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資金繰り表の作り方と改善の進め方 日本政策金融公庫の様式で月次と週次を回す

公開 2026.09.04

資金繰り表は自作せず、日本政策金融公庫が公開している詳細版の様式を使うのが最短です。同じ会社の同じ月でも、設備投資を経常支出に混ぜるかどうかで差引過不足は△232.8百万円と△32.8百万円に分かれます。行項目、数字の出どころ、残高欄による検算、週次への落とし方、金融機関への見せ方まで実物に沿って整理します。

資金繰り表は自作せず、日本政策金融公庫が公開している詳細版の様式から行構成を借りるのが、最短で確実な作り方です。
  • 公庫の詳細版の様式は経常収支・経常外収支・財務収支の3区分でできています。簡易版にはこの区分がなく、設備代金200百万円も同じ支出計に入るため、公庫の記載例では同じ会社の同じ月で差引過不足が簡易版△232.8百万円、詳細版△32.8百万円と分かれます。本業でキャッシュが回っているかは、区分を分けないと見えません
  • 詳細版には売掛金・受取手形・買掛金・支払手形・借入金の残高欄が付いています。「前月残高+当月発生−当月回収=当月末残高」が合うかどうかで、入力漏れが毎月自動で見つかります。残高欄のない表は、間違っても誰も気づきません
  • 手形の行(手形期日落・手形決済)は2027年3月31日で電子交換所での交換が廃止されます。2025年中の交換枚数はまだ1,416万枚。手形の行が動いている会社は、でんさい・振込への置き換えを表の上で先に済ませておく必要があります

「資金繰り表を作りましょう」と言われても、最初に手が止まるのは行項目です。何を何行に分けるか、数字をどこから持ってくるか、作った後にどう使うか。本稿は、日本政策金融公庫が公開している資金繰り表の様式と記載例を実物として使い、行項目の設計、数字の出どころ、月次と週次の切り分け、差異の潰し方、表から打ち手を導く読み方、金融機関への見せ方までを順に扱います。手元資金を何か月分持つべきかという水準の話は扱いません。ここは「表を作って毎月回す」ための記事です。

最初に結論:資金繰り表は公庫の様式で作り、残高で検算して毎月回す

まず見るべき判断表|資金繰り表で最初に決める6つのこと

決めること結論理由
様式日本政策金融公庫の詳細版をそのまま使う(慣れるまでは簡易版でも可)行を自作するより速く確実で、金融機関にも通じる
区分経常収支・経常外収支・財務収支の3つに分け、毎月起きるものだけを経常収支に置く設備代金を混ぜると、同じ月が△232.8にも△32.8にも見える
数字の出どころ通帳・売掛買掛の管理表・借入金返済予定表・給与と納税のカレンダーの4つ設備投資と大口受注の2行だけは経営者が自分で埋める
検算残高欄を「前月残高+増加−減少」で合わせ、翌月繰越を通帳と一致させる表が形骸化する原因の多くは、残高が合わないまま放置されること
頻度月次が基本。経常収支が2か月連続マイナスなどの状態なら13週の週次表を1枚追加月末残高がプラスでも月中に資金が尽きることがある
見せ方実績6か月+予定12か月を3区分のまま、試算表と一緒に毎月渡す平時の情報開示の例に「試算表・資金繰り表等の定期的な報告」が挙がっている

資金繰り表の目的は、本業でキャッシュを生めているかを毎月同じものさしで見ることです。区分を分け、残高で検算できる表にしてはじめて、予定と実績の差から打ち手が出てきます。

完成形を先に見る 公庫の様式そのままでよい

自社で一から設計する必要はありません。日本政策金融公庫は、中小企業事業の書式ダウンロードページで資金繰り表の様式を簡易版・詳細版の2種類、それぞれに作成手順及び記載例を付けて公開しています。Excelファイルで、「資金繰り計画を策定する場合にご活用ください」と案内されています(出典:日本政策金融公庫各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】、2026年9月閲覧)。

まず詳細版の全体像を示します。以下は詳細版の様式の行項目に、同じページで公開されている詳細版の記載例の1か月目の数値を入れたものです。単位は百万円です。記載例の数値は様式の書き方を示すために置かれたもので、実在企業の実績ではありません。

区分行項目1か月目この行に入れるもの
参考売上高334発生ベースの売上。資金の動きではないが上に置く
参考仕入・外注費157同上。回収・支払とのズレを見るための基準
繰越前期繰越現金・当座預金(A)61前月末の現預金残高。通帳と一致していること
経常収支・収入現金売上0売った月に入金される分
経常収支・収入売掛金現金回収239.2売掛金のうち当月に振り込まれる分
経常収支・収入(手形回収)59.8内書き。受け取った手形の額面。収入合計には含めない
経常収支・収入手形期日落55受取手形が期日に決済されて入金される分
経常収支・収入手形割引0割引で受け取る現金
経常収支・収入(割引手形落込)0内書き。割引した手形が期日に落ちた分
経常収支・収入その他収入4雑収入、家賃収入など
経常収支・収入収入合計(B)298.2内書きを除いた実際の入金額
経常収支・支出現金仕入0仕入れた月に払う分
経常収支・支出買掛金現金支払31買掛金のうち当月に振り込む分
経常収支・支出(手形支払)124内書き。振り出した手形の額面
経常収支・支出手形決済89支払手形が期日に落ちて出ていく分
経常収支・支出賃金給与61給与・賞与・役員報酬
経常収支・支出その他経費104.1家賃、水道光熱費、社会保険料、リース料、広告費など
経常収支・支出支払利息・割引料7.2借入利息と手形割引料
経常収支・支出支出合計(C)292.3内書きを除いた実際の出金額
経常収支差引過不足(D=B−C)5.9本業でキャッシュを生めているか
経常外収支・収入固定資産等売却収入0遊休資産の売却代金
経常外収支・収入収入合計(E)0
経常外収支・支出税金・役員賞与配当0法人税等・消費税の納付、役員賞与、配当
経常外収支・支出固定資産等購入支払(除く支手)0設備代金の現金払い
経常外収支・支出(固定資産等手形支払)200内書き。設備代金を手形で振り出した額面
経常外収支・支出固定資産等購入支払手形決済0その手形が期日に落ちて出ていく分
経常外収支・支出支出合計(F)0
経常外収支差引過不足(G=E−F)0
財務収支・収入長期借入金調達0実行された借入の入金
財務収支・収入短期借入金調達70同上
財務収支・収入定期性預金取り崩し0定期預金の解約
財務収支・収入増資0払込金
財務収支・収入収入合計(H)70
財務収支・支出長期借入金返済25約定返済の元本
財務収支・支出短期借入金返済0同上
財務収支・支出定期性預金預け入れ0
財務収支・支出支出合計(I)25
財務収支差引過不足(J=H−I)45返済を借入でまかなっていないか
繰越翌月繰越現金・当座預金(A+D+G+J)111.9翌月の(A)になる
残高売掛金/受取手形/買掛金/支払手形334/163.8/157/303検算用。次章で扱う
残高設備支手等営業外手形/短期借入金/長期借入金/割引手形200/892/1,608/0同上

