MANAGEMENT / 財務・資本・申請実務
補助金・助成金の探し方 公式サイトの使い分けと申請でつまずく場所
公開 2026.09.05
自社に使える制度は、制度名ではなく目的から公式データベースを引くと見つかります。ミラサポplus・Jグランツ・J-Net21の使い分け、補助金と助成金の違い、交付決定前の発注という最大の落とし穴を一次情報で整理しました。

- 経済産業省系の補助金は審査があり不採択がある。厚生労働省系の助成金は要件を満たせば原則支給される。準備すべきものがまったく違う
- 補助金は後払い。しかも交付決定通知書に書かれた日付より前の発注・契約・支払いは補助対象外になる。ここで失うと取り返せない
- 電子申請にはGビズIDプライムが要る。取得が締切に間に合わなかった場合の猶予は用意されていない
補助金は年度ごとに名前も枠も金額も変わります。だから「今年使える補助金一覧」を覚えても、来年には役に立ちません。一方で、探す入口・お金が動く順番・審査で見られる観点・落ちる理由は、制度が変わってもほとんど変わりません。本稿では、変わらない部分を軸に、経営者が「自社は何を、どこで探し、いつ何をすればよいか」を判断できるように整理します。個別制度の金額や要件は、必ず最新の公募要領で確認してください。
最初に結論:探す前に決める順番と、取り返せない3つの落とし穴
まず見るべき判断表|補助金・助成金で先に押さえること
| 押さえること | いつ | 外すとどうなるか |
|---|---|---|
| 投資計画を決めてから入口を選ぶ(設備・販路は経産省系、人は厚労省系) | 探し始める前 | 制度に合わせた不要な投資をする。補助率3分の2でも残りは自社の現金 |
| GビズIDプライムを申請する | 探し始めた日 | 書類申請は審査に最大1か月。間に合わなくても申請期日の猶予はない |
| 交付決定日以降に発注・契約・支払いをする | 採択後、交付決定通知書が届いてから | 交付決定前の発注・契約・支払いは補助対象外 |
| 10割を立て替える資金繰りを組む | 申請前 | 採択されたこと自体が資金繰りを圧迫する |
| 公募要領の審査の観点と加点の上限に沿って書く | 締切から逆算して早めに | 観点に答えていない計画は落ちる。加点は上限を超えると対象外 |
補助金は「もらえるお金」ではなく、立て替えてから一部が返ってくる支出です。投資の意思決定が先、制度探しは後。そのうえで、自社が徹夜しても縮まらない行政側の処理日数を締切から逆算しましょう。
まず「何をしたいか」から入口を決める
制度名を検索するより、自社の投資計画を先に固めるほうが速く着地します。やりたいことによって、当たるべき役所も、開くべきサイトも変わるからです。
| やりたいこと | 当たるべき系統 | 主な所管 | 最初に開く入口 |
|---|---|---|---|
| 設備を買う・省力化する | 補助金 | 経済産業省・中小企業庁 | ミラサポplus「補助金を探す」「公募スケジュール」 |
| 人を雇う・育てる・処遇を上げる | 助成金 | 厚生労働省・都道府県労働局 | 厚労省「事業主の方のための雇用関係助成金」 |
| 労働時間や賃金体系を改善する | 助成金 | 厚生労働省・都道府県労働局 | 厚労省「労働条件等関係助成金」 |
| 販路を広げる・展示会に出る | 補助金 | 中小企業庁・自治体 | ミラサポplus/J-Net21(地域で絞り込み) |
| IT化・セキュリティを固める | 補助金 | 中小企業庁 | ミラサポplus「公募スケジュール」 |
| 事業を作り替える・承継する | 補助金 | 中小企業庁 | ミラサポplus/Jグランツ |
| 地域限定の小口支援を拾う | 補助金・助成金 | 都道府県・市区町村 | J-Net21 支援情報ヘッドライン/自治体サイト |
この表の右端はすべて公式サイトです。まとめサイトから入ると、募集が終わった制度や旧年度の金額が混ざります。入口は公式に固定してください。
❌ 「中小企業 補助金 2026」で検索し、上位に出た記事の一覧から使えそうなものを探す ⭕ 「来期に加工機を1台、いくらで入れる」を先に決め、その用途で公式データベースを絞り込む
制度に合わせて不要な投資をするのは本末転倒です。補助率が3分の2でも、残りの3分の1は自社の現金が出ていきます。投資の意思決定が先、制度探しは後です。
補助金と助成金は、採否の決まり方から違う
同じ「返さなくてよいお金」でも、補助金と助成金は構造が別物です。ここを混ぜると準備の方向を間違えます。
| 論点 | 補助金(経産省・中小企業庁系が中心) | 助成金(厚労省系が中心) |
|---|---|---|
| 主な狙い | 設備投資・販路開拓・事業転換など | 雇用の維持・雇入れ・人材育成・労働条件の改善 |
