MANAGEMENT / 財務・資本・投資判断

設備投資の判断基準 回収期間の相場ではなく国が確認に使う投資利益率で決める

公開 2026.09.14

設備投資の可否は、根拠をたどれない回収期間の相場観ではなく、国が確認要件に使う年平均の投資利益率(先端設備等導入計画5%、経営強化税制のB・E類型7%)を下限として、自社の返済原資から決められます。3つの設備投資税制の期限・要件・併用できない組み合わせと、令和8年度に創設された新税制がまだ使えない理由まで一次情報で整理します。

設備投資の可否は、回収期間の相場観ではなく、国が確認要件に使う投資利益率と自社の返済原資で決まります。
  • 国は設備投資の可否を判定するとき、年平均の投資利益率を確認の要件に使っています。ただしこれは支援を出してよい下限であって、投資してよい水準ではありません。先端設備等導入計画は5%以上(算式まで公表済み)、中小企業経営強化税制のB類型とE類型は7%以上。令和8年度税制改正で創設された特定生産性向上設備等投資促進税制は15%以上とされる見込みですが、施行期日を定める政令も基準を定める法令も未公布で、現時点では使えません
  • 検索すると出てくる回収期間3〜5年、中小企業は2年以内といった水準は、本稿が上位の解説記事を確認した範囲では、出典が示されていないか、示されていても同種の解説記事でした。一方で国の要件は取得価額の何%が年あたりのEBITDA増加として戻るかで書かれており、自社の数字に当てはめられます
  • 税制優遇のうち特別償却・即時償却は課税の繰延べであり、耐用年数全体でみた損金の総額は変わりません。手元に残る額を恒久的に増やすのは税額控除のほうで、赤字なら税額控除はその期に使えません(繰越は1年)

設備投資の相談で最初に出てくる問いは「この機械を買っていいか」と「いくらまでなら出せるか」の2つです。本稿は、この2つに順番に答えます。判断の物差しには、国が計画認定や税制の確認で実際に使っている算式を使います。そのうえで、投資額の上限を返済原資から出す方法、3つの設備投資税制の使い分けと併用できない組み合わせ、買う・借りる・直すの分岐、そして買ったあとに毎年かかる固定資産税までを一次情報で整理します。なお本稿は投資の是非と上限そのものを扱い、資金の集め方は補助金・助成金の探し方と金融機関との交渉、計画書への落とし込みは事業計画書の作成ポイントで扱っています。

最初に結論:設備投資の可否は5つの関門を順に通して決める

設備投資の判断は、ひとつの指標で決まりません。順番に見るべき関門が5つあり、手前を飛ばして後ろだけ精緻に計算しても意味がありません。ここでいう関門は「落ちたら中止」ではなく、投資の形(金額・時期・調達のしかた)を変えるための分岐です。

まず見るべき判断表|設備投資の5つの関門

順番関門何を見るか超えられないときの次の一手
1目的の切り分け老朽更新・法令対応など「やらないと止まる」投資か、増産・新事業など「やると増える」投資か止まる側なら採算計算より先に時期と最小構成を決める
2投資利益率(営業利益+減価償却費)の増加額 ÷ 設備投資額が、自社で決めたハードルを超えるか超えないなら中古・リース・外注へ切り替える
3返済原資減価償却費+税引後利益の一部で、借入の元本返済を毎年まかなえるかまかなえないなら金額を下げるか時期を後ろへ
4制度の期限と要件税制・補助金の適用期限、証明書や計画認定を設備取得の前に取れるか間に合わないなら取得時期をずらすか制度を使わずに判断する
5買ったあとの固定費償却資産の固定資産税、保守料、電力、人の習熟コスト積み上げると2の投資利益率が下がるので2へ戻る

国の制度要件(投資利益率5%・7%)は支援を出してよい下限であって、投資してよい水準ではありません。急ぐべきは発注ではなく、自社のハードルレートと返済可能額を先に決めることです。

なかでも見落とされやすいのが1番目です。老朽更新と増産投資は、同じ「設備投資」という言葉で呼ばれていても、判断の性質がまったく違います。 老朽更新は「投資しなかった場合に失う売上と発生する損失」との比較であり、投資利益率が低くても実施する場面があります。増産投資は「投資しなければ現状維持」が選べるため、ハードルを超えない限り見送るのが原則です。稟議書の1行目に、このどちらであるかを書いてください。

❌ 老朽更新も増産投資も同じ様式で回収年数だけを比べ、回収の早い案件から実行する ⭕ 先に「やらないと止まるか」を判定し、止まる投資は最小構成と時期を、増える投資は投資利益率とハードルを議論する

もうひとつ、5番目を2番目に戻す矢印があることに注意してください。設備を入れると、償却資産の固定資産税、保守契約、消耗品、電力、そして人が使いこなすまでの期間が発生します。これらはいずれも各期の費用なので、確認要件の算式では分母(取得価額の合計額)ではなく分子である(営業利益+減価償却費)の増加額を押し下げます。これらを見込まずに分子を置くと、実態より良い数字が出ます。自社の判断用に総額(TCO)で見るのは有効ですが、支援制度の確認に出す算式では分母が取得価額の合計額に固定されているため、両者を同じ「投資額」という語で呼ばないでください。

