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中小企業の事業計画書の作成ポイント 公的な様式を骨格に、金融機関用と補助金用を書き分ける

公開 2026.09.04

事業計画書はゼロから作る必要がありません。日本政策金融公庫の様式、経営革新計画の別表、早期経営改善計画のひな形は無料で公開されています。提出先ごとの書き分け、金融機関が確かめる返済原資、売上計画の根拠の作り方、審査で落ちる書き方までを一次情報で整理します。

事業計画書は「誰に出すか」を決めてから書き始めます。1通を使い回すと、どの提出先にも届きません。
  • 金融機関向けの答えは公開されています。日本政策金融公庫の事業計画書(参考様式第1号)は、業績推移の次に借入金・社債の残高推移を置き、4番目に「D/(A+B+(C×1/2))」で算出する推定借入負担年数の欄を用意しています。A・Bは減価償却費、Cは経常利益、Dは借入金・社債の合計です
  • 補助金向けは別物です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領は、審査項目を適格性/経営戦略との整合性/事業の実現可能性/新市場性・高付加価値性/公的補助の必要性/政策面の順に公開し、基本要件として付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上を課しています
  • 白紙から作る必要はありません。創業計画書、企業概要書、月別収支計画書、経営革新計画の別表1〜7、早期経営改善計画のひな形はすべて無料で公開されており、早期経営改善計画は策定費用の3分の2(中小企業活性化協議会が負担する額の上限50万円)が支援対象です

事業計画書が通らない理由の多くは、文章力ではありません。相手が確かめたいことと、書いてある内容の並びが噛み合っていないだけです。そして「相手が確かめたいこと」は、金融機関の様式にも補助金の公募要領にも文字で公開されています。本稿は、提出先ごとに何が別物になるのか、金融機関は何をどの順で見るのか、数字のパートをどう組み立てるのか、実在する公的様式のどれをどの場面で使うのか、そして作った計画を実績と突き合わせる仕組みまでを、一次情報に沿って整理します。戦略そのものの決め方と、資金繰り表の作り方は扱いません。決まった戦略を書類に落とす工程が本稿の範囲です。

最初に結論:事業計画書は1通ではない 提出先で別の書類になる

最初に押さえるべきことは、「事業計画書」という1つの書式が存在しないという事実です。同じ会社の同じ取り組みでも、提出先が変われば、相手が最初に確かめることが変わり、したがって中心に置くパートも変わります。

以下は、実在する公的様式の記入欄から、提出先ごとの違いを整理したものです。

まず見るべき判断表|提出先ごとに中心になるパートと公的様式

提出先相手が最初に確かめること中心になるパートそのまま使える公的様式
金融機関(融資)返済原資が継続的に生まれるか、何年で返し終わるか業績推移/借入金・社債の残高推移/資金使途と調達方法日本政策金融公庫「事業計画書(参考様式第1号)」「創業計画書」「企業概要書」「会社概要」
補助金の審査機関政策目的に合うか、目標値を達成できるか経営戦略上の位置づけ/市場と差別化/目標値の算出根拠/実施体制とスケジュール各補助金の事業計画書参考様式・補助事業計画検討用フォーマット
都道府県(経営革新計画)付加価値額と給与支給総額が所定の伸び率を満たすか別表1(目標)/別表2(実施計画)/別表3(経営計画及び資金計画)/別表4(設備投資・運転資金)中小企業庁「様式第13」+別表1〜7
金融機関+自社(経営改善)資金繰りが安定するか、行動が具体化されているかビジネスモデル俯瞰図/経営課題と基本方針/アクションプラン/損益計画/資金繰表中小企業庁「早期経営改善計画 ひな形(3年計画用)」
社内の実行管理誰がいつ何をやり、どう判定するか実施項目・評価基準・評価頻度・実施時期経営革新計画 別表2

(出典:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」および「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」、いずれも2026年9月閲覧/中小企業庁「経営革新計画 進め方ガイドブック」、令和4年2月発行・令和7年4月改訂/中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」、2026年9月閲覧)

1通を使い回さない。素材(売上根拠・見積書・担当と期限・直近3期の数値)は共通で持ち、提出先の公的様式の並びに沿って組み直す。様式は相手が知りたいことの順番そのものです。

この表で最も重要なのは、いちばん右の列がすべて無料で公開されているという点です。分厚い書式を自作した会社ほど、どの提出先にも合わない書類ができあがります。公開されている様式は、相手が知りたいことの順番そのものなので、様式に自社を合わせるほうが速く、通りやすくなります。

とはいえ、5通を別々に作る必要はありません。素材は共通で、並べ替えと重心の置き方が変わると考えてください。売上の算出根拠、設備の見積書、担当者と期限の一覧、直近3期の決算数値。これらは1回作れば、どの提出先にも使い回せます。使い回せないのは、その素材を並べる順序と、どこを厚く書くかという判断のほうです。

❌ 「一度作った20ページの事業計画書を、融資でも補助金でも社内説明でも同じものを出している」 ⭕ 「売上根拠・見積書・担当と期限・直近3期の数値を素材として持ち、提出先ごとに公的様式の並びに沿って組み直す」

もうひとつ、提出先によって決定的に違うのが未達だったときに起きることです。金融機関向けの計画が未達なら、報告と相談の対象になります。補助金の計画が未達なら、制度によっては補助金の返還義務が生じます。後述する新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の賃上げ要件には「目標値未達の場合、補助金返還義務あり」と明記されています。同じ「3年後の目標」でも、外れたときの重さがまったく違うという前提で数字を置いてください。

金融機関に出す計画書は「返済原資」から読まれる

融資のための計画書で最初に問われるのは、事業の魅力ではありません。貸した金がどこから返ってくるかです。これは推測ではなく、公庫が公開している様式の並びを見れば分かります。

