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日銀が31年ぶり1.25%へ利上げ。在庫も売掛金も「タダで寝かせておけない」時代に
公開 2026.09.24
日銀が政策金利を1.25%に上げた。上がるのは借入の利息だけではない。30年近くほぼゼロだった金利が戻り、在庫や売掛金など寝ているお金にもコストがつき、資金の使い道に足切りラインが引かれる。仕組みと業界別の効き方、打ち手を図で整理する。

日本銀行が9月18日に決めた政策金利1.25%が、きょう9月24日から適用されます。上がるのは借入の利息だけではありません。30年近くほぼゼロだった金利が戻り、在庫や売掛金のように寝ているお金にもコストがつき始めます。仕組みから自社での読み方までを図で整理します。
最初に結論:金利が戻ると、寝ているお金にもコストがつく
まず見るべき判断表|財務の形で分かれる最初の一手
| 自社の状況 | 最初に検討すること | 見る数字 |
|---|---|---|
| 変動金利の借入が大きい | 値上げで取り返すか、在庫と売掛金を圧縮して借入そのものを減らすかを先に決める | 借入残高×金利上昇幅(借入5億円なら1%上昇で年500万円) |
| 在庫・売掛金が厚い | 寝ているお金に借入金利を掛け、置いておくコストを見える化する | 在庫と売掛金の回転日数 |
| 無借金で現預金が厚い | 預金金利と、事業に回したときの利回りを比べる | 普通預金0.5%と事業の利回りの差 |
| 投資を控えている | 借入金利(無借金なら借りたら付くはずの金利)を足切りラインとして書き出す | 投資の利回りの下限 |
問われているのは借りるか借りないかではなく、借りたお金が金利以上に働いているかどうか。資金の使い道ごとに「金利を上回って稼ぐか」の物差しを当てましょう。
9月18日、日銀は31年ぶりの水準まで金利を上げた
日本銀行は9月17・18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度から1.25%程度に引き上げることを決めました。6月の利上げから3か月しか空いておらず、1995年以来、31年ぶりの水準です。9人の政策委員のうち2人が反対する、意見の割れた決定でもありました。
銀行の動きも早く、同じ日のうちに3メガバンクが普通預金の金利を0.4%から0.5%へ引き上げると発表しました。三菱UFJ銀行は、企業向け融資の基準になる短期プライムレートも2.375%から2.625%へ引き上げます(いずれも11月2日から)。
KEY NUMBERS
9月18日の決定と、銀行の金利の動き
1.25%
政策金利(1995年以来、31年ぶりの水準)
2.625%
短期プライムレート(三菱UFJ銀行、2.375%から)
0.5%
3メガバンクの普通預金金利(0.4%から)
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)ほか各回の公表資料をもとに筆者作成。日本の短期の政策金利(1995〜98年は公定歩合、以降は無担保コール翌日物の誘導目標、2016〜24年は日銀当座預金の政策金利残高への付利)を簡略化して表示。2001〜06年と2013〜16年は金利以外(当座預金残高・マネタリーベース)が主な操作目標だった期間で、細かな変動や時期も省略している。
そもそも「政策金利」は、どうやって会社の利息に届くのか
政策金利とは、一言でいえば銀行同士が一晩だけお金を貸し借りするときの金利の目安です。日銀は、銀行に資金を配ったり吸い上げたりして、この金利を狙った水準に誘導します。今回の決定は、その目安を1.25%に上げたということです。
これがあなたの会社にどう届くかというと、銀行はこの一晩の金利を「仕入れ値」のように見ながら、企業に貸す金利と預金につける金利を決めます。変動金利の借入や当座貸越の多くは、短期プライムレートを基準に決まっています。そのため政策金利が上がると、数か月遅れてあなたの会社の利息が上がります。預金の利息も同じ流れで上がります。
出典:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」、三菱UFJ銀行の発表(2026年9月18日)をもとに筆者作成。2.625%は11月2日から適用予定の値。
