MANAGEMENT / 経営戦略・再生の判断

事業再生の判断タイミング 返済条件の変更から私的整理・廃業まで選択肢と相談先の順番

公開 2026.09.02

元本返済の据置きや期日延長を金融機関に申し出る時点で、公的なガイドライン上は「有事」に入ります。事業再生の判断タイミングを制度の線引きから示し、条件緩和・私的整理・スポンサー型・法的整理・廃業という選択肢を、中小企業活性化協議会と経営者保証ガイドラインの実際の要件に沿って整理します。

元本返済の据置きや期日延長を金融機関に申し出る時点で、制度上は「有事」に入ります。そこが判断の起点です。
  • 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」のQ&Aは、資金繰りを安定化するために元本返済期日の延長や元本返済の据置き等を金融機関に要請する場合は、通常「有事」に該当すると明記しています。有事かどうかは経営者の主観ではなく、何を申し出たかで決まります
  • 同ガイドラインは、条件緩和→債務減免等→スポンサー支援→廃業という典型的な4段階を示す一方、早期決断により経営者自身の生活や従業員の雇用等に発生する影響(残存資産等)が軽減されると想定される場合には、段階を踏んでいるかどうかにかかわらず早期決断の選択肢を排除しないと書いています。順番に進む義務はありません
  • 経営者保証は、破産と別の道があります。「経営者保証に関するガイドライン」による保証債務整理では、自由財産(破産法34条3項1号の計算で99万円。このほか差押禁止財産や自由財産の拡張が別にあります)に加えて一定期間の生計費相当額や華美でない自宅等を残存資産に含める検討がなされ、対象債権者は債務整理の事実を信用情報登録機関に報告・登録しないこととされています

資金繰りが苦しくなったとき、経営者が決めなければならないのは「いつ、誰に相談し、どの手段を選ぶか」です。本稿は、中小企業の事業再生等に関するガイドラインと経営者保証に関するガイドライン、中小企業活性化協議会の支援メニュー、そして破産法・民事再生法・会社法の条文を材料に、有事の線引き、選択肢の全体像と難易度の順序、協議会の使い方、経営者保証と個人破産の関係、廃業という選択肢、相談先の順番と持参資料までを順に扱います。新規融資の取り方や金利の交渉は扱いません。ここは「返済条件の変更を申し出る段階から先」の記事です。

最初に結論:有事の線引きと、状況別の最初の一手

まず見るべき判断表|自社の状況から考える最初の一手

自社の状況最初に検討すること
元本の据置きや期日延長を申し出るつもりがある制度上はその時点で「有事」。申し出る前に、実質債務超過の解消年数と有利子負債の対キャッシュフロー比率を計算する
実質債務超過を5年以内に解消でき、3年以内に黒字転換できる見込み条件緩和(リスケジュール)を軸に、資金繰り表を開示して金融機関に相談する
5年で解消できない、または有利子負債が対キャッシュフロー比率10倍を大きく超える条件緩和を経ずに、債務減免等の抜本的な支援を相談してよい(段階を飛ばすことは認められている)
自力での再生は難しいが、引き継ぐ相手がいれば事業は残せる透明性のある手続でスポンサー支援・事業譲渡を検討する
赤字が続き資金流出を止められない従業員の転職機会と経営者の再スタートの可能性が残るうちに、廃業型私的整理を検討する
会社の借入に経営者保証が付いている会社の債務整理とセットで、経営者保証ガイドラインによる保証債務の整理を一体で申し出る

相談の入口は中小企業活性化協議会です。相談は無料・秘密厳守で、民事再生・破産等を申し立てた後は会社として対象外になります。申し立てる前に一度行くことが、選べる手段を残す条件です。

「有事」はいつ始まるのか 線引きは公的文書に書いてある

事業再生の議論がかみ合わない最大の理由は、「まだ大丈夫」と「もう危ない」の境目が経営者の感覚に委ねられていることです。しかし公的なガイドラインは、この境目を行動で定義しています。

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合を「有事」と定義しています。そのうえで同ガイドラインのQ&Aは、条件緩和とは「資金繰り等の悪化のため事業活動の継続性に問題が生じ資金繰りを安定化するために元本返済期日の延長や元本返済の据置き等、既存の借入条件の緩和(=債務者にとって有利な変更)に該当すると考えられるような変更」を指し、このような条件緩和を金融機関に要請する場合は、通常「有事」に該当するとしています。一方、決算期変更に伴う財務内容報告期限の変更や金利計算期間の変更のような実務的・形式的な変更は条件緩和に当たらず、有事にも当たらないと整理されています(出典:中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」Q&A、令和4年4月1日制定・令和8年3月16日一部改定、Q11)。

つまり、リスケジュール(返済条件の変更)を口にした瞬間から、会社は制度上の有事に入ります。これは悪いことではありません。有事に入ったこと自体が問題なのではなく、有事に入ったことに気づかないまま時間を使うことが問題です。

では何を見て動くのか。ガイドラインは、事業再生計画に含めるべき数値の水準を定めています。これは「計画が通る条件」であると同時に、自社が今どのあたりにいるかを測る物差しとしても使えます。

ガイドラインが求める計画の水準|自社の現在地を測る物差し

ガイドラインが求める水準内容経営者にとっての読み方
実質的な債務超過の解消計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目途に解消5年で消せない規模の実質債務超過なら、条件緩和だけでは足りない可能性が高い
経常利益の黒字転換経常利益が赤字の場合、同じ起点から概ね3年以内に黒字転換3年で黒字化する道筋を描けるかどうかが、再生型か廃業型かの分かれ目になる
有利子負債の対キャッシュフロー比率計画終了年度(原則として実質債務超過を解消する年度)で概ね10倍以下現状で10倍を大きく超えていれば、返済猶予では届かず抜本的な支援が要る

(出典:中小企業の事業再生等に関する研究会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」、令和4年3月・令和8年3月一部改定、第三部4.(4)①ロ〜ニ。いずれも、企業の業種特性や固有の事情等に応じた合理的な理由がある場合には、これを超える期間・比率となる計画も排除されないとされています)

