MANAGEMENT / M&A・承継プロセス

事業承継の進め方 5つのステップと60歳から始める逆算スケジュール

公開 2026.09.03

事業承継は中小企業庁の5ステップで進みます。親族内・従業員・第三者の比べ方、承継の何年前に何を始めるかの逆算、個人保証・遺留分・株式分散という関門、そして事業承継税制の期限(計画提出は令和9年9月30日)までを一次情報で整理します。

事業承継は5つのステップで進みます。着手の目安は経営者が60歳になる頃、実行の約10年前です。
  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」は、①準備の必要性の認識、②見える化、③磨き上げ、④事業承継計画の策定(社外への引継ぎならM&Aの工程)、⑤実行、という5ステップを示しています。後継者を決めてから承継が完了するまでの移行期間は3年以上を要する割合が半数を上回ります
  • 事業承継税制(特例措置)は、特例承継計画の提出期限が令和9年(2027年)9月30日、贈与・相続の実行期限が令和9年12月31日です。計画の提出期限は1年6か月延長されましたが、実行期限は延長されていません
  • 経営者保証は、事業承継の際に前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことが原則です。2020年4月から適用されている特則が、金融機関側の対応として明記しています

事業承継は、株式の移転手続きではありません。経営権・資産・信頼という性質の違う3つを、数年がかりで移す長期プロジェクトです。しかも税制の期限、個人保証、遺留分、株式の分散といった「知らないと後で戻せない論点」が途中に埋まっています。本稿では、公的なフレームである5つのステップに沿って全体像と時間軸を示し、承継の何年前に何を始めるべきかを逆算で整理します。第三者への引継ぎ(M&A)は選択肢の一つとして位置づけ、実務の詳細は別稿に譲ります。

最初に結論:事業承継の5つのステップと、それぞれの所要期間

まず全体像です。中小企業庁は「事業承継ガイドライン」で、承継の準備を5つのステップに整理しています。ステップ4だけが親族内・従業員承継と社外への引継ぎ(M&A)で分岐し、それ以外は共通です。

まず見るべき判断表|事業承継の5ステップと所要期間・関門

ステップやること所要期間の目安ここでの関門
1事業承継に向けた準備の必要性の認識着手時期の判断。ガイドラインは「概ね60歳に達した頃」を目安とする家族の問題として抱え込み、外部に相談しないまま時間が過ぎる
2経営状況・経営課題等の把握(見える化)数か月〜1年(編集部の目安)株主名簿・自社株評価・経営者保証・会社と個人の貸借を確認していない
3事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)数年(編集部の目安)株価対策が目的化し、事業と無関係な資産購入や持株会社設立に走る
4-1事業承継計画の策定(親族内・従業員承継)後継者への移行期間は3年以上が半数超、10年以上も少なくない後継者の意思確認をしないまま「継ぐはず」で進める
4-2M&Aの工程の実施(社外への引継ぎ)マッチング期間は案件ごとに幅がある相手が見つかる前提でスケジュールを組む
5事業承継・M&Aの実行資産移転と経営権移譲。税務・法務の手続を伴う税制の期限、個人保証、遺留分の処理漏れ

(出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」、令和4年3月改訂。移行期間は同ガイドライン図表16、帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査」2020年による)

着手の目安は経営者が概ね60歳に達した頃。後継者への移行期間だけで3年以上を要する割合が半数を超えるため、60歳での着手は前倒しではなく標準的なタイミングです。

この表で最初に見るべきは所要期間の欄です。ステップ4だけで3年以上、そこにステップ2と3が乗ります。ガイドラインは、後継決定者が経営者になるために必要だと思う準備期間について「5年以上」との回答が約5割を占めることも紹介しています。平均的な引退年齢が70歳前後であることを踏まえると、60歳での着手は前倒しではなく、むしろ標準的なタイミングだと考えてください。

なぜ早さがそこまで効くのか。理由は、時間が選択肢の数に直結するからです。ガイドラインは「時間的余裕があれば採り得た選択肢が徐々に失われていく」と明記しています。後継者候補を探す時間、育てる時間、株価が下がった期を待って株式を移す時間、金融機関と個人保証を協議する時間。これらはすべて、残り年数が減るほど使えなくなります。逆に言えば、いま着手すること自体が最も効率のよい打ち手です。

承継先は3つ 親族内・従業員・第三者の比べ方

ステップ1で最初に決めるのは「誰に渡すか」の方向性です。ガイドラインは承継の類型を親族内承継・従業員承継・社外への引継ぎ(M&A)の3つに区分しています。経営者にとっての違いは、後継者の資金負担・使える税制・個人保証の扱い・所要期間の4点に集約されます。株式上場まで含めて出口を比べたい場合は、IPO準備の全体像で上場・M&A・承継の3つを並べています。