(出典:日本政策金融公庫の前掲ページに掲載の「資金繰り表 詳細版」および「資金繰り表 詳細版【作成手順及び記載例】」、2026年9月閲覧。数値は記載例のもの)

この様式が優れているのは、カッコ書きの内書き行を用意している点です。「(手形回収)」「(手形支払)」は資金が動いた行ではなく、手形を受け取った・振り出したという事実を記録する行です。収入合計・支出合計には算入しません。なぜこれが要るかというと、手形は受け取った月と入金される月がずれるからで、内書きがないと受取手形・支払手形の残高が追えなくなるためです。

簡易版は行数が少なく(前期繰越、収入5行、支出7行、財務4行、翌月繰越)、経常外収支の区分そのものがありません。設備投資も税金も「仕入・外注費、経費以外の支出」の1行に押し込む構造です。最初の3か月は簡易版で走り、慣れたら詳細版に移るという進め方でも構いませんが、次章で見るとおり、簡易版のまま判断すると本業の実力を読み違えます。

なお、月次の資金繰り表は、キャッシュ・フロー計算書とは別物です。中小機構が運営するJ-Net21の経営ハンドブックは、資金繰り表には過去の実績から作る「資金繰り実績表」と、これからの資金の動きを見る「資金繰り予定表」の2種類があると整理しています。同サイトのビジネスQ&A(回答者:中小企業診断士 沢田一茂氏)は、資金繰り表を「一定の区分、科目に基づき、一定期間のすべての現金収入と現金支出を分類・集計」した表と説明しています(出典:中小機構J-Net21「資金繰り表を活用する」/同ビジネスQ&A「資金繰り表って何ですか?また、どのようにして作成するのですか?」、いずれも2026年9月閲覧。後者は外部の専門家による回答です)。決算書の付属資料ではなく、経営者が自社の判断に使うための道具なので、様式に税務上の正解はありません。

手形の行は2027年3月31日で役目を終える

公庫の詳細版の様式には、経常収支だけで手形関連の行が6つ(手形回収・手形期日落・手形割引・割引手形落込・手形支払・手形決済)、経常外収支にさらに2つ、残高欄に4つ並んでいますが、この前提は変わります。

銀行界は「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」で、2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを最終目標に掲げ、2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止するとしています(出典:金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」、令和8年3月31日/令和8年7月24日更新)。全国銀行協会は2026年6月18日、この交換廃止時期を2027年3月31日とすることを明確化しました。あわせて、2027年4月1日から手形・小切手が使えなくなるわけではないものの、電子交換所を介さない決済となるため各金融機関で郵送等による相対決済が必要になる、としています(出典:全国銀行協会「電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について」、2026年6月18日)。

まだ残っている量は小さくありません。全銀協の検討会がまとめた調査報告書によると、2025年中の電子交換所における手形・小切手の交換枚数は1,416万枚(手形670万枚、小切手746万枚)で、2025年の削減枚数551万枚は目標値984万枚に届いていません(出典:手形・小切手機能の「全面的な電子化」に関する検討会[事務局:全国銀行協会]「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書(2025年度)」、2026年3月27日)。

ZENGINKYO DATA

電子交換所の手形・小切手の交換枚数(2025年中)

1,416万枚

2025年中の交換枚数(手形670万枚・小切手746万枚)

2027.3.31

電子交換所での手形・小切手の交換廃止時期

2025年の削減目標984万枚
2025年の削減実績551万枚
出典:手形・小切手機能の「全面的な電子化」に関する検討会[事務局:全国銀行協会]「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書(2025年度)」(2026年3月27日)。

資金繰り表の実務としてやることは2つです。第一に、自社の手形行に数字が入っているなら、置き換え後の姿を今のうちに1列作ること。でんさい(電子記録債権)に置き換えるなら決済日は同じ考え方で追えますが、振込に切り替えると入金・出金の月が前倒しになり、その月だけ資金が二重に必要になることがあります。手形決済分と振込分が同じ月に重なるためです。第二に、手形の行がずっとゼロのままなら、その行は消してよいということ。使わない行が並んでいる表は、埋めるべき行の見落としを招きます。

❌ 「行構成を見直さないまま、使わない手形の行に毎月ゼロを入力し続けている」 ⭕ 「手形の行が動いている会社は置き換え後の列を先に作る。ずっとゼロの会社は行ごと消して、行数を自社の実態に合わせる」

