MANAGEMENT / 経営戦略・廃業・清算
会社を畳む手続きと費用の全体像 解散・清算の8ステップと総額の内訳
公開 2026.09.18
会社を畳むには解散から清算結了まで8つの手続きと約40〜50万円の費用が必要です。期限・窓口・必要書類に加え、従業員への解雇予告の実務、使える公的支援、黒字廃業で手元に残るお金まで、公的制度に基づいて解説します。

会社を畳むことを検討している、あるいはもう決めかけている経営者にとって、いちばん困るのは「次に何をすればいいかが見えない」ことではないでしょうか。解散や清算という言葉は聞いたことがあっても、どの順番で、どこに届けて、いくらかかるのか。そして従業員に何をいつ伝えるのか、畳んだあとに自分の手元にいくら残るのか——こうした実務の全体像を、公的な制度と法令に基づいて整理します。
本記事は法人(会社)を畳む場合の解説です。個人事業主の廃業とは手続きが異なるため、該当しない方はご注意ください。また、「畳むか、それとも再生や売却を検討すべきか」という判断そのものに迷っている方は、まず次の「畳む以外の出口もある」の比較表で4つの出口を比べてください。判断の進め方は事業再生の判断タイミングも参照してください。本記事は「畳むことを前提に、どう進めるか」に集中します。
最初に結論:会社を畳む8ステップと、期限・窓口・費用
まず見るべき判断表|解散から清算結了までの8ステップ
| # | やること | 期限 | 窓口 | かかる費用 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 株主総会で解散を決議(特別決議) | 任意 | ― | ― |
| 2 | 解散の登記 | 決議から2週間以内 | 法務局 | 登録免許税30,000円 |
| 3 | 清算人の就任登記 | 就任から2週間以内 | 法務局 | 登録免許税9,000円 |
| 4 | 債権者への公告・催告(官報+各別催告) | 解散後すみやかに/異議期間は2か月以上 | 日本官報販売所・債権者 | 官報掲載料 約3〜4万円 |
| 5 | 債権者の異議処理と債務の弁済 | 異議期間の経過を待つ | ― | 債務額による |
| 6 | 資産の処分・換価 | ― | ― | 補助金の対象になり得る |
| 7 | 残余財産の確定と株主への分配 | ― | ― | みなし配当に課税(後述) |
| 8 | 清算結了の登記+税務申告・各種届出 | 登記は2週間以内/申告は1か月以内 | 法務局・税務署ほか | 登録免許税2,000円ほか |
急いでいるほど先に押さえるべきは、従業員への解雇予告(30日前)と、廃業費用の3分の2が補助される公的支援の2つ。株主総会の日から逆算して、同じカレンダーに置いてください。
費用の総額は、登記・官報・専門家報酬を合わせて概ね40〜50万円が相場です(内訳は後述)。所要期間は、債権者異議の2か月と資産処分が律速となり、最短で2.5〜3か月、通常は6か月〜1年、不動産の処分や在庫の払い下げが長引くと2〜3年になることもあります。急いでいるほど先に読んでおいてほしいのは、従業員への解雇予告(30日前)と、廃業費用の2/3が出る公的支援(2026年10月2日受付開始)の2つです。それぞれこのあと詳しく扱います。
また、8つのステップは一直線に進むわけではなく、「登記・公告などの法務手続き」と「解雇予告・資産処分などの実務」を並行して進めるのが実際です。株主総会の日を決めたら、同じ日付から逆算して、従業員への予告(30日前)、官報公告(解散後すみやかに)、Jグランツの申請(公募期間内)の3つを同じカレンダーに置いてください。この記事は、そのカレンダーが完成する順序で構成しています(まだ畳むかどうか迷っている場合は、まず次の「畳む以外の出口もある」で出口を比べてください)。
畳む以外の出口もある
会社を畳む前に、選択肢を一度横並びにして眺める価値があります。出口はおおむね売る・承継する・建て直す・畳むの4つで、どれを選ぶかによって「かかる費用」と「手元に残るもの」が変わります。
畳む以外の出口|売る・承継する・建て直す・畳むの比較
| 出口 | 向くケース | おおまかな費用・収支 | 所要の目安 | 詳しくは |
