広報・ブランド戦略・パブリシティ
メディア掲載を獲得する広報戦略 公的な表彰・認定と記者クラブで第三者に取り上げられる
公開 2026.09.06
メディア掲載は運ではありません。中小企業庁「はばたく300社」やDXセレクションなど現に動いている表彰・選定制度、都道府県が公表する経営革新計画の承認、記者クラブへの資料提供という広告費のかからないルートと、記事広告との線引き・著作権の注意点を一次情報で整理します。

- 表彰制度は現に動いています。中小企業庁は2026年5月28日に2025年度「はばたく中小企業・小規模事業者300社」を選定し、経済産業省とIPAは2026年5月20日に「DXセレクション2026」の11者を選定しました。日本健康会議が認定する健康経営優良法人2026では、中小規模法人部門に23,085法人が認定されています
- 記者クラブへの資料提供(投げ込み)は、自治体が公式に手順を公開しています。滋賀県は電子申請フォーム「報道発表資料受付【庁外】」で受け付け、徳島県は27部を県政記者室のBOXに自分で配布、高知県は15部を持参または郵送。ただし徳島県は「公益性の観点から、営業などの資料提供は、お受けできません」と明記しています
- 報道と記事広告の境目は消費者庁が引いています。媒体事業者が自主的な意思で企画・編集・制作した記事は広告主の表示になりませんが、通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超える金銭等を渡した場合は、その記事が自社の表示として景品表示法の判断対象に入り得ます
「知名度がないから取り上げられない」という前提を、いったん外してください。国・自治体・省庁は毎年、中小企業を選び、認定し、承認し、その結果を自らプレスリリースとして発表しています。そこに名前が載れば、取材のきっかけは自社の売り込みではなく公的機関の発表になります。本稿は、いま実際に動いている制度を実名で確認したうえで、記者クラブへの資料提供の手順、記事広告と報道を混ぜないための線引き、掲載後の使い方と著作権上の注意までを、一次情報にあたって整理します。扱うのは第三者の媒体に取り上げられることだけで、自社サイトからのリード獲得や広告出稿は範囲外です。
最初に結論:広告費をかけずに第三者へ載る4つのルート
先に全体像を示します。並べる基準は「露出の大きさ」ではなく、結果が公的な記録として残るかです。
まず見るべき判断表|第三者へ載る4つのルートと結果の残り方
| ルート | 出し手 | 自社がやること | 露出のしかた | 着手から結果まで |
|---|---|---|---|---|
| 国の表彰・選定制度 | 省庁が自らプレスリリースを出す | 応募、または推薦団体からの推薦を得る | 省庁の発表+地方経済産業局の発表+支援機関サイトへの転載 | 半年〜1年 |
| 国の認定制度 | 認定機関が名簿を公表する | 要件を満たし申請する | 認定法人一覧への掲載、認定マークの使用 | 数か月〜1年 |
| 計画の承認 | 都道府県が承認企業一覧を公表する | 経営革新計画などを申請する | 都道府県サイトへの掲載 | 1〜3か月 |
| 記者クラブへの資料提供 | 自社が資料を持ち込む | 自治体の手順に従って提供する | 記事化するかは各社の判断 | 即日〜数日 |
「着手から結果まで」の列は編集部の目安で、出典に基づく数値ではありません。制度の回次や自治体の運用によって前後します。
メディア掲載は運ではなく、公的機関が毎年動かしている表彰・認定・承認の枠に自社を載せられるかどうか。結果が公的な記録として残るルートから選び、今期の軸を1つに決めます。
上の3つと4つ目は性質が違います。上の3つは結果が公的な記録として残るため、掲載されなくても実績が消えません。4つ目は当日に動かせる代わりに、記事になるかどうかは完全に媒体側の判断で、投げ込んだ事実は何も残りません。
経営者が決めるのは、この4つのどれを今期の軸にするかです。4つ全部を同時に始める必要はありません。認定と計画の承認は要件が公表されているので、自社が届くかどうかを今日その場で判定できます。届かないなら、届く水準まで実態を上げる作業が先で、それは広報ではなく経営の作業です。一方で表彰・選定は審査を経るため合否を事前に判定できません。こちらは、推薦しうる機関に自社の取組が届いているかを確認する作業から始まります。なお速さだけで言えば記者クラブへの資料提供が最も早いのですが、記事になる保証はありません。
❌ 「まず知名度を上げたいので、プレスリリース配信サービスを契約して毎月1本出す」 ⭕ 「自社が要件を満たせる公的制度を先に洗い出し、応募時期から逆算して年間の発信計画を組む」
いま動いている表彰・選定制度から選ぶ
表彰制度の話でいちばん危険なのは、終了した制度を現行のものとして扱うことです。中小企業向けの顕彰制度は改称・統合・休止が起こります。以下は2026年9月時点で実施が確認できたものだけを並べています。
| 制度 | 所管 | 主な対象 | 応募の形 | 直近の実施状況 |
|---|---|---|---|---|
| はばたく中小企業・小規模事業者300社 | 中小企業庁 | 5分野で優れた取組を行う中小企業 | 推薦団体からの推薦 | 2026年5月28日に2025年度分を選定 |
| DXセレクション | 経済産業省・IPA | 日本全国の中堅・中小企業等 | 自薦または関係機関からの推薦 | 2026年5月20日に11者を選定 |
| 健康経営優良法人(中小規模法人部門) | 経済産業省が制度設計、日本健康会議が認定 | 中小規模の法人 | 申請 | 2026年3月9日に23,085法人を認定 |
| ものづくり日本大賞 | 経済産業省・国土交通省・厚生労働省・文部科学省 | 製造業・鉱業・ソフトウェア業の現役の勤労者 | 推薦者による推薦(本人応募不可) | 2026年3月5日に第10回優秀賞(22件111名)を決定 |
| 知財功労賞 | 特許庁(農林水産・食品分野は農林水産省と連携) | 知的財産権制度を有効に活用した企業等 | 毎年実施 | 2026年4月10日に令和8年度受賞者を発表 |