日本政策金融公庫が中小企業事業の書式ダウンロードページで公開している「事業計画書(参考様式第1号)」は、次の順で構成されています。

  1. 現況、新商品の開発または新役務等の内容、課題・重点取組項目、具体策
  2. 業績推移と今後の計画(前期実績・今期見込・計画1期目・2期目・3期目・最終目標)
  3. 借入金・社債の期末残高推移(既存借入金/社債/新規借入金/合計)
  4. 借入の負担の推移(推定借入負担年数)
  5. 計画終了時の定量目標および達成に向けた行動計画等
  6. 認定支援機関等の所見等
  7. 認定支援機関連絡先

様式には「項目1〜5は事業者が記載し、項目6〜7は認定経営革新等支援機関等が記載してください」という注記が入っています(出典:前掲・日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」掲載の「事業計画書および同進捗報告書(中小企業経営力強化資金等)」、2026年9月閲覧)。

推定借入負担年数という欄がある

この様式で見落とせないのが4番目の欄です。様式にはこう書かれています。「以下の式で算出された推定借入負担年数の推移」「D/(A+B+(C×1/2))(ただし、Cが欠損の場合は1/2を乗じない。)」。

記号の中身は、同じ様式の2番・3番の欄に振られています。

記号中身様式上の位置
A売上原価のうち減価償却費2.業績推移と今後の計画
B販売管理費の減価償却費同上
C経常利益同上
D既存借入金+社債+新規借入金の合計3.借入金・社債の期末残高推移

(出典:前掲・日本政策金融公庫「事業計画書(参考様式第1号)」の記入欄より本誌が整理。なお同様式は、中小企業経営力強化資金を利用する場合はこの欄の記入は不要と注記しています)

推定借入負担年数 = D/(A+B+(C×1/2))

返済原資として数えられるのは減価償却費(A+B)の全額と、経常利益(C)の半分だけです。ローカルベンチマークのEBITDA有利子負債倍率とは定義が違うので、面談では「どの定義でいくつか」まで揃えて答えます。

この1行が、金融機関向けの計画書の要求水準を要約しています。返済の原資として数えられているのは、減価償却費の全額と、経常利益の半分です。経常利益をそのまま返済に回せるとは扱われていません。編集部の見方ですが、これは法人税等の支払いと社外流出を織り込んだ置き方と読めます。つまり、利益が出ているから返せる、という説明は様式の側で否定されているということです。

なお、この算式は経済産業省のローカルベンチマークが採用しているEBITDA有利子負債倍率((借入金-現金・預金)/(営業利益+減価償却費))とは別物です。現預金を差し引かない、営業利益ではなく経常利益を使う、その経常利益を半分にする、という3点が違います。指標の名前が似ていても定義が違うので、面談の場では「どの定義でいくつか」まで揃えて答えてください。ローカルベンチマークの6指標の算式と業種基準値との比べ方はローカルベンチマークの6指標で扱っています。

「読まれる順」は様式の並びとは少し違う

様式の記入順は上のとおりですが、読み手の関心の順は少し違います。以下は本誌が、様式の構成と各欄の記入指示から整理した目安です(編集部の整理であり、金融機関が公表している審査順ではありません)。

読まれる順相手が確かめていること用意しておく材料
1いくら必要で、何に使うのか資金使途の内訳、設備なら見積書
2何を原資に返すのか減価償却費と経常利益の見込み、経常収支
3何年で返し終わるのか推定借入負担年数の推移、借入金・社債の残高推移
4その利益は本当に出るのか売上の算出根拠、直近3期の実績との連続性
5途中で資金が尽きないか月次の資金繰り、下振れした場合の手当て
6誰が実行するのか実施項目・担当・時期の一覧

4番目の「直近3期の実績との連続性」は、様式の側からも裏づけられます。経営革新計画の別表3(経営計画及び資金計画)の記入指示には「直近3年間の決算書から記入すること」とあり、実績3期と計画期を同じ表に並べる構造になっています(前掲・中小企業庁「経営革新計画 進め方ガイドブック」)。過去を書かずに未来だけを書いた計画書は、比較する土台がないまま提出されているのと同じです。経営革新計画そのものの承認要件と、承認後に動く支援・動かない支援は経営革新計画の作り方で扱っています。

5番目については、月次の資金繰りが判断材料になります。作り方は資金繰り表の作り方で、手元にいくら残すかの基準は手元資金の考え方で扱っています。計画書と資金繰り表は、片方だけでは説明が完結しません。

❌ 「3年後に営業利益を1,500万円まで伸ばすので、年間1,500万円の返済は問題ないと説明した」 ⭕ 「返済原資は減価償却費と経常利益から計算する。公庫の様式が採る推定借入負担年数の式に自社の数字を入れて、何年で返し終わるかを先に示す」

面談用の様式には「人」と「取引条件」の欄がある

もうひとつ、決算書からは読めないが必ず聞かれる領域があります。公庫の創業計画書と企業概要書の記入欄を見ると、それが何かがはっきりします。

創業計画書は全10欄で、1.創業の動機、2.経営者の略歴等、3.取扱商品・サービス、4.従業員、5.取引先・取引関係等、6.関連企業、7.お借入の状況、8.必要な資金と調達方法、9.事業の見通し(月平均)、10.自由記述欄という並びです。事業の中身より前に、経営者の略歴が2番目に置かれています。略歴欄には「勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載してください」という指示が付いています。

既存企業向けの企業概要書には、さらに踏み込んだ欄があります。実際経営者、後継(予定)者、経理担当者を書く欄です。加えて「悩みや苦労している点、欲しいアドバイス等」という欄まで用意されています。6番の取引先・取引関係等では、販売先・仕入先・外注先それぞれについて、取引年数、取引先のシェア、掛取引の割合、うち手形割合と手形のサイト、締日と回収(支払)日、そして人件費の支払日とボーナス支給月まで書かせます。4番のお借入の状況は法人の借入だけでなく、代表者個人の住宅・車・教育・カードローンまで対象です(出典:前掲・日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」掲載の「創業計画書」および「企業概要書」、2026年9月閲覧)。