| 採否の決まり方 | 公募要領の「審査の観点」に基づく審査があり、不採択がある | 要件を満たせば原則支給。ただし予算枠で受付を締め切る助成金もある |
| 財源 | 国の予算(税金) | 事業主が拠出する雇用保険二事業・労災保険料が中心(一部は一般会計) |
| 募集の形 | 回ごとの公募。締切がある | 通年のものが多いが、事前の計画届などの段取りがある |
| 準備の重心 | 事業計画の説得力 | 就業規則・賃金台帳・出勤簿など証拠書類の整合 |
| 申請先 | 各補助金の事務局(電子申請はJグランツ等) | 都道府県労働局など(ハローワークでは受け付けない助成金もある) |
厚労省の雇用関係助成金は、雇用保険適用事業所の事業主であること(支給申請日および支給決定日の時点で雇用保険被保険者が存在すること)、期間内に申請すること、審査に協力することが共通の前提です。支給申請期間は原則として、各助成金の支給要領に定める日の翌日から起算して2か月以内です。さらに12項目の不支給要件が定められており、これに一つでも当たるとすべての雇用関係助成金が受けられません。労働保険料の未納(支給申請した年度の前年度より前のいずれかの年度分。申請日の翌日から2か月以内に納付した場合を除く)、支給申請日の前日から過去1年間の労働関係法令違反、不正受給による不支給決定等から5年を経過していないことなどが並びます(出典:厚生労働省令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)、令和8年4月)。
つまり助成金は「審査に勝つ」ものではなく、「要件に穴を開けない」ものです。社労士に相談する価値があるのは、事業計画の書き方ではなく、この足元の整合性のほうです。
なお、名前で系統を判断しないでください。厚生労働省にも「エイジフレンドリー補助金」「高度安全機械等導入支援補助金」のように、補助金と名のつく制度があります。名称ではなく、所管と募集ページを見て判断してください(出典:同上)。
探す順番と、それぞれで得られる情報の質
公式の入口は複数あり、役割が重なっているようで違います。上から順に当たると漏れが減ります。
| 入口 | 運営 | 得られるもの | 得られないもの |
|---|---|---|---|
| ミラサポplus | 中小企業庁 | 国の補助金の公募スケジュール一覧、公募要領へのリンク、地域の制度検索、活用事例 | 厚労省の雇用関係助成金の詳細(労働局側で確認が必要) |
| Jグランツ | デジタル庁 | 国・自治体の補助金の検索と電子申請、申請後の状況確認 | 紙申請のみの制度、労働局に出す助成金 |
| J-Net21 支援情報ヘッドライン | 中小企業基盤整備機構 | 国・都道府県の補助金/助成金/融資・セミナー情報をカテゴリ×地域で検索。RSSとメールマガジンで自動受信 | 市区町村独自の制度は掲載されないことがある |
| 自治体サイト(産業振興課など) | 都道府県・市区町村 | 地域限定の制度、地元の制度融資とのセット情報 | 検索性が低く、自力で巡回する必要がある |
| 商工会・商工会議所 | 各地の団体 | 申請書類の相談、制度の運用実態、必要書類の発行 | 会員以外への支援範囲は団体により異なる |
| よろず支援拠点 | 中小企業基盤整備機構 | 経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応。47都道府県に設置 | 制度の一覧そのもの(データベースではなく相談窓口) |
| 取引金融機関 | 銀行・信用金庫等 | つなぎ融資とセットの相談、地域の制度融資の情報 | 中立ではないため、制度の網羅性は期待できない |
Jグランツはデジタル庁が運営する、国や自治体の補助金の電子申請システムです。検索と申請と進捗確認が同じ場所でできるのが強みで、逆に言えばここに載らない制度も存在します(出典:デジタル庁Jグランツ、2026年9月参照)。J-Net21の支援情報ヘッドラインは、国・都道府県の支援情報をまとめて検索でき、補助金・助成金・融資のRSS配信とメールマガジンがあります。毎月サイトを見に行くより、この配信を受け取る側に回るほうが続きます(出典:中小企業基盤整備機構J-Net21 支援情報ヘッドライン、2026年9月参照)。
見落とされがちなのがよろず支援拠点です。国が47都道府県に設置した無料の相談窓口で、回数制限がありません。2026年4月1日からは、全国のよろず支援拠点内に生産性向上支援センターも設置されています(出典:中小企業基盤整備機構よろず支援拠点、2026年9月参照)。「うちの計画で、どの系統を当たるべきか」を最初に相談する先として、無料で使えるものを使わない手はありません。