経常収支と経常外収支を分ける 同じ会社が△232.8にも△32.8にも見える

区分の設計が資金繰り表のすべてと言ってよく、ここを間違えると表を作った意味がなくなります。公庫の記載例は、そのことを実際の数字で示せる材料になっています。

公庫の簡易版と詳細版の記載例は、同じ会社の同じ6か月を扱っています。売上高(334、255、234、222、261、275。6か月合計1,581百万円)も、前期繰越現金(61百万円)も、6か月後の残高(17.7百万円)もすべて一致します。違うのは、4か月目に出ていく設備代金200百万円をどこに置くかだけです。

項目簡易版(区分なし)詳細版(経常外収支あり)
4か月目の収入合計(B)260.4260.4
4か月目の支出合計(C)493.2293.2
4か月目の差引過不足(D)△232.8△32.8
4か月目の経常外収支(G)区分なし△200
6か月間の差引過不足(D)合計△217.3△17.3
4か月目の翌月繰越現金20.420.4
6か月後の翌月繰越現金17.717.7

(出典:前掲・日本政策金融公庫「資金繰り表 簡易版【作成手順及び記載例】」および「同 詳細版【作成手順及び記載例】」の数値から本誌が対比。単位は百万円)

簡易版(区分なし)4か月目の差引過不足

△232.8

設備代金200百万円が経常支出に混ざり、本業が崩れているように見える

詳細版(経常外収支あり)4か月目の差引過不足

△32.8

設備代金を経常外収支(△200)に分けると、本業はほぼトントンと読める

繰越残高はどちらも同じです。現金の総量は変わりません。変わるのは読み方です。簡易版だけを見ていると、この会社は6か月で経常収支が△217.3百万円という、事業として成り立っていない会社に見えます。ところが詳細版で設備代金200百万円を経常外に分けると、経常収支は△17.3百万円。売上1,581百万円に対して約1.1%の持ち出しにとどまり(経常収支は現金ベース、売上高は発生ベースなので、持ち出しの大きさをつかむための目安として見てください)、「本業はほぼトントン、ただし設備投資と返済を借入でまかなっている会社」という、まったく別の姿が出てきます。

なぜこの差が生まれるかというと、設備投資も納税も毎月起きる支出ではないからです。年に一度あるかないかの支出を経常支出に混ぜると、その月だけ経常収支が大きく沈み、翌月以降との比較ができなくなります。資金繰り表を使う最大の目的は「本業でキャッシュを生めているか」を毎月同じものさしで見ることなので、そのものさしを月ごとに変えてしまう構造は避けなければなりません。

したがって、区分を分けるときの判断基準は「重要かどうか」ではなく「毎月起きるか」です。毎月起きるなら経常収支、年に数回しか起きないなら経常外収支に置きます。具体的には、設備の購入代金、法人税等・消費税の納付、役員賞与、配当、保険の解約返戻金、遊休資産の売却代金が経常外収支です。社会保険料や給与のように毎月出ていくものは、金額が大きくても経常収支に置きます。

❌ 「消費税の納付は金額が大きいので、目立つように経常支出のいちばん下に別行で入れている」 ⭕ 「消費税・法人税等の納付は経常外収支に置く。経常収支の行は毎月同じ顔ぶれだけにして、前月比が意味を持つようにする」

もうひとつ、記載例から読み取れることがあります。この会社は1か月目に設備を手形で買い、4か月目にその手形が落ちて200百万円が出ていっています。詳細版の「(固定資産等手形支払)」に1か月目の200が、「固定資産等購入支払手形決済」に4か月目の200が入っており、残高欄の「設備支手等営業外手形」も1〜3か月目が200、4か月目に0へ戻ります。契約した月ではなく、現金が動く月に書く。これが資金繰り表の最初のルールです。減価償却費のように現金の動きを伴わないものは、金額の大小にかかわらず一切載せません。

区分を分けたうえで、6か月間の3つの差引を並べると、この会社の構造がそのまま出てきます。経常収支△17.3、経常外収支△200、財務収支+174(調達420−返済246)。前期繰越61に3つを足すと17.7で、翌月繰越と一致します。設備投資200を、経常収支ではなく借入でまかない、それでも43.3百万円だけ手元が減った。この一文が言えるようになるのが、区分を分ける目的です。手元をどれだけ厚く持つべきかという水準の判断は手元資金は月商の何か月分必要かで扱っています。

数字はどこから持ってくるか 資料は4つで足りる

行が決まったら、次は入力です。新しく帳票を作る必要はありません。通帳、売掛買掛の管理表、借入金返済予定表、給与と納税のカレンダーの4つで、資金繰り表のほぼすべての行が埋まります。

行項目参照する資料更新頻度よくある落とし穴
前期繰越現金・当座預金全口座の通帳・ネットバンキング残高月1回使っていない口座、小口現金、定期預金を数え落とす
売掛金現金回収/手形回収売掛金年齢表(得意先別・締日別)月1回締日と支払日が得意先ごとに違うのに一律で置く
手形期日落/手形割引受取手形記入帳月1回割引済みの手形を二重に計上する
買掛金現金支払/手形支払買掛金一覧(仕入先別)月1回経営者しか知らない大口発注が反映されない
賃金給与給与台帳・賞与支給予定月1回(賞与月は要更新)賞与月・社会保険料の年間更新月を平準化してしまう
その他経費前年同月の試算表四半期1回年払いの保険料・システム利用料を12分の1で置く
長期借入金返済/支払利息借入金返済予定表(金融機関発行)借入・返済条件変更のつど据置期間の終了月を反映していない
税金・役員賞与配当前年の申告書・納付書控え年1回(決算後に更新)中間納付を入れ忘れる
固定資産等購入支払稟議・注文書・リース契約書決裁のつど補助金の入金月を支払月と同じ月に置く

このうち、経営者が自分で埋めなければならない行が2つあります。「固定資産等購入支払」と、大口の受注に伴う「売掛金現金回収」です。どちらも経理には情報が来ていません。資金繰り表が実態と合わなくなる原因の多くは、予測の技術ではなく、社長の頭の中にある予定が表に降りてきていないことにあります。月次の入力を経理に任せるとしても、この2行だけは経営者が自分で確認してください。