なお、小規模企業者が債務減免等の要請を含まない事業再生計画案を作成する場合には例外があります。計画期間終了後の業況が良好で財務内容にも特段の問題がない状態となる計画であること、または事業再生計画成立後2事業年度目から3事業年度継続して営業キャッシュフローがプラスになること、そして事業継続が経営者等の生活の確保において有益であること。これらを満たせば、上記の債務超過解消年数や有利子負債比率の基準を含めないことができます。規模が小さいほど基準は現実的に設計されているということです。

日々の判断材料としては、資金繰り表の3区分がそのまま使えます。毎月の元本返済額が経常収支の平均を上回っていれば、返済を続けるほど手元が減り続けます。経常収支の6か月累計がマイナスで、財務収支の6か月累計がプラスなら、返済のために借りている状態です。この見方は資金繰り表の作り方と改善の進め方に整理しています。有事に入る手前で、月次表に加えて13週の週次表を1枚持っておくと動ける日数が早まる、というのは本誌の目安で、公的な基準ではありません。

❌ 「まだ返済は遅れていないし、決算も赤字ではない。もう少し様子を見てから相談する」 ⭕ 「元本の据置きや期日延長を申し出るつもりがあるなら、その時点で制度上は有事。申し出る前に、実質債務超過の解消年数と有利子負債の対キャッシュフロー比率を計算して、どの手段の射程に入っているかを確かめる」

早く動くほど選べる手段が多い 制度の側にそう書いてある

「早めに相談したほうがいい」は精神論に聞こえますが、これは制度の設計そのものです。根拠は3か所にあります。

01 / SKIP STEPS

段階を飛ばしてよい

ガイドラインは、段階を踏んでいるかにかかわらず早期決断の選択肢を排除しないと明記している。

02 / PERSONAL ASSETS

残せる資産に直結する

着手した時期が、経営者の手元に残す残存資産の判断材料として明記されている。

03 / TIME

時間が弁済原資を削る

計画作成には原則3〜6か月。廃業型は遅れるほど弁済原資となる財産が減る。

第一に、段階を飛ばしてよいと明記されていること。ガイドラインは有事における典型的な段階として、イ(返済猶予等の条件緩和)、ロ(債務減免等の抜本的な金融支援)、ハ(スポンサー支援や経営の共同化)、ニ(廃業の検討)を挙げていますが、そのうえで注記を置いています。自社の財務状況や事業内容の見通し、事業環境や社会環境の変化、経営者の高齢化や健康状態の変化等を幅広く加味したうえで、早期に債務減免等の抜本的な金融支援の要請や事業承継、事業譲渡を含めたスポンサー支援の要請、廃業を決断することにより、経営者自身の生活や従業員の雇用等に発生する影響(残存資産等)が軽減され、経営者や従業員、債権者である金融機関をはじめとする関係者にとって望ましい結果となることが想定される場合には、段階的に講じているか否かにかかわらず、早期決断に向けた検討や経営判断を行う選択肢を排除しない、というものです。Q&Aも、条件緩和を経なくとも債務減免等の抜本的な金融支援を依頼することができる、と補足しています(前掲ガイドライン第二部2.(1)④、同Q&A Q12)。

第二に、早期着手が経営者個人の残せる資産に直結すること。「経営者保証に関するガイドライン」は、保証人の手元に残す残存資産の範囲を決めるにあたって勘案する事項の一つに、経営者たる保証人が主たる債務者の事業再生、事業清算に着手した時期等が事業の再生計画等に与える影響を挙げています。そのうえで、早期の着手の決断について対象債権者にも一定の経済合理性が認められる場合には、破産手続における自由財産の考え方を踏まえつつ、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等を残存資産に含めることを検討する、としています。ただしこの上乗せには上限があり、回収見込額の増加額について合理的に見積もりが可能な場合は、その増加額(再生型手続なら清算型手続に至らなかったことによるもの、清算型手続なら早期に着手したことによる保有資産等の劣化防止に伴うもの)が上限とされています(出典:経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」、平成25年12月・令和4年6月改定、第7項(3)③)。早く動いて債権者の回収見込額を増やした分が、経営者の残せる資産の原資になりうるという構造です。

ここで押さえておくべきなのは、このガイドラインに法的拘束力はないという点です。残存資産の範囲も弁済計画の内容も、最終的には対象債権者との協議と同意で決まります。「早く動けば自宅と生計費は必ず残る」という制度ではありません。それでも、早期に着手したかどうかが判断材料として明記されている以上、動く時期が結果を左右することは確かです。

第三に、時間そのものが弁済原資を削ること。廃業型の私的整理手続について、Q&Aはこう書いています。弁済計画案を作成するまでの期間は原則として支援開始時点から3〜6か月が想定されるが、廃業型の場合、再生型の場合と異なり、弁済計画案の作成が遅れると、それだけ弁済原資となる財産が減少する危険が増大するので、いたずらに計画の作成期間が長期化しないように留意が必要である、と(前掲Q&A Q86)。再生型でも計画案の作成に原則3〜6か月が想定されており(同Q53)、この間の運転資金は自力で持たなければなりません。計画を作る時間を買うためのお金が必要だということです。

もう一点、平時のうちに避けておくべきことも明示されています。Q&Aは、将来の事業再生・事業承継・廃業の局面で金融機関の伴走支援や協調行動を引き出すために平時から避けるべき経営行動として、金融機関に対して経営状況や財務状況を開示せず、又は虚偽の報告(粉飾決算等)を行うことと、経営者と中小企業者の資産を一体的に運用すること(経営者が個人で融資を受けて事業資金として流用する等)の2つを挙げています(同Q9-2)。この2つがあると、有事に入ってからの選択肢が実際に狭まります。

❌ 「まず条件緩和をお願いして、それでもだめなら次を考える。順番を飛ばすと心証が悪い」 ⭕ 「5年で実質債務超過を解消できる見込みがないなら、条件緩和を経ずに抜本的な支援を相談してよい。ガイドラインもQ&Aも段階を飛ばすことを認めている」

選択肢の全体像 関与する関係者の広がり順に6つ

選択肢は6つに整理できます。下に行くほど関与する関係者の範囲が広がります(毀損の大きさは手段ではなく、着手の早さと個別事情で決まるため、この順序とは一致しません)。まず全体を眺めてから、自社がどこにいるかを当ててください。この6段階の区分と各列は本誌の整理です。

選択肢の全体像|関与する関係者の広がり順に6つ(本誌の整理)