商工会・商工会議所は情報源であると同時に、手続きの通り道になる制度があります。たとえば小規模事業者持続化補助金では、地域の商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書がなければ申請できません。窓口の混雑や面談の日程を含めて、締切から逆算した段取りが必要です。
GビズIDは「探し始めた日」に申請する
国の補助金の電子申請は、ほとんどがGビズIDを前提にしています。ここが最初の律速になります。
GビズIDには3種類のアカウントがあり、補助金の電子申請に使えるのはGビズIDプライムまたはGビズIDメンバーです。誰でも作れるGビズIDエントリーではログインできません。メンバーは従業員用のアカウントで、代表者がプライムを持っていることが前提です(出典:デジタル庁Jグランツ 事業者クイックマニュアル、2026年3月)。
取得にかかる時間は、申請方法で大きく変わります。2026年7月9日の変更で、法人代表者によるオンライン審査はアカウント作成・有効期限の更新とも24時間365日速やかに行われるようになった一方、書類申請の審査期間は従来の最大2週間から最大1か月に変更されました。不備があっても書類は返送されず、マイページとメールで通知されます。また、プライムとメンバーには発行日から2年3か月の有効期限が設けられています(出典:デジタル庁GビズID、2026年7月)。
つまり、マイナンバーカードを持っている代表者はオンラインで速く作れますが、書類申請しか選べない場合は1か月見ておく必要があります。Jグランツの事業者向けマニュアルも「GビズIDの発行が間に合わないことに伴う申請期日の猶予は想定してございません」と明記しています(出典:同上)。制度を探し始めた日に、まずGビズIDプライムを申請してください。使わなくても損はしません。
❌ 申請したい補助金が決まってから、GビズIDの取得方法を調べ始める ⭕ 補助金を探し始めた日にGビズIDプライムを申請し、有効期限もカレンダーに入れる
補助金は後払い 交付決定前に発注すると1円も出ない
実務で取り返しがつかなくなりやすいのがここです。補助金は、採択されたら振り込まれるお金ではありません。先に自社が全額を払い、事業が終わってから精算される構造です。
この順番の骨格は法律が定めています。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)は、交付の決定(第6条)、補助事業者の遂行義務(第11条)、実績報告(第14条)、額の確定(第15条)という順序を定めており、額の確定は実績報告を審査したうえで行われます(出典:e-Gov法令検索補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)。
ただし同法は支払いの時期までは定めていません。実際にいつ振り込まれるかは各補助金の交付規程によります。原則は額の確定後の精算払で、持続化補助金の公募要領も「補助金は後払いです」と明記していますが、補助金によっては概算払を認める規定を置いているものもあります。自社が使う補助金の交付規程で「補助金の支払」の条項を確認してください。
実際のお金と手続きの順番はこうなります。
| 段階 | 何が起きるか | 自社のお金 |
|---|---|---|
| 1. 申請 | 事業計画と経費明細を提出 | 動かない |
| 2. 採択 | 採択通知書が届く。まだ発注してはいけない | 動かない |
| 3. 見積書等の提出 | 価格の妥当性を証明する見積書(相見積を含む)を提出 | 動かない |
| 4. 交付決定 | 交付決定通知書が届く。記載された交付決定日から補助事業を開始できる | 動かない |
| 5. 補助事業の実施 | 発注・契約・納品・支払い | 全額を自社が支払う |
| 6. 実績報告 | 実績報告書と経理書類を提出 | 出たまま |
| 7. 補助金額の確定 | 事務局の審査で金額が確定 | 出たまま |
| 8. 請求・入金 | 請求してから振り込まれる | ようやく戻る |
| 9. 事業効果報告 | 補助事業終了後の状況を報告 | - |
小規模事業者持続化補助金の公募要領は、冒頭の注意事項で「補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです」と明記しています。そして補助対象経費の条件として「交付決定日以降に発生し補助事業期間中に支払が完了した経費」を挙げ、補助対象外の経費として「交付決定前に発注・契約、購入、支払い(前払い含む)等を実施したもの」を列挙しています。さらに義務の章では、「補助金交付決定通知書の前に送付される採択通知書だけでは、補助事業を始めることはできません」「交付決定日前に行われた発注・契約・支出行為は、補助対象外です」と念を押しています(出典:小規模事業者持続化補助金事務局<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)、2026年7月)。
