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内定式後も5人に1人が辞退を検討。内定後に渡す材料で選ばれる

公開 2026.10.18

内定は採用のゴールではなく、学生が会社を比べ始める合図だ。27年卒では、内定式に出る学生の約5人に1人が式のあとも辞退の可能性を考え、入社先を決めた学生の約6割は2番目以降にもらった内定の会社を選んだ。給与で並んだあとの勝負は、比べる表の空いている欄に、配属先の上司が書く材料で決まる。

内定を一番早く出した会社が、選ばれるとは限りません。

入社先を決めた2027年卒の学生のうち、1番目にもらった内定の会社を選んだのは36.1%でした。約6割は、2番目以降にもらった内定の会社を選んでいます。

そして10月1日の内定式に出る学生の、およそ5人に1人が、式のあとも辞退の可能性があると答えています。

内定は採用のゴールではありません。学生が会社を比べ始める合図です。

内定式が終わっても、学生はまだ会社を比べている

主な企業は10月1日、2027年春に入社する学生の内定式を開きました。

マイナビが10月14日に発表した調査では、9月末の内々定率は86.3%でした。前年の同じ月より2.6ポイント低い水準です。

9月末でも、学生の20.2%は就職活動を続けていました。内定を持ちながら続けている学生も、ここに含まれます。

内定を持ちながら活動を続ける学生の44.9%は、「10月末まで」に活動を終える予定です。どの内定を残すかが、いまこの瞬間に決まっています。

採用支援のABABAが9月30日に発表した調査では、内定式に参加予定の学生の21.3%が、式のあとも内定を辞退する可能性があると答えました。

会社の側も、採用を終えていません。企業の61.5%が、10月以降も採用を続けるか、続けるかどうかを検討しています。300人以下の会社に限っても57.1%です。

図1 内定式が終わっても、学生はまだ会社を比べている。2027年卒の9月末の内々定率は86.3%で、前年同月より2.6ポイント低い。内定式に参加予定の学生の21.3%が式のあとも辞退の可能性があると答え、企業の61.5%が10月以降も採用を続けるか検討している。9月末でも学生の20.2%が活動を続け、内定を持ちながら活動を続ける学生の44.9%は、10月末までに活動を終える予定

出典:マイナビ「2027年卒 大学生キャリア意向調査9月」(2026年10月14日、1,833人)、ABABA「27卒 内定式直前の意識調査」(2026年9月30日、学生809人・企業143社)をもとに筆者作成。21.3%は内定式に参加予定の学生638人のうちの割合。

日本経済新聞はABABAの調査を取り上げ、各社が内定者の引き留めに力を入れていると伝えました。共同通信も内定式の日に、売り手市場が続いていることを報じています。

報道の多くは、ここで「内定者フォローを手厚くする」話に進みます。けれども、手厚さの前に確かめたいことがあります。学生にとって、内定とはそもそも何なのか、です。

そもそも内定は、学生にとって「取り消せる予約」

会社から見ると、内定は「席を1つ用意した」ことです。あとは入社日まで待てば、来てくれると考えがちです。

学生から見ると、内定はホテルの予約に近いものです。それも、取り消せる予約です。

ABABAの調査では、内定を持つ学生の56.2%が、複数の内定を持っていました。前年より4.2ポイント増えています。予約を何枚か押さえたまま、比べて、最後に1つだけ残すわけです。

図2 内定は、学生にとって「取り消せる予約」。会社は席を1つ用意して入社日を待つが、学生は予約を複数押さえたまま比べ、最後に1つだけ残す。内定を持つ学生の56.2%が複数の内定を持っていた

出典:ABABA「27卒 内定式直前の意識調査」(2026年9月30日、内定を持つ学生717人)をもとに筆者作成。予約への見立ては筆者による。

法律の上でも、学生は辞退を申し出ることができます。内定の時点で、入社日から働く労働契約が成り立つと解されています。期間の定めのない雇用では、働く側が辞めると申し出てから2週間で、契約は終わるのが原則です(民法627条)。

さらに、いったん承諾したあとで、もう一度就活をする学生も増えています。ABABAはこれを「就活リトライ」と呼び、内定を承諾したあとに他社へエントリーし直すなどした学生は29.6%でした。前年から7.6ポイント増えています。