段階手段相手取引先に知られるか経営権
1自助努力(本源的な収益力の回復、非事業用資産の換価・処分)自社のみ知られない維持
2条件緩和(元本返済猶予・期日延長・据置き)=リスケジュール金融機関原則として知られない維持
3準則型私的整理・再生型(中小企業活性化協議会、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、事業再生ADR、特定調停)金融債権者(原則として商取引債権者は対象外)原則として知られない維持(経営責任の明確化は求められる)
4スポンサー型再生・事業譲渡スポンサー、金融機関相手先には開示。事業譲渡なら従業員の個別承諾が必要スポンサーへ移る
5準則型私的整理・廃業型(事業を畳むが、私的整理の枠組みで進める)金融債権者原則として知られない清算に向けて自ら整理
6法的整理(再生型:民事再生・会社更生/清算型:破産・特別清算)裁判所、全債権者公告により知られる手続による

段階5と6の並びに注意してください。廃業を選ぶこと自体が最終手段なのではありません。後の章で見るとおり、整理された廃業(段階5)のほうが、破産(段階6の清算型)より債権者の回収も取引先への影響も良くなるため、制度として用意されています。避けたいのは廃業そのものではなく、選択肢がなくなってからの破産です。

段階2と3の違いは、返済を待ってもらうだけか、債務そのものを減らすかです。ガイドラインは段階2を「返済猶予等の条件緩和が必要な段階」、段階3のうち債務減免等を伴うものを「債務減免等の抜本的な金融支援が必要な段階」として区別し、後者では経営責任と株主責任を明確化することを求めています(前掲ガイドライン第二部2.(1)④イ・ロ)。ただし例外を一切許容しない趣旨ではなく、中小企業者の規模や特性(後継者の不在や資本の入替えの困難性等)、自助努力の内容や程度、窮境に至る原因などに照らして個別に判断され、小規模企業者の場合には個別判断が特に必要とされています(前掲Q&A Q13)。

段階3のなかでは、中小企業にとっての実際の入口は中小企業活性化協議会か、中小企業の事業再生等に関するガイドラインの私的整理手続になります。事業再生ADRは、産業競争力強化法に定義された「特定認証紛争解決手続」、すなわち経済産業大臣の認定を受けた特定認証紛争解決事業者が事業再生に係る紛争について行う認証紛争解決手続です(出典:e-Gov法令検索産業競争力強化法第2条第22項・第23項、2026年9月時点)。経営者保証に関するガイドラインも、準則型私的整理手続として中小企業活性化協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理に関するガイドライン、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、特定調停等を列挙しています。どれを使うかは自分で選ぶより、相談先と一緒に決めるほうが早いというのが本誌の見方です。

段階4のスポンサー型再生・事業譲渡は、再生の選択肢のひとつです。ガイドラインは、条件緩和と債務減免等を講じてもなお事業再生が困難で、スポンサー支援や経営の共同化により迅速・確実に事業再生を実行できるときは、これらの対策を真摯に検討するとし、透明性のある手続でスポンサーを選定するように努めることを求めています。金融機関側にも、適切なスポンサー支援の探索に協力することが求められています(前掲ガイドライン第二部2.(1)④ハ、同2.(2)③ハ)。誰に頼み、どの条項に署名し、いくらで渡すかという譲渡の実務そのものはM&Aの基本プロセスに、承継先を親族・従業員・第三者から選ぶ段階の話は事業承継の進め方にまとめています。本稿では位置づけまでを扱います。

段階6の法的整理は、条文上の開始原因が明確です。

手続開始原因経営権計画の可決要件
民事再生破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき、または事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき(民事再生法21条1項)再生債務者が業務遂行権・財産管理処分権を有する(同38条1項)議決権者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の同意(同172条の3第1項)
破産支払不能。法人の場合は支払不能または債務超過(破産法15条1項、16条1項)。支払を停止したときは支払不能と推定(同15条2項)破産管財人へ―
特別清算清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること、または債務超過の疑いがあること(会社法510条)清算人出席した議決権者の過半数の同意、かつ議決権総額の3分の2以上の同意(同567条1項)

(出典:e-Gov法令検索民事再生法、破産法、会社法、いずれも2026年9月時点の現行法)

民事再生で経営者が経営権を維持できるのは条文上の原則ですが、再生債務者は債権者に対して公平かつ誠実にその権利を行使し、手続を追行する義務を負い、管財人による管理を命ずる処分がされた場合には適用されません(民事再生法38条2項・3項)。また特別清算は株式会社の清算手続であり、清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは清算人は特別清算開始の申立てをしなければならないとされています(会社法511条2項)。個別の手続選択と要件の当てはめは、必ず弁護士に確認してください。

中小企業活性化協議会 相談は無料で、多くの場合ここが入口になる

中小企業活性化協議会は、中小企業の活性化を支援する公的機関としてすべての都道府県に設置され、全国各地の商工会議所等が運営しています。前身は2003年に創設された中小企業再生支援協議会で、2022年3月4日に公表された「中小企業活性化パッケージ」により、中小企業再生支援協議会は経営改善支援センターと統合され、中小企業の収益力改善から再チャレンジまでを幅広く支援する「中小企業活性化協議会」となりました。統合は令和4年(2022年)4月1日付です。名称が変わっているため、古い資料や記憶で「再生支援協議会」を探すと行き着かないことがあります(出典:中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」、2026年9月閲覧。統合日は前掲「経営者保証に関するガイドライン」の改定履歴による)。

支援メニューは3つのフェーズに分かれています。

フェーズ協議会自身による支援対象民間プレーヤーを活用した支援
収益力改善収益力改善支援(収益力改善アクションプラン+簡易な収支・資金繰り計画)収益力低下・借入増加のおそれのある中小企業早期経営改善計画策定支援(通称:バリューアップ支援事業)
再生プレ再生支援・再生支援(事業面・財務面での改善)収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある中小企業経営改善計画策定支援(通称:405事業)通常枠・中小版GL枠
再チャレンジ再チャレンジ支援収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業や、保証債務に悩む経営者等―

(出典:前掲・中小企業庁「中小企業活性化協議会」ページ)