知財功労賞は、特許庁が毎年、知的財産権制度の発展・普及・啓発に貢献した個人への「知的財産権制度関係功労者表彰」と、制度を有効に活用した企業等への「知的財産権制度活用優良企業等表彰」をあわせて総称するものです。令和8年度は経済産業大臣表彰として個人2名と企業等7者、特許庁長官表彰として個人4名と企業等14者、農林水産大臣表彰として自治体1者、輸出・国際局長表彰として企業等2者が受賞しました(出典:特許庁「令和8年度『知財功労賞』について」、2026年4月10日)。受賞者には大企業が多く並びますが、中小企業の受賞例もあります。
「はばたく中小企業・小規模事業者300社」は、経済社会構造の変化に対応して事業変革や新規事業に挑戦し、地域経済や日本経済の成長への貢献が期待できるモデルとなる中小企業を、「成長戦略・生産性向上」「海外展開」「GX」「DX」「人への投資・環境整備」の5分野で選定するものです。選定は推薦に基づきます。2025年度の選定では、全国中小企業団体中央会、日本商工会議所、全国商工会連合会、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、中小企業基盤整備機構、日本貿易振興機構、全国信用金庫協会、全国地方銀行協会、経済産業局などが推薦を行いました(出典:経済産業省「2025年度『はばたく中小企業・小規模事業者300社』を選定しました」、2026年5月28日)。
ここが実務上の要点です。推薦制の制度は、日頃の付き合いがそのまま応募資格になります。取引金融機関、加入している商工会議所や中央会、地域の経済産業局。これらに自社の取組が届いていなければ、推薦の候補にすら挙がりません。表彰を狙うということは、まず推薦しうる機関に自社の取組を説明しておく、という地味な作業から始まります。
300社
はばたく中小企業・小規模事業者300社(2026年5月28日に2025年度分を選定)
11者
DXセレクション2026の選定(2026年5月20日)
23,085法人
健康経営優良法人2026 中小規模法人部門の認定数
自薦できる制度と、推薦が要る制度を分ける
「DXセレクション」は自薦が可能な制度です。デジタルガバナンス・コードに沿った取組を通じてDXによる成果を創出している中堅・中小企業等の優良事例を選定するもので、2022年から実施されています。募集対象は日本全国の中堅・中小企業等で、中小企業等の定義は業種ごとの資本金・従業員数の基準(製造業その他なら資本金3億円以下または従業員300人以下など)、中堅企業等はそれ以外で従業員2千人以下の者です。過去に選定された企業や応募した企業も再度応募できます。
応募要件はDX認定の取得状況で分かれます。DX認定を取得済みの事業者は自薦・他薦のどちらでも応募できますが、DX認定未取得の事業者は関係機関からの推薦による応募のみで、推薦機関がDX認定申請の補助を行う旨の宣言と、期限までのDX認定申請が必要とされました。DXセレクション2026では、募集期間が2025年12月1日から12月22日18時、応募はIPAの「DX推進ポータル」で受け付け、ログインにはGビズIDが必要です(GビズIDはプライム・メンバー・エントリーのいずれでも利用可)。最終選考はプレゼンテーション審査で、2026年5月20日の表彰式でグランプリ1者、準グランプリ2者、優良事例8者の計11者が選定されました(出典:経済産業省「DXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)」および「DXセレクション2026」応募要領、2026年8月14日最終更新)。
「ものづくり日本大賞」は逆に、本人が応募できない制度です。経済産業省・国土交通省・厚生労働省・文部科学省の4省が連携し、平成17年から開催されているもので、応募は候補者本人ではなく推薦者が2名の賛同者を得て申請します。ここで中小企業の経営者にとって重要なのは、公式の開催概要が「企業の経営者が自社の社員を推薦する申請や、またその逆も可能です」と明記していること、そして法人格を有する団体(地方自治体、業界団体、経済団体、金融機関、企業等)が推薦者になる場合は賛同者2名が不要であることです。ただし企業が当該企業の代表者を推薦することは認められません。第10回は2026年3月5日に優秀賞22件111名が決定しています(出典:経済産業省「第10回『ものづくり日本大賞』優秀賞受賞者を決定しました」、2026年3月5日/ものづくり日本大賞 表彰部門)。
応募をためらう理由としてよく挙がるのが「落ちたら格好がつかない」ですが、ものづくり日本大賞の公式FAQは「応募した案件は公表されますか?」という問いに対し「受賞した案件のみを公表致します」と答えています。落選が外部に知られる制度設計にはなっていません。
終了・休止した制度を「現行」として書かない
自社サイトや会社案内に制度名を書くときは、その制度がいま動いているかを必ず公式ページで確認してください。例として、経済産業省の「地域未来牽引企業」は過去に選定が行われた制度ですが、公式ページ(2026年2月17日最終更新)に掲載されているのは選定実施要領、有効期間の取扱い、合併・分割等が生じた場合の取扱いといった既選定企業向けの案内で、新規選定の募集案内は出ていません(出典:経済産業省「地域未来牽引企業」、2026年2月17日最終更新)。過去に選定された事実を書くのは正確ですが、「いま応募できる制度」として社内に共有すると、担当者の時間が無駄になります。
❌ 「表彰制度をまとめて調べ、名前が出てきた制度に片端から応募する計画を立てる」 ⭕ 「制度ごとに公式ページで直近の実施年度と募集要項の有無を確認し、応募できるものだけを年間計画に入れる」
認定と計画承認は、名簿に名前が残るルート
表彰が「選ばれる」制度だとすれば、認定と計画承認は「要件を満たせば通る」制度です。競争率という不確実性がない代わりに、露出の強さは表彰より落ちます。この違いを理解して使い分けてください。
| 制度 | 広報での使いどころ | 注意点 |
|---|---|---|
