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シャウエッセンが6本から5本に。値上げはお客さんの数え方で伝える

公開 2026.10.16

値段を上げたガリガリ君は歓迎され、702円を据え置いたシャウエッセンは炎上した。同じく数を減らした山崎製パンは褒められた。分かれ目は言葉選びではなく、お客さんが「減った」と数えた数字の横で、会社が別の数字を誇ったかどうかだ。

10年前、ガリガリ君は値段を60円から70円に上げました。値上げした月の販売本数は、前年より約1割増えました。

この秋、シャウエッセンは値段を702円のまま据え置きました。こちらは、Xで炎上しました。

上げたほうが歓迎され、上げなかったほうが責められる。逆さまに見えますが、理由ははっきりしています。

シャウエッセンで変わったのは、値札ではなく本数です。報道によると、1袋は6本から5本になる見込みです。1本あたりで数えると、20%の値上げにあたります。

ただし、数を減らせば必ず嫌われるわけではありません。同じように1袋の数を減らして、褒められた会社もあります。何が違ったのか。答えは、会社がどの数字で胸を張ったかにあります。

6本が5本に。発表にない「本数」で、お客さんは怒った

日本ハムは10月5日、シャウエッセンの中身を減らしたと発表しました。主力の2束は、1パック117gから107gになります。値段は税込702円のままです。理由は、原材料や物流、エネルギーの費用が上がり続けていることでした。

その代わりに、1本を重くしました。社内では「ぱっつんぱっつん」のシャウエッセンを目指したといいます。テレビCMと新聞広告で、「時代に負けてたまるか。」と大きく打ち出しました。

ところが、発表には本数が書かれていません。書かれているのはグラムと、1本を重くしたことだけです。本数を数えたのは、報道とお客さんでした。この記事でも、報道どおり5本として計算します。

Xには、5本では家族で分けにくいという不満と、「完全に時代に負けてるじゃん」という皮肉が並びました。

図1 4年で2回の内容量減。今回は本数が減り、大きく告知した。シャウエッセン1パックは2022年10月に127gから117gへ、6本のまま減り、1本は約21.2gから約19.5gへ軽くなった。2026年10月には107gになって本数が5本に減る見込みで、1本は約21.4gと4年前とほぼ同じ重さになった

出典:日本ハム「『時代に負けてたまるか。』内容量は減っても、おいしさだけは譲らない。」(2026年10月5日)、産経新聞(2026年10月6日)、食品新聞(2022年7月6日)をもとに筆者作成。切り替えは2026年10月1日の納品分から順次。2026年の本数は報道による見込み。1本の重さは内容量を本数で割った平均。

じつは4年前にも、中身は127gから117gに減っています。このときは6本を守り、1本を軽くしました。371品の値上げと規格変更の一部として報じられ、筆者が確かめた範囲では、単独の大きな広告は見当たりません。本数を守り、大きな広告もなかった回には、目立った反発は報じられていません。声が上がったのは、本数が動き、それを大きく告知した回でした。

会社はグラムで9%、お客さんは本数で20%

同じ変更でも、測る物差しで値上げ率が変わります。

会社の物差しはグラムです。1gあたり3.00円が3.28円になるので、値上げは約9%です。お客さんの物差しは本数です。1本あたり58.5円が70.2円になるので、20%です。同じ702円の商品が、会社には9%、お客さんには20%に見えています。

図2 同じ702円でも、グラムなら9%、1本なら20%の値上げ。シャウエッセン2束は税込702円のまま、内容量が234gから214gへ、本数が12本から10本へ減る見込み。グラムで測ると1グラム3.00円から3.28円へ約9%、1本で数えると58.5円から70.2円へ20%の値上げになる

筆者試算。前提:日本ハムの発表した参考小売価格(税込702円)と内容量、報道された本数(1袋6本→5本)による。

値上げのやり方は、大きく分けると、値札を上げるか中身を減らすかの2つです。値札を上げれば、お客さんが見る数字と会社が言う数字は同じです。中身を減らすと、この2つが分かれやすくなります。

図3 値上げのやり方は2つ。動く数字が違う。値札を上げるやり方は、お客さんが知っている値段が変わり、多くの人が気づく。中身を減らすやり方は、お客さんが数える本数や量が変わり、数えた人だけがあとから気づく。中身を減らして告知するなら、お客さんが数える単位で伝えないと矛盾が目立つ

筆者整理。

値上げを決めたら、告知文を書く前に、お客さんが数える単位で何%上がるかを計算します。

同じ「1個減らして重く」でも、山崎製パンは褒められた

山崎製パンの「薄皮シリーズ」は2023年、値段を変えずに5個入りを4個入りにしました。シャウエッセンとそっくりの変更です。

J-CASTニュースによると、買った人が新旧を比べて、1個が重くなっていることに気づきました。そこから、称賛の声が出たといいます。J-CASTは、会社が売り込まず、お客さんが見つけたことが好評につながったと見ています。