根拠をたどれない回収期間の相場観をやめる 国が確認に使う投資利益率は5%と7%

設備投資の判断基準を検索すると、「回収期間の目安は3〜5年」「中小企業は2年以内、できれば1年以内」といった水準が繰り返し出てきます。本稿が上位の解説記事を確認した範囲では、出典は示されていないか、示されていても同種の解説記事でした。根拠をたどれない水準を、社内の意思決定の基準として使うことはできません。

一方で、国は設備投資の可否を判定する場面で、年平均の投資利益率という指標を使っています。すでに施行されている制度については、水準も算式も公表資料で確認できます。

制度求められる年平均の投資利益率判定の主体
先端設備等導入計画(固定資産税の特例)5%以上認定経営革新等支援機関の確認
中小企業経営強化税制 B類型(収益力強化設備)7%以上(令和7年度税制改正で5%以上から引上げ)経済産業大臣の確認
中小企業経営強化税制 E類型(経営規模拡大設備)7%以上(+経営規模拡大要件)経済産業大臣の確認
特定生産性向上設備等投資促進税制15%以上とされる見込み(施行期日政令・基準を定める法令とも未公布。後述)経済産業大臣の確認(予定)

このうち先端設備等導入計画については、算式そのものが公表されています。

年平均の投資利益率 =(営業利益+減価償却費)の増加額 ÷ 設備投資額

分子は「設備の取得等をする翌年度以降3年度の平均額」の増加額で、減価償却費は会計上のものを使います。分母は「設備の取得等をする年度におけるその取得等をする設備の取得価額の合計額」です(出典:中小企業庁「先端設備等導入計画について」7ページ、令和7年4月)。B類型の投資利益率については、令和7年度税制改正で「投資計画における投資利益率に係る要件を7%以上に引上げ」と明記されています(出典:国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」18ページ)。

投資利益率を回収年数に読み替えると、国の基準は思ったより緩い

ここで経営者が知っておくべきことがあります。投資利益率の逆数は、設備投資額をEBITDAの増加額で割った年数になります。 増加額が毎年一定だと単純に置いた場合の目安として、次のようになります(編集部の試算)。

投資利益率設備投資額 ÷ EBITDA増加額(年)
5%20年
7%約14.3年
15%(未施行の制度の見込み値)約6.7年

先端設備等導入計画(投資利益率5%)

20年

設備投資額 ÷ EBITDA増加額に直した年数(編集部の試算)

経営強化税制B・E類型(投資利益率7%)

約14.3年

同じく、EBITDA増加額が毎年一定と置いた目安

世の中で語られる回収期間

3〜5年

出典をたどれない相場観。税引後キャッシュで測ることが多く、同じ土俵の数字ではない

先端設備等導入計画の5%という要件は、EBITDA基準の年数に直せば20年に相当します。 世の中で語られる3〜5年は税引後のキャッシュで測ることが多く、同じ土俵の数字ではありませんが、それを踏まえても4倍から6倍以上の開きがあります。つまり国の要件は「支援措置を出してよい最低ライン」であって、「投資してよい水準」ではありません。ここを取り違えると、認定が下りたことを投資の妥当性の証明と誤解します。

逆向きの誤解も起きます。自社のハードルを国の要件に合わせて5%に置くと、甘すぎます。支援制度の要件は下限、自社の投資基準はそれより上、という二段構えで持ってください。

なお、この年数はEBITDA(営業利益+減価償却費)の増加額で割った値であり、手元に残る現金で割った値ではありません。法人税等の支払い、売掛金や在庫の増加による運転資本の増加、借入の元本返済は一切引かれていません。「20年で投資額が回収できる」という意味ではないため、そのまま資金繰りの根拠に使わないでください。手元資金の水準の考え方は資金繰りを安定させる手元資金の決め方で扱っています。

❌ 「補助金の要件である投資利益率5%を満たしたので、この投資は採算が取れると判断した」 ⭕ 「制度要件の5%は下限にすぎない。自社のハードルは、新しく借りる金利と、いま返済に回せている額から先に決める。そのうえで個別案件を当てる」

その「新しく借りる金利」自体が上がり続けている点は「日銀が31年ぶり1.25%へ利上げ。在庫も売掛金も「タダで寝かせておけない」時代」で整理しています。

投資額の上限は、稼ぐ力ではなく返済原資で決まる

「この投資は採算が取れる」と「この投資額なら出せる」は別の問いです。前者に答えても、後者で落ちる案件があります。採算が取れる投資でも、返済のスピードに対して償却と利益の出方が遅ければ、資金は先に出ていきます。