| ユースエール・くるみん・えるぼし・安全衛生優良企業(厚生労働省) | 認定マークを求人票・広告等に表示できる。認定企業一覧に掲載される | 採用広報の文脈で効く。制度ごとに要件と更新の負荷が違う |
| 健康経営優良法人(中小規模法人部門) | 認定法人一覧に掲載され、ロゴマークを使用できる | 中小規模法人部門は23,085法人が認定されており、認定そのものはニュースになりにくい |
| 経営革新計画の承認(都道府県知事等) | 都道府県が承認企業一覧を公表する | 公表を希望しない企業は掲載されない。承認は計画の承認であって商品の承認ではない |
健康経営優良法人認定制度は、特に優良な健康経営を実践している法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、日本健康会議が認定する顕彰制度です。「健康経営優良法人2026」では、大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人が認定され、中小規模法人部門の上位500法人には「ブライト500」、501〜1500位の法人には「ネクストブライト1000」の冠が付されています。認定期間は2026年3月9日から2027年3月31日までです(出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」、2026年3月9日発表分)。
この数字は、広報の観点では正直に読む必要があります。中小規模法人部門で2万3千を超える法人が認定されている以上、「認定されました」という事実だけで記事になることは期待できません。ニュースとして意味を持つのは上位500の「ブライト500」のような冠がついたときか、あるいは認定要件を満たすために社内で何を変えたかという中身のほうです。認定は素材であって、ニュースそのものではありません。取引先に向けた認定としては事業継続力強化計画もあり、認定を取るとロゴマークを名刺やウェブサイトに掲載できます。計画の作り方は中小企業のリスク管理入門で扱っています。
厚生労働省の4つの認定制度(ユースエール、くるみん、えるぼし、安全衛生優良企業)は、要件がすべて数値または有無で公表されているため、自社が届いているかを自分で判定できます。制度ごとの要件と取得後の運用負荷は中小企業の採用ブランディングで整理しているので、本稿では繰り返しません。広報の観点だけ補足すると、これらは求職者向けの文脈で最も効く認定です。取引先や金融機関に向けた発信の主役にはなりにくいので、狙いを採用に置くのか商談に置くのかを先に決めてから取りにいってください。
経営革新計画の承認は「都道府県が公表する」
中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画は、都道府県知事等の承認を受ける制度です。制度の中身と目標値の置き方は経営革新計画の作り方で扱っているので、ここでは広報の観点だけを書きます。
承認を受けると、都道府県が承認企業の一覧を自らのサイトで公表します。東京都は「東京都が、中小企業等経営強化法に基づき経営革新計画の承認をした計画です。過去5年分を掲載しています」として、年度別・月別の承認件数と承認企業リストを公開しています。ここで見落としてはならない注記が2つあります。ひとつは「公表を希望していない承認企業については掲載していません」「承認企業が公表を希望していない項目については空欄になっています」という点。公表するかどうかは申請者が選べるので、広報に使う意図があるなら申請の段階で公表を希望しておく必要があります。
もうひとつは「本申請に係る承認は、新規事業の経営計画を承認するものであり、申請書に記載されている商品やサービスを東京都で承認するものではありません」という注記です(出典:東京都産業労働局「経営革新計画承認企業・承認件数(月別・東京都)」、2026年9月閲覧)。この一文は、そのまま広報上の禁止事項になります。
❌ 「東京都に承認された新商品」として、経営革新計画の承認をパンフレットの商品説明に使う ⭕ 「中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画について東京都の承認を受けた」と、承認の対象が計画であることを明示する
なお、公的機関の発表は一次の露出で終わりません。中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」の発表は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の支援情報ヘッドラインに2026年6月2日付で掲載されました。経済産業省のニュースリリース自体にも「各地方の経済産業局においても、管内分の受賞状況等を公表している場合がございます」と記載されています。国の発表が地方局の発表になり、支援機関サイトの記事になり、そこから地元紙が拾うという連鎖が、公的ルートの実質的な価値です。
何がニュースになるのか 「営業の資料は受け付けない」という線
ここまでの3つのルートのうち、ルート1は公的機関が自らプレスリリースを出す発表主体になり、ルート2・3は名簿や一覧への掲載にとどまります。いずれも「ニュースかどうか」を自社で判断する必要はありませんが、発信の強さは違います。判断が必要になるのは、自社が直接資料を出す4つ目のルートです。
その線引きを、いちばん端的に書いている公的資料があります。徳島県庁のFAQは、県政記者クラブへの資料提供について「公益性の観点から、営業などの資料提供は、お受けできません」と明記しています(出典:徳島県「徳島県政記者クラブに資料提供するにはどうすればよいか。」、2026年9月閲覧)。滋賀県も、対応できない資料として「発表する内容が虚偽または誇大なもの」「消費者保護の観点から適切でないもの」などを列挙しています。