❌ 採択通知が届いたので、納期が心配な機械の発注書をすぐ出した ⭕ 交付決定通知書に記載された交付決定日を確認し、その日以降に発注書を出した
同じ公募要領には、交付決定は「採択後、詳細な見積書が速やかに提出された場合でも、採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があります」とも書かれています。採択から着工までに数か月の空白があるという前提で、納期・工期・繁忙期を組み立ててください。年度末までに設置したい設備を、採択発表の直後から動かせると考えると計画が崩れます。
落ちる理由は「審査の観点に答えていない」こと
不採択の多くは、文章力ではなく構造の問題です。審査は公開された観点に沿って行われます。
小規模事業者持続化補助金の場合、採択審査は「非公開で提出資料により行い、提案内容に関するヒアリングは実施しません」と明記されています。基礎審査で失格になる要件(必要書類の欠落、対象者・対象事業・補助対象経費の要件に合致しないなど)があり、これを通過した申請だけが計画審査に進みます。計画審査の項目は、自社の経営状況分析の妥当性、経営方針・目標と今後のプランの適切性、補助事業計画の有効性、積算の透明・適切性の4つです。有効性の中では「客観的事実に基づいて目標が設定されているか」「実現可能性が高いか」「補助事業終了後も継続して使用することが明確か」まで見られます(出典:同上)。
観点が公開されている以上、事業計画はその見出しに沿って答えを置くだけです。並べ方を審査側に合わせるだけで、読み手の探す手間が消えます。金融機関に出す事業計画とは書き分けが必要なので、事業計画書の作り方の型をそのまま流用するのではなく、公募要領の項目に対応させてください。
❌ 「業務効率化により生産性を向上させ、売上の拡大を図ります」 ⭕ 「◯◯を導入して月40時間の手作業を削減し、その時間を新規訪問に充てる。単価12万円×月8件×12か月で年1,152万円の売上増を見込む」
もう一つの取りこぼしが加点です。加点は「多く選べば有利」ではありません。同補助金では重点政策加点と政策加点からそれぞれ1種類、合計2種類までしか選べず、2種類を超えて選ぶと加点審査の対象外になります。また、経営力向上計画による加点は「必ず基準日までに認定を受けていること」が条件です。経営力向上計画の認定は、電子申請でも標準処理期間が約14日(休日等を除く)、複数省庁の所管にまたがる場合は約45日かかります(出典:経済産業省近畿経済産業局経営力向上計画の申請について、2026年9月参照)。
❌ 使えそうな加点をすべてチェックして申請する ⭕ 上限数を公募要領で確認し、期限までに証明書類が確実に出るものだけを選ぶ
計画の承認と補助金を混同しやすいのが経営革新計画です。承認されても国の補助金が出るわけではなく、効果は保証・融資などの金融面に集中します。詳しくは経営革新計画の作り方を参照してください。
LEAD TIME
締切の手前に埋まっている、縮められない時間
最大1か月
GビズIDの書類申請の審査期間(従来は最大2週間)
約14日
経営力向上計画の認定の標準処理期間(電子申請。複数省庁にまたがると約45日)
1〜2か月
採択発表から交付決定までにかかる場合がある期間
締切1週間前からの着手が致命傷になるのは、この2点が理由です。商工会・商工会議所が発行する書類にも、認定計画にも、行政側の処理日数があります。自社が徹夜しても縮まらない時間が、締切の手前に埋まっています。
資金繰りとして見た補助金
補助金は「もらえるお金」ではなく、「立て替えてから一部が返ってくる支出」として資金繰りに載せてください。
補助率が3分の2なら、自己負担は3分の1です。しかしキャッシュフロー上は、いったん10割を払う必要があります。1,000万円の設備なら1,000万円を先に出し、数か月後に上限内の額が戻ってくる。この時間差を埋める手当てがないまま採択されると、採択されたこと自体が資金繰りを圧迫します。設備投資を検討する段階で資金繰り表に、支払月と入金見込月をずらして入れておいてください。手元資金が薄い会社は、手元資金を何か月分持つかの判断ごと見直す必要があります。
1,000万円の設備・補助率3分の2|先に出ていくお金
1,000万円
キャッシュフロー上は、いったん10割を自社が支払う
精算後の自己負担
3分の1
補助金は実績報告と額の確定を経て、数か月後に上限内の額が戻る
つなぎ資金が要るなら、申請前に金融機関へ相談してください。採択されてから相談すると、審査期間が事業実施期間を食います。金融機関側も補助金つなぎの融資には慣れており、公募要領と交付決定通知書を材料に話が進みます。交渉の準備は金融機関との交渉術を参考にしてください。