この論点について、日本政策金融公庫の事業計画書(参考様式第1号)が明快な答えを示しています。この様式は、借入金・社債の残高(D)を、減価償却費の全額(A+B)と経常利益の半分(C×1/2)の合計で割って「推定借入負担年数」を算出する欄を持っています。経常利益をそのまま返済に回せるとは扱われていません。なお様式には「ただし、Cが欠損の場合は1/2を乗じない。」という但書があり、赤字期は経常利益の全額がそのまま差し引かれます(出典:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」所収の事業計画書(参考様式第1号)、2026年9月閲覧)。様式の読み方と金融機関向け計画書への落とし込みは中小企業の事業計画書の作成ポイントで詳しく扱っています。

この考え方を1件の設備投資に当てはめると、上限額の出し方は次の順になります。

  1. その設備が生む年あたりのEBITDA増加額を見積もる(投資利益率の分子と同じもの)
  2. そこから法人税等の支払いと、売上増にともなう運転資本の増加を引く
  3. 残った額が、その設備のために増える年間の元本返済額を上回るかを見る
  4. 上回らないなら、投資額を下げるか、返済期間を延ばせるかを金融機関に確認する

3番目で落ちる典型が、耐用年数と返済年数のミスマッチです。法定耐用年数10年の機械を5年返済で借りると、償却費は年10分の1ずつしか費用にならないのに、元本は年5分の1ずつ出ていきます。帳簿上は黒字のまま現金が減ります。「黒字なのに金が残らない」という設備投資後の症状は、ここから説明できます。

❌ 「利益が出ているのだから返せる」と説明して、返済期間は金融機関の提示どおりに受ける ⭕ 償却費と税引後利益から年間の返済可能額を先に出し、それに収まる投資額と返済年数を自分から提示する

借入の重さそのものを測る指標としては、経済産業省のローカルベンチマークのEBITDA有利子負債倍率((借入金-現金・預金)/(営業利益+減価償却費))があります。6指標の算式と業種別基準値との比べ方はローカルベンチマークの6指標にまとめました。なお、同じ名前の指標でも信用保証制度の要件では算式が異なります。制度ごとの算式の違いは中小企業の金融機関交渉術で出典つきに整理しました。どの定義でいくつかまで揃えて金融機関に答えてください。

3つの設備投資税制の使い分け 期限・要件・併用できない組み合わせ

中小企業が設備投資で使える主な税制は、性格の違う3つに整理できます。このうち2つは同じ日(令和9年3月31日=2026年度末)で期限を迎え、少額減価償却資産の特例だけが令和8年度改正で3年延長されています。

制度中身主な規模要件事前手続適用期限
中小企業投資促進税制(措法42の6)30%特別償却 または 7%税額控除機械装置160万円以上、測定工具及び検査工具120万円以上(1台40万円以上で合計120万円以上も可・令和8年4月1日以後取得分)、ソフトウエア70万円以上、貨物運送用の車両総重量3.5トン以上 ほか不要令和9年3月31日まで
中小企業経営強化税制(措法42の12の4)即時償却 または 7%(資本金3,000万円以下の中小企業者等は10%)税額控除機械装置160万円以上、工具・器具備品40万円以上(令和8年4月1日以後取得分)、建物附属設備60万円以上、ソフトウエア70万円以上、建物及びその附属設備1,000万円以上(E類型)経営力向上計画の認定+類型ごとの証明書・確認書令和9年3月31日(=2026年度末・2027年3月31日)まで
少額減価償却資産の特例(措法67の5)取得価額の全額を損金算入1個40万円未満(令和8年4月1日以後取得分)、年300万円が上限不要改正前の令和8年3月31日から3年延長(=令和11年3月31日まで)

2つの制度の期限が同じ日である点を取り違えないでください。国税庁は中小企業投資促進税制の指定期間を「平成10年6月1日から令和9年3月31日まで」、中小企業経営強化税制の指定期間を「平成29年4月1日から令和9年3月31日まで」としており、終期は同一です(前掲・国税庁「No.5433」「No.5434」)。中小企業庁が「2026年度末(2027年3月31日)まで」と表記しているのも同じ日を指します。「経営強化税制のほうが先に切れる」と読んで取得を前倒しする必要はありません。

なお、経営強化税制のE類型で対象になる建物及びその附属設備は、即時償却ではなく基準取得価額の15%(特定建物等は25%)の特別償却、税額控除は1%(特定建物等は2%)です。機械装置等とは率が違います(前掲・国税庁「No.5434」)。

税額控除には、制度をまたいだ共通の上限があります。 中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の税額控除は、合計でその事業年度の調整前法人税額の20%が上限とされ、控除しきれなかった額は1年間繰り越せます(出典:国税庁「No.5434 中小企業経営強化税制」)。また、中小企業投資促進税制の税額控除を使えるのは資本金の額もしくは出資金の額が3,000万円以下の法人等に限られ、それを超える中小企業者は特別償却しか選べません(出典:国税庁「No.5433 中小企業投資促進税制」)。