もう1本、別の流れもあります。10年ものの国債の利回り、いわゆる長期金利です。こちらは日銀が直接決めるものではなく、市場の売り買いで決まります。9月1日には3%を超え、1996年以来の水準になりました。固定金利の借入やリース料は、主にこちらの流れの影響を受けます。
出典:日本銀行(2026年9月18日公表、長・短期プライムレートの推移)、三菱UFJ銀行の発表(2026年9月18日)、日本経済新聞(2026年9月1日)をもとに筆者作成。短期プライムレートと預金金利は3メガバンク(短プラは三菱UFJ銀行)の11月2日からの水準。長期プライムレートは9月10日時点。
日銀はなぜ上げたのか。反対した2人は何を見ていたか
狙いは物価の行き過ぎを抑えることです。日銀は発表文で、原油高と円安、AI関連の需要拡大によって企業同士の取引価格が高い伸びを続けており、それが消費者の買う値段にも波及し始めていると説明しています。物価の基調は目標の2%に近づいていて、放っておくとそれを上回って上振れるリスクがある。だから先回りして、アクセルを少しだけ緩めたわけです。日銀自身、利上げ後も金融緩和の状態は続くと見ています。
面白いのは、反対した2人の理由です。浅田委員は、消費者物価の上昇率はまだ2%を下回っていて景気も必ずしも強いとは言えないとして、据え置きを主張しました。佐藤委員は、経済と物価がこれまでより大きく加速しているわけではないので、このタイミングの利上げは適切ではないとしました。物価の勢いをどう読むかで、金融政策の専門家の間でも判断が割れているのです。
ただ、多数派の見立ては明確です。日銀は同じ発表文で、利上げ後も「緩和的な金融環境は維持される」とし、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げていく方針を示しています。見通しどおりに進むなら、1.25%は到達点ではなく途中ということになります。
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)をもとに筆者作成。
上がるのは利息だけではない。寝ているお金にもコストがつく
報道の多くは、住宅ローンがいつ上がるかや、次の利上げの時期を追っています。企業向けの解説も、多くは利息がいくら増えるかと、固定金利への借り換えで止まっています。けれども、このニュースの本質は利息負担の増加ではありません。30年近くほぼゼロだった金利が戻り、寝ているお金にもコストがついて、資金の使い道に足切りラインが引き直されることです。
金利がゼロに近かった時代、借りたお金はほとんどタダでした。多少見込みの甘い投資でも、借入コストを上回るのは難しくありませんでした。在庫を多めに持っても、売掛金の回収が遅れても、使っていない土地や設備を抱えていても、「置いておくだけ」なら目に見えるコストはほぼかかりません。判断の物差しがなくても大きくは失敗しない。その意味で、ゼロ金利は経営判断の甘さを覆い隠してくれていました。
金利が戻ると、この覆いが外れます。借りたお金には、毎年はっきりと利息がかかります。在庫や売掛金のように現金が寝ている場所にも、その分の利息がかかっているのと同じことになります。一方で、手元の現預金には利息がつき始めます。お金をどこに置き、何に使うか。その一つひとつに「金利を上回って稼ぐか」という物差しが当たるようになります。問われているのは借りるか借りないかではなく、借りたお金が金利以上に働いているかどうかです。
私たちの判断軸でいえば、これは「仕組みになるか」の話です。ゼロ金利の時代は、投資や在庫の判断が社長の勘で回っていても、致命傷にはなりませんでした。金利のある時代には、その勘を「この金利を上回るものにだけ使う」という数字の基準に置き換えた会社から、資金の使い道が締まっていきます。稼ぐ事業にお金を寄せ直すという意味では、「成長に効く」選別でもあります。事業ごとに、寝かせている資本に対してどれだけ稼いでいるかを測る物差しはROICの使い方で扱っています。
筆者作成。
同じ1.25%でも、業界によって効く場所が違う
