘案後株式総数の63.11%にあたる(計算上)。成立下限の2,970,800株までは、あと158,200株、比率で約3.6%分が足りない。大株主2社の契約があっても、残りを他の株主の応募で埋められなければTOBは成立しない。 (S2)
ここからは設計の読みである。買い手は大株主側の応募を契約で固定し、下限から先は市場の応募に委ねる構造を取ったと読める。66.67%という下限は、議決権の3分の2という株主総会の特別決議基準に一致する水準であり、株式併合の道を開く最低ラインと整理できる。
対象会社の開示によれば、成立後は取得割合で手続が分かれる。90%以上を取得した場合は株式等売渡請求を経て、90%未満の場合は株式併合を経て、上場廃止となる見通しが示されている。完了時期の予定は、株式等売渡請求なら2027年1月下旬頃、株式併合なら2027年3月下旬頃である。 (S3) 東証の指定した監理銘柄(確認中)は、上場廃止基準に該当するかどうかの認定まで続く。 (S1)
05 / COMPANIES
買い手は新設の目的会社。
対象は黒字のDX企業。
取引の両側の実体を、開示された範囲で置く。
HHH1合同会社は2025年4月10日に設立された合同会社で、他社の株式の取得、保有及び管理等を主な目的とする。代表社員はInspire APAC Holdings Pte. Ltd.で、その持分の全てを、ヒルハウスが管理、助言又は運営するファンドが所有する。本日現在、ヒルハウス側はサークレイスの株式と新株予約権を保有していない。 (S2)
資金手当ては、親会社から92億円を限度とする出資で、TOBに要する資金の全額を自己資金で調達する予定である。金融機関等からの借入れは予定されていない。企業としての売上は確認できない。買収後の経営体制は対象会社との協議後に決定する予定で、現時点では未定である。 (S3)
対象のサークレイスは東証グロース上場のIT企業で、Salesforce、ServiceNow、Databricks、AWS、Microsoft365、Azure等のクラウドを活用した業務変革支援と、自社SaaSのクラウドサービス「AGAVE」の展開で企業のDXを支える。2026年3月期の連結売上高は4,540百万円、連結営業利益は266百万円である。 (S3)
取引前の時点で、対象会社と公開買付者の間に資本関係、人的関係、取引関係はなかったと開示されている。対象会社は、第三者算定機関大手町M&Aアドバイザリーに株式価値算定を依頼し、その算定書を踏まえて意見表明を作成した。価格の公正性を審査する特別委員会(4名)が設置されている。 (S3)
非上場・合同会社
他社の株式の取得、保有及び管理等を主な目的とする買収目的会社。代表社員はInspire APAC Holdings Pte. Ltd.。 (S2)
- 設立2025年4月10日 (S2)
- 親会社Inspire APAC Holdings Pte. Ltd.(ヒルハウス系ファンドが全株式を間接所有) (S2)
- 資金手当て親会社から最大92億円の出資・借入れなし (S3)
- 本日現在のサークレイス保有なし (S2)
- 企業としての売上未開示
- 買収後の経営体制は対象会社との協議後に決定する予定で、現時点では未定。 (S3)
東証グロース・5029
Salesforce、ServiceNow、Databricks、AWS等のクラウド導入・業務変革支援と、自社SaaS「AGAVE」。 (S3)
- 連結売上高4,540百万円(2026年3月期) (S3)
- 連結営業利益266百万円(2026年3月期) (S3)
- 潜在株式勘案後株式総数4,456,145株 (S2)
- 市場シェア未開示
- 競争環境の定量比較(シェア・受注残等)は本件の一次開示に記載がない。
06 / WATCH
確定していないことと、
読者が確認すること。
本稿執筆時点で未確定な項目と、期間中から成立後までの確認点を並べる。
未確定のまま残るのは、応募数とTOB成立の可否、買付代金の総額、取得割合、上場廃止の実施とその日程である。取得後の経営体制も、協議後に決定する予定で現時点では未定だ。 (S2) (S3)
対象会社は、本件のシナジー効果については現時点で具体的に見積もることが困難と開示し、事業計画は本公開買付けの実行を前提としたものではないと説明している。 (S3)
確認点は四つある。第一に、買付期間中と終了後の応募状況の公表。第二に、12月7日予定の期間終了後の成立判定で、下限未満なら全株の買付けが行われない。第三に、監理銘柄(確認中)の認定の行方。第四に、成立した場合の90%の分岐とスクイーズアウトの日程、12月14日予定の決済開始である。 (S1) (S2) (S3)
残る158,200株を、誰の応募が埋めるか。読者の最初の確かめどころは、下限に対する応募の積み上がりである。
2026年10月23日時点
- 買付価格
- 開示済み
- 2,020円(普通株式1株あたり) (S2)
- 応募契約
- 開示済み
- パソナグループ32.31%+TQUILA LIMITED30.80% (S2)
- TOB成立
- 未開示
- 可否未確定。期間終了後の開示で確定。
- 買付代金の総額
- 未開示
- 応募数に依存して変動。
- 取得後の経営体制
- 未開示
- 対象会社との協議後に決定予定。 (S3)
- 成立後の分岐
- 開示済み
- 株式等売渡請求(90%以上)/株式併合(90%未満) (S3)
- 監理銘柄(確認中)の認定
- 次の確認点
- 上場廃止基準への該当性の認定を追う。 (S1)
07 / LESSON
条件は決まった。
答えは応募状況が出す。
このTOBの最初の判定点は、価格でも規制でもなく、応募数である。
確定しているのは2,020円という価格と66.67%という下限までで、残る問いは158,200株を市場が埋めるかどうかだ。
フェアネス・オピニオンを取得しないまま、第三者算定と特別委員会で価格の根拠を整えた点は、対象会社の開示として読みどころになる。 (S3)
大株主2社の63.11%が固定したうえで空いた残り約3.6%を、他のどの株主層の応募が埋めるのか。12月7日の期間終了後、最初の答えが開示される。