なお、自家発電設備や止水板といった防災・減災のための設備には、事業継続力強化計画の認定を前提とする別の特別償却制度があります。こちらは対象設備も認定手続きも異なるため、中小企業のリスク管理入門で扱っています。

令和8年度税制改正で取得価額の基準が30万円から40万円へ動いた

2026年に設備を取得する会社が真っ先に確認すべきなのは、取得価額の区切りが引き上げられたことです。令和8年度税制改正で、次のように見直されました。

  • 少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後に取得等をする資産から、取得価額基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、適用期限が3年延長されました。合計額の年300万円という上限は引き続き据え置きです。同日以後に取得等する場合、対象となる法人から常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されました(改正前は500人超が対象外)
  • 中小企業経営強化税制は、令和8年4月1日以後に取得等をする工具及び器具備品の取得価額要件が30万円以上から40万円以上へ引き上げられました
  • 中小企業投資促進税制で対象になる工具は、製品の品質管理の向上等に資する測定工具および検査工具に限られます(加工用の工具は、この文言に当てはまらない限り対象外と読めます=編集部の解釈)。この測定工具及び検査工具について、「1台又は1基の取得価額が30万円以上の工具の取得価額の合計額が120万円以上であること」との要件が「1台又は1基の取得価額が40万円以上の工具の取得価額の合計額が120万円以上であること」に見直されました。この見直しは令和8年4月1日以後に終了する事業年度から適用されますが、施行日をまたぐ事業年度には経過措置が設けられています。なお1台又は1基で120万円以上のものは、この合計額のルートによらず対象になります(前掲・国税庁「No.5433」)

(出典:国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」17〜18ページ)

この改正は、30万円台の備品の扱いを逆転させます。 従来は30万円以上40万円未満の器具備品は少額減価償却資産の特例が使えず(30万円未満が対象だったため)、経営強化税制の対象にはなり得ました。令和8年4月1日以後の取得では逆に、40万円未満なら少額減価償却資産の特例で全額損金にでき、経営強化税制の対象からは外れます。社内の固定資産の計上ルールが「30万円」で書かれているなら、そこから直してください。

E類型の確認を受けると、他の制度が止まる

見落とすと計画が狂うのが、制度の排他関係です。中小企業経営強化税制のE類型(売上高100億円超を目指す中小企業に係る措置)について、国税庁は次のように明記しています。「本措置に係る経済産業大臣の確認を受けた中小企業者等は、その確認を受けた投資計画の計画期間中において、中小企業投資促進税制及び中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を受けることができないこととされています」(前掲・国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」19ページ)。

つまりE類型を取りにいくと、計画期間中は年300万円の少額資産の即時損金化が止まります。 大型投資のために日常の備品購入の節税手段を手放す判断になるため、計画期間の長さと年間の少額資産の購入額を並べて比較してから決めてください。

令和8年度に創設された税制は、まだ使えない その事実をどう扱うか

令和8年度税制改正で、特定生産性向上設備等投資促進税制(措法42の12の7)が創設されました。機械装置だけでなく建物・建物附属設備・構築物まで対象に含み、即時償却または取得価額の7%(建物、建物附属設備及び構築物は4%)の税額控除を選択できる制度です。税額控除の上限は調整前法人税額の20%で、一定の法人は控除しきれない額を翌期以後3年間繰り越せます。

ただし、ここが重要です。国税庁の解説資料は、次の2点を明記しています。

  • 施行について「産競法等改正法は公布の日以後3月以内の政令で定める日から施行されますが(産競法等改正法附則1)、施行期日を定める政令は令和8年5月27日現在において公布されていません」
  • 確認の基準について、投資計画に記載された取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)であること、年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれることなどが「定められる予定ですが、同基準を定める法令は令和8年5月27日現在において公布されていません」

(出典:前掲・国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」4〜5ページ)

特定生産性向上設備等投資促進税制は、まだ使えません

国税庁の解説資料(令和8年5月27日時点)は、施行期日を定める政令も、確認の基準(中小企業者等は取得価額5億円以上・投資利益率15%以上の見込み)を定める法令も未公布と明記しています。最新の公表資料で必ず確認してください。

この制度を「2026年度から使える新税制」として設備投資の計画に織り込むことはできません。 解説記事のなかには5億円・15%という数値を確定した要件として紹介しているものがありますが、一次情報の側は「定められる予定」と書いています。設備投資の意思決定は数千万円から数億円の資金を動かすため、未公布の基準を前提にした取得時期の前倒しや後ろ倒しはしないでください。

あわせて、併用の制限も先に確認しておく必要があります。特定生産性向上設備等に関する投資計画の確認を受けた法人は、その投資計画の期間内の日を含む各事業年度において、中小企業経営強化税制を適用できません(中小企業経営強化税制の繰越税額控除制度は適用できます)。中小企業庁も同旨を明記しています(出典:中小企業庁「中小企業経営強化税制」)。