|---|---|---|---|---|
| 売る(株式譲渡・事業譲渡) | 事業としての価値があり、買手が見つかる見込みがある | 仲介報酬等を差し引いたうえで売却対価が手元に残る | 案件の条件により大きく異なる | M&Aの基本プロセス |
| 承継する(親族・社内) | 後継ぎがおり、事業を続ける意味がある | 株式の移転には贈与・相続の税負荷が伴う(事業承継税制の特例あり) | 何年も前から逆算して準備する設計になる | 事業承継の進め方 |
| 建て直す(再生・私的整理) | 事業の核は健全で、債務等の整理によって継続できる | 整理の方法によって変わる(私的整理は債権者全員の同意が前提) | 手法と関係者の数による | 事業再生の判断タイミング |
| 畳む(解散・清算) | 引き継ぐ先が不要、または残った財産を確定して分配したい | 総額40〜50万円の費用がかかる(内訳は本記事のとおり)。黒字であれば残余財産が残る | 最短2.5〜3か月、通常6か月〜1年 | 本記事 |
なお上場(IPO)も出口の1つで、M&A・承継との比較はIPO準備の全体像が扱っています。廃業費用を払ってゼロにするのか、売却対価を得るのか——判断の枠組みはリンク先の記事が担い、本記事は「畳むと決めた後」の実行を担います。比較の前提として、試算表(資産・負債)と株式の状況を手元に揃えておくと、どの出口が現実的なのかの見当が速くつきます。
畳むを選ぶ場合も、費用や期間の実態を知るために比較したい場合も、次章以降の手続きの全体像がそのまま道筋になります。
会社を畳むとは? 解散・清算・廃業・倒産の違い
まず用語を整理します。「会社を畳む」という日常語は、法律上は「解散」と「清算」という2段階の手続きに対応します。解散が「会社の活動を終える決定」、清算が「残った資産と負債を整理して会社を消す作業」です。
| 言葉 | 意味 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 解散 | 事業をやめて会社をたたむ意思決定(会社法471条) | 株主総会決議が必要 |
| 清算 | 解散後、資産を換価し債務を弁済し残余を分配する手続き | 解散後〜清算結了まで |
| 廃業 | 広く「事業をやめること」を指す日常語。法人・個人を問わず使う | 制度名としては「廃業・再チャレンジ枠」等 |
| 倒産 | 経営破綻により法的整理に入ること(破産・特別清算・再生等) | 債務超過が疑われる場合 |
通常の清算(債務を払える状態での廃業)と、裁判所が関与する特別清算(債務超過の疑いがある場合)は別の道です。自社がどちらに当たるかは負債と資産の比較で決まりますが、この判断の進め方は事業再生の判断タイミングが詳しく扱います。本記事では、債務は払える状態で会社を畳む「通常清算」を前提に進めます。
手続きの流れ 解散から清算結了までの8ステップ
ステップ1: 株主総会で解散を決議する
解散は株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上)で行います(会社法471条1号・302条)。取締役会設置会社では、取締役会が解散の旨を決議して株主総会に付議します。社長一人の株式会社でも、自分で株主総会を開いて議事録を作る必要があります。 議事録は登記の添付書類になるため、日付・出席・決議方法を漏らさず残します。ここまでに、試算表で資産と負債を確認し、清算後の見取り図(いくら残るか)を掴んでおくと、次のステップがすべて動きやすくなります。
実務上は、この段階で3つの書類を手元に揃えます。①直近の決算書と試算表(資産・負債の全体像)②登記簿謄本(本店所在地・役員構成の確認)③株主名簿(残余財産の分配相手の確認)です。解散決議の議事録には、日付・場所・出席株主・議決権数・決議方法(特別決議)を記載し、議長と出席の取締役が署名します。1人株主の会社でも、この形式は省略できません。
ステップ2〜3: 解散の登記と清算人の就任登記(それぞれ2週間以内)