つまり、承諾のサインも「予約の確定」ではありません。内定から入社までの半年は、会社が待つ期間ではなく、学生が選ぶ期間です。

早く出した内定ほど、比べる「物差し」にされる

ここで、冒頭の数字に戻ります。

入社先を決めた学生のうち、1番目にもらった内定の会社を選んだのは36.1%でした。前年は42.7%でしたから、1年で大きく下がっています。

逆に、2番目以降にもらった内定の会社を選んだ学生は、57.7%です。

マイナビの調査でも、同じ傾向が出ています。複数の内々定を持った学生の52.6%が、入社予定先の内々定は「他社より後に出た」と答えました。

図3 入社先の6割は、2番目以降にもらった内定だった。入社先が決まっている2027年卒の学生のうち、1番目の内定の会社を選んだのは36.1%(前年42.7%)、2番目以降は57.7%。マイナビの調査でも、複数の内々定を持った学生の52.6%は、入社予定先の内々定が他社より後に出ていた

出典:ABABA「27卒 内定式直前の意識調査」(2026年9月30日)、マイナビ「2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括」(2026年10月2日)をもとに筆者作成。

早く出した内定は、学生にとって安心材料です。ただ、入社先として選ばれる力は持っていません。むしろ、あとから来る会社を測るための「物差し」になります。

では、学生は何を物差しにして比べているのでしょうか。

まず、給与です。ABABAが企業に聞くと、感じている辞退理由の1位は「給与・待遇面での見劣り」で、28.7%でした。学生に聞いても、内定先の納得度を100%にする条件の1位は「待遇」で、63.9%です。ABABAも、この2つは合致していると書いています。

ただ、給与だけでは比べ終わりません。内定を承諾したあとに就活をやり直した学生に、その理由を聞いた結果があります。

「より自分に合う会社を探すため」が42.8%、「内定先の納得度の低さ」が32.4%でした。2つで、4分の3を占めます。

図4 給与で並んでも、学生は「合うか・納得できるか」で選び直す。会社が感じる辞退理由の1位は給与・待遇面での見劣りで28.7%、学生が内定先の納得度を100%にする条件の1位も待遇で63.9%。一方、内定を承諾したあとに就活をやり直した学生の理由は、より自分に合う会社を探すためが42.8%、内定先の納得度の低さが32.4%で、2つで75.2%

出典:ABABA「27卒 内定式直前の意識調査」(2026年9月30日)をもとに筆者作成。会社側は新卒採用をする143社、やり直しの理由は就活をやり直した学生の回答で、聞いた相手も質問も違うため、数字どうしを直接は比べられない。

聞いた相手が違うので、数字どうしを並べて比べることはできません。それでも、次のように読めます。

給与は、会社も学生も1番に挙げる条件です。並ばなければ、比べる土俵に上がりにくいと筆者は見ています。けれども、承諾したあとでさえ学生を動かしているのは、「ここが自分に合う」と言い切れるかどうかです。

マイナビの宮地太郎主任研究員も、10月2日の総括で、学生が「なぜこの企業なのか」を自分の言葉で説明できる「納得内定」に触れています。そのうえで、学生が納得して決められる機会を企業がどう用意するかが重要になる、と述べています。

本質は、内定者フォローの「量」ではありません。比べられたときに渡せる「判断の材料」があるかどうかです。

給与の欄だけでは決まらない。勝負は空いている欄

学生が2つの内定を並べたところを想像してみてください。頭の中に、比べる表ができています。

上の行は、初任給や休日、福利厚生です。学生が1番に挙げる条件の欄で、大手のほうが埋まりやすい欄です。

しかも、マイナビの企業調査では、2027年卒の初任給を引き上げた会社は89.1%にのぼります。多くの会社が同じ方向に動いているので、上げても差を縮めにくく、選ばれる決め手にもなりにくい欄です。

下の行は、次のような欄です。最初の1年で任される仕事。一緒に働く上司や先輩。3年後の自分。入社して大変なこと。

図5 比べる表の「空いている欄」で負ける。学生が2社の内定を並べて比べる表のイメージ。初任給・給与と休日・福利厚生の欄は大手が埋めやすく、上げても差を縮めにくい。最初の1年で任される仕事、一緒に働く上司・先輩、3年後の自分、入社して大変なことの4つの欄は、会社の規模に関係なく埋められるが、空欄のままのことが多い