取引条件を細かく書かせるのは、運転資金がいくら要るかを、そこから計算するためです。締日から入金まで何日、仕入は何日後に払う、在庫は何か月分。この3つが決まれば必要な運転資金は自動的に決まります。取引条件を空欄にしたまま「運転資金1,000万円」とだけ書いた計画書は、金額の根拠が示されていない状態です。営業運転資本回転期間の算式はローカルベンチマークの6指標にまとめてあります。

❌ 「決算書は税理士が作っているので、面談でも数字は税理士に説明してもらう」 ⭕ 「様式にある欄(実際経営者、後継予定者、主要取引先の締日と回収日、代表者個人の借入)は経営者が自分で答えられるようにしてから面談に行く」

金融機関との関係づくりや経営者保証の扱いといった、書類の外側の論点は金融機関との交渉術で扱っています。本稿は書類そのものの作り方に絞ります。

ゼロから作らない 実在する公的様式の使い分け

「事業計画書のフォーマットを探している」という段階で止まっている会社は多いのですが、探す必要はありません。目的別に、国と政府系機関が様式と記載例を無料で公開しています。

様式名出しているところ向く場面特徴
創業計画書日本政策金融公庫 国民生活事業創業時の借入申込全10欄。業種別の記入例が9種類(洋風居酒屋・美容業・学習塾・介護サービス等)公開されている
企業概要書同上既存企業の借入申込・面談企業の沿革、実際経営者・後継予定者・経理担当者、主な設備と購入時期、売上の季節変動まで書く
月別収支計画書同上初年度を月次で示す12か月分の損益と借入金返済額。算出根拠と「売上高達成に向けた具体的な取組み」の欄付き
事業計画書(参考様式第1号)日本政策金融公庫 中小企業事業中小企業経営力強化資金等の申込業績推移6期分、借入金残高推移、推定借入負担年数、認定支援機関の所見欄
会社概要(簡易版・詳細版)同上経営陣・事業概要・取引状況の説明公庫担当者から作成を依頼された場合に使う
資金繰り表(簡易版・詳細版)同上計画に添える資金計画経常収支・経常外収支・財務収支の3区分と残高欄(詳細版)
ローカルベンチマークシート経済産業省現状把握、金融機関との対話6つの指標(財務)、商流・業務フロー、4つの視点(非財務)の3枚組
様式第13+別表1〜7中小企業庁/都道府県経営革新計画の承認申請別表2に評価基準・評価頻度・実施時期の欄がある
早期経営改善計画 ひな形(3年計画用)中小企業庁資金繰り管理と採算管理の立て直しビジネスモデル俯瞰図/課題と基本方針/アクションプラン/損益計画/資金繰表

(出典:前掲・日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードページ/経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」、最終更新2026年1月16日/前掲・中小企業庁「経営革新計画 進め方ガイドブック」/前掲・中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」)

様式は絶対ではありません。創業計画書には「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」と明記されています。早期経営改善計画のひな形にも「この様式は参考様式ですので、同等以上の内容が具備された様式で代替可能です」という注記が付いています。つまり、様式を使うかどうかは自由ですが、様式が要求している項目を落とすと「同等以上」ではなくなるということです。自作するなら、公開されている様式の欄を並べたチェックリストとして使ってください。

様式どうしをつなぐ運用も、公式に認められています。中小企業庁の早期経営改善計画策定支援のページは、「ローカルベンチマークシートで作成した『商流・業務フロー』を、ビジネスモデル俯瞰図として提出いただいて差し支えありません」としています。1枚のシートを複数の制度で使い回せるということです。ローカルベンチマークの側も、経済産業省のページに「ローカルベンチマークは政府の各種施策と連携しており、各種補助金等の申請にも活用されています」と書かれており、支援機関向けの資料は「事業性評価・事業計画策定・事業承継・補助金申請など企業支援の場」での活用を想定しています。

ローカルベンチマークの3枚組そのものの書き方と、そこから戦略を組み立てる手順は経営戦略のつくり方で扱っています。本稿の位置づけは、そこで決めた戦略を、提出先が読める書式に翻訳する工程です。

数字のパートは「根拠」「一致」「下振れ」の3つで決まる

事業計画書のうち、審査側が最も時間をかけて読むのは数字のパートです。そして、ここで見られているのは金額の大きさではなく、その金額がどこから出てきたかです。

売上は必ず分解して、掛け算の式で書く

公庫の月別収支計画書の記入例には、算出根拠の欄に次のように書かれています。「昼(月〜土) 900円×25席×0.8回転×26日=46万円 夜(月〜木) 4,500円×25席×0.6回転×18日=121万円 (金、土) 4,500円×25席×0.9回転×8日=81万円」。原価は「原価率35%(勤務時の経験から)」、人件費は「従業員1人20万円 専従者1人(妻)10万円 アルバイト3人 時給800円×14時間/日×26日=29万円」。支払利息については様式側に「支払利息(月間)は、『借入金×年利率÷12ヵ月』で算出します」という指示が入っています(出典:前掲・日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」掲載の「月別収支計画書【記入例】」、2026年9月閲覧。記入例の数値は様式の書き方を示すために置かれたもので、実在企業の実績ではありません)。

この書き方には型があります。単価×数量×稼働の3要素に分け、それぞれの数字の出どころを括弧で示す。「原価率35%(勤務時の経験から)」のように、根拠が経験である場合はそう書く。ここを「市場調査による」とだけ書くと、どの調査かを聞かれて終わります。

分解の切り口は業態で変わりますが、方向は2つしかありません。

  1. 積み上げ(ボトムアップ)。自社の設備・人員・時間の上限から計算する。席数×回転率×客単価×営業日数、稼働時間×時間当たり生産量×単価、営業人員×訪問件数×受注率×平均単価。上限が物理的に決まるので、過大な計画になりにくいのが利点です
  2. 市場からの逆算(トップダウン)。市場規模×獲得シェアで置く。新規事業や新市場への進出では、積み上げの根拠になる実績が自社にないため、こちらを使わざるを得ない場面があります