経営者にとって重要なのは次の4点です。

  1. 相談は無料です。相談内容はもちろん、相談申込みについても秘密は厳守されるとされています
  2. 事前予約が必要です。都道府県ごとの連絡先は同ページの「中小企業活性化協議会連絡先一覧」から確認できます
  3. 民事再生・破産等を申し立て済みの企業は対象になりません。ただし、そのような企業の保証人が、保証債務の整理について相談することは可能とされています
  4. 収益力改善から再チャレンジまでが同じ窓口にあります。どのメニューに当たるかを自分で決めてから行く必要はありません

3番目は、判断のタイミングを考えるうえで決定的です。法的整理を申し立ててしまうと、会社としては協議会の支援対象から外れます。これが「早く動くほど選べる手段が多い」ことの、最もわかりやすい実例です。

計画策定を専門家に依頼する場合の費用も、公的に補助されます。金額の意味を取り違えないよう、以下はいずれも「協議会が負担する額の上限」であり、専門家に支払う費用の総額の上限ではありません。協議会が負担するのは上限の範囲内で費用の3分の2です。専門家に支払う費用が上限を超えれば、超えた分はすべて自社の負担になります。

制度想定する局面協議会が負担する額の上限(費用の3分の2)
早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)資金繰り管理や採算管理などの基本的な経営改善計画策定50万円+伴走支援30万円=合わせて最大80万円。加えて任意で、事業承継先探索に伴う企業概要書作成費用が上限10万円、経営者保証解除に取り組む場合の金融機関交渉費用(認定経営革新等支援機関である弁護士等に限る)が上限10万円
経営改善計画策定支援(405事業)通常枠金融支援を伴う本格的な経営改善DD・計画策定支援200万円+伴走支援100万円=上限300万円。任意で金融機関交渉費用が上限10万円
経営改善計画策定支援(405事業)中小版GL枠同上DD費用300万円+計画策定支援300万円+伴走支援100万円=上限700万円

(出典:中小機構「経営改善計画策定支援事業」、2026年9月閲覧。DDはデューデリジェンスの略で、企業の経営状況や財務状況などを調査すること)

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計画策定費用のうち協議会が負担する額の上限(費用の3分の2)

80万円

早期経営改善計画策定支援(計画策定50万円+伴走支援30万円)

300万円

405事業 通常枠(DD・計画策定200万円+伴走支援100万円)

700万円

405事業 中小版GL枠(DD300万円+計画策定300万円+伴走支援100万円)

出典:中小機構「経営改善計画策定支援事業」(2026年9月閲覧)。いずれも協議会が負担する額の上限で、専門家に支払う費用総額の上限ではありません。

使い分けの考え方はこうです。金融支援を伴わない段階なら早期経営改善計画策定支援、金融支援を伴うなら405事業です。前者は資金繰り管理や採算管理の立て直しが目的で、計画を金融機関へ早期に提出することを端緒として自己の経営を見直す制度です。後者は返済条件の変更や債務減免といった金融支援を前提とし、実態を把握するためのデュー・ディリジェンスが入るぶん、協議会が負担する額の上限も大きく設定されています。なお、事業再生ガイドラインのQ&Aは、中小企業庁が「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を実施しており、本手続(中小企業版私的整理手続)に基づく計画策定等に係る費用についても一部支援を行っていると述べています(前掲Q&A Q14)。どの枠を使えるかは、協議会に相談した段階で判断されます。

❌ 「協議会は再生の最後の砦だから、まだ行く段階ではない」 ⭕ 「協議会には収益力改善フェーズの窓口もあり、相談は無料。法的整理を申し立てた後は会社として対象外になるので、申し立てる前に一度行く」

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の私的整理 全員同意という設計

このガイドラインは令和4年3月に策定され、令和8年3月の一部改定が令和8年4月1日から適用されています(前掲ガイドライン附則1)。中小企業者を対象とし、第三者である支援専門家が中立かつ公正・公平な立場から計画を検証する点が特徴で、数値基準も中小企業の実態に合わせて設定されています(前掲Q&A Q2)。

手続には再生型と廃業型の2つがあります。適用対象は次のとおりです。

再生型私的整理手続廃業型私的整理手続
基本要件収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じることで経営困難な状況に陥っており、自助努力のみによる事業再生が困難であること過大な債務を負い、既存債務を弁済することができないこと、または近い将来において弁済できないことが確実と見込まれること(法人の場合は債務超過である場合、または近い将来において債務超過となることが確実と見込まれる場合を含む)
追加要件―円滑かつ計画的な廃業により従業員に転職の機会を確保できる可能性があり、経営者等においても経営者保証ガイドラインを活用する等して創業や就業等の再スタートの可能性があるなど、早期廃業の合理性が認められること
共通要件対象債権者に経営状況・財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること/中小企業者および主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力またはそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと同左
作成する計画事業再生計画案弁済計画案
計画作成の想定期間支援開始時点から原則3〜6か月支援開始時点から原則3〜6か月

(出典:前掲ガイドライン第三部3.(1)(2)、4.、5.、および前掲Q&A Q53・Q86)

手続の骨格は共通しています。

  1. 第三者支援専門家の選定。弁護士・公認会計士等の専門家で、適格認定を得た者の候補を公表されたリストから選定するのが原則です(対象債権者全員の同意があればリスト外からの選定も可能です)。中小企業者および対象債権者との間に利害関係を有しない者であることが要件で、選任には主要債権者全員の同意が必要です。債務減免等を要請する内容を含む計画の場合、第三者支援専門家には弁護士が必ず含まれます
  2. 一時停止の要請。資金繰りの安定化のために必要があるときは、対象債権者に一時停止を要請できます。対象債権者が誠実に対応するのは、次の3つをすべて満たす場合です。①一時停止要請が書面によるもので(全対象債権者の同意がある場合を除く)、かつ全ての対象債権者に対して同時に行われていること。②手続開始前から債務の弁済や経営状況・財務状況の開示等に誠実に対応し、対象債権者との間で良好な取引関係が構築されていること。③事業再生計画案に債務減免等の要請が含まれる可能性がある場合は、再生の基本方針が対象債権者に示されていること(債務減免等の要請を含まない計画案を作成する見込みなら、その旨を要請書面に記載)。債務減免を視野に入れているなら、③のために再生の基本方針を先に用意しておく必要があります(同ガイドライン第三部4.(2))。なお廃業型では、一時停止の要請そのものに主要債権者全員の同意が前置され、要件は上記①②に相当する2つです(同5.(1)③)
  3. 計画案の立案と調査報告。第三者支援専門家が独立して公平な立場から、計画の相当性・実行可能性・金融支援の必要性と相当性、破産手続で保障されるべき清算価値と比較した場合の経済合理性などを調査し、原則として調査報告書を作成して対象債権者に報告します(債務減免等を要請する場合は作成されます)
  4. 債権者会議と成立。全ての対象債権者が同意し、第三者支援専門家がその旨を文書等により確認した時点で計画が成立します。一者でも同意が得られないことが明確になった場合、第三者支援専門家は本手続を終了させます