承継先3類型の比べ方|資金負担・税制・個人保証・所要期間

親族内承継従業員承継(役員・従業員)第三者承継(M&A)
後継者の資金負担贈与・相続で移せるため負担は小さい。ただし納税資金は必要買取資金の確保が最大の壁。種類株式・持株会社・従業員持株会の活用例がある買い手が支払う。現経営者は売却代金を得る
使える税制事業承継税制(特例措置)、相続時精算課税、暦年贈与事業承継税制は親族外の後継者も対象。相続時精算課税は原則として直系卑属の推定相続人・孫に限られる譲渡所得課税。納税猶予の枠組みではない
個人保証後継者が引き継ぐか、解除するかの協議が必要同左。保証を理由に承継を断られる例が指摘されている原則として買い手側で借入を組み替え、前経営者の保証は解除に向かう
所要期間後継者教育を含め5〜10年同程度。加えて親族株主の了解が必要マッチング次第で案件ごとに幅がある
主な留意点「引き継ぐに値する会社か」を後継者に問われる他の役員・従業員との関係、親族株主の同意企業価値の磨き上げ、仲介者・FAの選定

(出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」第一章・第三章)

比較のうえで押さえておきたいのは、意向と実態がずれているという事実です。中小企業庁が公表した事業評価報告書は、経営者の意向としては企業規模を問わず親族内承継が高い割合を占める一方、代表者の就任経緯では2024年に同族承継(親族内承継)の割合を内部昇格(従業員承継)が逆転し、M&Aも増加していると整理しています。民間のM&A専門業者による中小企業のM&A実施件数は2023年度に4,681件が報告されました(出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和6年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」、令和7年9月30日)。

つまり「息子に継がせるつもりだ」という前提だけで進めると、実態から外れる可能性が相応にあります。3つを並べて比べる作業を、意思決定の最初に一度だけでも通してください。第三者承継を選ぶ場合の工程はM&Aの基本プロセスで扱っています。なお、承継の検討以前に業績が悪化して資金繰りが厳しい場合は、承継より先に判断すべきことがあります。その線引きは事業再生の判断タイミングを参照してください。

❌ 「長男が継ぐと思っている」という前提のまま、意思確認をせずに株価対策から始める ⭕ 後継者候補に正式に意思を確認し、断られた場合の第二案(従業員承継・M&A)を同時に置いておく

ステップ1・2 いつ着手し、何を見える化するか

ステップ1は「準備の必要性を認識する」という、一見すると何も生まない段階です。しかしガイドラインがこれを独立したステップに置いているのには理由があります。事業承継は家族内の課題として捉えられがちで、気軽に外部へ相談できないとする経営者が少なくないため、支援機関を訪れたときには課題が深刻化していた、という事例が少なからず見られるからです。

着手の目安として、ガイドラインは「後継者教育等の準備に要する期間を考慮し、経営者が概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましい」としています。すでに60歳を超えているなら速やかに支援機関へ相談すべきであり、70歳を超えている場合はすぐにでも着手すべきだ、とも書かれています。

日本の中小企業の実像は、この目安から見ると切迫しています。経営者の平均年齢は2024年に63.59歳で、2009年の59.57歳から15年で約4歳上昇しました。経営者年齢別に見ると、経営者が70代以上の中小企業者は100万者、60代以上では185万者です。休廃業・解散件数は増加傾向にあり、そのうち約半数が黒字企業でした。廃業予定企業の約3割は後継者不在を理由としています(出典:同上「事業評価報告書」。経営者年齢は東京商工リサーチ「社長の平均年齢推移」、企業数分布は中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和6年確報、廃業理由は日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」2023年調査による)。

承継先が見つからずに会社を畳む場合の手続きと、黒字で畳んだときに手元に残る額は会社を畳む手続きと費用の全体像で扱っています。

PUBLIC DATA

経営者の高齢化と承継の切迫度

63.59歳

経営者の平均年齢(2024年。2009年は59.57歳)

100万者

経営者が70代以上の中小企業者

185万者

経営者が60代以上の中小企業者

出典:中小機構「令和6年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」。経営者年齢は東京商工リサーチ、企業数分布は中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和6年確報による。

ステップ2の「見える化」で確認するのは、会社の経営状況と、事業承継そのものの課題の2つです。ガイドラインが挙げる主な取組から、経営者が自分の手で着手できるものを抜き出すと次のようになります。