1個を重くしたのは同じです。違うのは、その重さを誰が言ったかです。薄皮では、お客さんが自分で見つけました。シャウエッセンでは、会社が広告で前に出しました。

笑われた例もあります。明治は2016年に九州から順に、「明治おいしい牛乳」を1000mlから900mlに切り替えました。明治の広報によると、値段は据え置きです。

会社が前に出したのは、「手が小さいお子さまや握力が弱い高齢者でも持ちやすい」「従来品に比べ、筋肉への負担が約1割軽減」という使い勝手でした。ネットには「実質値上げでは?」というツッコミが殺到しました。減ったのは100ml、前に出したのは持ちやすさです。

それでも、売れ行きは落ちていません。日経POSによると、新しい容器は首都圏で売り出した2017年11月、牛乳の中で千人当たりの販売金額が1位でした。笑われたのは値上げではなく、言い訳に見えた説明のほうだった、ということです。

褒められた山崎、笑われた明治、炎上したシャウエッセン。並べると、分かれ目が見えてきます。

本質は、言葉の上手下手ではありません。お客さんが「減った」と数えた数字の横で、会社が別の数字を誇ると、反発が起きます。

図4 反発は、減った数字の上で会社が別の数字を誇ったときに起きた。ガリガリ君は値札を60円から70円に上げ、値上げそのものを前に出した。明治おいしい牛乳は1000mlを900mlにし、持ちやすさを前に出してツッコミを受けた。薄皮シリーズは5個入りを4個入りにし、1個の重さは買った人が自分で見つけた。シャウエッセンは6本を5本にし、会社が1本の重さと食べ応えを前に出して反発を受けた

出典:赤城乳業・明治・山崎製パン・日本ハムの告知と、日経クロストレンド(2016年6月2日)、ねとらぼ(2017年4月18日)、日経POS(2017年12月19日)、J-CASTニュース(2026年10月12日)などの報道をもとに筆者整理。

では、シャウエッセンをお客さんの単位で伝えると、どうなるでしょうか。たとえば、こう書けます。

会社の物差しで伝える

1本の重さアップ

内容量は減ります。それでも、おいしさは譲らない。1本あたりの重量と肉感をアップしました

お客さんの物差しで伝える

1本 約12円の値上げ

6本が5本になります。1本あたり約12円の値上げです。その分、1本を約2g重くしました

「会社の物差しで伝える」は日本ハムの発表の要旨、「お客さんの物差しで伝える」は筆者の書き換え例です。後者では、減った本数と上がった額を先に言い、重さはそのあとに置きます。値上げを決める会議で、お客さんの単位での値上げ率まで計算していますか。告知の出来は、その手順で決まります。

うちの業界は? お客さんの「物差し」はどこにあるか

お客さんが数える単位は、業種ごとに違います。そして、会社が見る数字とずれていることがよくあります。

飲食なら、会社は原価率を見ます。お客さんは唐揚げの個数や品数を数えます。美容室や整体なら、会社は客単価を見て、お客さんは施術の分数を数えます。

意外なのは、会社向けの仕事です。個人向けより、中身の削減が見つかりやすい面があります。保守サービスなら、相手の担当者が対応の回数を作業報告で毎月確かめています。制作会社なら、修正の回数を相手が数えています。記録に残る分、気づかれやすくなります。

図5 会社はグラムや単価で測り、お客さんは「回」や「個」で数える。個人のお客さん向けでは、飲食は唐揚げの個数や品数、美容室や整体は施術の分数、小売やECは入数や送料無料の線。会社のお客さん向けでは、保守は月の対応回数や駆けつけ時間、製造の受託は最小ロットや納期、制作会社は修正の回数。会社向けは担当者が回数を記録しているため、中身の削減が見つかりやすい

筆者整理。業種の例は代表的なもので、会社によって異なる。

モノを売らない商売でも、物差しのずれは起きます。会員の特典を減らすことは、サービス業の「中身を減らす値上げ」です。

ANAは2026年4月、上級会員向けのカードについて、2028年4月から新しい区分を設けると発表しました。年間の決済額が300万円未満の会員は、ラウンジを使えなくなる内容です。既存会員から反対の声が上がり、9月29日には、国内線では混雑する時期を除いて使えるよう見直しました。発表から5か月で、一部を引き返した形です。会員が見ていたのは、空港に行くたびにラウンジを使えるかどうかでした。

個人向けの商売は、気づかれるのが遅い代わりに、気づかれたときの広がりが速くなります。シャウエッセンの反発も、Xで一気に広がりました。どちらの商売でも、お客さんの物差しを外して値上げは決められない、ということです。

あなたの会社では? 値上げ案を、お客さんの単位で1行に書き直す

あなたの会社にも、値上げの検討が控えているはずです。その案は、どの数字を動かすものでしょうか。原価の削減額だけで比べていないでしょうか。

飲食なら、こう比べます。ランチ定食を1,000円から1,100円にすれば、1食あたり10%の値上げです。1,000円のまま唐揚げを5個から4個にすれば、1個あたり25%の値上げになります。中身を1つ減らすほうが、お客さんの数え方では大きな値上げに見えるのです。