補助金を使う設備投資は特に注意が必要です。補助率が3分の2でも、いったんは全額を支払い、交付は後になります。支払月と入金見込月を別の月に置かないと、表が現実と正反対の姿を示します(補助金・助成金の探し方でも触れているとおり、採択されたこと自体が資金繰りを圧迫する場面は珍しくありません)。

出ていく日が決まっている支出は、先に埋める

支出のうち、法令で期日が決まっているものは予測ではなく確定情報です。ここを先に埋めてしまえば、残りの精度が多少粗くても表は使えます。

支出期限根拠
源泉所得税(原則)給与などを支払った月の翌月10日国税庁 タックスアンサー No.2505
源泉所得税(納期の特例)1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日同上。給与の支給人員が常時10人未満の場合
健康保険・厚生年金保険料納付対象月の翌月末日日本年金機構
労働保険(年度更新)毎年6月1日〜7月10日に申告・納付厚生労働省
労働保険(延納する場合)第1期7月10日、第2期10月31日、第3期1月31日同上。概算保険料総額40万円以上等が要件
法人税(確定申告)原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内国税庁「法人税のあらましと申告の手引」
法人税(中間申告)事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内同上
消費税(確定申告)課税期間の末日の翌日から2か月以内同上
消費税(中間申告)直前の課税期間の確定消費税額により年1回・3回・11回国税庁 タックスアンサー No.6609

源泉所得税は、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により半年分をまとめて納める納期の特例を使えます(出典:国税庁タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例、令和7年4月1日現在法令等)。健康保険・厚生年金保険料の納付期限は納付対象月の翌月末日で、末日が休日の場合は翌日以降の最初の営業日になります(出典:日本年金機構「納付期限」、2026年9月閲覧)。労働保険は年度更新の手続を毎年6月1日から7月10日までに行い、概算保険料総額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合は20万円)以上の場合または労働保険事務組合に事務を委託している場合は3回に分割でき、納期はそれぞれ7月10日・10月31日・1月31日です(出典:厚生労働省 福島労働局「労働保険とは、加入の手続き、年度更新、労働保険料の延納」、2026年9月閲覧)。

税金の中間納付は、資金繰り表でとりわけ抜けやすい行です。法人税は、事業年度が6か月を超える普通法人は原則として事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に中間申告書を提出します。前年度実績を基準とする予定申告では「6か月経過日の前日までに確定した前事業年度の法人税額 ÷ 前事業年度の月数 × 中間期間の月数」で計算し、この額が10万円以下である場合または金額がない場合は提出不要です(出典:国税庁「法人税のあらましと申告の手引」、令和6年10月)。消費税は直前の課税期間の確定消費税額により、48万円超400万円以下で年1回、400万円超4,800万円以下で年3回、4,800万円超で年11回の中間申告・納付が必要になります(出典:国税庁タックスアンサー No.6609 中間申告の方法、2026年9月閲覧)。

前期が好調だった会社ほど、この行が翌期の資金繰りを圧迫します。前年度実績を基準に中間納付額が決まるためで、業績が落ちた期には「稼いでいない月に、去年稼いだ分の税金を払う」ことになります。仮決算に基づく中間申告という選択肢もありますが、いずれにせよ表の上で先に見えていなければ手は打てません。

なお、2026年10月からインボイス未登録事業者からの仕入れに係る控除割合が8割から7割に下がるため、免税事業者への外注が多い会社は納付する消費税額そのものが増えます。影響額の試算はインボイス経過措置の変更点を参照し、増える分を資金繰り表の税金行に反映してください。

残高欄を付けると、表が毎月自動で検算される

公庫の詳細版が簡易版と決定的に違うのは、表のいちばん下に残高欄があることです。売掛金、受取手形、買掛金、支払手形、設備支手等営業外手形、短期借入金、長期借入金、割引手形の8行が並びます。ここが効きます。

残高欄の使い方は単純で、前月残高に当月の増加を足し、当月の減少を引いた結果が当月末残高と一致するかを見るだけです。記載例の数値で確かめると、次のようになります。

検算する残高計算式1か月目の検算
売掛金前月残高+当月売上−(売掛金現金回収+手形回収)299+334−(239.2+59.8)=334
受取手形前月残高+手形回収−(手形期日落+手形割引)159+59.8−55=163.8
買掛金前月残高+当月仕入−(買掛金現金支払+手形支払)155+157−(31+124)=157
支払手形前月残高+手形支払−手形決済268+124−89=303
短期借入金前月残高+短期借入金調達−短期借入金返済822+70−0=892
長期借入金前月残高+長期借入金調達−長期借入金返済1,633+0−25=1,608

(前掲・日本政策金融公庫「資金繰り表 詳細版【作成手順及び記載例】」の数値から本誌が検算。単位は百万円。式は同様式の行構成から本誌が整理したもの)

すべての月で一致します。ここで、内書きの「(手形回収)」「(手形支払)」が何のためにあるかがはっきりします。これらは資金の動きではないので収入合計・支出合計には入りませんが、受取手形・支払手形の残高を回すには絶対に必要です。内書き行を省いた自作の表は、この検算ができません。

検算が合わないときに疑う順番は決まっています。第一に当月売上・当月仕入の金額(試算表と一致しているか)、第二に回収・支払の入力漏れ(大口先の1件が抜けていないか)、第三に貸倒れ・値引き・返品などの非資金取引(残高は減るが現金は動かないので、別に把握する必要がある)です。第三のケースは検算が必ず狂うので、注記欄を1列作って記録してください。

そして最も重要な検算が、翌月繰越現金・当座預金が全口座の通帳残高と一致することです。ここがずれた月は、その月のうちに原因を特定します。1か月放置すると翌月も合わなくなり、2か月続くと誰も表を信じなくなります。資金繰り表が形骸化する原因のほとんどは予測精度ではなく、残高が合わないまま放置されたことです。