同じ利上げでも、効き方は業種によってかなり違います。帝国データバンクが利上げ当日の9月18日に公表した試算によると、2025年度の企業の平均借入金利は1.34%(9月時点の集計)と、6年ぶりに1.3%台に乗る見通しです。そのうえで、有利子負債を持つ約16万8,000社を対象に、借入金利が0.25%上がると1社あたりの利息負担は年平均46万円増え、経常利益は平均1.9%減るとしています。借入金利が1%上がれば負担は185.8万円、経常利益は7.7%減り、6.2%の会社が経常赤字に転じる計算です。
出典:帝国データバンク 利上げの影響度に関する試算(2026年9月18日公表)。2025年度決算で有利子負債のある約16.8万社が対象。赤字転落は経常赤字に転じる企業の割合。
ただし、利息負担が小さい業種でも安心はできません。金利は、あなたの会社の借入だけでなく、顧客や取引先の懐にも同時に効くからです。以下は、おおまかな業種ごとに、自社の利息と顧客側への影響の2つの面から、効く場所を筆者なりに整理したものです(帝国データバンクの数値を引いた箇所は明記しています)。
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建設・不動産
- 自社の利息:不動産は、物件を借入で持つ構造のため影響が最も大きい層(帝国データバンクの試算では、借入金利が0.25%上がると1社あたり約230万円増で、業種別で最大)。建設は自社の利息負担が小さい(同16万円増、最小)。
- 顧客側:施主や買い手のローン金利が上がり、着工や購入の判断が後ろにずれやすい。
- 見る数字:受注残と、施主の資金計画が前提にしている金利
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製造(素材・機械・電機・輸送機)
- 自社の利息:設備資金の借入。長期金利の上昇で、固定金利の設備資金が割高になる。
- 顧客側:取引先の設備投資が慎重になると、部品や機械の受注に波及する。
- 見る数字:設備投資を判断するときの利回りの下限
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商業(卸・小売)・食品
- 自社の利息:在庫と売掛金をまかなう運転資金。仕入値の上昇で在庫の金額自体が膨らんでいるところに、金利が乗る。
- 顧客側:家計はローン負担の増加と預金利息の増加が相殺しあい、消費への影響は世帯によって分かれる。
- 見る数字:在庫と売掛金の回転日数
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運輸・物流
- 自社の利息:車両や倉庫の借入とリース。リース料も金利を織り込んで決まるため、更新のたびに上がりやすい。
- 顧客側:荷主の在庫圧縮が進めば、保管や配送の量と頻度が変わる。
- 見る数字:次のリース更新の時期と料率
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情報通信・サービス(IT、人材、教育など)
- 自社の利息:借入は少なめな業態が多い。現預金を厚く持つ会社は、預金利息が増える側に回る。
- 顧客側:顧客企業が投資を「金利以上に稼ぐか」で選び直すため、提案が費用対効果で比べられやすくなる。
- 見る数字:顧客の予算が決まる時期と、提案の回収年数
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医療・介護など価格が公定の業態
- 自社の利息:施設の借入が大きいことが多い。
- 顧客側:価格が報酬制度で決まるため、利息の増加を自分で価格に転嫁できない。
- 見る数字:次の報酬改定までに積み上がる利息の増加額
なお、金融(銀行など)は貸出と預金の金利差が広がりやすく、利上げが追い風になる側です。今回の利上げ前、今年3月の帝国データバンクの調査でも、2026年度に増収増益を見込む割合が最も高かったのは金融でした。
出典:帝国データバンク 利上げの影響度に関する試算(2026年9月18日公表)、同「2026年度の業績見通しに関する企業の意識調査」をもとに筆者作成。影響の大小は筆者の整理。
借入のある会社と無借金の会社で、打ち手は正反対になる