確認ポイント:本稿が参照した国税庁資料は令和8年5月27日時点の記載です。その後に施行期日政令や基準を定める法令が公布されている可能性があります。この制度の利用を検討する場合は、国税庁および経済産業省の公表資料で最新の状況を必ず確認してください。

税制優遇は回収を早めない 即時償却と税額控除はどちらが手元に残るか

設備メーカーや販売会社の資料では、税制優遇が実質的な回収期間の短縮として説明されることがあります。この説明は、特別償却と即時償却については正しくありません。

特別償却・即時償却は、損金の前倒しです。 耐用年数の全体でみた損金の総額は、通常の減価償却と変わりません。初年度の税負担は軽くなりますが、翌年度以降は償却費がない(または少ない)ぶん税負担が重くなります。動くのは支払いのタイミングだけで、納める税金の総額は変わりません。

税額控除は、税額そのものの減少です。 取得価額(建物等は基準取得価額)の7%(資本金3,000万円以下の中小企業者等が経営強化税制を使う場合は10%、E類型の建物及びその附属設備は1%・特定建物等は2%)が法人税額から直接引かれ、あとの年度で取り戻されることはありません。ただし後述のとおり法人税額の20%という上限があります。つまり手元に残る現金を恒久的に増やすのは税額控除のほうです。

項目即時償却・特別償却税額控除
効果の性質課税の繰延べ(タイミングの移動)税額の恒久的な減少
耐用年数全体での税負担変わらない取得価額の7%または10%(E類型の建物等は1%・2%)だけ減る
初年度の資金効果大きい取得価額の7%または10%(E類型の建物等は1%・2%)
赤字の事業年度欠損金が増え、繰越して将来の所得と相殺できるその期は控除できない(投資促進税制・経営強化税制の繰越は1年)
上限即時償却は取得価額まで。特別償却は制度ごとに率が決まっている(投資促進税制は基準取得価額の30%、E類型の建物及びその附属設備は15%・特定建物等は25%)投資促進税制と経営強化税制の合計で調整前法人税額の20%(特定生産性向上設備等投資促進税制は別枠で20%、繰越は一定の法人に限り3年)

選択を分けるのは、利益の出方と資金繰りの逼迫度です。 今期に大きな利益が出ていて、かつ来期以降も安定して黒字が見込めるなら、税額控除のほうが総額で有利になります。逆に、今期の資金繰りが厳しく、目先の納税額を抑えることが最優先なら即時償却に意味があります。

赤字の会社は、税額控除を当てにできません。 法人税額がなければ控除する対象がなく、繰越しは1年しか認められていないためです。一方で即時償却によって生じた欠損金は、青色申告書を提出していれば10年間繰り越せ、中小法人等(資本金1億円以下の普通法人等。100%子法人等および大通算法人を除く)は所得金額の全額まで控除できます(それ以外の法人は所得金額の50%が限度)(出典:国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」)。赤字基調の会社ほど、税額控除ではなく償却の側で考えることになります。

❌ 「即時償却で1,000万円が全額経費になるので、実質的に回収が1年早まる」と稟議書に書く ⭕ 「即時償却は課税の繰延べであり総額は変わらない。今期の納税資金を圧縮する効果として○○万円と見込む」と性質を分けて書く

なお、対象になる設備の範囲にも注意が必要です。中小企業経営強化税制の対象は「生産等設備」を構成する資産で、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは該当しません。また貸付けの用に供する資産、コインランドリー業(主要な事業であるものを除き、その管理のおおむね全部を他の者に委託するものに限ります。)または暗号資産マイニング業の用に供するものも除かれています(前掲・国税庁「No.5434」)。社長室のデスクや社用車は対象外、という線引きです。

買う・借りる・直す 所有権移転外リースと修繕費の線引き

設備の更新時期に、経営者が実際に迷うのは「買うか、リースか、まだ直して使うか」です。ここにも税務上の線引きがあります。本節は税務の線引きに絞ります。維持費・残価・代替の手配から買い替えの時期そのものを決める手順は「設備の買い替えの判断」で扱っています。

所有権移転外リースは、特別償却が使えず税額控除は使える

中小企業経営強化税制について、国税庁は次のように注記しています。「所有権移転外リース取引により取得した特定経営力向上設備等については、特別償却の規定は適用できませんが、税額控除の規定は適用できます」(前掲・国税庁「No.5434」)。

つまり即時償却を狙うならリースでは取れません。 一方で、7%または10%の税額控除はリースでも取れます。資金を寝かせたくないが税額控除は取りたい、という場合に選択肢になります。リース料の会計処理と資金繰りへの影響は別途検討が要りますが、「リースだから税制優遇が一切使えない」という理解は誤りです。

直すか買い替えるかは、20万円・3年・60万円で分かれる

まだ使える設備を直して延命するか、買い替えるか。この判断には、税務上の修繕費と資本的支出の区分が関わります。修繕費ならその期の損金、資本的支出なら資産計上して耐用年数で償却になるため、同じ支出でもその期の利益への影響がまったく違います。