融資の場面では、原則として積み上げを主に、逆算を従にしてください。逆算だけで置いた数字は、シェアの前提を1ポイント動かすだけで結論が変わるため、返済原資の説明としては弱くなります。逆に補助金では、市場の規模と成長性の分析そのものが審査項目に入っているので、逆算の説明が必要になります。ここが提出先による書き分けの分かれ目です。

新規事業の売上見込みを、実績のない段階でどう確からしくしていくかは新規事業の仮説検証の領域です。

資金の表は、左右の合計が一致する

創業計画書の8番「必要な資金と調達方法」は、左に必要な資金(設備資金・運転資金)、右に調達の方法(自己資金/親、兄弟、知人、友人等からの借入/日本政策金融公庫からの借入/他の金融機関等からの借入)を並べ、最下段にそれぞれの合計を置く構造です。記入例には「金額は一致します。」という注記がわざわざ添えられています。設備資金の内訳には見積先を書く欄があり、記入例は「店舗内外装工事 ○○社 500/厨房機器 ○×社 200/什器・備品類 △△社 150/保証金 120」と業者名まで分けています。

当たり前のようですが、左右が合っていない計画書は実際によく出てきます。足りない差額を「自己資金」で埋めて辻褄を合わせると、今度は通帳残高との整合を聞かれます。調達側に親族借入を置いたなら、記入例のように「元金2万円×100回(無利息)」という返済方法まで書いてください。返済方法が書かれていない親族借入は、金融機関からは返済義務のある負債として扱われます。

損益が黒字でも資金は足りなくなる

計画書で最もつまずくのが、損益計画と資金計画の関係です。損益と資金がずれる原因は、限られています。

ずれる原因損益への影響資金への影響
売上が伸びる(回収は後)売上・利益が増える売掛金が増え、資金は先に減る
在庫を厚くする影響なし(売れるまで費用にならない)仕入代金の分だけ資金が減る
設備を買う減価償却費として数年に分けて費用化購入月に全額出ていく
借入の元本を返す費用にならない毎月出ていく
減価償却費費用になる出ていかない
法人税等・消費税の納付法人税等は税引前当期純利益の下に計上される。消費税は税抜経理なら損益計算書に現れない納付月にまとまって出ていく
補助金を使う原則として益金先に全額を立て替え、入金は後

上から4行(売上増と在庫は同じ運転資金の話です)が「利益が出ていても返済できない」の正体です。売上が伸びるほど売掛金と在庫に資金が寝て、設備投資は買った月に全額出て、元本返済は費用にならないまま毎月出ていく。この3つが重なると、損益計算書上は増益なのに現預金が減り続けます。だから公庫の様式は、返済原資を「減価償却費+経常利益の半分」で見積もるのです。

計画書に添える資金計画としては、公庫の資金繰り表の様式が使えます。経常収支・経常外収支・財務収支の3区分と残高欄を持つ詳細版を使えば、設備投資と納税を経常収支から切り離して、本業のキャッシュだけを取り出せます。作り方は資金繰り表の作り方に譲ります。

補助金を使う設備投資は、この表の最終行が効いてきます。補助率が3分の2でも、いったんは10割を自社が払い、入金は事業終了後です。支払月と入金見込月をずらして置かないと、計画書の資金計画が現実と逆の姿になります(補助金・助成金の探し方で扱っているとおりです)。

下振れした場合を、様式が聞いてくる

「リスクに触れていない計画書は評価されない」というのは、精神論ではありません。様式に欄があります。

公庫の月別収支計画書には、「売上高達成に向けた具体的な取組み」の欄が「どのようにして(手段、取組み方法)」と「いつまでに(実行時期)」の2列で用意されており、その隣に「計画した売上高を下回った場合の資金繰り・資金調達方法」という欄が置かれています。記入例の回答は「創業にかかる自己資金とは別に貯蓄している預金(○○万円)で赤字を補てんする」というものです。

同じ記入例の月次計画を見ると、利益は最初の6か月が▲101万円、▲50万円と続き、7か月目からようやく+30万円に転じ、12か月合計では▲171万円になっています。公的な様式の記入例そのものが、右肩上がりではありません。赤字の期間があること自体は減点材料ではなく、その期間をどう食いつなぐかが書かれているかどうかが見られています。

❌ 「初年度から黒字、3年で売上2倍という計画にしないと通らないと思い、根拠なく右肩上がりの数字を置いた」 ⭕ 「立ち上がりの赤字月と累計の不足額を先に計算し、それを何で埋めるか(自己資金・据置期間・当座貸越枠)を同じ紙に書く」

補助金に出す計画書は、金融機関用の流用では通らない

補助金の事業計画書は、審査の観点が公開されています。したがって、書くべきことは推測する対象ではありません。

中小企業基盤整備機構が公表している「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.2版(令和8年8月)は、書面審査の項目を次の順で並べています。

審査項目主に問われていること
(1)補助対象事業としての適格性対象者・対象事業の要件を満たすか。経費が目的達成のために真に必要かつ合理的な額か
(2)経営戦略との整合性これまでの事業活動や過去の取組との一貫性があり、経営戦略上に明確に位置付けられているか。転換がある場合は合理的な理由が示されているか
(3)事業の実現可能性目標値の実現可能性、遂行体制、顧客ターゲットとニーズの裏付け、スケジュール、財務状況と資金調達の見込み
(4)新規事業の新市場性・高付加価値性(新事業進出枠)製品等のジャンル・分野の普及度や認知度が低いことを裏付ける客観的データ、または高付加価値化・高価格化の源泉の分析
(5)公的補助の必要性経済波及効果、費用対効果、国の補助がなくとも自社単独で容易に実施できるものではないか
(6)政策面経済社会の変化に対応する分野への進出、地域の経済成長への貢献、産業クラスターとの整合