筆者整理。2027年卒の初任給を引き上げた会社の割合は、マイナビの企業調査(「2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括」2026年10月2日)による。大手の欄は一般的な傾向を示したイメージで、会社によって異なる。

下の4行は、会社の規模に関係なく埋められます。社員の顔が見える会社ほど、むしろ書きやすい欄です。

ところが、ここが空欄のままの会社は少なくありません。辞退は大手でも起きています。ABABAの調査では、大企業・中堅企業の69.9%が、内定式の直前や直後に想定外の辞退を経験しています。規模の大きさだけでは、引き留めきれないということです。空欄の会社は、学生にとって「比べようがない」会社です。

比べようがなければ、埋まっている上の行、つまり給与だけで決まります。給与で負けたように見える辞退の一部は、下の行が空いていたことの結果だと筆者は見ています。

給与を上げる余地があるなら、上げるに越したことはありません。ただ、大手と同じ額まで上げられないなら、勝負する場所は下の行です。

ABABAの調査では、不満を挙げた学生のなかで、2年続けて1位だったのは「連絡の頻度が低すぎる」(18.0%)でした。

好印象だったフォローは、内定者同士の交流会が45.3%で最も多く、定期的な連絡・情報共有が35.6%で続きます。

交流会が好評なのは、図5には載せていない「同期」の欄が埋まるからでしょう。ただ、それで仕事や上司の欄までは埋まりません。連絡の回数そのものより、連絡のたびに欄が1つずつ埋まっていくかどうか。そこに差がつくと筆者は考えます。

経営コラムニストの横山信弘氏は、内定者を「お客様」として扱うほど、入社後の落差が大きくなると指摘しています。そのうえで、大変な面も含めて職場の実際を見せ、配属先の上司を早くから関わらせるよう勧めています。

この記事の見立ても、同じ方向です。違うのは、それを「比べる表の空いている欄を埋める作業」として見ることです。そう見ると、何を渡すかは学生ごとに変わります。そして、大変なことも書いた1行は、もてなしではなく判断の材料になります。

判断の軸で言えば、これは「人が育つか」の話です。下の4行を埋められるのは、人事の担当者より、配属先の上司や先輩です。内定者に渡す材料を書く作業は、上司が「この新人に1年で何を任せるか」を決める作業でもあります。

うちの業界は? 学生が「書いてほしい欄」はここ

空いている欄は、業界によって中身が違います。

建設なら、学生が気にするのは「現場はきつくないか」です。1年目に入る現場と、休みや残業の実績が材料になります。製造なら「同じ作業の繰り返しか」。担当する工程と、3年で任せる設備や技能を書きます。

自動車整備なら「資格は取れるか」です。IT・Web制作なら「研修だけで終わらないか」。不動産なら「数字に追われないか」。介護なら「夜勤とシフトはどうか」です。

図6 業界ごとに、学生が「書いてほしい欄」は違う。建設は1年目に入る現場と休みと残業の実績、製造は担当する工程と3年で任せる設備・技能、自動車整備は整備士の資格を取る時期と会社の支援、IT・Webは最初に入る案件と教える先輩の名前、不動産は1年目の目標の決め方と先輩の1年目、介護は夜勤が始まる時期とシフトの組み方

筆者整理。業界の例は代表的なもので、会社によって異なる。

どの業界でも、いちばん具体的に書けるのは、現場で新人を受け入れる上司や先輩です。人事の担当者だけでは、ここは埋まりにくい欄です。

新卒の採用を数人しかしない会社ほど、これは有利に働きます。配属先も上司も、内定の時点でほぼ決まっているからです。大手では配属が入社後に決まることも多い欄を、名前入りで埋められます。

あなたの会社では? 内定者に「最初の1年」を1枚で渡す

ここまでは、内定者を引き留める側の話でした。けれども、見方を変える数字があります。ABABAの調査では、承諾後に就活をやり直す学生の動きに、企業の79.7%が受容的な姿勢を示しています。