(出典:前掲ガイドライン第三部4.(1)〜(6)、5.(1)〜(5))

私的整理(事業再生ガイドライン)の成立要件

全員同意

全ての対象債権者が同意して成立。一者でも不同意が明確になれば手続は終了する

民事再生の計画の可決要件

過半数

議決権者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の同意(民事再生法172条の3第1項)

全員同意が成立要件である点は、法的整理との決定的な違いです。民事再生なら議決権者の過半数かつ議決権総額の2分の1以上で可決されますが、私的整理では一者の不同意で終わります。だからこそ、実態の開示と計画の合理性、そして債権者間の衡平が問われます。ガイドラインは、権利関係の調整は債権者間で平等であることを旨とし、負担割合は衡平性の観点から個別に検討するとしています。

一方、経営者にとっての最大の利点も、この設計から出てきます。対象債権者は金融債権者であり、一般的な商取引債権者を対象債権者に含めることは通常適切ではないとされています(多額の債権を有し密接な関係があるなど、その債権者の同意を得なければ再生や円滑な廃業が難しい場合には参加してもらうことも想定されています)(前掲Q&A Q4)。仕入先や外注先への支払を止めずに、金融債務だけを調整できる。これが私的整理を先に検討すべき理由です。法的整理は公告により広く知られるため、仕入停止や人材流出を通じて事業価値が急速に落ちます。

なお、主要債権者とは、金融債権額のシェアが最上位の対象債権者から順に、そのシェアの合計額が50%以上に達するまで積み上げた際の、単独または複数の対象債権者を指します(廃業型ではリース債権額も金融債権額に含まれます)。ガイドライン利用の申出は、まずこの主要債権者に対して行います。対象金融機関への事前相談は利用要件ではありませんが、できる限り時間的余裕をもって事前に相談することが円滑な手続の進行のためには望ましいとされています(前掲ガイドライン第三部2.(5)、前掲Q&A Q18)。

計画が成立した後も終わりではありません。モニタリングの期間は原則として計画成立から概ね3事業年度(成立年度を含む)を目途とし、計画と実績の乖離が大きい場合には真因分析を行ったうえで、計画の変更や抜本再建、法的整理手続、廃業等への移行を検討することとされています。再生型から廃業型への移行についても、手続間の円滑な移行に努める旨が明記されています(前掲ガイドライン第三部4.(8)(9))。一度決めたら引き返せない設計にはなっていません。

経営者保証と個人破産 破産を回避する道が制度として用意されている

経営者が最も恐れるのは、会社の債務整理が自分個人の破産に直結することです。ここは、制度がはっきり別の道を用意しています。

「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」は、その背景をこう説明しています。中小企業の倒産時に、個人保証をしている経営者が個人破産となるケースが多いことは、中小企業の経営者にとって事業再生の早期決断の大きな阻害要因になっているとの指摘があるとして、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)で倒産時の個人破産を回避するための措置の検討が求められたこと。そして、主たる債務者が廃業したとしても、保証人は破産手続を回避し得ることが周知されることで、経営者が早期に経営改善・事業再生・廃業を決断し、保証人が新たなスタートに早期に着手できる社会を構築することが期待される、と(出典:経営者保証に関するガイドライン研究会「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」、令和4年3月・令和5年11月改定、1.〜3.)。

ただし、無条件で使えるわけではありません。保証債務の整理をこのガイドラインで申し出るには、次の4要件をすべて満たす必要があります。

要件内容
イ対象債権者と保証人との間の保証契約が、ガイドライン第3項の全ての要件を充足すること
ロ主たる債務者が法的債務整理手続(破産・民事再生・会社更生・特別清算)の開始申立て、または準則型私的整理手続(中小企業活性化協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理に関するガイドライン、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、特定調停等)の申立てを、このガイドラインの利用と同時に現に行い、またはこれらの手続が係属し、もしくは既に終結していること
ハ主たる債務者の資産・債務および保証人の資産・保証債務の状況を総合的に考慮して、主たる債務および保証債務の破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること
ニ保証人に破産法252条1項(10号を除く)に規定される免責不許可事由が生じておらず、そのおそれもないこと

(出典:前掲「経営者保証に関するガイドライン」第7項(1))

要件ロが実務上いちばん効きます。保証債務だけを単独で整理することはできず、会社の債務整理を法的整理か準則型私的整理のいずれかに乗せることとセットになります。「会社はそのままにして、自分の保証だけ何とかしたい」は制度の設計上できません。逆に言えば、会社の手続を決めることが、経営者個人の道を開く前提になります。

そのうえで、経営者に残るものは次のように決まります。

  • 自由財産。破産法34条3項1号は、民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭を破産財団に属しないと定め、民事執行法131条3号の政令で定める額は民事執行法施行令1条により66万円とされています。したがって計算上は66万円×2分の3=99万円です。自由財産はこれだけではなく、同条3項2号の差押禁止財産や、裁判所の決定による自由財産の拡張(同条4項)もあります(出典:e-Gov法令検索破産法第34条、民事執行法第131条、民事執行法施行令第1条、2026年9月時点。金額の算出は本誌が両条文から計算したものです)
  • 一定期間の生計費に相当する額と、華美でない自宅等。期間の判断には雇用保険の給付期間の考え方等を、費用の判断には1か月当たりの標準的な世帯の必要生計費として民事執行法施行令で定める額を参考とするとされています。ただし前述のとおり、回収見込額の増加額が上限です
  • ゼロ円弁済もあり得ます。対象債権者は、保証人に自由財産を超える保有資産がない等、保証人の保証履行能力の状況によっては、保証人が対象債権者に対し弁済する金額が無い弁済計画(いわゆるゼロ円弁済)もガイドライン上、許容され得ることに留意する、とされています(前掲「廃業時における基本的考え方」5.(2))