(出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.2版、令和8年8月。公募期間は令和8年6月29日〜令和8年10月30日18:00。公募要領は改訂されるため、申請時は必ず事務局の最新版を確認してください)

同じ公募要領の基本要件は、補助事業終了後3〜5年の事業計画期間について、①付加価値額の年平均成長率が4.0%以上、②一人当たり給与支給総額の年平均成長率が+3.5%以上、③毎年、事業場内最低賃金が実施場所の地域別最低賃金より30円以上高い水準、の3つです。②と③には「目標値未達の場合、補助金返還義務あり」と明記されています。年平均成長率は複利計算で算出するよう指定されています。地域別最低賃金が上がれば、③で求められる水準も上がります。2026年度の改定額は「最低賃金1,177円、106万円の壁撤廃。パート雇用はどう変わる」で扱っています。

SUBSIDY REQUIREMENTS

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)の基本要件

4.0%以上

付加価値額の年平均成長率

+3.5%以上

一人当たり給与支給総額の年平均成長率(未達なら返還義務あり)

+30円以上

事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差(毎年。未達なら返還義務あり)

出典:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.2版。補助事業終了後3〜5年の事業計画期間が対象。

金融機関用と補助金用の対比

同じ会社の同じ設備投資でも、2つの計画書は次のように分かれます。

論点金融機関に出す計画書補助金に出す計画書
中心の問い返済原資が生まれるか政策目的に合い、目標値を達成できるか
計画期間借入の返済が終わるまで補助事業終了後3〜5年
主要な数値目標減価償却費+経常利益、推定借入負担年数付加価値額の年平均成長率、一人当たり給与支給総額の年平均成長率
過去実績の扱い直近3期を並べて連続性を示す過去の経営実績・各種経営指標との連続性・整合性が審査される
未達だったとき報告と相談。条件変更の検討に進む制度により補助金の返還義務が生じる
市場分析補助的(返済の確からしさの裏づけ)必須。市場規模・成長性・競合との差別化が独立した審査項目
外部支援認定支援機関の所見欄がある様式もある作成支援者の名称・支援内容・報酬・契約期間の申告義務
分量・形式相手の様式に従う電子申請システムへの入力。様式が分量を決める

注目すべきは、補助金の審査項目にも金融機関の目線が入っていることです。(3)事業の実現可能性の⑤には「補助事業を適切に遂行できる財務状況が十分に確保されているか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか」とあり、さらに「過去の経営実績や各種経営指標との連続性・整合性が確保されており、事業計画との間に無理や乖離が生じていないかについても審査します」という注記が続きます。加えて、金融機関から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は「金融機関による確認書」の提出が必須です。自己資金のみで実施する場合は不要とされています。

つまり、補助金の計画書を作る前に、金融機関との話が先に必要になる構造です。採択されてからつなぎ資金を相談するのでは順序が逆になります。

もうひとつ、制度どうしのつながりも用意されています。同じ公募要領の加点項目には「経営革新計画加点(申請締切日時点で有効な『経営革新計画』の承認を取得している事業者)」が含まれています。都道府県で経営革新計画の承認を取っておくと、補助金の審査で加点されるという関係です。ただし承認には申請から時間がかかるため、加点を狙うなら締切から逆算した段取りが要ります。

補助金そのものの探し方、交付決定前の発注という落とし穴、加点の上限数といった申請実務は補助金・助成金の探し方で扱っています。

❌ 「融資用に作った事業計画書のワードファイルを、そのまま補助金の申請に添付した」 ⭕ 「公募要領の審査項目の見出しを並べ、その順に答えを置き直す。市場分析と目標値の算出根拠は補助金用に新しく書く」

審査で落ちる書き方は、だいたい5つに集約される

不採択や条件付きになる計画書には共通点があります。以下は、本稿で確認した各様式・公募要領の記入指示と審査項目から、逆に読み取れる「書かれていないと困るもの」です。

落ちる書き方何が欠けているか直し方
根拠のない右肩上がり単価・数量・稼働への分解と、その出どころ掛け算の式で書き、各要素の根拠を括弧で添える
前提が書かれていない回収条件、原価率、稼働率、人員の前提「原価率35%(勤務時の経験から)」の形で前提と出どころを1行ずつ書く
過去と断絶している直近3期の実績と、そこからの変化の説明実績3期と計画期を同じ表に並べる。変化する行には理由を付ける
リスクに触れていない下振れした場合の資金手当て「計画した売上高を下回った場合の資金繰り・資金調達方法」を1段落書く
実行体制が空欄担当・時期・判定方法実施項目ごとに評価基準・評価頻度・実施時期を埋める

最後の行は、経営革新計画の別表2がそのまま答えになります。別表2「実施計画と実績」は、計画側に番号/実施項目/評価基準/評価頻度/実施時期の5列を置き、実績側に実施状況/効果/対策の3列を置く構成です。記入指示には、評価基準は「定量化できるものは定量化した基準を設定することとするが、定性的な基準でも可とする」、評価頻度は「毎日、毎週、毎月、隔月、半年、1年、半年後、1年後などと記載する」、実施時期は「実施項目を開始する時期を4半期単位で記載する」とあります。番号は「1、2、1-1、1-2、1-1-1、1-1-2というように、実施項目を関連付けて記載すること」という指示です(前掲・中小企業庁「経営革新計画 進め方ガイドブック」)。

「営業を強化する」が行動計画にならないのは、この5列のうち4列が埋まらないからです。評価基準は何か、どの頻度で見るか、いつ始めるか、上位のどの項目にぶら下がるか。埋まらない行は、まだ意思決定が終わっていないということです。