  1. 経営者所有の不動産で事業に使っているものの有無、その不動産への担保設定、経営者と会社の間の貸借関係、経営者保証の有無を洗い出し、会社と個人の関係を明確にする
  2. 保有する自社株式の数を確認し、株価評価を行う
  3. 商品ごとの月次の売上・費用(部門別損益)を分析し、稼ぎ頭を把握する
  4. 後継者候補の有無を確認する。候補がいる場合は意思確認の時期、能力、適性、年齢、意欲を踏まえて適否を検討する
  5. 親族内承継なら、将来の相続発生を見据えて相続財産を特定し、相続税額の試算と納税方法を検討する

1番目が最初に来ているのは偶然ではありません。会社と個人の資産・資金が混ざっている状態は、後継者にとっての引受リスクであると同時に、後述する経営者保証の解除を難しくする直接の原因になります。3番目の月次分析は、部門別損益の作り方で扱っている手順がそのまま使えます。

2番目の株価評価は、多くの経営者が後回しにして、そして後悔する項目です。取引相場のない株式は、同族株主が取得する場合、会社の規模区分(大会社・中会社・小会社)に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式またはその併用で評価されます。同族株主以外が取得する場合は、規模にかかわらず配当還元方式という別の物差しが使われます(出典:国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」)。利益と純資産を積み上げてきた優良企業ほど評価額は高くなり、後継者が買い取れない、相続税を払えない、という事態に直結します。評価額を知らないまま立てた承継計画は、計画ではなく願望です。

ステップ3 磨き上げ 「引き継ぐに値する会社」にする

ステップ3は経営改善です。ここでガイドラインは、実務でよく見られる誤りを名指しで戒めています。親族内承継において相続税対策に重点が置かれすぎるあまり、事業とは無関係な資産の購入や、節税を目的とした持株会社の設立等により株価を意図的に低下させるなど、事業の継続・発展にそぐわない手法が用いられる場合がある、という指摘です。

その裏返しとして示されているのが、後継者側の視点です。後継者は、引き継ぐ事業がどのような状況にあり、将来に向けて継続する準備が行われているかに関心を持っています。ガイドラインはこれを「後継者にとって『引き継ぐに値する企業であるか』を現経営者は問われている」と表現しています。近年の親族内承継の減少の背景には、事業の将来や経営の安定について後継者候補が懐疑的になっていることがある、とも書かれています。

❌ 承継の直前に利益を圧縮して株価を下げ、税負担だけを最小化して渡す ⭕ 承継の3〜5年前から本業の収益力を上げ、後継者が「継ぎたい」と思える状態にしてから渡す

磨き上げは抽象的な言葉ですが、やることは経営そのものです。稼ぎ頭の商品と赤字の商品を分ける、キーマン依存を解消する、取引条件を見直す、設備投資の判断基準を決める。いずれも承継のためだけの作業ではなく、承継しなくてもやるべきことです。目標設定の粒度に迷うならKPI設計と運用の考え方が使えますし、資本効率の観点から企業価値を測る指標を持ちたいならROICの考え方と活用が参考になります。

なお、磨き上げは第三者承継を選んだ場合にも効きます。ガイドラインは、社外への引継ぎを成功させるためには本業の強化やガバナンス・内部統制体制の構築により企業価値を十分に高めておく必要がある、としています。どの承継先を選ぶにせよ、ステップ3をやっておいて損になることはありません。第三者承継では、磨き上げた中身が買い手のデューデリジェンス(DD)で確かめられます。売り手が先に準備しておく資料はデューデリジェンス(DD)とはで整理しています。

ステップ4 事業承継計画 承継の何年前に何をするかを逆算する

ステップ4は、いつ・どのように・何を・誰に承継するのかを具体的な計画に落とす段階です。ガイドラインは、計画は後継者や親族と共同で、取引先・従業員・取引金融機関との関係を念頭に置いて策定し、策定後は関係者と共有しておくことが望ましいとしています。そして重要な注意として、成果物としての計画書を作ること自体が目的ではなく、現経営者と後継者が共通の目的意識のもとで対話しながら策定するプロセスにこそ意味がある、と釘を刺しています。

経営者にとって実務的に効くのは、引退時期から逆算する発想です。ガイドラインも、現経営者が自らの引退時期を定め、そこから後継者の育成に必要な期間を逆算して十分な準備期間を設けることが大切だ、と述べています。以下は、公的資料で確認できる期間と、そこから編集部が組み立てた逆算の目安です。