❌ 「予定表なのだから多少ずれるのは当然。数字が合わない月は『調整』という行を作って差額を入れている」 ⭕ 「予定の精度と、実績の一致は別の話。実績列の翌月繰越は通帳と1円単位で合わせ、合わない月はその月のうちに原因を特定する」

月次の締めそのものが遅くて実績列が埋まらない、という会社は、表の作り方ではなく入力工程の問題です。バックオフィスDXの7つのステップの観点から、証憑の受領期限と入力の自動化を先に見直したほうが早く解決します。

月次で足りる会社と、週次に落とすべき会社

資金繰り表は月次で作るのが基本です。ただし、月末残高がプラスでも月中に資金が尽きることがあります。理由は、月内の支出日が偏っているからです。

前章で確認したとおり、源泉所得税は翌月10日、社会保険料は翌月末日、労働保険の延納分は7月10日・10月31日・1月31日、法人税・消費税は決算月の2か月後。これに給与支給日(多くは20日〜25日)、買掛金の支払日(多くは末日)、手形の決済日が加わります。つまり1か月の中に、少なくとも10日前後と月末の2つの山があり、会社によっては手形期日という3つ目の山が立ちます。月末残高だけを追う表は、この山を見ていません。

週次に落とすかどうかの判断基準を整理します。以下は本誌が実務上の観点から整理した目安であり、公的な基準ではありません(編集部の目安)。本稿ではこのほか、資金繰り表が実態と合わなくなる原因、形骸化の原因、給与や買掛金の支払日の分布、資金が薄くなってからの調達条件、取引先の与信管理に関する記述も、統計ではなく実務上の観点から整理した見方として書いています。

状態月次で足りるか理由
経常収支(D)が3か月連続でプラス、繰越残高が月内最大支出額を大きく上回る月次で足りる月中の山を吸収できる
経常収支が2か月連続でマイナス週次へ山を越えられない月が出る
繰越残高が、月内の最大支出日の支払額を下回る週次へ月末はプラスでも月中でショートする
当座貸越・短期借入の枠が常時ほぼ満額週次へ不足時に埋める手段が残っていない
元本返済の猶予や条件緩和を金融機関に要請することを検討している週次へ相手が日次・週次の資金繰りを見る
大口の設備投資・M&A・賞与など、月商規模の支出が控えているその月だけ週次単発の山を刻む

最後の項目は、公的なガイドラインの定義とも重なります。「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、資金繰り等の悪化のため事業活動の継続性に問題が生じ資金繰りを安定化するために元本返済期日の延長や元本返済の据置き等を金融機関に要請する場合は、通常「有事」に該当するとしています(出典:中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」Q&A、令和4年4月1日制定・令和8年3月16日一部改定、Q11)。ここに入る手前で週次に切り替えられるかどうかが、選べる選択肢の幅を決めます。

週次に落とすときの作り方は、月次表を分解するのではなく別表として新規に作るのが実務的です。行は月次表よりずっと少なくて構いません。週初残高、入金(大口は個別、少額は合算)、給与、社会保険料・税金、買掛支払、手形決済、借入返済、週末残高。この8行で足ります。期間は直近13週(約3か月)を1枚に並べるのが扱いやすく、四半期の試算表・報告サイクルと期間が揃います。ただしこの13週という区切りに公的な決まりはなく、本誌の目安です。8週でも16週でも、自社の最も長い回収サイトと支払サイトの両方が1枚に収まっていれば目的は果たせます。

週次表を持つ最大の効果は、精度ではなく動ける日数です。月次だけだと不足が見えるのは月末で、そこから金融機関に相談しても間に合いません。週次なら不足の見える時期が数週間早まります。資金が薄くなってからの調達は条件が悪化するため、この数週間の差が実際の資金コストに直結します。

❌ 「資金繰りが苦しいので、日次で現金残高を確認する表を新しく作って全社で運用する」 ⭕ 「月次表は残したまま、13週の週次表を1枚だけ追加する。行は8行。日次まで刻むのは、週次でも足りないと分かってから」

予定と実績の差異は「3か月連続で同じ方向にズレた項目」だけ潰す

資金繰り表は作った時点では予定表です。翌月に実績を入れ、予定との差を見て初めて道具になります。ただし、すべての差異を追うと運用が止まります。

列の持ち方は、月ごとに「予定/実績/差異」の3列を並べる形にします。過去6か月は実績が確定しているので実績のみ、当月以降12か月は予定のみ、という配置でも構いません。J-Net21が資金繰り実績表と資金繰り予定表を別のものとして整理しているのは、この2つが違う目的で使われるからです。実績表は「何が起きたか」、予定表は「これから何が起きるか」を示します。

差異を見るときのルールは3つです。

  1. 金額の閾値を先に決める。 月商の1%(月商5,000万円の会社なら50万円)を下回る差異は原因を追わない。追う価値がある差異だけを見る
  2. 単月の差異は原因を書くだけにとどめる。 「A社の入金が翌月にずれた」で終わりにし、対策は打たない。翌月に戻るなら何も起きていないのと同じ
  3. 3か月連続で同じ方向にズレた項目だけ、予定の置き方そのものを直す。 3か月続くズレは、偶然ではなく前提の誤りです

3つ目が本体です。3か月連続で売掛金現金回収が予定を下回っているなら、それは「たまたま遅れた」のではなく、回収条件の置き方が実態と違うということです。得意先別に締日と支払日を洗い直し、予定の作り方を直します。逆に3か月連続でその他経費が予定を上回っているなら、年払い費用を12分の1で置いた部分か、把握していない固定費があります。