国税庁は、次の形式基準を示しています。

区分判定
一つの修理や改良などの金額が20万円未満修繕費とできる
おおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかな修理、改良など修繕費とできる
資本的支出か修繕費かが明らかでない場合で、60万円未満のとき、またはその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10%相当額以下のとき修繕費とすることができる

(出典:国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」)

一方、「機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額」は資本的支出とされています。同じ「部品交換」でも、元と同等品に戻すのか、性能を上げるのかで扱いが分かれるということです。

❌ 修理見積りが出たので、金額の大小だけを見てその期の経費として処理する ⭕ 「原状回復か、性能向上か」をまず判定し、そのうえで20万円・3年周期・60万円の形式基準に当てはめて区分を決め、根拠を見積書に残す

買ったあとに毎年かかる費用 償却資産の固定資産税と先端設備等導入計画

設備投資の採算計算から抜け落ちやすいのが、償却資産に対する固定資産税です。土地・家屋以外の事業用資産にかかる固定資産税で、実務上「償却資産税」と呼ばれますが、法律上の税目名ではありません。

総務省の資料によれば、固定資産税の標準税率は1.4%、免税点は土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円です。償却資産は「取得価額を基礎として、経過年数に応じ、定率法(旧定率法)により償却」して評価されます(出典:総務省「固定資産税の概要」)。

経営者が押さえるべき点は3つです。

  1. 免税点は市町村の区域内に同一人が所有する償却資産の課税標準額の合計で判定されます。1台ごとではありません。地方税法351条は「市町村は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る土地、家屋又は償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が土地にあつては三十万円、家屋にあつては二十万円、償却資産にあつては百五十万円に満たない場合においては、固定資産税を課することができない」と定めています。ただし同条には、財政上その他特別の必要がある場合には市町村の条例の定めるところによって課することができるという但書もあります(出典:地方税法第351条)。すでに機械を持っている会社が1台追加すると、免税点を超えて既存の資産を含めた全体が課税対象になることがあります
  2. 赤字でも課税されます。 法人税は利益が出なければ発生しませんが、固定資産税は資産の保有に対してかかります。設備投資後に業績が落ちた局面で、固定費として効いてきます
  3. 評価額は毎年下がりますが、資産を持っている限り申告の対象であり続けます。 償却が進んだ古い設備も、免税点の判定では他の資産と合算されます

この負担を軽くする公的な仕組みが、先端設備等導入計画です。 市区町村の認定を受けると、地方税法に基づく固定資産税の特例を受けられます。

賃上げ方針の表明特例の内容
雇用者給与等支給額を1.5%以上増加させる賃上げ方針を従業員に表明3年間、課税標準を1/2に軽減
雇用者給与等支給額を3%以上増加させる賃上げ方針を従業員に表明5年間、課税標準を1/4に軽減

対象は、資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業主等のうち先端設備等導入計画の認定を受けた者(大企業の子会社等を除く)です。設備要件は、賃上げ表明を位置づけた計画に従い取得する設備であり、かつ認定経営革新等支援機関の確認を受けた投資利益率5%以上の投資計画に記載された、機械装置(160万円以上)、測定工具及び検査工具(30万円以上)、器具備品(30万円以上)、建物附属設備(60万円以上)です。生産、販売活動等の用に直接供されるもので、中古資産でないことも要件で、令和9年3月31日までに取得した設備が対象とされています。計画そのものの要件は、計画期間3年間・4年間または5年間で、労働生産性が基準年度比で年平均3%以上向上することです(出典:前掲・中小企業庁「先端設備等導入計画について」令和7年4月。計画の要件は2ページ、固定資産税の特例は6ページ、投資利益率の算式は7ページ)。

ここで取得価額の基準を混同しないでください。 前述した30万円から40万円への引上げは、法人税の制度(少額減価償却資産の特例・中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制)についての令和8年度税制改正の内容です。先端設備等導入計画の固定資産税の特例は地方税法に基づく別の制度で、中小企業庁の資料(令和7年4月版)では測定工具及び検査工具・器具備品とも30万円以上と記載されています。

確認ポイント:先端設備等導入計画は、市区町村が「導入促進基本計画」を策定している場合に認定を受けられる制度で、対象設備及び地域等が市区町村によって異なる場合があると中小企業庁が明記しています。また本稿が参照した資料は令和7年4月版です。設備の所在地の市区町村に、最新の対象範囲と手続きを必ず確認してください。

決裁までの逆算スケジュール 証明書と計画認定は設備取得の前に取る

制度を使う設備投資でつまずきやすいのが、設備を買ってから制度を調べることです。中小企業経営強化税制は、事前手続きの順番が決まっています。

中小企業庁は、工業会等による証明書と経済産業大臣による確認書について、設備の取得前に申請する必要があること、そして計画申請の前にそれらを取得する必要があることを明記しています。手続きの流れは類型ごとに次のとおりです(出典:前掲・中小企業庁「中小企業経営強化税制」)。