補助金の側にも同じ発想の審査項目があります。前掲の公募要領は、実現可能性の②に「補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか。第三者に過度に依存している事業ではないか。過度な多角化を行っているなど経営資源の確保が困難な状態となっていないか」を挙げています。外部に丸投げした計画は、この項目で引っかかります。

❌ 「行動計画に『営業体制を強化する』『DXを推進する』と書き、担当は営業部、期限は今期中とした」 ⭕ 「実施項目を『A業界の見込み先20社をリスト化し10社に架電』まで分解し、評価基準(新規商談件数)、評価頻度(毎月)、実施時期(1年目第2四半期)、担当者名を1行に並べる」

作って終わりにしない 差異を見る欄まで様式に入っている

事業計画書が棚に眠るのは、意志の弱さではなく、実績を入れる欄がないからです。公的な様式には、その欄があります。

経営革新計画の別表2の実績側は、記入指示までセットで公開されています。実施状況の記号は「◎…計画通り実行できた ○…ほぼ計画通り実行できた △…実行したが不十分だった ×…ほとんど実行できなかった」、効果の記号は「◎…効果が十分上がった ○…ほぼ予定していた効果が得られた △…効果が不十分だった ×…ほとんど効果がなかった」。そして対策の欄には「実施状況に応じて、実施する取組を追加することとした場合は、追加した実施項目を別表2に記載すること」とあります。実行できたかと、効果が出たかを、別々に記録させているのがこの様式の要点です。実行はできたが効果が出なかった項目と、そもそも着手できなかった項目とでは、次にやることがまったく違います。

外部から期限が来る仕組みも用意されています。経営革新計画では、承認を行った国または都道府県が計画実施中にフォローアップ調査を行い、計画終了時には終了企業調査を実施します。日本政策金融公庫の中小企業事業は、事業計画書とセットで「事業計画進捗報告書」の様式を公開しています。

早期経営改善計画策定支援では、伴走支援の中身が3つに定義されています。①進捗・取組状況の確認(数値計画と実績の差異、及びアクションプランの取組状況の確認)、②対応策の検討(計画と実績に差異がある場合の対応策の検討)、③金融機関等への報告(計画進捗状況を金融機関等に報告)です(前掲・中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」)。

この3つが、月次で回すべきことの最小構成です。差異を見る、原因に対する打ち手を決める、それを金融機関に自分から報告する。3番目まで含めて初めて、平時の情報開示になります。

実務としては、次のように分けるのが現実的です。

見るもの頻度出どころ場
売上・粗利の計画対比月次試算表既存の月次会議
アクションプランの実施状況と効果月次別表2形式の一覧同上
資金繰りの予実と、最も薄くなる月月次資金繰り表同上
付加価値額・給与支給総額などの計画指標年次決算書決算報告・金融機関面談
推定借入負担年数、借入金残高年次決算書・返済予定表同上

(本誌が、前掲の各様式が定める評価頻度の考え方をもとに整理した目安です。公的な基準ではありません)

差異のうちどこまで原因を追うか、月次でどの指標を回すかについては、資金繰り表の作り方とKPI設計と運用にそれぞれ整理があります。事業や商品ごとの採算を分けて見る必要が出てきたら、部門別損益の作り方が次の工程です。

なお、資金繰りの悪化により元本返済の据置きや期日の延長を金融機関に要請する段階に入ると、計画書は「事業再生計画」という別の性質のものになります。判断の順序は事業再生の判断タイミングを参照してください。本稿が扱っているのは、その手前の平時の計画書です。

外の目は、無料または3分の2の負担で入れられる

自社だけで書き切れないときに、費用をかけずに使える窓口があります。営業を受ける心配の少ない順に整理します。

相談先何ができるか費用
よろず支援拠点経営上のあらゆる相談に何度でも対応。47都道府県に設置無料
商工会・商工会議所申請書類の相談、制度の運用実態、必要書類の発行会員以外への範囲は団体により異なる
認定経営革新等支援機関経営状況の把握(財務分析・課題抽出)、事業計画作成の支援・助言、実行支援、モニタリング機関により異なる
中小企業活性化協議会(早期経営改善計画策定支援)認定経営革新等支援機関による計画策定と伴走支援費用の3分の2を協議会が負担(負担額の上限は計画策定50万円、伴走支援30万円)
中小企業活性化協議会(経営改善計画策定支援・405事業)金融支援を伴う本格的な経営改善計画の策定支援費用の3分の2を協議会が負担(負担額の上限は通常枠300万円、中小版GL枠700万円)

(出典:中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点」、2026年9月閲覧/中小企業庁「認定経営革新等支援機関」、2026年8月25日更新/中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」、2026年9月閲覧)

よろず支援拠点は国が設置した無料の経営相談窓口で、「経営上のあらゆるご相談に何度でも無料で対応します」と明示されています。対象は中小企業・小規模事業者のほか、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人等の中小企業・小規模事業者に類する方、創業予定の方です。

認定経営革新等支援機関は、平成24年8月30日に施行された「中小企業経営力強化支援法」(現在の「中小企業等経営強化法」)に基づく認定制度で、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人・法人・中小企業支援機関等が認定されています。認定は継続的に行われており、2026年8月25日には新たに362機関が認定されました。どの機関に頼むかは検索システムで比較できます。同システムでは、認定支援機関(金融機関を除く)の活動内容や支援実績等を検索できます。

早期経営改善計画策定支援は、資金繰り管理や採算管理などの基本的な経営改善に取り組む中小企業者等が、認定経営革新等支援機関の支援を受けて計画を策定する制度です。中小企業活性化協議会が費用の3分の2を負担し、負担額の上限は計画策定が50万円、伴走支援が30万円で、合わせて最大80万円です。事業承継先探索に伴う企業概要書作成費用と、経営者保証解除に取り組む場合の金融機関交渉費用(認定経営革新等支援機関である弁護士等に限る)についても、それぞれ上限10万円で3分の2が負担されます。金融支援を伴う本格的な経営改善が必要な場合は、経営改善計画策定支援(通称:405事業)が別に用意されており、こちらは3分の2の負担で上限が通常枠300万円、中小版GL枠700万円です。