解散の登記と清算人就任の登記は、いずれも本店所在地の法務局へ2週間以内に申請します。清算人は、原則として取締役がそのまま就任します(会社法478条)。定款や株主総会で別に選ぶことも可能です。登録免許税は解散登記が30,000円、清算人就任登記が9,000円(うち清算結了登記分の2,000円とあわせた内訳は後述しますが、公開情報に基づく目安を含みます)。司法書士に依らなければ自分で申請でき、費用を抑えられます。
ステップ4: 債権者への公告・催告(異議期間は2か月以上)
清算人は、解散したことを官報に公告し、知れている債権者には個別に催告しなければなりません(会社法499条・同施行規則150条)。債権者が異議を述べられる期間は2か月以上です。この2か月が清算の待ち時間の中心で、期間を短くすることはできません。官報掲載料金は1行(22文字詰め)税込3,947円で、解散公告はおおむね8〜11行、合計3〜4万円程度です(官報販売所の公表料金に基づく計算例)。
官報公告とあわせて、「知れている債権者」すべてに個別の催告書を送ります。取引先・金融機関・リース会社など、帳簿上把握できる債権者が対象です。催告が漏れた債権者には異議期間による整理が及ばず、清算結了後も請求が残り得る相手として残るため、買掛金・未払金の残高を洗い出してから発送します。主要取引先には、官報よりも先に直接連絡を入れるのが実務の作法です(伝える順序の詳細は後述します)。
ステップ5〜6: 異議の処理・債務弁済と資産の処分
異議期間内は残余財産の分配が制限されます(会社法500条)。期間が過ぎたら、債務を弁済し、資産を換価します。売掛金の回収、在庫の処分、不動産や設備の売却、リースの解約——ここが一番時間がかかる工程で、在庫の廃棄や原状回復(スケルトン戻し)、リース解約、土壌汚染調査などの費用は、後述する公的支援の補助対象になり得ます。処分を急ぐあまり売却対価を大きく下回る処分をしていないか、税務上の清算所得にも影響するため、数字は記録として残します。
資産処分の順番にも型があります。まず現金預金の確認と売掛金の回収、つぎに在庫・機械・車両などの動産、最後に不動産です。不動産は買い手探しと所有権移転登記に時間がかかるため、解散前に不動産会社へ査定を依頼しておくと清算期間を大きく縮められます。回収が見込めない売掛金は、督促の記録を残したうえで貸倒処理の判断になります。リース機器は解約費用の見積を早期に取り、解約費が補助金の対象になり得る点も覚えておいてください。
ステップ7〜8: 残余財産の分配と清算結了
負債をすべて払い、残った財産(残余財産)を確定して株主に分配したら、清算結了の登記を2週間以内に行い(登録免許税2,000円)、会社は消滅します。税務では、残余財産が確定した事業年度の確定申告を、期間終了の翌日から1か月以内(最終分配が先に行われる場合はその前日まで)に提出します。競合解説に多い「解散の日から2か月」という表記は解散事業年度の話で、清算の最終段階は1か月に短縮される点に注意が必要です(国税庁No.6601・6610)。あわせて、税務署への異動届(「速やかに」)、年金事務所への適用喪失届(5日以内)、ハローワークへの雇用保険資格喪失届(退職の翌日から10日以内)、労働保険の確定申告(事業廃止の日から50日以内)を漏れなく出します。
費用の総額と内訳 40〜50万円のうち、何にいくらかかるのか
費用の内訳|総額 約40〜50万円
| 項目 | 金額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税(解散) | 30,000円 | 公開情報に基づく目安を含む |
| 登録免許税(清算人就任) | 9,000円 | 同上 |
| 登録免許税(清算結了) | 2,000円 | 法務省の申請書様式に明記 |
| 官報掲載料 | 約3〜4万円 | 税込3,947円/行×8〜11行 |
| 司法書士報酬 | 7〜12万円 | 3回の登記を依頼した場合の目安 |
| 税理士報酬 | 8万円〜 | 清算確定申告等の目安 |
| 合計 | 約40〜50万円 | 自分で登記すれば数万円圧縮可 |
内訳のうち登記3種の合計41,000円という数値は各社の解説で共通して使われていますが、根拠は登録免許税法別表の規定です(清算結了分の2,000円のみ法務省様式で直接確認済み)。費用を抑える方法は2つ。登記を自分で行うこと(司法書士報酬7〜12万円が不要に)、官報の行数を文案で絞ることです。ただし最大の節約は別にあります。廃業に伴う経費の3分の2が補助される公的制度です。