差異の原因は、大きく4つに分類できます。

差異の型典型的な原因直す対象
タイミングのズレ(翌月に戻る)締日と入金日の1営業日の違い、休日の影響何もしない。カレンダーの月末営業日だけ確認
前提のズレ(3か月続く)回収条件・支払条件の置き方が実態と違う予定の作り方そのもの
抜け(一度きり、大きい)経営者しか知らない支出、年払い費用情報が表に降りる経路
実態の変化得意先の支払遅延、受注の減少予定ではなく事業側

判断の順番は、まず「翌月に戻ったか」を見ることです。戻ったならタイミングのズレなので、何もしません。戻らないなら、前提・抜け・実態の変化のいずれかです。この振り分けだけで、差異分析にかける時間は大幅に減ります。

なお、資金繰り表の差異と、損益の差異は別々に見てください。利益が計画どおりでも資金は減りますし、逆もあります。どの事業がいくら稼いでいるかを分けて見る話は部門別損益の作り方で扱っています。損益と資金は別の仕組みで管理し、突き合わせるのは年に数回で足ります。

表から打ち手を導く 見るのは4つの数字

表が回り始めたら、そこから何を読むかです。資金繰り表から直接読める数字は4つあり、それぞれ打ち手が違います。

01 / OPERATING

経常収支の6か月累計

継続的にマイナスなら、打ち手は価格・原価・固定費の側にある。

02 / FINANCING

財務収支への依存度

経常収支がマイナスで財務収支がプラスなら、返済のために借りている。

03 / REPAYMENT

約定返済額と経常収支

元本返済が経常収支の平均を上回れば、返すほど手元が減る。

04 / BALANCE

残高欄の動き

売掛金が増え、買掛金が減っていれば、運転資本が手元資金を削っている。

第一に、経常収支(D)の符号と、その6か月累計。単月のプラスマイナスに一喜一憂せず、6か月合計で見ます。公庫の記載例の会社は経常収支の6か月累計が△17.3百万円、売上1,581百万円に対して約1.1%の持ち出しでした。ここが継続的にマイナスなら、本業でキャッシュを生めていないということです。この場合の打ち手は資金繰りの外にあります。価格、原価、固定費のいずれかを動かすしかありません。経常収支のマイナスを借入で埋め続ける状態は、資金繰りの改善では解決しません。

第二に、財務収支(J)への依存度。繰越残高が増えている月でも、その原資が経常収支なのか借入なのかで意味が正反対になります。記載例の会社は6か月で調達420、返済246、差引+174。この174がなければ手元は残りませんでした。判断の目安は、財務収支の6か月累計がプラスで、かつ経常収支の6か月累計がマイナスなら、返済のために借りている状態だということです。

第三に、約定返済額と経常収支の関係。毎月の元本返済額が、経常収支の平均を上回っているかどうかを見ます。上回っていれば、返済を続けるほど手元が減り続けます。この場合、事業側の改善と並行して返済条件の見直しを相談する局面に入っています。判断が遅れると選べる手が減るため、時間軸そのものが変わる局面の見極めは事業再生の判断タイミングを参照してください。

第四に、残高欄の動き。売掛金・受取手形・買掛金・支払手形の残高が、売上・仕入に対してどう動いているか。売上が横ばいなのに売掛金残高が増えていれば回収が遅れており、仕入が横ばいなのに買掛金残高が減っていれば支払を早めています。どちらも手元資金を削ります。資金繰り表の残高欄は、月次の運転資本の推移をそのまま示しています。

打ち手の並べ方には原則があります。相手のいない打ち手を先に、相手のいる打ち手を後に。請求漏れ・請求遅延の撲滅、遊休資産の処分、滞留在庫の処分は自社だけで動けます。回収サイトの短縮と支払条件の見直しは相手との交渉が要るため、時間がかかるうえに副作用があります。特に支払サイトの延長依頼は、相手の与信管理部門に必ず記録され、取引条件の縮小につながることがあります。加えて、令和8年1月1日から下請代金支払遅延等防止法が中小受託取引適正化法(取適法)に変わり、対象取引では手形払いが禁止され、「電子記録債権(でんさい)等による支払も、納品日から60日以内に代金満額を受け取れない場合は違反」とされました(出典:公正取引委員会・中小企業庁「令和8年1月1日から、『下請法』が変わりました!」、令和8年1月1日施行)。自社が委託側として対象に入るなら、支払条件を延ばす選択肢そのものが使えません。受注側であれば、手形で受け取っていた代金が現金になる分だけ、資金繰り表の入金月が前に動きます。取引条件を文書でどう詰めるかは契約書のチェックポイントで扱っています。

❌ 「今月の資金が足りないので、値引きしてでも売上を増やして入金を作る」 ⭕ 「値引きは限界利益を削るうえ、入金は回収サイトの分だけ先になる。まず請求漏れの撲滅と滞留在庫の処分から着手し、回収条件の交渉は債権残高の上位数社に絞る」

金融機関に見せる資金繰り表の作り方

資金繰り表は自社のための道具ですが、同時に金融機関に対する最も実務的な説明資料でもあります。ここは求められてから作るものではありません。

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」のQ&Aは、平時における「適時適切な情報開示等による経営の透明性確保」として中小企業者に求められる対応の例に、決算書類や法人税申告書の提出と並べて「期中の財務状況を確認するための試算表・資金繰り表等の定期的な報告」を挙げています(出典:中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」Q&A、令和8年3月16日一部改定、Q5)。有事ではなく平時の話である点が重要です。苦しくなってから初めて資金繰り表を出す会社と、平時から毎月出している会社では、同じ数字でも受け取られ方が変わります。

有事に入ると、資金繰り表は必須の提出物になります。同ガイドラインは、私的整理手続で作成する事業再生計画案に含める内容として、企業の概況、財務状況の推移、実態貸借対照表、経営が困難になった原因、事業再生のための具体的施策、今後の事業及び財務状況の見通しと並べて「資金繰り計画(債務弁済計画を含む)」を明記しています(出典:中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」、令和4年3月・令和8年3月一部改定、第三部4.(4)①)。