自社に置き換えたとき、まず見るべきは「金利がゼロだったから見えていなかったコスト」です。借入の利息だけではありません。3か月分積んでいる在庫、90日かけて回収している売掛金、使っていない土地や設備。ゼロ金利の間は「置いておくだけ」だったものに、これからはコストがつきます。在庫と売掛金が手元の資金をどれだけ吸っているかの見方は資金繰りを安定させる手元資金の決め方で扱っています。
そして、何から手をつけるかは財務の形で分かれます。
借入が年商の半分ある会社なら。年商10億円で、変動金利の借入が5億円ある会社を考えます。借入金利が1%上がれば、利息は年500万円増えます(筆者試算)。経常利益率が3%、つまり利益が3,000万円の会社なら、その6分の1が消える計算です。値上げで取り返すのか、在庫と売掛金を圧縮して借入そのものを減らすのか。先に決めておかないと、利上げのたびに利益が少しずつ削られていきます。値上げを取引先に申し入れるときの根拠の作り方は営業ヒアリングの技術で扱っています。
無借金で、現預金が厚い会社なら。利上げは預金利息が増える追い風に見えます。ただ、メガバンクの普通預金の金利は、11月に上がっても0.5%です。同じお金を自社の事業に投じたら何%で回るのか。金利のある時代には、現金を置いておくことにも比べる相手ができた、と考えるほうが実態に近いはずです。蓄えを「安心材料」から「次の投資の原資」に読み替えるときかもしれません。
筆者作成。数字は本文の試算例。
借入5億円・年商10億円の会社
年500万円
借入金利が1%上がったときの利息の増加。経常利益3,000万円の6分の1にあたる(筆者試算)
無借金で現預金が厚い会社
0.5%
11月以降のメガバンクの普通預金金利。事業に投じたときの利回りと比べる
明日できる一手は、寝ているお金を1枚の表にすることです。在庫、売掛金、使っていない土地や設備。それぞれの金額の横に、いまの借入金利を掛けた額を書き込んでください(無借金の会社は、借りたら付くはずの金利で構いません)。在庫が1億円、借入金利が2%なら、その在庫は年200万円のコストを払いながら棚に置かれています(筆者試算)。その合計が、あなたの会社がお金を寝かせるために払っているコストです。手元の現預金は、事業に回したときの利回りと預金金利の差を横に書いておくと、置いておくことの損得が見えます。そして、借入金利(無借金なら借りたら付くはずの金利)を、投資や在庫を判断するときの足切りラインとして書き出しておけば、次の利上げのたびに線を引き直すだけで済みます。投資の足切りラインをどこに置くかは設備投資の判断基準で、金融機関と条件を話す材料は金融機関との交渉で整理しています。使っていない設備を手放すか替えるかの判断は設備の買い替えの判断で扱っています。
筆者作成。年商10億円・借入金利2%の会社を想定した記入例で、在庫以外の金額と事業の利回りは筆者の仮定。
5問で確認する 金利のある時代への備え
利上げを「利息が少し増える話」で終わらせていないかを確かめる簡易チェックです。
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5問で確認|金利のある時代への備え
直近の決算と借入の状況を思い浮かべて、いまの状態にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。
※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。
まとめ
日銀の利上げで上がるのは借入の利息だけではありません。30年近くほぼゼロだった金利が戻り、在庫や売掛金のように寝ているお金にもコストがつき、資金の使い道に足切りラインが引き直されます。借入のある会社は「減らす」、無借金の会社は「働かせる」。打ち手は財務の形で正反対になります。
NEXT ACTION / 次にやること
寝ているお金を1枚の表にし、借入金利を掛けたコストを書き込む
在庫、売掛金、使っていない土地や設備の金額の横に、いまの借入金利(無借金なら借りたら付くはずの金利)を掛けた額を書いてください。その合計と、借入金利という足切りラインを書き出しておけば、次の利上げのたびに線を引き直すだけで済みます。
出典・調査の対象範囲
※業種別の効き方と試算例は、公表資料をもとにした筆者の整理です。個別の借入条件や投資判断は、取引金融機関・専門家とご確認ください。