承継実行までの残りこの時期にやること根拠・関門
10年前(経営者60歳頃)準備の必要性を認識し、支援機関に相談するガイドラインが示す着手の目安。平均的な引退年齢は70歳前後
7〜10年前見える化。株主名簿の確認、自社株評価、経営者保証と担保の棚卸し、会社と個人の貸借の整理株価と保証の実態を知らずに立てた計画は機能しない(編集部の目安)
5〜7年前後継者候補の意思確認。磨き上げに着手後継決定者が必要と考える準備期間は「5年以上」が約5割
3〜5年前事業承継計画の策定。後継者教育(現場→管理部門→損益責任)。金融機関・主要取引先へ計画を共有後継者への移行期間は3年以上が半数超
1〜3年前株式移転の実行(暦年贈与の積み上げ、相続時精算課税の選択、事業承継税制を使うなら特例承継計画の提出)。個人保証の解除協議事業承継税制の特例承継計画は令和9年9月30日が提出期限
承継時代表者交代。税制を使う場合は都道府県知事の認定申請、申告期限の2か月前までに手続認定と申告のスケジュールは連動している
承継後1〜2年都道府県への年次報告書、税務署への継続届出書を年1回。ポスト承継の新たな取組税務申告後5年以内は毎年、6年目以後は税務署へ3年に1度

(期間の根拠は中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」、税制の期限は中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」、2026年9月閲覧。残り年数の割り付けは編集部の目安)

この表の使い方は単純です。自分が何歳で引退したいかを決め、その年から逆に数えて、いま自分がどの行に立っているかを確認してください。もし「1〜3年前」の行に立っているのに、まだ株主名簿すら確認していないのであれば、順番を飛ばすのではなく引退時期のほうを後ろにずらす判断が要ります。

後継者教育の中身についても、ガイドラインは示唆を与えています。現経営者が後継者を決定するうえで重視した資質・能力としては「経営に対する意欲・覚悟」に加えて「自社の事業に関する専門知識」「自社の事業に関する実務経験」の割合が高く、こうした能力を短期間で習得することは不可能である、としています。現経営者にとっての事業承継の課題としても「後継者の経営力育成」は「事業の将来性」に次いで多く、4割強を占めます(出典:同ガイドライン図表35・37、中小企業白書2019年版・2021年版に基づく)。

計画は金融機関にも共有してください。承継の見通しを早めに開示しておくことは、後述する個人保証の解除協議の前提条件でもあります。日常の交渉の作法は金融機関との交渉術に、計画の書き方は事業計画書のポイントにまとめています。

ステップ5 実行 株式をどう移すか、税制の期限はいつか

実行段階では、株式と資産を実際に移します。手段は主に4つで、単独ではなく組み合わせて使うのが実務です。

手段内容向いている場面注意点
暦年贈与暦年課税に係る基礎控除額110万円の範囲で毎年少しずつ移す株価が低く、時間に余裕がある場合相続開始前の一定期間の贈与は相続税の課税価格に加算される
相続時精算課税60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の推定相続人・孫へ。年110万円の基礎控除に加え、累計2,500万円の特別控除、超過分は一律20%まとまった株数を早期に移したい場合一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻せない
譲渡(売買)後継者が資金を用意して買い取る従業員承継など、贈与・相続が使えない場合買取資金の確保が壁。持株会社を設立して借入で取得する方法もある
事業承継税制(特例措置)非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除株価が高く、納税資金が用意できない場合期限がある。認定後も年次報告・継続届出が続く

(出典:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」、「No.4103 相続時精算課税の選択」、「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」)

暦年贈与について1点補足します。相続開始前の贈与が相続税の課税価格に加算される期間は改正で延びており、相続開始日が令和8年12月31日までは「相続開始前3年以内」、令和9年1月1日から令和12年12月31日までは「令和6年1月1日から死亡の日まで」、令和13年1月1日以後は「相続開始前7年以内」となります。加算対象期間のうち相続開始前3年以内以外の部分については、贈与時の価額の合計額から総額100万円までは加算されません(出典:国税庁「No.4161」)。贈与を10年かけて積み上げる計画は、この加算ルールを織り込んで組む必要があります。

事業承継税制の期限を正確に押さえる

ここが本稿でいちばん取り違えの多い論点です。法人版事業承継税制の特例措置には、計画の提出期限と、実際に贈与・相続を行う適用期限という2つの期限があり、片方だけが延長されています。