ここで注意したいのは、外部に頼めるのは「書き方」であって「中身」ではないという線引きです。補助金の側はこれを明文化しています。前掲の公募要領は、認定経営革新等支援機関等の外部支援を受けている場合、作成支援者の名称・支援内容・報酬・契約期間の申告を求め、支援を受けているのに必要な入力がなされていない場合は不採択・採択取消・交付決定取消となるとしています。これとは別に、虚偽申請等の不正行為が判明した場合には、交付決定の取消しに加えて加算金を課したうえでの返還、悪質な場合は事業者名・代表者名・不正内容の公表という措置が定められています。加えて審査項目には「第三者に過度に依存している事業ではないか」という観点が置かれています。

❌ 「事業計画書の作成を専門業者に一式で依頼し、内容の説明も業者にしてもらう前提で申請した」 ⭕ 「数字の置き方と書式の整え方は外部に相談し、市場の見立てと実施体制は自社で決める。支援を受けた事実と金額は申請時に申告する」

経営革新計画のように、外部から期限つきで進捗を聞かれる制度を使うのも一つの方法です。承認要件は事業期間3〜5年で「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」と「給与支給総額」がそれぞれ所定の伸び率を満たすことで、3年計画なら9%以上・4.5%以上、4年で12%以上・6%以上、5年で15%以上・7.5%以上です(年平均でそれぞれ3%以上・1.5%以上にあたります)。制度の使い方と承認のメリットは経営戦略のつくり方に整理してあります。

5問で確認する 事業計画書の提出準備度

提出前に、相手が確かめることに答えられる計画書になっているかを確かめる簡易チェックです。

SELF CHECK / 無料・登録不要

5問で確認|事業計画書の提出準備度

いま作っている(または直近で出した)計画書を思い浮かべて、いちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1提出先を1つに決め、その提出先の公的様式の並びに沿って書いている
  2. Q2売上を単価×数量×稼働の掛け算に分解し、各要素の出どころを添えている
  3. Q3推定借入負担年数(減価償却費+経常利益の半分で何年で返せるか)を計算した
  4. Q4計画した売上を下回った場合の資金繰り・資金調達方法を書いている
  5. Q5行動計画の各項目に、評価基準・評価頻度・実施時期・担当が入っている

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ

事業計画書は、誰に出すかを決めてから書き始めます。金融機関、補助金の審査機関、都道府県、そして自社の実行管理では、相手が最初に確かめることが違うため、同じ素材でも並べ方と重心が変わります。1通を使い回すと、どれにも届きません。

金融機関向けの答えは、日本政策金融公庫の事業計画書(参考様式第1号)の並びに出ています。現況と課題、業績推移6期分、借入金・社債の残高推移、そして推定借入負担年数。算式は「D/(A+B+(C×1/2))」で、返済原資として数えられているのは減価償却費の全額と経常利益の半分です。利益が出ているから返せる、という説明は様式の側で否定されていると考えてください。

白紙から作る必要はありません。創業計画書(業種別の記入例が9種類)、企業概要書、月別収支計画書、会社概要、資金繰り表、ローカルベンチマークシート、経営革新計画の様式第13と別表1〜7、早期経営改善計画のひな形。すべて無料で公開されており、様式は「同等以上の内容が具備された様式で代替可能」とされています。自作するなら、様式の欄をチェックリストとして使ってください。

数字のパートは3点です。第一に、売上は掛け算の式に分解し、各要素の出どころを添える。公庫の記入例は「900円×25席×0.8回転×26日=46万円」「原価率35%(勤務時の経験から)」という粒度で書いています。第二に、必要な資金と調達方法は左右の合計が一致し、親族借入なら返済方法まで書く。第三に、下振れの手当てを書く。公的な様式の記入例そのものが、12か月合計で▲171万円という数字を置いています。赤字の期間があること自体ではなく、それをどう食いつなぐかが見られています。

補助金の計画書は別物です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領は、審査項目を適格性・経営戦略との整合性・実現可能性・新市場性・公的補助の必要性・政策面の順に公開し、基本要件として付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額+3.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上を課しています。後の2つは未達なら返還義務が生じます。そして実現可能性の審査には「金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか」が含まれ、資金提供を受ける場合は「金融機関による確認書」の提出が必須です。

落ちる書き方は5つに集約されます。根拠のない右肩上がり、前提が書かれていない、過去3期と断絶している、リスクに触れていない、実行体制が空欄。最後のひとつは経営革新計画の別表2の5列(実施項目・評価基準・評価頻度・実施時期・番号による関連付け)を埋めれば解決します。

作った後は、実績を入れる欄まで様式が用意しています。別表2は「実行できたか」と「効果が出たか」を別々に記録させ、早期経営改善計画の伴走支援は「差異の確認」「対応策の検討」「金融機関等への報告」の3つを定義しています。3番目まで含めて初めて、平時の情報開示になります。

書き切れないときは、よろず支援拠点(無料・回数制限なし・47都道府県)、認定経営革新等支援機関(検索システムで比較可能)、早期経営改善計画策定支援(協議会負担の上限は計画策定50万円+伴走支援30万円)が使えます。ただし外部に頼めるのは書き方までで、市場の見立てと実施体制は自社で決めるものです。補助金では作成支援者の申告義務があり、「第三者に過度に依存している事業ではないか」が審査項目に入っています。

NEXT ACTION / 次にやること

提出先を1つ決め、その公的様式の欄に手持ちの素材を当てはめる

空欄になった欄が、そのまま審査で聞かれる箇所です。売上の算出根拠と直近3期の数値から埋めてください。

※本稿で挙げた様式名・記入欄・要件・金額は、いずれも2026年9月時点で公表されている内容です。補助金の公募要領は改訂されるため、申請にあたっては必ず事務局の最新版を確認してください。経営革新計画の様式番号は都道府県によって異なる場合があります。「読まれる順」と月次で見る項目の整理は、本誌が様式の構成から整理した目安であり、公的な基準ではありません。