記者クラブがそもそも何のための組織かを見ると、この線引きの理由が分かります。日本新聞協会編集委員会の見解は、記者クラブを「公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』」と定義し、その機能・役割を「公的情報の迅速・的確な報道」「公権力の監視と情報公開の促進」「誘拐報道協定など人命・人権にかかわる取材・報道上の調整」「市民からの情報提供の共同の窓口」の4つとしています。同見解は「市民からの情報発信に対しても、記者クラブは開かれています」とも述べています(出典:日本新聞協会「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」、2002年1月17日決定・2006年3月9日一部改定)。
つまり、記者クラブは情報提供の窓口としては開かれているが、広告・宣伝の窓口ではないということです。徳島県は「公益性の観点から、営業などの資料提供は、お受けできません」と明記しています(他県も同趣旨の運用をしている場合があるので、出す先のページで確認してください)。逆に言えば、資料を「読者にとって何が新しいのか」の側から書き直せるかどうかが、投げ込みの成否を分けます。
手元にある素材を、公共の言葉に翻訳する
自社の出来事は、そのままではニュースになりません。しかし切り口を変えると素材になるものは、思っているより多くあります。以下は編集部の整理で、出典に基づく分類ではありません。自社の年間予定を横に置いて、どの型に当てはめられるかを確認する用途で使ってください。
| 型 | 自社にある素材の例 | 公共の側から見た意味 |
|---|---|---|
| 公的機関が発表主体になる | 表彰の選定、国の認定、計画の承認、補助金の採択 | 国や自治体が価値を認めた事実として扱える |
| 地域で初めて/業界で初めて | 県内初の設備導入、地域初の取組 | 地域紙・業界紙にとって読者に直結する新しさ |
| 社会課題との接続 | 人手不足への対応、脱炭素、事業承継、災害への備え | 個社の話が政策・統計と結びつく |
| 数字で示せる変化 | 工程の所要時間、歩留まり、離職率、残業時間の実績値 | 検証できるため記事にしやすい |
| 地域との関わり | 学校との連携、地元産の原料への切替、避難施設の提供 | 自治体・地域メディアの守備範囲に入る |
| 人の物語 | 承継後の再建、技能の継承、若手の育成 | ビジネス誌・地域メディアの企画に乗る |
この表の1行目が、本稿でここまで扱ってきた公的ルートです。残りの5つは自社で切り口を作る必要がありますが、1行目は制度の側が「価値を認めた」という判断を先に済ませてくれています。専任の広報担当がいない会社ほど、1行目から手を付けるほうが確実です。
そして、素材が決まったら資料の書き方は自治体が指定しています。滋賀県は「資料の様式は問いませんが、5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を分かりやすく記載してください」「必ず問い合わせ先をご記載ください」としています。様式は自由で、要件は5W1Hと連絡先。これは滋賀県が公表している水準で、他県は記載を求めていない場合もありますが、満たしておいて損はありません。
❌ 「業界の常識を覆す画期的な新サービス」と冒頭に書き、詳細は問い合わせてもらう前提で資料をまとめる ⭕ 5W1Hを冒頭5行で完結させ、担当者名・携帯番号・メールアドレスを資料の末尾に固定で置く
記者クラブに出す 順番と手順
出す先の順番は「クラブの守備範囲」で決まる
「どのメディアを狙うか」を媒体の大きさで考えると、たいてい全国紙とテレビに行き着いて動けなくなります。実務的な順番は、自社の話がどのクラブの守備範囲に入るかで決まります。
徳島県のFAQは、県庁3階に県政記者室(県政記者クラブ・民放記者クラブが入居)があり、そのほかに教育を所管する教育記者室(県庁9階)、市政記者クラブ(徳島市)があるとして、「提供資料内容に応じて各記者クラブにご確認ください」と案内しています。記者クラブは取材対象で分かれており、内容と守備範囲が合わないところに出しても届きません。
もうひとつ、地方の記者クラブを最初に選ぶべき構造的な理由があります。滋賀県は、県政記者クラブの加盟社を朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、産経新聞社、中日新聞社、京都新聞社、日本経済新聞社、共同通信社、時事通信社、日本放送協会、京都放送、びわ湖放送の12社と公表しています(出典:滋賀県「県政記者クラブ等への報道発表資料の提供(プレスリリース)について」、2026年9月7日更新)。1回の資料提供で、全国紙5紙の地方支局、地域のブロック紙・県紙、通信社2社、NHKと地元放送局に同時に届くということです。滋賀県の例でいえば、1回の資料提供で加盟12社に同時に届きます。個別にメールを送る手間との違いは、ここにあります。
ここから先の順番は、編集部の整理です(出典に基づく順位ではありません)。第一に、業界紙・専門誌。読者が同業と取引先に限られるため、自社の話が届く相手と目的が一致します。第二に、地方紙と地域メディア。県内という限定があるぶん、県内で初めての取組は十分にニュースになりえます。第三に、経済メディアと専門ウェブメディア。第四に、全国紙とテレビ。最初から4番目を狙うのは、対象範囲がいちばん広い場に最初から入るということです。そして1番目と2番目に載った実績は、3番目以降の取材につながる材料になります。
3つの県の手順を並べて分かること
投げ込みの手順は自治体ごとに違います。違いが具体的に分かるように、公開されている3県の手順を並べます。
| 項目 | 滋賀県 | 徳島県 | 高知県 |
|---|---|---|---|
| 提出方法 | 電子申請(しがネット受付サービス「報道発表資料受付【庁外】」) | 県庁への直接持ち込み、またはFAX。郵送・メールは不可 | 県政記者室に持参、または郵送 |
| 部数・形式 | PDF 1MB以下。ファイル名は20文字以内で「資料提供日(西暦8桁)+資料提供名(英数字)」 | 27部を県政記者室内のBOXに自分で配布 | 15部 |
| 受付・提供の時間 | 提供日は開庁日のみ。提供時間は10時00分か14時00分のいずれか | 県庁ふれあいセンターの受付は午前9時から | 原則、平日8時30分から17時15分 |