特例措置一般措置
猶予対象株式数上限なし(全株式)総株式数の最大3分の2まで
猶予割合贈与税・相続税ともに100%贈与税100%、相続税80%
承継方法複数の株主から最大3名の後継者へ複数の株主から1名の後継者へ
雇用確保要件弾力化(未達なら都道府県知事へ報告書を提出)承継後5年間平均で8割の雇用維持が必要
相続時精算課税の適用60歳以上の贈与者から18歳以上の者60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人・孫
特例承継計画の提出令和9年9月30日まで不要
適用期限(贈与・相続)令和9年12月31日までなし

(出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」/国税庁「No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」/経済産業省「令和8年度 経済産業関係税制改正について」、令和7年12月、2026年9月時点)

特例承継計画の提出期限(法人版)

令和9年9月30日

令和8年度税制改正で1年6か月延長された

贈与・相続の適用期限(法人版)

令和9年12月31日

こちらは延長されていない。実行日から逆算して準備する

令和8年度税制改正で延長されたのは承継計画の確認申請(提出)の期限だけで、法人版は1年6か月、個人版は2年6か月です。その結果、法人版の計画提出期限は令和9年9月30日、個人版は令和10年9月30日になりました。一方、適用期限は法人版が令和9年12月31日まで、個人版が令和10年12月31日までで、こちらは動いていません。中小企業庁も「令和9年9月30日までに申請し、令和9年12月31日までに事業承継を行う必要があります」と明記しています。

2026年9月時点から数えると、法人版で特例措置を使う場合、計画提出まで約1年、贈与・相続の実行まで約1年3か月しか残っていません。特例承継計画には後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継後5年間の事業計画を記載し、認定経営革新等支援機関(商工会・商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士など)による指導及び助言を受ける必要があります。提出先は主たる事務所が所在する都道府県庁です。支援機関の予約が埋まる時期を考えると、実質的な猶予はもっと短いと考えたほうが安全です。

❌ 「特例承継計画は令和9年9月まで出せるから、来年考えればいい」と判断を先送りする ⭕ 計画提出(令和9年9月30日)と贈与・相続の実行(令和9年12月31日)の2つの期限を分けて把握し、実行日から逆算して支援機関に今期中に相談する

なお、特例措置を使わない選択もあります。一般措置には適用期限がなく、猶予対象は総株式数の3分の2まで、相続税の猶予割合は80%です。株価がそれほど高くない、あるいは納税資金を別に用意できるのであれば、期限に追われて特例を選ぶ必要はありません。認定後は都道府県庁への年次報告書と税務署への継続届出書を年1回、税務申告後5年以内は毎年提出し、6年目以後は税務署にのみ3年に1度提出します。この事務が10年以上続くことも、選択の判断材料に入れてください。

経営者が見落とす3つの関門 個人保証・遺留分・株式の分散

株式の移転計画が整っても、次の3つを処理しないと承継は完了しません。いずれも「あとで気づいても戻せない」性質を持っています。

01 / GUARANTEE

個人保証

前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことが原則(特則)。

02 / FORCED HEIRSHIP

遺留分

民法特例の除外合意・固定合意で、株式の分散を先回りして防げる。

03 / SHAREHOLDERS

株式の分散

所在不明株主の株式は、5年を1年に短縮する特例で整理できる。

個人保証は「後継者が当然に引き継ぐもの」ではない

事業承継に際して、経営者保証を理由に後継者候補が承継を拒否するケースが一定程度あることが指摘されています。この課題に対応するため、経営者保証に関するガイドライン研究会は「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」を令和元年12月に取りまとめ、令和2年4月1日から適用しています。

特則の核心は、原則として前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないという点です。例外的に二重に保証を求めることが真に必要な場合には、その理由や保証が提供されない場合の融資条件について双方に十分説明し、理解を得ることとされています。さらに特則は、事業承継を機に単に単独代表から複数代表になったことや、代表権は後継者に移転したものの株式の大半は前経営者が保有しているといったことのみで二重徴求を判断しないよう留意する必要がある、とまで書き込んでいます。

後継者との保証契約についても、当然に保証を引き継がせるのではなく、保証契約の必要性を改めて検討し、事業承継に与える影響も十分考慮して慎重に判断することが求められています。前経営者との契約については、前経営者が実質的な経営権・支配権を保有しているといった特別の事情がない限り、いわゆる第三者に該当する可能性があることを踏まえ、保証解除に向けて適切に見直すこととされています。

一方で、企業側にも求められる対応があります。特則は、経営者保証を提供せずに事業承継を希望するなら、①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示による経営の透明性確保、の3点に主体的に取り組むことを求めています。これはステップ2の見える化・ステップ3の磨き上げと同じ作業です。