畳む経営者が使える公的支援 廃業・再チャレンジ枠と未払賃金の立替払
中小企業が廃業する際に使える公的支援は2つあります。一般の解説記事ではほとんど扱われませんが、金額のインパクトが大きい順に説明します。
1つ目は、事業承継・M&A補助金の「廃業・再チャレンジ枠」です。 廃業に伴う経費について、補助率3分の2以内、上限300万円(対象経費75万円以上、下限50万円)の補助が受けられます。対象経費は、①廃業支援費(廃業にかかる専門家への相談等、上限50万円)②在庫廃棄費(※売却対価を得る処分は対象外)③解体費④原状回復費⑤リース解約費⑥土壌汚染調査費⑦移転・移設費(他枠との併用申請時)です。申請は政府の電子申請システムJグランツで行い、GビズIDプライムアカウントが必要です。2026年9月16日時点では、第16次公募の申請受付が2026年10月2日〜11月6日17:00に予定されており、直近の第15次公募は2026年9月11日に採択結果が出ています。解散を決めたら、GビズIDの取得(数日かかる場合があります)と公募要領の確認を、手続きと並行して進めてください。公募のスケジュールは変更されるため、申請前に事務局の公式サイトで必ず最新情報を確認してください。制度そのものの探し方の型は補助金・助成金の探し方に整理しています。
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畳むときに使える2つの公的支援
2/3
廃業・再チャレンジ枠の補助率(以内)
300万円
廃業・再チャレンジ枠の補助上限(対象経費75万円以上)
8割
未払賃金の立替払(従業員向け。未払賃金総額に対して)
制度の趣旨を一言でいえば、「廃業も含めた事業の引き継ぎを、社会全体で支える」というものです。畳める状態で丁寧に畳めることは、取引先と従業員を混乱させないという意味で価値があり、その準備コストを補填する設計になっています。実務上の注意が1つ。補助金は原則として交付決定後に対象期間内に発生した経費が対象であり、交付決定前に発注・支払いを済ませた経費は対象外となるのが一般則です。「急いでいるから先に業者に依頼してしまった」を避けるため、公募要領で対象経費の発生期間を必ず確認してください。
2つ目は、未払賃金の立替払制度です。 これは経営者ではなく従業員のための制度ですが、畳む会社の経営者が従業員に必ず伝えるべきセーフティネットです。事業主の倒産(破産手続開始決定や清算など)によって賃金が未払いになった場合、独立行政法人労働者健康安全機構が未払賃金総額の8割を従業員に代わって立替払いします。年齢別の立替上限は45歳以上296万円、30〜45歳未満176万円、30歳未満88万円(限度額はそれぞれ370万・220万・110万円)で、退職日の6か月前から請求日前日までの賃金が対象です。請求期限は倒産(清算を含む)の日の翌日から2年以内です。賃金の支払いに困難が生じる状況では、退職手続きの中でこの制度を案内することが、経営者の最後の責任を果たす形になります。
従業員と取引先への対応 解雇予告・退職金・伝える順序
手続きと同じくらい、あるいはそれ以上に気をもむのが人への対応です。法令上の要件と実務の順序を整理します。
解雇の予告は、原則として30日前までに行います(労働基準法20条)。30日前までに予告しない場合は、予告手当(平均賃金30日分以上)の支払いが必要です。たとえば解雇時の平均賃金が40万円の従業員を即日解雇するなら、予告手当40万円の追加支払いが発生します。予告期間を短縮したい場合は「残日数分の予告手当」で調整できます。天災事変その他やむを得ない事由や、季節的業務・日雇労働には例外があります(同法21条)が、通常の正社員には原則どおりの対応と考えてください。解散を決議するタイミングと予告開始のタイミングはセットで計画します。清算期間中も会社は存続しているため、従業員には「いつまで勤務か」「退職金はいつ支払われるか」「未払賃金への対応」を書面で明確に伝えます。