| 申込期限 | 提供を行う日の前日まで | ― | ― |
| 記載必須の事項 | 5W1H、問い合わせ先 | ― | ― |
| 受け付けないもの | 法令違反、公序良俗違反、人権侵害のおそれ、青少年の健全育成上不適切、消費者保護上不適切、虚偽または誇大、風俗営業関係、反社会的勢力関係の8類型 | 公益性の観点から、営業などの資料提供 | ― |
| 解禁時間の指定 | ― | 「報道解禁付き」は原則不可。行う場合は県政記者クラブ幹事社との協議・了承が必要 | ― |
| 記者会見 | 県庁会見室の利用は別途案内 | ― | 広報広聴課で空き確認→幹事社の承諾→広報広聴課で本予約→当日来室 |
(出典:滋賀県「県政記者クラブ等への報道発表資料の提供(プレスリリース)について」2026年9月7日更新/徳島県「徳島県政記者クラブに資料提供するにはどうすればよいか。」/高知県「県政記者クラブへの資料提供(プレスリリース)及び記者会見の申し込みについて」、いずれも2026年9月閲覧。表の「―」は当該ページに記載がないことを示します)
この3県を並べると、共通して言えることが4つあります。
- 手順は公開されている。電話で聞き出す必要はなく、自治体のサイトに書かれています。まず自社の所在地の都道府県と市の広報担当課のページを開いてください。
- 部数と提出方法が県ごとに違う。27部と15部では準備の手間が違いますし、郵送やメールを受け付けない県もあります。他県のやり方をそのまま持ち込むと、その場で断られます。
- 提供できる日時が限られる。開庁日のみ、指定された時刻のみという運用があります。イベントの前日に思い立っても間に合いません。
- 解禁時間を自社の都合で設定することはできない。徳島県は「報道解禁付き」の資料提供を原則不可とし、行う場合は幹事社との協議・了承が必要としています。「〇月〇日午前0時解禁」と書けば守ってもらえる、という前提は成り立ちません。
取材を受けるときに、経営者が先に決めておくこと
資料が通ると、連絡は電話で来ます。締切が当日や翌日ということも珍しくありません。この局面で決めておくべきことは、社内の体制の話であって、話し方の技術ではありません。
- 窓口を一本化する。誰が最初に受けるか、誰が回答者になるかを決めておきます。回答者が経営者なら、その予定を優先的に空ける社内ルールが要ります
- 素材を常備する。会社ロゴ、代表者の顔写真、事業所の外観、製品と現場の写真を、高解像度で1か所にまとめておきます。依頼を受けてから撮影の段取りを始めると、締切に間に合いません
- 数字の出所を1枚にする。売上、従業員数、シェア、導入実績。取材で出す数字は、社内のどの資料に基づくかを添えて1枚にまとめておきます。後から訂正が必要になる事態を減らせます
- 答えないことを先に決める。取引先名、価格、係争中の案件など、答えない範囲を決めておけば、その場の判断で口が滑ることがなくなります
- 記事の内容に注文をつけられる前提で臨まない。日本新聞協会編集委員会の見解は「記者クラブ側は取材先からの取材・報道規制につながる申し入れに応じてはならない」としています。事実誤認の指摘は別として、記事の書き方や見出しを事前に調整する立場にはないと考えておくほうが安全です
❌ 取材依頼を受けた担当者が社内調整に3日かけ、締切に間に合わないと連絡する ⭕ 窓口と回答者、写真の保管場所、答えない範囲をあらかじめ決め、依頼を受けたその日に可否を回答する
記事広告と報道を混ぜてはいけない
広報を始めると、必ず「掲載枠を買いませんか」という提案が来ます。ここで踏んではいけない線を、公的な基準で確認します。
まず、報道記事が広告主の表示にならない範囲です。消費者庁の運用基準は、新聞・雑誌発行、放送等を業とする媒体事業者(インターネット上で営む者も含む)が自主的な意思で企画、編集、制作した表示については、通常、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから、事業者の表示とはならないとしています。ここには「正常な商慣習における取材活動に基づく記事の配信、書評の掲載、番組放送(事業者の協力を得て制作される番組放送も含む)等」が含まれます。
問題はその先です。同じ運用基準は「ただし、媒体事業者の表示であっても、事業者が表示内容の決定に関与したとされる場合は、事業者の表示となる」としたうえで、その判断の考慮要素として「正常な商慣習を超えた取材活動等である実態(対価の多寡に限らず、これまでの取引実態と比較して、事業者が媒体事業者に対して通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭等の提供、通常考えられる範囲を超えた謝礼の支払等が行われる場合)にあるかどうか」を挙げています。
一方、広告として出す場合の扱いも明確です。運用基準は、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である、または社会通念上明らかなものは告示の対象にならないとして、その例に「放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合」「新聞紙の広告欄のように『広告』等と記載されている表示を行う場合」を挙げています。明瞭な表示の例としては「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示も示されています(出典:消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」第2の2(2)、第3の2、令和5年3月28日消費者庁長官決定)。
報道記事として扱われる
媒体事業者が自主的な意思で企画・編集・制作した記事。正常な商慣習の範囲の取材協力なら、自社の表示にはならない
自社の表示(広告)として扱われ得る
通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超える金銭等を渡した場合。費用を払うなら「広告」「PR」等の表示をして出す