(出典:経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」、令和元年12月、令和5年4月改定)

❌ 株式と代表権だけを移し、個人保証は「そのうち銀行が外してくれる」と放置する ⭕ 事業承継計画を策定する段階で保証の解除を議題に載せ、二重徴求を行わない原則を前提に金融機関と協議する

制度面の受け皿もあります。信用保証協会の事業承継特別保証制度は、保証限度額2億8,000万円で、経営者保証を不要とするほか、経営者保証ありの既存借入金を借り換えて無保証にすることも可能です。対象となるには、資産超過であること、EBITDA有利子負債倍率が10倍以内であること、法人と個人の分離がなされていること、返済緩和中の借入金がないことといった財務要件を満たす必要があります(出典:一般社団法人全国信用保証協会連合会「事業承継をお考えの方」、2026年9月閲覧)。承継時期に関する要件は改定されるため、利用を検討する場合は取引金融機関または最寄りの信用保証協会に最新の条件を確認してください。

遺留分は民法特例で先回りできる

後継者に自社株式を集中させると、他の推定相続人の遺留分を侵害することがあります。2018年の民法改正により、遺留分権利者が権利を行使した場合には、贈与や遺贈の一部が無効になるのではなく、遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じる仕組みに変わりました。つまり後継者は現金で支払う必要があり、その支払いのために承継した自社株式を売却せざるを得ない事態が起こり得ます。

これを防ぐのが、経営承継円滑化法に基づく遺留分に関する民法の特例です。先代経営者の推定相続人全員(後継者を含む)の合意のうえ、一定の要件を満たすことを条件に、次のいずれかができます。

  • 除外合意:贈与等された自社株式等の価額を、遺留分を算定するための財産の価額から除外する
  • 固定合意:遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を、合意時の時価に固定する(会社の経営の承継の場合のみ)

固定合意が効くのは、生前贈与後に後継者の貢献で株式価値が上がった場合です。特例がなければ相続開始時点の上昇後の評価で計算されるため、後継者は自分が上げた価値の分だけ遺留分の負担が重くなります。手続としては、先代経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けます。ガイドラインは、この制度について「事業承継税制の活用の有無にかかわらず(親族外であっても)、積極的に活用を検討していくべきである」としています。

株式の分散と所在不明株主

株主名簿を確認すると、創業時の名義株や、相続で細分化された少数株主が残っていることがあります。放置すると、株主総会の招集手続きが取れない、全株主の同意が必要な行為ができない、株式譲渡でM&Aをしようとしても全株式を譲渡できず売却自体が成立しない、といった事態を招きます。

会社法第197条は、5年以上継続して会社からの通知が到達しない株主が所有する株式について、一定の手続を経て会社が処分(競売・売却・自社株買い)できると定めています。ただしこの「5年」が事業承継時のハードルになるとの指摘を受け、2021年の経営承継円滑化法改正により、非上場の中小企業者のうち事業承継ニーズの高い株式会社に限り、都道府県知事の認定と一定の手続保障(事前の公告・催告)を前提に、5年を1年に短縮する特例が創設されました。認定要件は、①代表者が年齢・健康状態その他の事情により継続的かつ安定的に経営を行うことが困難で、事業活動の継続に支障が生じていること(経営困難要件)、②一部株主の所在が不明であることにより、代表者以外の者への円滑な承継が困難であること(円滑承継困難要件)の2つです。

株式の分散を未然に防ぐ手段としては、役員・従業員持株会、中小企業投資育成会社、取引先といった安定株主の導入、公正証書遺言の作成、議決権制限種類株式や拒否権付種類株式の活用が挙げられています。いずれも設計を誤ると別の紛争の火種になるため、弁護士・税理士に個別に確認してください。

承継後の1〜2年 ポスト事業承継と、相談先の使い方

承継はゴールではありません。ガイドラインは、事業承継実行後に後継者が新たな視点で従来の事業を見直し、新たな成長ステージに入ることを期待すべきだとしています。先代が営んできた事業をそのままの形で承継することにこだわるのが必ずしも正しい承継方法ではない、という書き方をしている点は、経営者の側も理解しておく価値があります。

同時に、現経営者の年齢と経営の関係についてのデータも示されています。経営者年齢が上がるほど投資意欲は低下し、リスク回避性向が高まること、経営者の交代があった企業は交代のなかった企業よりも売上高や利益の成長率が高い傾向にあることが報告されています。承継を「守りの手続き」ではなく「攻めに転じる契機」と捉えるほうが、データとも整合します。