公的な支援制度でも資金繰り表は中心に置かれています。中小企業活性化協議会が扱う早期経営改善計画策定支援(通称:バリューアップ支援事業)は、資金繰り管理や採算管理などの基本的な経営改善に取り組む中小企業を対象に、認定経営革新等支援機関が「資金実績・計画表」やビジネスモデル俯瞰図といった経営改善計画の策定を支援し、計画を金融機関へ早期に提出することを端緒とする制度です。計画策定費用と伴走支援費用の3分の2を協議会が負担します。協議会が負担する額の上限は、計画策定が50万円、伴走支援が30万円で、合わせて最大80万円です(出典:中小機構「経営改善計画策定支援事業」、2026年9月閲覧)。つまり資金繰り表を作ること自体に公的な補助があるということで、自社だけで作りきれない場合の選択肢になります。

見せ方で押さえるべき点は4つです。

  1. 実績と予定を同じ紙に並べる。 過去6か月の実績と、今後12か月の予定。実績のない予定表は、根拠のない希望として読まれます
  2. 経常収支・経常外収支・財務収支の3区分を残す。 区分のない表は、本業でキャッシュが回っているかを示せません
  3. 前提を1行で書く。 「売上は前年同月比±0%、回収条件は現行のまま、○月に設備○百万円を現金支払」。前提が書いてあると、金融機関側は自分の想定で置き換えて検証できます
  4. 最も薄くなる月と、その残高を自分で指摘する。 隠さない。指摘されてから答えるのと、先に示すのとでは、その後の話の進み方が違います

4つ目は特に効きます。資金繰り表を出す目的は「大丈夫です」と言うことではなく、いつ・いくら足りなくなるかを共有して、対応を一緒に考えられる状態を作ることにあるからです。数字で見通しを語る資料としては事業計画書の作成ポイントと組み合わせると説明が通りやすくなります。枠の交渉や条件変更の進め方そのものは金融機関との交渉術で扱っています。本稿は「どう作り、どう見せるか」までです。

❌ 「金融機関から求められたので、その月だけ資金繰り表を作って提出した」 ⭕ 「試算表と一緒に、毎月同じ様式の資金繰り表を渡す。求められる前から出しておくことが、平時の情報開示になる」

5問で確認する 資金繰り表の運用度

いまの資金繰り表(または作ろうとしている表)が「毎月回る道具」になっているかを確かめる簡易チェックです。

SELF CHECK / 無料・登録不要

5問で確認|資金繰り表の運用度

直近3か月の資金繰り表の運用を思い浮かべて選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1経常収支・経常外収支・財務収支の3区分に分けている
  2. Q2実績列の翌月繰越が、全口座の通帳残高と一致している
  3. Q3税金の中間納付・賞与・社会保険料など、期日が決まっている支出を先に埋めている
  4. Q4設備投資と大口受注の入出金を、経営者が自分で確認している
  5. Q5実績6か月+予定12か月の資金繰り表を、試算表と一緒に金融機関へ渡している

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ

資金繰り表は、日本政策金融公庫が公開している様式をそのまま使うのが最短です。簡易版と詳細版があり、それぞれに作成手順と記載例が付いています。行を自作するより、公開されている行構成に自社を合わせるほうが確実で速く、金融機関にも通じます。

設計上いちばん重要なのは区分です。公庫の記載例では、同じ会社の同じ月でも、設備代金200百万円を経常支出に混ぜた簡易版で差引過不足が△232.8百万円、経常外収支に分けた詳細版で△32.8百万円になりました。6か月累計では△217.3と△17.3。繰越残高は同じでも、本業の実力の見え方はまったく違います。毎月起きるものだけを経常収支に置くというルールを守ってください。

数字の出どころは、通帳・売掛買掛の管理表・借入金返済予定表・給与と納税のカレンダーの4つで足ります。このうち設備投資と大口受注の2行だけは経営者が自分で埋めてください。社会保険料は翌月末日、源泉所得税は翌月10日(納期の特例なら7月10日と翌年1月20日)、労働保険の延納は7月10日・10月31日・1月31日、法人税と消費税の中間納付は事業年度開始から6か月経過後という具合に、期日が法令で決まっている支出は予測ではなく確定情報です。ここから先に埋めます。

作った表が信用されるかどうかは、残高欄で決まります。売掛金・受取手形・買掛金・支払手形・借入金の残高が「前月残高+増加−減少」で合うこと、そして翌月繰越が全口座の通帳残高と一致すること。合わない月をその月のうちに潰す運用ができれば、表は道具として立ち上がります。

月次で足りるかどうかは、経常収支の符号、繰越残高と月内最大支出額の関係、借入枠の余裕で判断します。足りないと分かったら、8行・13週の週次表を1枚だけ追加してください。効果は精度ではなく、動ける日数が数週間早まることにあります。

そして、資金繰り表は平時から金融機関に渡すものです。事業再生ガイドラインのQ&Aも、平時の情報開示の例に「試算表・資金繰り表等の定期的な報告」を挙げています。手形の行は2027年3月31日で電子交換所での交換が廃止されるため、手形を使っている会社は置き換え後の列を今のうちに作っておいてください。

NEXT ACTION / 次にやること

公庫の資金繰り表の様式をダウンロードし、通帳から先月の実績を1列埋める

前期繰越を全口座の残高と合わせ、源泉所得税・社会保険料・中間納付など期日が決まっている支出を先に入れてください。そこまでで、表の骨格はできあがります。

※本稿の月次数値は日本政策金融公庫が公開する資金繰り表の記載例に置かれた数値で、実在企業の実績ではありません。残高欄の検算式、週次に落とす判断基準、差異分析の閾値は本誌が実務上の観点から整理した目安であり、公的な基準ではありません。