整理するとこうなります。費用を払って書いてもらった記事は、広告であることが分かる表示をして出す。そうすれば景品表示法の告示の対象にはなりません。逆に、報道記事の体裁を保ったまま、通常の取材協力費を大きく超える金銭を渡すと、その記事は自社の表示として扱われ得ます。境目にあるのは「払ったかどうか」ではなく「払ったことが読者に分かるかどうか」です。
なお、景品表示法は一般消費者の商品選択を保護する法律であり、この告示も一般消費者の判別可能性を問題にしています。事業者間の取引だけを対象にした商材が直ちに規制の射程に入るとは限りません。この点と、自社サイトの導入事例や「お客様の声」の作り方はBtoBマーケティングの始め方で詳しく扱っています。本稿が扱うのは、あくまで第三者の媒体に載る場合の線引きです。
媒体側にも基準があります。日本新聞協会の「新聞広告掲載基準(モデル)」は、掲載しない広告として「虚偽または誤認されるおそれがあるもの」を挙げ、その具体例の筆頭に「編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの」を置いています。同じ項には「社会的に認められていない許認可、保証、賞または資格などを使用して権威づけようとするもの」も列挙されています。さらに別項として「事実でないのに新聞社が広告主を支持、またはその商品やサービスなどを推奨、あるいは保証しているかのような表現のもの」も掲載しない対象です(出典:日本新聞協会「新聞広告掲載基準(モデル)」、昭和51年5月19日制定・平成3年3月20日一部改正)。
この最後の一項は、広告よりむしろ掲載後の実績の使い方に効いてきます。詳しくは次の章で扱います。
❌ 費用を払って掲載した記事広告を、営業資料の「メディア掲載実績」欄に報道記事と並べて載せる ⭕ 費用を払ったものは「〇〇(媒体名)タイアップ記事」と明記し、報道記事とは欄を分ける
❌ 実体の不明な団体が主催する「優良企業賞」を受賞し、会社案内の冒頭に大きく掲げる ⭕ 主催者、選定方法、対象年度が公表されている制度に限って掲載し、受賞年度を併記する
掲載された後の使い方と、著作権の線
掲載は終点ではなく起点です。ただし、載った記事を自由に使えるわけではありません。新聞記事や雑誌記事の著作権は媒体社等にあり、全文をそのまま自社サイトに転載することは原則としてできません。
著作権法第32条第1項は引用について定めていますが、文化庁の「著作権テキスト」は、この規定で他人の著作物を利用できる条件を次のように整理しています。
- すでに公表されている著作物であること
- 「公正な慣行」に合致すること(例えば、引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること)
- 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること、本文が引用文より高い存在価値を持つこと)
- 「出所の明示」が必要(複製以外はその慣行があるとき)
同テキストは出所の明示について、「『出所の明示』をすれば著作権者の了解を得なくてもよいという誤解がありますが、それは逆で、著作権者の了解を得なくてもよい場合でも『出所の明示』の義務が課されるものであり、『出所の明示』をしても法律上の要件を満たさない場合には了解が必要です」と明記しています。出所明示の義務違反には罰則があります(第122条)。
なお、第32条第2項には「行政の広報資料」等の転載の規定がありますが、これは国・地方公共団体の行政機関、独立行政法人等が一般に周知させることを目的として作成した広報資料・調査統計資料・報告書などを、説明の材料として新聞・雑誌などの刊行物に転載する場合の規定です。新聞社が書いた記事はこの規定の対象ではありません(出典:文化庁「著作権テキスト(令和7年度版)」73〜74頁・76頁、令和7年5月公開)。
実務上の使い分けは次のようになります。
| やりたいこと | 可否の考え方 | 実務上の進め方 |
|---|---|---|
| 自社サイトのニュース欄で紹介する | 見出しと媒体名を書き、記事本文へリンクする形なら本文の複製が生じない | 「〇年〇月〇日付〇〇新聞に掲載されました」+リンク |
| 記事の一部を引用する | 第32条第1項の4条件をすべて満たす必要がある | カギ括弧で引用部分を明確にし、自社の文章を主にする。出所を明示する |
| 記事の全文を転載する | 引用の要件(正当な範囲内・主従関係)を満たさない | 媒体社に許諾を求める。有償の場合が多い |
| 紙面をPDF化して営業資料に添付する | 複製にあたる | 媒体社の許諾を取る。転載サービスが用意されている媒体もある |
| 記事の見出しだけを実績一覧に並べる | 見出しの表現によっては著作物性が問題になり得る | 媒体名・掲載日・見出しの範囲にとどめ、判断に迷えば媒体社に確認する |
そして、使い方の表現にも線があります。前章で挙げた新聞広告掲載基準(モデル)は「事実でないのに新聞社が広告主を支持、またはその商品やサービスなどを推奨、あるいは保証しているかのような表現のもの」を掲載しない対象としています。掲載されたという事実と、媒体社に推奨されたという評価は別物です。取材されて記事になったことを「〇〇新聞社推薦」と書き換えた瞬間に、事実から離れます。
❌ 掲載された紙面をスキャンし、「〇〇新聞掲載!」の帯を付けて自社サイトのトップに常設する ⭕ ニュース欄に掲載日・媒体名・見出しとリンクを載せ、紙面画像の使用は媒体社に許諾を確認してから行う
❌ 取材記事の掲載を「〇〇新聞社が認めた技術」として提案書に記載する ⭕ 「〇年〇月〇日付〇〇新聞に、当社の〇〇の取組が紹介されました」と、事実の範囲で記載する
なお、掲載実績を営業や採用の資料に反映する場面では、社内の他の書類との整合も確認してください。取材で語った数字と、金融機関に出している事業計画書の数字が食い違っていると、後から説明を求められます。
効果をどう見るか 掲載数を目的にしない
広報は成果が見えにくい活動なので、指標を置かないと続きません。しかし「年間掲載件数」を目標にすると、数を稼ぐ方向に運用が歪みやすくなります。掲載件数は結果の記録であって、目的にする数字ではありません。