引き継いだ直後の1〜2年で経営者が意識すべきことは3つに絞れます。第一に、取引先と金融機関への通知と挨拶を計画的に行うこと。第二に、後継者に次の経営チームを選ばせること。後継者だけを若返らせても、周囲が旧経営者と同世代のままでは機能しません。第三に、旧経営者が意思決定への介入を控えることです。ガイドラインが失敗事例として挙げているのは、社長職だけを子に譲って株式は100%保有し続けた結果、業績が回復したにもかかわらず臨時株主総会で後継者を解任してしまい、社内の不和から赤字に転落した会社の例です。代表権と株式の移転時期を計画に明記しておかないと、承継は途中で止まります。

相談先は無料で使えます。全国の事業承継・引継ぎ支援センターは、第三者承継も親族内承継もワンストップで支援する公的機関です。令和6年度の相談者数は23,540者、相談回数は90,638回で、第三者承継の成約件数は2,132件、親族内承継の支援完了件数(事業承継計画の策定等)は1,695件と、いずれも過去最多でした。後継者不在の小規模企業・個人事業主と創業希望者をつなぐ後継者人材バンクの成約も106件で過去最多です(出典:中小企業基盤整備機構「令和6年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」、令和7年9月30日)。

資金支援については、年度ごとに制度が動きます。かつての「事業承継・引継ぎ補助金」は現在「事業承継・M&A補助金」という名称になり、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠という構成で運用されています(出典:中小企業庁・中小機構「事業承継・M&A補助金」公式サイト、2026年9月閲覧)。公募回・補助率・上限額・締切は回ごとに変わるため、本稿で一覧を示すことはしません。制度名で検索するのではなく、公式サイトとJグランツで「いま公募中の回」を直接確認してください。探し方の型は補助金・助成金の探し方に整理しています。

5問で確認する 事業承継の準備の進み具合

承継の準備がどこまで進んでいるかを確かめる簡易チェックです。

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5問で確認|事業承継の準備の進み具合

いまの自社の状態にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1後継者候補に、継ぐ意思を正式に確認している
  2. Q2親族内・従業員・第三者(M&A)の3つを並べて比べ、第二案を置いている
  3. Q3株主名簿で、株主全員の氏名・持株数・連絡が取れるかを確認している
  4. Q4自社株の評価額と、経営者と会社の間の貸借・担保・経営者保証を把握している
  5. Q5事業承継税制を使うかどうかを決め、使う場合は2つの期限から逆算して支援機関に相談している

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ

事業承継は、①準備の必要性の認識、②見える化、③磨き上げ、④事業承継計画の策定(またはM&Aの工程)、⑤実行という5つのステップで進みます。着手の目安は経営者が60歳になる頃で、後継者への移行期間だけで3年以上を要する割合が半数を超えることを踏まえると、実行の10年前から動き始めるのが現実的です。

方向性は親族内・従業員・第三者の3つを並べて比べてください。意向としては親族内承継が根強い一方、2024年には内部昇格が同族承継を逆転しており、実態は脱ファミリー化に向かっています。第二案を持たないまま進めるのは危険です。

実行段階では、事業承継税制の2つの期限を取り違えないでください。特例措置の特例承継計画は令和9年9月30日まで、贈与・相続の実行は令和9年12月31日までです。延長されたのは計画の提出期限だけです。そして個人保証、遺留分、株式の分散という3つの関門は、いずれも制度上の手当てが用意されています。二重徴求を行わない原則、遺留分の除外合意・固定合意、所在不明株主の5年を1年に短縮する特例。知っていれば使え、知らなければ使えないものばかりです。

今週やることを1つだけ挙げるなら、株主名簿を出してきて、現在の株主全員の氏名と持株数、連絡が取れるかどうかを確認することです。ここが崩れていると、どの承継先を選んでも先に進めません。

NEXT ACTION / 次にやること

株主名簿を出し、株主全員の氏名・持株数・連絡が取れるかを確認する

ここが崩れていると、どの承継先を選んでも先に進めません。確認できない株主がいれば、所在不明株主の特例を含めて早めに専門家へ相談してください。

※本稿は2026年9月8日時点で公表されている法令および公的資料に基づく一般的な情報提供であり、個別案件についての税務・法務上の助言ではありません。税制の適用可否や手続の詳細は、認定経営革新等支援機関、顧問税理士、弁護士にご確認ください。