よくある質問

Q資金繰り表は自分で様式を作らないといけませんか。
A

作る必要はありません。日本政策金融公庫が中小企業事業の書式ダウンロードページで、資金繰り表の簡易版と詳細版を、それぞれ作成手順および記載例つきのExcelファイルで公開しています。行項目の設計で悩む時間は不要で、自社に存在しない行(手形など)を消し、必要な行(役員借入金の入出金など)を足すだけで使えます。J-Net21のビジネスQ&A(回答者:中小企業診断士 沢田一茂氏)も「資金繰り表にはきまったフォーマットはありません」としており、自社で判断に使う資料なので税務上の正解を気にする必要もありません。まずは公開されている様式を1枚埋めてみるところから始めてください。

Q簡易版と詳細版は、どちらを使えばよいですか。
A

最終的には詳細版です。両者の違いは経常外収支の区分と残高欄の有無で、この2つがないと「本業でキャッシュを生めているか」も「入力が正しいか」も分かりません。公庫の記載例では、設備代金200百万円をどこに置くかだけで、4か月目の差引過不足が△232.8百万円(簡易版)と△32.8百万円(詳細版)に分かれます。ただし、まったく作ったことがない会社がいきなり詳細版を埋めようとすると挫折しがちなので、最初の3か月は簡易版で通帳と残高を合わせる習慣をつけ、そこから詳細版に移る進め方でも構いません。

Q何か月先まで作ればよいですか。
A

実績6か月+予定12か月を1枚に並べるのが基本形です。予定を12か月とるのは、賞与・納税・年払い費用・借入の返済といった年1〜2回の支出をすべて1枚に収めるためで、6か月分しか作らないとこれらが表の外に出てしまいます。実績6か月を左に置くのは、予定の置き方が実態と合っているかを同じ紙の上で検証するためです。予定の精度は先に行くほど落ちますが、それで構いません。3か月先までが実務判断用、4か月目以降は資金需要の時期を見るための概算、と割り切ってください。

Q通帳残高と資金繰り表の繰越残高が合いません。どう直せばよいですか。
A

まず、口座の数え漏れを疑ってください。普通預金・当座預金のほか、小口現金、めったに動かない口座、定期積金が対象から抜けていることがよくあります。次に、残高欄(売掛金・受取手形・買掛金・支払手形・借入金)を1行ずつ「前月残高+増加−減少」で検算し、どの行が合わないかを特定します。合わない行が特定できれば、原因はその行に関係する取引に絞られます。それでも合わない場合は、貸倒れ・値引き・返品・相殺といった、残高は動くが現金は動かない取引を疑ってください。差額を「調整」という行に入れて済ませるのは避けてください。一度やると翌月以降も同じことをすることになり、表そのものが信用されなくなります。

Q週次の資金繰り表は、どういうときに必要になりますか。
A

月末残高がプラスでも、月中の支出日に耐えられない可能性が出てきたときです。源泉所得税は翌月10日、社会保険料は翌月末日、給与は20〜25日、買掛金の支払と借入返済は末日というように、1か月の中に少なくとも2つの支出の山があります。経常収支が2か月連続でマイナス、繰越残高が月内の最大支出日の支払額を下回る、当座貸越の枠が常時ほぼ満額、といった状態なら週次に落としてください。行は週初残高・入金・給与・社会保険料と税金・買掛支払・手形決済・借入返済・週末残高の8行で足ります。期間は直近13週程度が扱いやすいですが、これは本誌の目安で、自社の最も長い回収サイトと支払サイトが1枚に収まっていれば構いません。

Q予定と実績がずれたとき、どこまで原因を追えばよいですか。
A

すべて追うと運用が止まります。金額の閾値(月商の1%程度)を先に決め、それを下回る差異は原因を追わないでください。閾値を超えた差異も、翌月に戻ったなら締日と入金日の1営業日の違いや休日の影響で、何もする必要はありません。手を入れるのは、3か月連続で同じ方向にズレた項目だけです。3か月続くズレは偶然ではなく前提の誤りなので、回収条件・支払条件の置き方そのものを直します。単発で大きな抜けが出た場合は、金額を直すより「その情報が表に降りてくる経路」を作るほうが再発防止になります。

Q手形の行はいつまで残しておけばよいですか。
A

自社の手形が動いているかどうかで判断します。銀行界は2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを最終目標としており、全国銀行協会は2026年6月18日に、電子交換所での交換廃止時期を2027年3月31日とすることを明確化しました。2027年4月1日から手形・小切手が直ちに使えなくなるわけではありませんが、電子交換所を介さない相対決済になるため、実務上は使い続けにくくなります。2025年中の交換枚数はまだ1,416万枚あるので、自社に残っているなら早めにでんさいや振込へ切り替えてください。その際、手形決済分と振込分が同じ月に重なって資金が二重に必要になる月が出ることがあるため、切り替え後の姿を資金繰り表の上で先に作っておくことをお勧めします。手形の行がずっとゼロの会社は、行ごと削除して構いません。

Q資金繰り表を作るのに、外部の支援を受けられますか。
A

あります。中小企業活性化協議会が扱う早期経営改善計画策定支援(通称:バリューアップ支援事業)は、資金繰り管理や採算管理などの基本的な経営改善に取り組む中小企業・小規模事業者を対象に、認定経営革新等支援機関が「資金実績・計画表」やビジネスモデル俯瞰図といった経営改善計画の策定を支援する制度です。計画策定費用と伴走支援費用について、それぞれ協議会が3分の2を負担します。協議会が負担する額の上限は、計画策定が50万円、伴走支援が30万円で、合わせて最大80万円です。中小企業活性化協議会は都道府県庁所在地の商工会議所や県の公益財団法人等に設置されています。金融支援を伴う本格的な経営改善が必要な場合は、経営改善計画策定支援(通称:405事業)が別に用意されています。

出典・調査の対象範囲

※残高欄の検算式、週次に落とす判断基準、差異分析の閾値、判断表・自己診断は本誌が実務上の観点から整理した目安であり、公的な基準ではありません。

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