経営者が見るべきものは3つで足ります。
- 公的な記録が増えたか。表彰の選定、認定、計画の承認は、年度内に何件取れたかで数えられます。掲載されなくても実績として残る唯一の指標です
- 相手の側から反応があったか。求人への応募理由、初回商談での言及、金融機関の担当者からの反応。「記事を見た」という発言があったかどうかを記録します
- 次の取材につながったか。一度載った媒体から、あるいは別の媒体から、企画の相談や取材依頼が届いたか
1番目は自社で完結するので、期初に目標を置けます。2番目と3番目は相手側で起きることなので、目標値ではなく記録の対象として扱ってください。商談で出た反応を担当者の記憶ではなく記録に残す仕組みは営業ヒアリングの技術を仕組みに変えるで扱っています。指標の定義を固定し、月次で回す運用の作法は中小企業のKPI設計で扱っています。広報の数字も、そこで決めた定義の書き方に合わせておくと、他の指標と並べて議論できます。
やめる基準も先に決めておきます。「成果が出なかったら」ではなく、「何を、いつまでに、いくつ」で書いてください。たとえば「今年度は表彰1件と認定1件に応募し、記者クラブへの資料提供は四半期に1回出す。年度末に、応募が0件だったか提供が2回以下だったなら、体制の問題として来年度の進め方を組み直す」。この形にしておくと、掲載されなかったこと自体を理由に打ち切る判断を避けられます。
そして、広報を始めるときにいちばん多い失敗は、続かないことです。表彰制度は年1回、認定は年1回か随時、記者クラブへの資料提供は素材が出たとき。この頻度で1年動かして、ようやく最初の記録が残ります(応募から選定までの期間は、たとえばDXセレクション2026で応募受付開始2025年12月1日から選定発表2026年5月20日まで約5か月半でした)。3か月で判断する種類の活動ではありません。
❌ 「今期は掲載10件」を広報の目標に置き、達成状況を月次会議で確認する ⭕ 「応募2件・提供4回」を自社で動かせる目標に置き、掲載件数と反響は記録だけ取る
5問で確認する 広報の準備度
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5問で確認|メディア掲載に向けた広報の準備度
自社のいまの広報の状態にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。
※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。
まとめ
メディア掲載は、知名度や運の問題ではなく、公的機関が毎年動かしている枠に自社を載せられるかどうかの問題です。中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」は2026年5月28日に2025年度分を選定し、経済産業省とIPAの「DXセレクション2026」は2026年5月20日に11者を選定しました。健康経営優良法人2026では中小規模法人部門に23,085法人が認定されています。これらはすべて、応募または申請から始まる制度です。
制度を選ぶときは、自薦できるか、推薦が要るかをまず確認してください。DXセレクションはDX認定を取得していれば自薦できますが、ものづくり日本大賞は本人応募ができず、はばたく300社は推薦団体からの推薦に基づきます。推薦が要る制度は、取引金融機関や商工会議所に自社の取組が届いているかどうかが実質的な応募資格になります。そして、終了・休止した制度を現行のものとして扱わないこと。公式ページで直近の実施年度を確認する手間を惜しまないでください。
自社が直接動かせるルートが、記者クラブへの資料提供です。滋賀県は電子申請、徳島県は27部を記者室に自分で配布、高知県は15部を持参または郵送。手順は自治体のサイトに公開されています。ただし徳島県が「公益性の観点から、営業などの資料提供は、お受けできません」と書いているとおり、記者クラブは広告の窓口ではありません。滋賀県が求める水準は「5W1Hを分かりやすく」と「必ず問い合わせ先を記載」の2点です。
踏んではいけない線は2本あります。1本目は、費用を払った記事広告と報道記事を混ぜること。消費者庁の運用基準は、媒体事業者が自主的に企画・編集・制作した記事は事業者の表示にならないとする一方、通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超える金銭等を提供した場合は事業者の表示となり得るとしています。広告として出すなら「広告」と分かる表示をする。それだけです。2本目は、掲載された事実を媒体社の推奨にすり替えること。新聞広告掲載基準(モデル)は、新聞社が推奨・保証しているかのような表現を掲載しない対象としています。
掲載後は、全文転載が原則できないことを前提に運用してください。文化庁の著作権テキストが示す引用の条件は、公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、目的上正当な範囲内であること、出所を明示することの4つです。安全な形は、掲載日・媒体名・見出しとリンクでの紹介です。紙面画像を使うなら媒体社に許諾を取ってください。
最後に、追う数字は「自社が動かせるもの」に置いてください。応募した件数、資料提供した回数、取れた公的記録の数。掲載件数と反響は記録するだけで十分です。広報は、1年動かして最初の記録が残る種類の活動です。
NEXT ACTION / 次にやること
自社が要件を満たせる公的制度を3つ書き出し、応募時期をカレンダーに入れる
認定と計画承認は要件が公表されています。届かない制度は、届く水準まで実態を上げる経営の作業として扱ってください。
よくある質問
Q表彰制度に応募して落ちたら、その事実は公表されますか。
制度によりますが、少なくともものづくり日本大賞は公式FAQで「応募した案件は公表されますか?」という問いに「受賞した案件のみを公表致します」と回答しています。応募事実が外部に出る設計にはなっていません。ほかの制度についても、応募要領や公式FAQに公表範囲が書かれていることが多いので、応募前に確認してください。なお、ものづくり日本大賞は応募が候補者本人ではなく推薦者によって行われ、企業の経営者が自社の社員を推薦する申請も可能とされています(企業が当該企業の代表者を推薦することはできません)。