退職金は、就業規則・退職金規程に定めがあれば支払います。支払う際は、従業員(役員を含む)に退職所得の受給者申告書を提出してもらい、退職所得控除(勤続20年以下は40万円×年数、最低80万円。20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年))を反映した速算表により源泉徴収します。申告書がない場合は20.42%の源泉徴収となります(国税庁No.1420・2732)。なお、退職金「制度そのものの設計」(掛金の積立手段等)については退職金制度の設計が別途詳しく扱います。
伝える順序には実務上の型があります。 ①まず従業員(解雇予告は法令要件であり、漏洩防止のためにも直近の幹部経由ではなく経営者から直接)②つぎに主要な取引先(官報公告よりも先に、契約上の清算担当を決めて直接訪問か電話)③そのうえで官報公告・各別催告という法定手続き、の順です。取引先から「聞いていない」と不信を持たれると債権者異議の処理がこじれ、清算が長引きます。社会保険の適用喪失(5日以内)、雇用保険資格喪失(10日以内)などの届出も、退職日が決まった段階でカレンダーに落とします。ハローワークの再就職支援の案内も、退職時の対応として添えることができます。
従業員側が自分で行う手続きも、書面で案内しておくと退職後の問い合わせが減ります。健康保険の任意継続か国民健康保険への切り替え、年金の国民年金への種別変更、雇用保険の失業等給付の受給手続き(離職票ベース。廃業・解散による解雇は自己都合退職とは異なる取扱いが基本ですが、詳細はハローワークの判定になります)です。渡すタイミングは退職日、窓口と必要書類を1枚にまとめておくと丁寧です。
黒字で会社を畳む 残余財産といくら手元に残るか
「畳んだあと、自分にいくら残るのか。」これを具体的に試算していない経営者が多いのですが、答えの構造はシンプルです。残余財産(資産を処分し、負債を払った残り)のうち、出資として払い込んだ資本等の金額までは課税されず、それを超える部分が「みなし配当」として課税対象になる——これが基本形です(所得税法25条)。残余財産の全額に税金がかかるわけではありません。
ここでいう「資本等の金額」とは、おおむね資本金と資本積立金(株式払込剰余金など)の合計と考えてください。累積した利益である利益剰余金は含まれないため、「積み上げた利益」の部分が課税対象になるイメージです。逆にいえば、創業から利益積み上がりの少ない会社ではみなし配当も小さく、残余財産への課税は軽いことになります。税額の試算は「残余財産がいくら残るか」と「資本等の金額がいくらか」の2つの数の差で決まる——この単純な構造をまず押さえてください。
試算例で見ます。前提として、資本金1,000万円、利益積立金2,000万円の会社が、負債をすべて返済したあと残余財産3,000万円を確定し、株主である経営者1人に分配するとします(経営者保証の有無などの個別事情は考慮しない簡略例です)。この場合、資本等の金額1,000万円を超える2,000万円がみなし配当となり、経営者の所得として課税されます。非上場株式の清算分配金は総合課税(所得税の累進課税+住民税、源泉徴収20.42%)が原則です。税率は他の所得金額によって変わるため、みなし配当2,000万円のような大きな金額では、実効税率はおおむね30%台後半から50%台後半の幅になり、手取りはおおむね900〜1,300万円程度という見込みになります。※これは公開情報に基づく概算であり、実際の税額は必ず税理士に確認してください。なお、証券市場で売却する上場株式等であれば申告分離課税(20.315%)ですが、自社株式の清算分配は非上場の扱いが原則です。2027年分以降は復興特別所得税から防衛特別所得税へ制度が切り替わりますが、税率の合計は変わりません(国税庁No.1331)。
資本等の金額(課税されない部分)
1,000万円
資本金と資本積立金の合計。出資として払い込んだ分までは課税されない
みなし配当(総合課税の対象)
2,000万円
残余財産3,000万円のうち、資本等の金額を超える部分(試算例)