あなたの会社も、他社の内定者に選び直してもらえる側にいます。守るときも、選び直してもらうときも、効くのは下の行の材料です。

あなたの会社の内定者フォローを思い浮かべてください。懇親会と、ときどきの連絡だけになっていないでしょうか。

懇親会は好評です。それでも、それだけなら比べる表の下の4行は空いたままです。

社員40人ほどの会社なら、配属先の上司に「最初の1年」を1枚で書いてもらいます。4〜6月、7〜12月、1〜3月にやることと、1年後にできること。そして入社して大変なことです。社長はそれを確かめ、自分の言葉も1行足して、上司と一緒に内定者に渡します(図7)。

図7 内定者に「最初の1年」を1枚で渡す。架空の建設会社(社員40人)の記入例。配属先の上司が、4〜6月・7〜12月・1〜3月にやること、1年後にできること、入社して大変なことを1枚に書く。渡すときの面談では、ほかに迷っている会社と、何を比べて決めようとしているかの2つを聞く

筆者作成。記入例は架空。

社員100人を超えて、新卒を毎年10人ほど採る会社なら、人事が型をそろえます。中身は各部署の上司に書いてもらいます。そのうえで、上司が月に1回、内定者と短く話す場を決めておきます。人事が懇親会を回し、上司が材料を渡す。役割を分けるわけです。

中途採用でも、同じことが言えます。内定を承諾したあとに辞退される場面は、新卒だけのものではありません。オファー面談で「最初の90日」を見せれば、同じ働きをします。

渡すときの面談では、2つだけ聞きます。「ほかに迷っている会社はある?」と、「何を比べて決めようとしている?」です。

答えは、その学生の頭の中にある比べる表の、欄の名前です。次に渡す材料は、その欄に合わせて選びます。

NEXT ACTION / 次にやること

内定者1人ずつに、比べている欄を聞く

内定者との面談で、ほかに迷っている会社と、何を比べて決めようとしているかを聞きます。答えを内定者ごとに書き出し、空いている欄を確かめます。その欄を、配属先の上司が「最初の1年」の1枚で埋めます。大変なことも1行入れます。

新人が入社したあと、誰が何をどの順で教えるかは「OJTを成功させる仕組みづくり」に、自社らしさを事実で伝える方法は「採用ブランディング」にまとめています。

5問で確認する 内定から入社までの設計

内定者に渡している材料を確かめる簡易チェックです。

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5問で確認|内定から入社までの設計

いま内定を出している学生、または直近の内定者を思い浮かべて、いちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1内定者それぞれが、ほかにどの会社と迷っているかを把握している
  2. Q2内定者が何を比べて決めようとしているかを、本人から聞いている
  3. Q3配属先と、一緒に働く上司を、内定の段階で本人に伝えている
  4. Q4最初の1年で任せる仕事を、書いたもので渡している
  5. Q5入社して大変なことも、内定の段階で伝えている

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

出典・調査の対象範囲

  • マイナビキャリアリサーチLab「2027年卒 大学生キャリア意向調査9月<就職活動・進路決定>」(2026年10月14日) 原文を見る
  • マイナビキャリアリサーチLab「2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括」(2026年10月2日) 原文を見る
  • ABABA「【27卒 内定式直前の意識調査】内定式後も『終わらない就活・終わらない採用』」(2026年9月30日、PR TIMES) 原文を見る
  • 日本経済新聞「27年卒新卒採用、企業の6割が内定式後も継続 ABABA調査」(2026年9月30日) 原文を見る
  • 共同通信「主要企業が内定式 27年春卒、売り手市場続く」(2026年10月1日、Yahoo!ニュース掲載) 原文を見る
  • 横山信弘「『ちやほやしても、結局辞める』10月1日の内定式を終えた企業が、今年こそ『おもてなし』をやめる理由」(2026年10月14日、Yahoo!ニュース エキスパート) 原文を見る
  • 民法 第627条(e-Gov法令検索) 原文を見る

※調査の数字は各社の発表に基づく、執筆時点の情報です。内定を予約に見立てた説明、比べる表の欄の整理、業界の例、記入例と自己診断は、考え方を示すための編集部の整理です。

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