類型設備の性格事前確認の相手手順
A類型生産性向上設備工業会等設備メーカーに証明書の発行を依頼 → 経営力向上計画を策定・申請 → 認定後に設備取得・税務申告
B類型収益力強化設備(投資利益率7%以上)税理士または公認会計士 → 経済産業局投資計画を策定し事前確認書を取得 → 本社所在地を管轄する経済産業局へ提出・説明 → 計画申請 → 認定後に設備取得
D類型経営資源集約化設備税理士または公認会計士 → 経済産業局B類型と同じ流れ
E類型経営規模拡大設備税理士または公認会計士 → 経済産業局B類型と同じ流れ

C類型(デジタル化設備)は2025年4月1日をもって廃止されました。廃止前に書かれた解説記事はC類型を含む4類型のままなので、そのまま読むと存在しない類型を前提に計画を立てることになります。

この手順から、逆算のスケジュールが決まります。

  1. 設備の候補を絞った時点で、メーカーに工業会証明書が出るかを確認する(A類型を狙う場合)。出ない設備なら、B類型で投資利益率7%以上を満たせるかを検討する
  2. B・D・E類型なら、投資計画を作り、顧問税理士または公認会計士の事前確認を受ける。そのうえで本社所在地を管轄する経済産業局に提出・説明する(確認申請書の説明はオンラインでも可能とする運用改善が行われ、提出先は本社所在地を管轄する経済産業局に一元化されています)
  3. 主務大臣から経営力向上計画の認定を受ける
  4. 認定後に設備を取得する
  5. 税務申告時に所定の書類を添付する

4番目を1〜3番目より先にやってしまうと、原則として制度は使えません。設備の取得は、原則として3番目の認定のあとです。 見積り段階、遅くとも発注の意思決定の前に、経営者が自分でこの順番を確認してください。経営力向上計画そのものの位置づけと労働生産性の定義は中小企業のKPI設計でも扱っています。

❌ 展示会で良い機械を見つけ、値引き交渉がまとまったのでその場で発注し、あとから顧問税理士に節税策を相談する ⭕ 発注前に「どの類型を狙うか」「証明書や確認書は間に合うか」を確認し、間に合わないなら取得時期をずらすか、制度を使わない前提で採算を計算し直す

投下した資本がどれだけ効率よく利益を生んでいるかを継続的に測りたい場合は、企業価値を高める指標ROICの使い方で投下資本の定義から扱っています。設備を増やすことは投下資本を増やすことなので、利益の立ち上がりが投資に追いつくまで、資本効率の指標は悪化しやすくなります。その低下幅をあらかじめ見込んでおくと、投資後の社内議論が「失敗だったのではないか」に流れずに済みます。

5問で確認する 設備投資を決める準備度

発注の前に、判断の物差しと手続きの順番が揃っているかを確かめる簡易チェックです。

SELF CHECK / 無料・登録不要

5問で確認|設備投資を決める準備度

いま検討中の設備投資(または直近の投資)を思い浮かべて選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1その投資が「やらないと止まる」ものか「やると増える」ものかを、稟議書に書いている
  2. Q2自社のハードルとなる投資利益率を、国の制度要件とは別に決めている
  3. Q3減価償却費と税引後利益の一部から、年間の元本返済可能額を出している
  4. Q4税制の証明書・確認書・計画認定を、発注前に確認する手順がある
  5. Q5償却資産の固定資産税・保守料・電力など、買ったあとの費用を採算に入れている

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ

設備投資の判断で経営者が決めるべきことは、次の5つです。

  1. その投資が「やらないと止まる」ものか「やると増える」ものかを先に切り分ける。性質が違うので、同じ様式で回収年数だけを比べない
  2. 自社のハードルとなる投資利益率を先に決める。国の制度要件(先端設備等導入計画5%、経営強化税制のB類型・E類型7%)は支援の下限であって、投資してよい水準ではない
  3. 投資額の上限は返済原資から出す。減価償却費と税引後利益の一部で年間の元本返済をまかなえるか、耐用年数と返済年数がずれていないかを確認する
  4. 税制は期限と順番で選ぶ。中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制はどちらも令和9年3月31日(=2026年度末)で期限を迎え、少額減価償却資産の特例だけが3年延長されている。証明書・確認書・計画認定はすべて設備取得の前。令和8年4月1日以後の取得では取得価額の区切りが30万円から40万円に動いている
  5. 買ったあとの費用を採算に入れる。償却資産の固定資産税は赤字でも発生し、免税点150万円は市町村内の合計で判定される。先端設備等導入計画の認定を取れば、賃上げ表明の水準に応じて課税標準が3年間1/2または5年間1/4になる

そして、令和8年度税制改正で創設された特定生産性向上設備等投資促進税制については、施行期日を定める政令も、確認の基準を定める法令も、国税庁資料の時点(令和8年5月27日)では公布されていません。この制度を織り込んで取得時期を動かす判断は、現時点では避けてください。