そして、破産と異なる最大の点がここです。このガイドラインによる債務整理を行った保証人について、対象債権者は、当該保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報(代位弁済に関する情報を含む)を、信用情報登録機関に報告、登録しないこととする(前掲「経営者保証に関するガイドライン」第8項(5))。再チャレンジの現実的な条件が、ここで変わります。

保証債務の整理は、主たる債務と一体で進めるのが原則です。ガイドラインは、主たる債務の整理に準則型私的整理手続を利用する場合、保証債務の整理も原則として準則型私的整理手続を利用し、主たる債務者の弁済計画を策定する際に保証人による弁済もその内容に含めることとしています。事業再生ガイドライン側も、私的整理手続を実施する場合に保証人は経営者保証ガイドラインを積極的に活用する等して主債務と一体整理を図るよう努める、と規定しています(前掲「経営者保証に関するガイドライン」第7項(2)イ、前掲「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」第二部3.(1))。主たる債務の整理手続が終結した後に保証債務の整理を開始した場合には、残存資産の範囲の決定について前述の上乗せの定めが適用されない旨の但書も置かれています。順番が結果を変えます。

❌ 「会社の手続を先に片づけてから、自分の保証は後で相談する」 ⭕ 「保証債務の整理は主たる債務と一体で申し出る。主たる債務の整理手続が終結した後に始めると、残存資産の上乗せの定めが適用されない場合がある」

廃業も選択肢である 早期の廃業と、追い込まれた破産は違う

廃業は失敗の別名ではありません。ガイドラインは、廃業を有事における対応の一つとして正面から位置づけています。条件緩和や債務減免等の金融支援を受け、収益力の回復に努めてもなお赤字が継続し資金流出を止めることができないときには廃業を検討する、スポンサー支援により赤字を脱却し事業継続を図ることができる場合にはスポンサーへの事業譲渡等も検討し、スポンサー支援も得られる見込みのない場合には早期に事業を廃止し清算することを検討する、と(前掲ガイドライン第二部2.(1)④ニ)。

金融機関側にも対応が求められています。中小企業者から廃業の申出があった場合は、スポンサーへの事業譲渡による事業継続可能性も検討しつつ、中小企業者の再起に向けた適切な助言や、廃業を選択するにあたっての取引先対応を含めた円滑な処理等への協力を含め、関係者にとって望ましいソリューション(廃業型私的整理手続の適用を含む)を提供するよう努め、その際は中小企業者の納得性を高めるための十分な説明に努めることとする、とされています(同2.(2)③ニ)。廃業を申し出たら取引を切られる、という前提ではガイドラインは書かれていません。

早期の廃業と、追い込まれた破産の違いは、廃業型私的整理手続の適用要件そのものに表れています。前掲のとおり、この手続を使うには「円滑かつ計画的な廃業を行うことにより、中小企業者の従業員に転職の機会を確保できる可能性があり、経営者等においても経営者保証ガイドラインを活用する等して、創業や就業等の再スタートの可能性があるなど、早期廃業の合理性が認められること」が要件です。従業員が次を探せる時間があるかどうか、経営者に再スタートの余地が残っているかどうか。これが早期廃業の中身です。資金が尽きてからでは、どちらも確保できません。

弁済計画案の内容も、破産との違いを示しています。ガイドラインは、弁済計画案について破産手続で保障されるべき清算価値よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど対象債権者にとって経済合理性があること、必要に応じて破産手続によるよりも取引先の連鎖倒産を回避することができる等、地域経済に与える影響も鑑みた内容とすること、を求めています(前掲ガイドライン第三部5.(3)①ハ・ニ)。整理された廃業のほうが、債権者の回収も取引先への影響も破産より良くなる——だから制度として用意されている、という筋道です。

そして廃業した後については、中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援が用意されています。収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業や、保証債務に悩む経営者等を対象に、再チャレンジに向けた支援を実施するメニューです(前掲・中小企業庁「中小企業活性化協議会」ページ)。前述のとおり、民事再生・破産等を申し立て済みの企業自体は協議会の対象になりませんが、その保証人が保証債務の整理について相談することは可能とされています。

❌ 「廃業は最後の手段だから、資金が完全に尽きるまで事業を続ける」 ⭕ 「従業員が転職先を探せる時間と、弁済に回せる財産が残っているうちに検討する。廃業型私的整理手続の要件そのものが『従業員の転職機会』と『経営者の再スタートの可能性』を求めている」

解散から清算結了までの手続きの流れと、費用の内訳は会社を畳む手続きと費用の全体像で整理しています。

相談先の順番と、持っていく資料

最後に、実際の動き方です。順番は次のとおりです。

  1. 資金繰り表を用意する。月次に加えて、直近13週の週次表を1枚。実績と予定を同じ紙に並べ、最も薄くなる月と、その残高を自分で指摘できる状態にします。作り方は資金繰り表の作り方と改善の進め方にまとめています
  2. メインバンク(主要債権者)に開示する。ガイドラインは、有事に至った中小企業者に対して、正確かつ丁寧に信頼性の高い経営情報等を開示・説明することを求めています。開示する経営情報等の信頼性の向上の観点から、公認会計士・税理士等による検証を経て、その検証結果と合わせた開示を行うことが望ましいともされています(前掲ガイドライン第二部2.(1)①)。平時からの関係づくりと調達の話は金融機関との交渉術に分けています
  3. 中小企業活性化協議会に相談する。相談は無料、秘密厳守、事前予約制。どのメニューに当たるかを自分で決めてから行く必要はありません
  4. 第三者支援専門家・弁護士につなぐ。債務減免等を要請する計画では弁護士が必ず関与します。経営者保証の整理も同時に検討します