Q記者クラブに資料を持ち込めば、必ず記事になりますか。
なりません。記者クラブへの資料提供は、加盟各社が受け取れる場所まで資料を置ける仕組みで、読まれるか、記事にするかは各社の判断です。日本新聞協会編集委員会の見解も、記者クラブを「取材・報道のための自主的な組織」と定義し、その役割のひとつに「市民からの情報提供の共同の窓口」を挙げていますが、掲載を約束するものではありません。また徳島県のように「公益性の観点から、営業などの資料提供は、お受けできません」と明記している自治体もあり、内容によっては受付の段階で断られます。
Q自社の所在地の記者クラブに出す手順は、どこで調べればよいですか。
都道府県または市の広報担当課のウェブサイトに掲載されています。滋賀県は「県政記者クラブ等への報道発表資料の提供(プレスリリース)について」というページで電子申請フォームと受付条件を、高知県は「県政記者クラブへの資料提供(プレスリリース)及び記者会見の申し込みについて」というページで部数と受付時間を公開しています。手順は自治体ごとに大きく異なり、部数(高知県は15部、徳島県は27部)、提出方法(徳島県は持ち込みかFAXのみで郵送・メール不可)、提供できる時刻(滋賀県は10時か14時のいずれか)まで指定されている場合があります。他県のやり方をそのまま持ち込まず、出す先のページを開いて確認してください。
Q費用を払って記事を書いてもらうのは違法ですか。
違法ではありません。問題になるのは、費用を払ったことが読者に分からない形で出す場合です。消費者庁の運用基準は、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭であるものは告示の対象にならないとし、その例として「新聞紙の広告欄のように『広告』等と記載されている表示を行う場合」を挙げています。「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示も明瞭な表示の例です。一方で、報道記事の体裁のまま、通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭等を媒体事業者に提供した場合は、事業者が表示内容の決定に関与したとされ、その表示が自社の表示として扱われ得ます。なお景品表示法は一般消費者の保護を目的とする法律で、事業者間取引だけを対象にした商材が直ちに射程に入るとは限りません。
Q掲載された新聞記事を、自社サイトにそのまま載せてもよいですか。
原則としてできません。新聞記事の著作権は媒体社等にあり、全文の転載は著作権法第32条第1項の引用の要件(引用の目的上正当な範囲内であること、引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること)を満たしません。安全なのは、掲載日・媒体名・見出しを書いて記事へリンクする形です。一部を引用するなら、カギ括弧で引用部分を明確にし、自社の文章を主にしたうえで出所を明示してください。紙面画像やPDFを使いたい場合は、媒体社に許諾を求めてください。文化庁の著作権テキストは、出所を明示すれば許諾が不要になるという理解を誤りとして明記しています。
Q認定制度をいくつも取れば、それだけ取り上げられやすくなりますか。
数と露出は比例しません。健康経営優良法人2026では中小規模法人部門に23,085法人が認定されており、認定を受けたという事実だけでニュースになる規模ではありません。上位500法人に付される「ブライト500」のような冠がついた場合や、認定要件を満たすために社内で何を変えたかという中身のほうが、記事の材料になります。認定制度は、露出のための道具というより、求人票や広告で使えるマークと、要件という形で示された自社の目標値として使うほうが実用的です。厚生労働省のユースエール、くるみん、えるぼし、安全衛生優良企業の要件と運用負荷は、採用ブランディングの記事で整理しています。
Q広報の担当者を置けません。社長ひとりで何から始めればよいですか。
公的ルートの1つ目、表彰・認定・承認の棚卸しから始めてください。自社が応募・申請できる制度を洗い出し、そのうち今年度に間に合うものを1つ選ぶ。これだけなら数時間で終わります。並行して、取引金融機関と商工会議所の担当者に自社の取組を説明しておくと、推薦制の制度で候補に挙がる可能性が生まれます。記者クラブへの資料提供は、公的な発表が出たタイミングに合わせて年に1〜2回で十分です。写真と数字の1枚資料を先に用意しておけば、急な取材依頼にも対応できます。始める時点でやることを1つに絞るほうが、結果的に続きます。
出典・調査の対象範囲
- 経済産業省・中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社」「DXセレクション」「健康経営優良法人認定制度」「ものづくり日本大賞(第10回優秀賞)」「地域未来牽引企業」、特許庁「知財功労賞」 — 現に動いている表彰・選定・認定制度(地域未来牽引企業は新規選定の募集案内なし)。回次ごとに要件と時期が変わります。
- 東京都「経営革新計画の承認件数」、J-Net21 — 計画承認の公表と、公的発表の転載。
- 滋賀県「県政記者クラブ等への報道発表資料の提供」、徳島県「徳島県政記者クラブに資料提供するには」、高知県「県政記者クラブへの資料提供及び記者会見の申し込み」 — 記者クラブへの資料提供の手順(3県の例。自治体ごとに異なります)。
- 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示の運用基準」、日本新聞協会「新聞広告掲載基準(モデル)」「記者クラブに関する編集委員会の見解」 — 報道と記事広告の線引き。
- 文化庁「著作権テキスト」 — 掲載記事の引用・転載の条件。
※各ルートの「着手から結果まで」は編集部の目安です。法的な判断が必要な場合は、専門家に確認してください。