設備投資は、決めた瞬間に数年分の資金繰りと固定費が確定する意思決定です。急ぐべきは発注ではなく、ハードルレートを社内で先に決めることのほうです。

NEXT ACTION / 次にやること

自社のハードルとなる投資利益率と、年間の返済可能額を1枚に書く

新しく借りる金利と、いま返済に回せている額(減価償却費+税引後利益の一部)から出してください。その1枚があれば、個別の設備案件は当てはめるだけで判断できます。

よくある質問

Q回収期間は何年以内なら投資してよいのでしょうか。
A

公的に定められた回収期間の基準はありません。国が支援措置の可否判定に使っているのは回収期間ではなく年平均の投資利益率で、先端設備等導入計画は5%以上、中小企業経営強化税制のB類型・E類型は7%以上です。投資利益率5%は、EBITDA(営業利益+減価償却費)の増加額で設備投資額を割ると20年に相当します(編集部の試算)。したがってこれらは下限であり、自社の基準はそれより厳しく置くのが自然です。何年に置くかは、借入の返済年数と自社の手元資金の厚さから決めてください。

Q特別償却と税額控除は、どちらを選ぶべきですか。
A

来期以降も安定して黒字が見込めるなら、税額控除のほうが総額で有利です。特別償却・即時償却は損金の前倒しであり、耐用年数全体でみた損金の総額は変わらないためです。一方、今期の納税資金を圧縮することが最優先なら即時償却に意味があります。赤字の事業年度は、税額控除はその期に使えず繰越しも1年だけなので、実質的に償却の側で考えることになります。なお、一つの資産について特別償却と税額控除の重複適用は認められていません。

Qリースにすると税制優遇は使えなくなりますか。
A

一律には使えなくなりません。中小企業経営強化税制について国税庁は、所有権移転外リース取引により取得した特定経営力向上設備等は特別償却の規定は適用できないが、税額控除の規定は適用できる、としています。即時償却を狙う場合はリースでは取れない、という理解が正確です。

Q30万円台のパソコンや器具備品は、どう処理するのが有利ですか。
A

令和8年4月1日以後に取得等をする資産については、少額減価償却資産の特例の取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられているため、40万円未満であればこの特例で全額を損金算入できます。ただし合計額の年300万円という上限は据え置きです。また、常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象から除外されています。社内の固定資産計上ルールが「30万円」で書かれている場合は改定が必要です。

Q償却資産の固定資産税は、設備を1台買っただけでもかかりますか。
A

地方税法351条により、免税点は市町村の区域内に同一の者が所有するすべての償却資産の課税標準額の合計で判定され、その合計が150万円に満たない場合は課税されません。1台ごとの判定ではないため、すでに設備を保有している会社が1台追加したことで合計が150万円を超え、全体が課税対象になることがあります。標準税率は1.4%です。ただし同条には、財政上その他特別の必要がある場合には市町村の条例の定めるところによって課することができるという但書があります。

Q経営力向上計画の認定は、設備を買ったあとでも間に合いますか。
A

中小企業庁は、工業会等による証明書および経済産業大臣による確認書は設備の取得前に申請する必要があり、これらを取得したうえで計画を申請する、という順番を明示しています。原則として設備取得は計画の認定後です。発注前に、狙う類型と証明書・確認書の取得可否・所要期間を確認してください。間に合わない場合は、取得時期をずらすか、制度を使わない前提で採算を計算し直すことになります。

Q令和8年度に創設された新しい税制は、いま使えますか。
A

特定生産性向上設備等投資促進税制は令和8年度税制改正で創設されましたが、国税庁の解説資料は、産業競争力強化法等改正法の施行期日を定める政令が令和8年5月27日現在において公布されていないこと、確認の基準を定める法令も同日現在において公布されていないことを明記しています。中小企業者等は投資計画の取得価額の合計額が5億円以上、年平均の投資利益率15%以上といった基準が示されていますが、これらは「定められる予定」の段階です。設備投資の時期をこの制度の前提で動かす判断は避け、国税庁と経済産業省の最新の公表資料を確認してください。

Q中小企業経営強化税制のC類型(デジタル化設備)を検討していますが、要件を教えてください。
A

C類型は2025年4月1日をもって廃止されています。現在の類型はA類型(生産性向上設備)、B類型(収益力強化設備)、D類型(経営資源集約化設備)、E類型(経営規模拡大設備)の4つです。デジタル化を目的とする設備投資でも、A類型の生産性向上要件やB類型の投資利益率7%以上の要件を満たせば対象になり得ます。廃止前に書かれた解説記事はC類型を含む構成のまま残っているため、類型名だけで判断せず、現行の中小企業庁の資料で確認してください。

出典・調査の対象範囲

※投資利益率を年数に読み替えた数値・判断表・自己診断は編集部の整理です。税制の適用は個別の要件によるため、顧問税理士・公認会計士と最新の公表資料で確認してください。

Consultation

無料相談のお申し込み

ご記入いただいた内容は、ご相談への対応のためにのみ利用します。内容によっては回答までお時間をいただくことがあります。あらかじめご了承ください。