持っていく資料は、ガイドラインが事業再生計画案に含めることを求めている項目から逆算すると迷いません。

持参する資料何のために使われるか
直近3期分の決算書・税務申告書・勘定科目内訳明細書企業の概況、財務状況(資産・負債・純資産・損益)の推移
直近の試算表期中の実態把握
資金繰り表(実績と予定)資金繰り計画(債務弁済計画を含む)。計画案の必須項目
金融機関別の借入金一覧・返済予定表対象債権者の特定、主要債権者(金融債権シェア50%以上)の確定
不動産・保険・有価証券等の一覧と評価がわかる資料実態貸借対照表の作成、非事業用資産の換価・処分の検討
経営者個人の資産・負債の一覧保証人がいる場合はその資産と負債の状況。債務減免等を要請する場合は必須項目
事業別・部門別の損益がわかる資料経営が困難になった原因、事業再生のための具体的施策

(出典:前掲ガイドライン第三部4.(4)①イ、5.(3)①イ。表の左列は同項目から本誌が実務上の資料に置き換えたものです)

最後の行だけは、多くの会社で手元にありません。どの事業がいくら稼いでいるかが分からないと、残す事業と畳む事業の線が引けず、計画の「具体的施策」が書けません。共通費を配賦せずに月次を回す方法は部門別損益の作り方に整理しています。

❌ 「決算書だけ持って相談に行き、資料は求められてから揃える」 ⭕ 「資金繰り表と借入金一覧、経営者個人の資産・負債の一覧まで先に揃える。計画案の必須項目から逆算すれば、何を聞かれるかは事前にわかる」

5問で確認する 事業再生の相談に向けた準備度

協議会や金融機関に相談する前に、手元の材料が揃っているかを確かめる簡易チェックです。

SELF CHECK / 無料・登録不要

5問で確認|事業再生の相談に向けた準備度

いまの自社の状態にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1直近13週の週次資金繰り表(実績と予定)がある
  2. Q2実質債務超過の解消年数と、有利子負債の対キャッシュフロー比率を計算したことがある
  3. Q3メインバンクに経営状況・財務状況を正確に開示している
  4. Q4金融機関別の借入金一覧と、経営者個人の資産・負債の一覧がある
  5. Q5最寄りの中小企業活性化協議会の連絡先と、相談が無料・事前予約制であることを把握している

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ

事業再生の判断は、感覚ではなく行動で線が引かれています。元本返済の据置きや期日延長を金融機関に要請する時点で、制度上は「有事」です。そこからは、何を申し出るかを自分で決める局面になります。

早く動くほど選べる手段が多いのは、精神論ではなく制度の書きぶりです。ガイドラインは条件緩和→債務減免等→スポンサー支援→廃業という段階を示しつつ、早期決断により経営者自身の生活や従業員の雇用等に発生する影響が軽減されると想定される場合には、段階を踏んでいるかにかかわらず早期決断の選択肢を排除しないと明記しています。経営者保証ガイドラインは、早期着手による回収見込額の増加額を上限として、自由財産(計算上99万円)に加えて一定期間の生計費相当額や華美でない自宅等を残存資産に含める検討を求めています。廃業型では、計画作成が遅れるほど弁済原資となる財産が減る危険が増すとQ&Aが警告しています。

計画には水準があります。実質的な債務超過は計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目途に解消、経常利益が赤字なら概ね3年以内に黒字転換、計画終了年度の有利子負債の対キャッシュフロー比率は概ね10倍以下。合理的な理由があれば超える計画も排除されませんが、この3つを自社の数字に当ててみると、条件緩和で届くのか抜本的な支援が要るのかの見当がつきます。

入口は中小企業活性化協議会です。すべての都道府県にあり、相談は無料、秘密厳守、事前予約制。収益力改善・再生・再チャレンジの3フェーズが同じ窓口にあります。ただし、民事再生・破産等を申し立て済みの企業は対象になりません。申し立てる前に一度行ってください。計画策定を専門家に依頼する費用も、協議会が3分の2を負担します。協議会が負担する額の上限は、早期経営改善計画策定支援で計画策定50万円+伴走支援30万円の合計最大80万円、405事業の通常枠で300万円、中小版GL枠で700万円です。

中小企業の事業再生等に関するガイドラインの私的整理は、対象債権者全員の同意で成立し、一者の不同意で終わります。厳しい要件ですが、その代わり一般的な商取引債権者は通常は対象に含めず、仕入先や外注先への支払を止めずに金融債務だけを調整できます。法的整理は公告により知られ、事業価値が急速に落ちます。この順番には理由があります。

経営者保証については、保証債務だけを単独で整理することはできません。会社の債務整理を法的整理か準則型私的整理に乗せることとセットです。そのうえで、主たる債務と一体で申し出れば、残存資産の上乗せの検討対象になり、債務整理の事実は信用情報登録機関に報告・登録されません。手続が終結した後に保証債務の整理を始めると、この上乗せの定めが適用されない場合があります。

廃業も選択肢の一つです。廃業型私的整理手続の要件は、従業員に転職の機会を確保できる可能性と、経営者の再スタートの可能性を求めています。その2つが残っているうちに検討することが、追い込まれた破産との違いです。

今週やることを1つだけ挙げるなら、直近13週の週次資金繰り表を1枚作り、最寄りの中小企業活性化協議会に予約の電話を入れることです。相談は無料で、内容も申込みの事実も秘密は厳守されるとされています。

NEXT ACTION / 次にやること

直近13週の週次資金繰り表を1枚作り、中小企業活性化協議会に予約の電話を入れる

実績と予定を同じ紙に並べ、最も薄くなる月とその残高を指摘できる状態にしてから相談に行けば、どの手段の射程に入っているかを短い時間で見極められます。

※本稿は2026年9月9日時点で公表されている法令および公的資料に基づく一般的な情報提供であり、個別案件についての法務・税務・財務上の助言ではありません。手続の選択、要件の当てはめ、条文の解釈については、必ず弁護士等の専門家にご確認ください。制度は改定されるため、利用の際は各機関の最新の公表資料をご確認ください。

よくある質問

Qどの時点で「事業再生を検討すべき段階」に入ったと判断すればよいですか。
A

中小企業の事業再生等に関するガイドラインは、収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため経営に支障が生じ、または生じるおそれがある場合を「有事」と定義しています。より具体的な線引きとして、同ガイドラインのQ&Aは、資金繰りを安定化するために元本返済期日の延長や元本返済の据置き等を金融機関に要請する場合は通常「有事」に該当するとしています。つまり、リスケジュールを検討し始めた時点が判断の起点です。自社の位置を測る物差しとしては、計画に求められる数値基準が使えます。実質的な債務超過を5年以内に解消できるか、経常利益の赤字を概ね3年以内に黒字転換できるか、有利子負債の対キャッシュフロー比率を計画終了年度に概ね10倍以下にできるか。これらから大きく離れているなら、条件緩和だけでは届かない可能性があります。