よくある質問

Q事業計画書は何ページくらいが適切ですか。
A

提出先が決めます。補助金は公募要領が形式を指定しており、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募では、事業計画書は電子申請システムに必要事項を入力する方式です。融資では、公庫の様式がA3判1枚から数枚に収まる設計になっており、創業計画書は10欄、事業計画書(参考様式第1号)は7項目です。ページ数を増やすより、様式が用意している欄を埋め切るほうが確実です。自作する場合も、様式の欄をチェックリストとして使い、埋まらない欄が出たらそこが未決定事項だと考えてください。

Q融資用に作った計画書を、そのまま補助金の申請に使えますか。
A

使えません。素材(売上根拠、見積書、担当と期限、直近3期の数値)は共通ですが、並べ方と重心が変わります。融資では返済原資と返済年数が中心ですが、補助金では経営戦略上の位置づけ、市場の規模と成長性、競合との差別化、そして目標値の算出根拠が独立した審査項目になっています。逆に、補助金用に書いた市場分析を融資の説明に足すのは有効です。ただし融資の説明の主軸は、あくまで積み上げで計算した売上と、そこから出る返済原資です。

Q売上計画は積み上げと市場からの逆算のどちらで作るべきですか。
A

融資の場面では積み上げを主にしてください。自社の設備・人員・営業時間という物理的な上限から計算するので、根拠を確かめやすく、過大な計画になりにくいためです。公庫の記入例も「客単価×席数×回転率×営業日数」という掛け算で書いています。一方、新規事業や新市場への進出では自社に実績がないため、市場規模からの逆算を使わざるを得ない場面があります。その場合は、市場規模の出典と、獲得シェアをその水準に置いた理由を必ず添えてください。補助金では市場の規模と成長性の分析そのものが審査項目なので、逆算の説明が必要になります。

Q利益が出る計画なのに、金融機関から返済能力を問われるのはなぜですか。
A

返済原資は利益と同じではないからです。公庫の事業計画書(参考様式第1号)は、推定借入負担年数を「D/(A+B+(C×1/2))」で算出します。A・Bは減価償却費、Cは経常利益、Dは借入金・社債の合計で、経常利益は半分しか原資に数えられていません。加えて、売上が伸びれば売掛金と在庫に資金が寝て、設備投資は購入月に全額出ていき、借入の元本返済は費用にならないまま毎月出ていきます。損益計算書が黒字でも現預金が減る局面は普通に起きます。計画書には損益計画とあわせて資金計画を添えてください。この算式を1件の設備投資に当てはめて投資額の上限を出す手順は設備投資の判断基準で扱っています。

Q赤字の期間がある計画は、出さないほうがよいですか。
A

そんなことはありません。公庫が公開している月別収支計画書の記入例は、最初の6か月が赤字で、12か月合計の利益が▲171万円という数字を置いています。同じ様式には「計画した売上高を下回った場合の資金繰り・資金調達方法」を書く欄があり、記入例は「創業にかかる自己資金とは別に貯蓄している預金で赤字を補てんする」と回答しています。見られているのは赤字の有無ではなく、赤字の期間の長さと深さを自分で把握しているか、それを何で埋めるかを決めているかです。隠して黒字に見せた計画のほうが、前提を1つ確かめられた時点で信頼を失います。

Q事業計画書の作成を外部に依頼してもよいですか。
A

書き方の相談は問題ありませんが、丸投げは制度上そもそも成立しません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、外部支援を受けている場合に作成支援者の名称・支援内容・報酬・契約期間を申告するよう求めており、支援を受けているのに必要な入力がなされていない場合は不採択・採択取消・交付決定取消となるとしています。審査項目にも「第三者に過度に依存している事業ではないか」が入っています。費用を抑えたい場合は、よろず支援拠点(無料・回数制限なし)や、早期経営改善計画策定支援(費用の3分の2を中小企業活性化協議会が負担、負担額の上限は計画策定50万円・伴走支援30万円)が使えます。

Q作った計画書を、その後どう使えばよいですか。
A

実績を入れて差異を見る運用まで含めて設計してください。経営革新計画の別表2は、実施項目ごとに評価基準・評価頻度・実施時期を計画側に書き、実績側には実施状況と効果を別々の記号(◎○△×)で記録させる構成です。実行できたが効果が出なかった項目と、着手できなかった項目とでは打ち手が違うためです。早期経営改善計画の伴走支援は、①数値計画と実績の差異およびアクションプランの取組状況の確認、②差異がある場合の対応策の検討、③計画進捗状況の金融機関等への報告、の3つを定義しています。月次で見るのは売上・粗利の予実、アクションプランの実施状況、資金繰りの3つで足ります。付加価値額や借入負担年数といった年次の指標は、決算後に見れば十分です。

Qどの公的様式から手を付けるのがよいですか。
A

いま資金調達の予定があるかどうかで分かれます。融資の申込みが近いなら、既存企業は公庫の企業概要書、創業なら創業計画書から埋めてください。数日で埋まりますし、埋まらない欄がそのまま面談で聞かれる項目になります。当面の調達予定がなく現状把握から始めたいなら、ローカルベンチマークシートの3枚組が向いています。これは商流・業務フローのシートを早期経営改善計画のビジネスモデル俯瞰図として提出できるため、後の制度利用にもつながります。資金繰りの立て直しが目的なら、早期経営改善計画のひな形(3年計画用)と公庫の資金繰り表詳細版を組み合わせるのが最短です。

出典・調査の対象範囲

※「読まれる順」や落ちる書き方の整理は、編集部が様式・公募要領から整理した目安です。審査の結果を保証するものではありません。

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