よくある質問

Q事業承継の準備は、何歳から始めればよいですか。
A

中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」は、後継者教育等の準備に要する期間を考慮し、経営者が概ね60歳に達した頃には準備に取りかかることが望ましいとしています。すでに60歳を超えている場合は速やかに支援機関へ相談すべきであり、70歳を超えている場合はすぐにでも着手すべきだ、とも書かれています。後継者を決めてから承継が完了するまでの移行期間は3年以上を要する割合が半数を上回り、10年以上を要する例も少なくありません。引退したい年齢から逆算して、残り年数がどのステップに対応しているかを確認してください。

Q事業承継税制(特例措置)の期限は、結局いつまでですか。
A

期限は2つあります。特例承継計画を都道府県庁へ提出する期限が令和9年(2027年)9月30日、実際に贈与・相続によって株式を移す適用期限が令和9年12月31日です。令和8年度税制改正で延長されたのは計画の提出期限のみ(法人版は1年6か月)で、適用期限は動いていません。個人版事業承継税制は計画提出が令和10年9月30日、適用期限が令和10年12月31日です。計画には認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた旨の記載が必要なので、提出期限の直前に相談しても間に合わない可能性があります。

Q特例措置の期限に間に合わない場合、事業承継税制は使えなくなりますか。
A

一般措置は引き続き利用できます。一般措置には適用期限がなく、特例承継計画の提出も不要です。ただし猶予の対象は総株式数の最大3分の2まで、相続税の猶予割合は80%(贈与税は100%)で、承継できるのは複数の株主から1名の後継者に限られ、承継後5年間平均で8割の雇用維持が要件になります。特例措置と比べると使える範囲は狭くなりますが、株価がそれほど高くない場合や納税資金を別途用意できる場合は、期限に追われて特例を選ぶ必要はありません。

Q後継者に会社の借入の個人保証を引き継がせないことはできますか。
A

「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」は、原則として前経営者と後継者の双方から二重には保証を求めないこと、後継者に当然に保証を引き継がせるのではなく保証契約の必要性を改めて検討することを、金融機関側の対応として定めています。令和2年4月1日から適用されています。ただしガイドラインは法的拘束力を持つ規制ではなく自主的・自律的な準則であり、最終的な判断は金融機関にあります。企業側には、法人と経営者の関係の明確な区分・分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示という3点の取組が求められます。信用保証協会の事業承継特別保証制度(保証限度額2億8,000万円)を使って既存借入を借り換え、無保証にする方法もあります。

Q後継者に株式を集中させると、他の子どもとの間で揉めませんか。
A

その懸念に対応するのが、経営承継円滑化法に基づく遺留分に関する民法の特例です。推定相続人全員の合意のうえ、贈与された自社株式の価額を遺留分算定の基礎財産から除外する「除外合意」、または算入価額を合意時の時価に固定する「固定合意」ができます。手続としては、先代経営者の生前に経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けます。ガイドラインは、事業承継税制の活用の有無にかかわらず、また親族外の承継であっても積極的に活用を検討すべきだとしています。

Q親族にも社内にも後継者がいません。何から始めればよいですか。
A

まず全国の事業承継・引継ぎ支援センターに相談してください。第三者承継も親族内承継もワンストップで支援する公的機関で、令和6年度の相談者数は23,540者、第三者承継の成約件数は2,132件でした。後継者不在の小規模企業・個人事業主と創業希望者をマッチングする後継者人材バンクもあり、令和6年度の成約は106件です。並行して、ステップ2の見える化とステップ3の磨き上げに着手してください。社外への引継ぎを成功させるには本業の強化とガバナンス体制の構築で企業価値を高めておく必要があり、これは相手が見つかってから始めても間に合いません。工程の詳細はM&Aの基本プロセスを参照してください。

Q株価を下げてから渡すのが得だと聞きましたが、本当ですか。
A

株価が低い時期に移転すれば税負担が軽くなるのは事実です。ただしガイドラインは、相続税対策に重点が置かれすぎるあまり、事業とは無関係な資産の購入や節税目的の持株会社設立により株価を意図的に低下させるなど、事業の継続・発展にそぐわない手法が用いられる場合があると指摘しています。後継者が関心を持つのは節税額ではなく、引き継ぐ事業が続くかどうかです。近年の親族内承継の減少の背景には、事業の将来や経営の安定に対する後継者候補の懐疑があるとされています。株価対策は手段の一つにとどめ、承継の3〜5年前から本業の収益力を上げることを優先してください。

出典・調査の対象範囲

※判断表の所要期間のうち「編集部の目安」と記したもの、および自己診断は、本誌が公的資料をもとに整理した判断支援情報です。税制の適用可否や手続の詳細は、認定経営革新等支援機関・顧問税理士・弁護士にご確認ください。

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