Q中小企業活性化協議会に相談すると、金融機関に知られて取引を打ち切られませんか。
A

中小企業庁のページは、相談は無料であり、相談内容はもちろん相談申込みについても秘密は厳守すると案内しています。また、ガイドラインのQ&Aは、平時の情報開示について、開示を受けた金融機関がその事実や内容だけをもって中小企業者に不利な対応をすると、中小企業者は適時適切な情報開示に消極的となり、かえって金融機関にとっても正確な情報が入手できない事態となりかねない、と整理しています。金融機関側にも、有事に至った中小企業者が誠実に取り組んでいる場合には、条件緩和や債務減免等の要請を誠実に検討することが求められています。ただし、これは結果を保証するものではありません。判断は個別の金融機関が行います。

Q返済を止める前に相談しないと手遅れになりますか。
A

「手遅れ」という線は制度上ありません。中小企業活性化協議会は、収益力改善から再生、再チャレンジまでの窓口を持っています。ただし、はっきりした境目が一つあります。中小企業庁のページは、民事再生・破産等を申し立て済みの企業は協議会の対象にならないと明記しています(その企業の保証人が保証債務の整理について相談することは可能です)。また、経営者保証に関するガイドラインは、主たる債務の整理手続が終結した後に保証債務の整理を開始した場合、残存資産の上乗せに関する定めが適用されない旨の但書を置いています。すでに支払が滞っている段階でも相談はできますが、選べる手段の幅は動く早さで変わる、というのが制度の構造です。

Q私的整理を使うと、取引先や従業員に知られてしまいますか。
A

中小企業の事業再生等に関するガイドラインの私的整理手続では、対象債権者は金融債権者であり、Q&Aは、一般的な商取引債権者を対象債権者に含めることは通常適切ではないと考えられる、としています(多額の債権を有し密接な関係がある場合など、その債権者の同意を得なければ再生や円滑な廃業が難しい場合には参加してもらうことも想定されています)。仕入先や外注先への支払は通常どおり続けながら、金融債務だけを調整する設計です。また、対象債権者と中小企業者は手続の過程で共有した情報について相互に守秘義務を負うとされています。これに対して法的整理は公告により広く知られます。私的整理を先に検討する実務上の理由は、この違いにあります。

Q会社を整理すると、経営者は必ず自己破産することになりますか。
A

必ずではありません。経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理という道があります。廃業時における同ガイドラインの基本的考え方は、主たる債務者が廃業したとしても保証人は破産手続を回避し得ることが周知されることを、制度の狙いとして明記しています。ただし要件があり、主たる債務者が法的債務整理手続の開始申立てか準則型私的整理手続の申立てを行っている(または係属中・終結済みである)こと、破産手続による配当より多くの回収が見込めるなど対象債権者にとっても経済合理性が期待できること、保証人に破産法252条1項(10号を除く)の免責不許可事由が生じておらずそのおそれもないこと、などを満たす必要があります。保証債務だけを単独で整理することはできない点に注意してください。

Q保証債務を整理すると、経営者の手元には何も残らないのですか。
A

そうではありません。まず、破産法34条3項1号により、民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭は破産財団に属しないとされ、同号の政令で定める額は民事執行法施行令1条で66万円ですから、計算上は99万円が自由財産となります。経営者保証に関するガイドラインは、これに加えて、早期の事業再生等の着手について対象債権者にも一定の経済合理性が認められる場合には、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等を残存資産に含めることを検討するとしています。ただし上乗せの上限は、再生型なら清算型に至らなかったことによる、清算型なら早期着手による保有資産等の劣化防止に伴う、それぞれの回収見込額の増加額です。また、保証人に自由財産を超える保有資産がない等の場合には、弁済する金額が無い弁済計画(ゼロ円弁済)も許容され得るとされています。具体的な範囲は個別の協議で決まるため、専門家に確認してください。

Q保証債務を整理すると、信用情報に事故として登録されますか。
A

経営者保証に関するガイドラインは、このガイドラインによる債務整理を行った保証人について、対象債権者は、当該保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報(代位弁済に関する情報を含む)を、信用情報登録機関に報告、登録しないこととする、と定めています。ここが自己破産との実務上の大きな違いです。廃業型私的整理手続の適用要件にも、経営者等が同ガイドラインを活用する等して創業や就業等の再スタートの可能性があること、が挙げられており、再チャレンジを前提に設計されていることが読み取れます。中小企業活性化協議会にも、保証債務に悩む経営者等を対象とする再チャレンジ支援のメニューがあります。

Q計画を作るのに専門家費用がかかると聞きました。補助はありますか。
A

あります。中小企業活性化協議会が扱う経営改善計画策定支援事業では、認定経営革新等支援機関に支払う費用の3分の2を協議会が負担します。金額はいずれも「協議会が負担する額の上限」です。金融支援を伴わない基本的な経営改善なら早期経営改善計画策定支援(通称:バリューアップ支援事業)で、計画策定が50万円、伴走支援が30万円、合わせて最大80万円。加えて任意で、事業承継先探索に伴う企業概要書作成費用が上限10万円、経営者保証解除に取り組む場合の金融機関交渉費用(認定経営革新等支援機関である弁護士等に限る)が上限10万円です。金融支援を伴う本格的な経営改善なら経営改善計画策定支援(通称:405事業)で、通常枠がDD・計画策定支援200万円+伴走支援100万円の上限300万円、中小版GL枠がDD費用300万円+計画策定支援300万円+伴走支援100万円の上限700万円です。負担は上限の範囲内での3分の2なので、費用が上限を超えた分は自社の負担になります。どの枠を使えるかは協議会に相談した段階で判断されます。

出典・調査の対象範囲

※判断表・自己診断・6段階の区分は、本誌が公的資料をもとに整理した判断支援情報です。個別案件の手続選択や要件の当てはめは、必ず弁護士等の専門家にご確認ください。

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