会社向けの保守契約なら、訪問を月4回から3回にすると1回あたり約33%です(図6)。相手の担当者は、訪問の回数を記録しています。

図6 中身を1つ減らすと、お客さんの単位では値札より大きな値上げに。ランチ定食は値札を1,000円から1,100円にすると1食あたり10%、1,000円のまま唐揚げを5個から4個にすると1個あたり25%。保守契約は月5万円を5万5,000円にすると10%、5万円のまま訪問を月4回から3回にすると1回あたり約33%の値上げになる

筆者試算。記入例は架空。

中身を減らすのが悪いわけではありません。容器や工程の都合で、値札より中身で調整するほうが合う商品もあります。大事なのは、お客さんの単位で何%になるかを知ったうえで選ぶことです。中身を減らすなら、告知で前に出すのは、お客さんが数える数字です。1つの重さのような会社の物差しの数字は、お客さんが自分で確かめられるように置いておけば十分です。

NEXT ACTION / 次にやること

次の値上げ案を、お客さんが数える単位で1行に書き直す

値上げを検討している商品やサービスを1つ選びます。「お客さんが数える単位」を1つ書き出します(1食、1個、1回、1か月など)。値札を上げる案と中身を減らす案のそれぞれで、その単位で何%上がるかを計算します。告知文では、その数字を先に言います。

値上げの原資と値段を一緒に決める考え方は「人手不足倒産240件、過半が人件費。賃上げの日に値段も決める」に、取引先との値段の外の条件は「給湯器メーカーに取適法で勧告。手形と金型保管、支払条件を見直す」にまとめています。

5問で確認する 値上げの決め方と伝え方

値上げを決めて伝えるまでの流れを確かめる簡易チェックです。

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5問で確認|値上げの決め方と伝え方

直近の値上げ、または検討中の値上げを思い浮かべて、いちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1自社の主な商品・サービスについて、お客さんが数える単位(1食、1個、1回など)を言える
  2. Q2値上げ案を比べるとき、お客さんが数える単位で何%上がるかを計算している
  3. Q3値札を上げる案と、中身を減らす案の両方を並べて検討している
  4. Q4告知文で伝える数字が、お客さんが手元で確かめる数字と一致している
  5. Q5値上げの告知に、なぜ上げるのかの理由を、自社の言葉で入れている

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

出典・調査の対象範囲

  • 日本ハム「『時代に負けてたまるか。』内容量は減っても、おいしさだけは譲らない。一本あたりの重量と肉感をアップした“ぱっつんぱっつん”の『シャウエッセン®』が誕生」(2026年10月5日、PR TIMES) 原文を見る
  • 産経新聞「シャウエッセン実質値上げ 同じ価格で10グラム減…6本から5本に『分けにくい』の声も」(2026年10月6日、Yahoo!ニュース掲載) 原文を見る
  • 週刊女性PRIME「『時代に負けている』と大炎上の『シャウエッセン』、広報が明かす批判の受け止めと“1本減”の切実事情」(2026年10月8日、Yahoo!ニュース掲載) 原文を見る
  • J-CASTニュース「シャウエッセン『正直に伝えます』が裏目で炎上 ガリガリ君、うまい棒は称賛されたのに...失敗した言い回し」(2026年10月12日) 原文を見る
  • ねとらぼ「『明治おいしい牛乳』新パッケージは実質値上げ? 『筋肉への負担が約1割軽減』にツッコミ殺到 明治の狙いは」(2017年4月18日) 原文を見る
  • J-CASTトレンド「『明治おいしい牛乳』リニューアルで実質値上げ? 明治に聞いてみると...」(2017年11月9日) 原文を見る
  • 日経POS「明治おいしい牛乳のおいしい戦略」(2017年12月19日) 原文を見る
  • Impress Watch「ANA SFC改定が見直し 年間決済300万円未満でも混雑時以外はラウンジ利用可に」(2026年9月29日) 原文を見る
  • 食品新聞「日本ハム ハム・ソーなど再値上げ 『シャウエッセン』は容量減」(2022年7月6日) 原文を見る
  • 日経クロストレンド「『ガリガリ君に謝らせるわけにはいかない』、社員総出の値上げお詫びCMに25年前の反省」(2016年6月2日) 原文を見る
  • 食品産業新聞「『うまい棒』42年の歴史で初の値上げ、4月1日から」(2022年1月27日) 原文を見る
  • アドタイ(宣伝会議)「なくなっちゃうほうが、悲しいから。初の値上げ『うまい棒』広告が完結」(2022年5月18日) 原文を見る

※価格・内容量・本数は各社の発表と報道に基づく、執筆時点の情報です。1本あたり・1グラムあたりの値上げ率、業種の整理、記入例と自己診断は、考え方を示すための編集部の試算・整理です。

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