税理士に確認すべき事項(まとめ) :①資本等の金額の計算(資本積立金額の範囲。ここを間違えるとみなし配当額が大きく変わる)②みなし配当と他の所得の合算による税率③清算所得に対する法人税の有無④経営者保証が残る場合の債務との相殺。残ったお金の管理基準については資金繰りを安定させる手元資金の決め方も参照してください。畳まずに会社や事業を売る場合に手元に残る額との比べ方は、M&Aの税金と手取りの比較で試算しています。
5問で確認する 会社を畳む準備の進み具合
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5問で確認|会社を畳む準備の進み具合
いまの準備状況にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。
※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。
まとめ 今週やること
会社を畳む手続きは、①解散決議②登記③債権者公告(2か月)④弁済と換価⑤分配⑥清算結了の8ステップ、費用は総額40〜50万円、期間は通常6か月〜1年が現実的な見込みです。そのうえで、今週やるべきことは3つです。
- 試算表で残余財産の見込みを把握する(資本等の金額と比較し、みなし配当の規模感を掴む)
- 解散決議の日付と従業員への解雇予告(30日前)を同じカレンダーに置く
- 廃業・再チャレンジ枠の公募要領を確認し、GビズIDプライムを取得する(第16次公募は2026年10月2日受付開始・2026年9月16日時点)
NEXT ACTION / 次にやること
試算表を開き、残余財産の見込みと資本等の金額を並べて書き出す
2つの数字の差がみなし配当の規模感になり、畳んだあと手元にいくら残るかの見当がつきます。あわせて、解散決議の候補日から30日前の日付をカレンダーに入れてください。
よくある質問
Q会社を畳むのにかかる期間は最短でどのくらいですか。
債権者異議期間の2か月は法定のため埋められず、登記と申告を最短で回しても2.5〜3か月が下限です。資産処分(不動産・在庫)が絡むと通常は6か月〜1年、長いケースでは2〜3年かかります。
Q費用は安くできますか。
登記を自分で行えば司法書士報酬(7〜12万円)を圧縮できます。また、廃業・再チャレンジ枠の対象経費(原状回復費・在庫廃棄費等)は3分の2が補助されます(上限300万円)。ただし売却を伴う在庫処分は補助対象外です。
Q従業員への予告はいつから必要ですか。
解雇の30日前までに予告するか、予告手当(平均賃金30日分以上)を支払います(労働基準法20条)。解散決議と同時に予告を開始する計画が組みやすいです。
Q残余財産には税金がかかりますか。
資本等の金額を超える部分がみなし配当となり、総合課税(累進+住民税)の対象です。残余財産の全額ではなく、超過部分のみに課税されます。税率は所得により変わるため税理士への確認を推奨します。
Q公的支援はいつ申請すればよいですか。
廃業・再チャレンジ枠は公募制です。2026年9月16日時点では第16次公募の受付が2026年10月2日〜11月6日に予定されています。GビズIDプライムの取得に日数がかかるため、解散を決めた段階で準備を始めてください。
出典・調査の対象範囲
本記事は、以下の法令・公的資料に基づいて作成しています(2026年9月16日時点)。
- 会社法 第二編株式会社 第九章「清算」(471条・475条・477条・478条・481条・499条・500条、926条・929条)/会社法施行規則150条
- 労働基準法 第20条・第21条(解雇予告)
- 事業承継・M&A補助金(廃業・再チャレンジ枠)第16次公募要領(事業承継・M&A補助金事務局・経済産業省)
- 未払賃金の立替払制度(独立行政法人労働者健康安全機構・厚生労働省)
- 国税庁タックスアンサー No.1330・1331(配当所得とみなし配当)/No.6601・6610(清算中の確定申告)/No.1420・2732(退職金の源泉徴収)
- 商業登記の登録免許税(法務省申請書様式・登録免許税法別表)
- 官報掲載料金(国立印刷局・官報販売所公表値)
- 日本年金機構・ハローワーク・労働局の各手続き案内
※記載している金額・税率・公募日程は、公開情報に基づく2026年9月16日時点の目安です。実際の手続き・税務判断は、税理士・司法書士等の専門家および所管の窓口にご確認ください。