税金の扱いも押さえておく必要があります。受け取った補助金は原則として益金に算入されます。ただし、固定資産の取得または改良に充てるための国庫補助金等については、返還を要しないことが確定した事業年度に圧縮記帳(法人税法第42条)を適用できる場合があります。ここでいう「返還を要しないことが確定した」時点は、補助金適正化法第15条の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その通知を受けたときとされています(出典:国税庁法人税基本通達 第10章第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳、および法人税法第42条)。適用の可否と処理は決算に直結するため、必ず顧問税理士に確認してください。
消費税の扱いは、自社がどの立場かで逆になります。ここを一律に「税抜きで見る」と考えると損をします。
持続化補助金の公募要領は、課税事業者について、交付申請書の記入にあたって消費税等仕入控除税額を減額して申請することを求めています。課税事業者は消費税相当額をあらかじめ補助対象経費から差し引くわけです。
一方、免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の適用を受ける事業者は、消費税等を補助対象経費に含めて申請し、その内容で交付決定を受けた場合に限り、消費税分も補助対象になります。ここを知らずに税抜きで見積を組むと、本来受け取れた補助金を1割ほど取りこぼします。
❌ 免税事業者なのに「補助対象経費は税抜き」と思い込み、税抜金額で申請する ⭕ 自社が課税事業者か免税・簡易課税・2割特例かを先に確認し、公募要領の補助対象外経費の欄で消費税の扱いを読む
支援事業者に頼むかどうか
外部に頼むこと自体は問題ありません。問題になるのは、頼み方と、頼んだ事実を隠すことです。
持続化補助金の公募要領は、第三者の支援を受けた場合、支援料金の支払いの有無にかかわらず、様式2に相手方と支援に係る金額(着手金、成功報酬その他名目のいかんを問わず)を記載するよう求めています。記載がない場合は虚偽の報告として不採択・交付決定取消となり、不当な支援料の請求を防ぐ観点から、第三者支援者に対してヒアリングや現地調査を行う場合があるとされています。同時に「提供するサービスの内容と乖離した高額なアドバイス料金を請求される業者等にご注意ください」という注意喚起も置かれています(出典:同上)。
さらに、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合や、自らが検討していなかったことが発覚した場合は、評価にかかわらず不採択・交付決定取消になります。丸投げは制度上、そもそも成立しません。加えて、支援者にGビズIDプライムまたはメンバーのアカウントとパスワードを開示することは、GビズIDの利用規約第11条に反する行為です。
厚生労働省も、同省の委託事業者を名乗って助成金の申請や無料査定をうたう勧誘があるとして注意喚起を出しており、同省はこうした勧誘に関与していないと明言しています(出典:厚生労働省事業主の方のための雇用関係助成金、2026年9月参照)。
成功報酬の相場は制度・支援範囲・作業量で大きく変わるため、ここで水準を示すことはしません。判断すべきは金額そのものではなく、次の3点です。第一に、着手金と成功報酬の合計がいくらになるか。第二に、業務範囲が申請書作成までか、交付申請・実績報告・事業効果報告まで含むか。実績報告は申請より手間がかかることが珍しくありません。第三に、その金額を申請書に記載する前提を、相手が受け入れるか。記載を渋る相手は、その時点で候補から外して差し支えありません。
なお、報酬を得て官公署に提出する書類を業として作成できるのは、行政書士法などに定めがある場合を除き、行政書士または行政書士法人に限られます。経済産業省の地方局もこの点を明示して注意を促しています(出典:経済産業省関東経済産業局、2026年5月更新)。
年度で変わるもの、変わらないもの
最後に、この記事の使い方です。補助金の情報は賞味期限が短いので、どこを覚え、どこを毎回確認するかを分けてください。
毎回確認するものは、制度名・枠・補助率・上限額・公募回・締切・加点項目・対象経費です。これらは年度で変わります。参考までに、2026年9月時点でミラサポplusの公募スケジュールに掲載されていた国の補助金には、小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、成長加速化補助金、事業承継・M&A補助金などがありました(出典:中小企業庁ミラサポplus公募スケジュール、2026年9月参照)。ただしこれは参照時点の一覧にすぎず、名称も枠も再編されます。本稿を読んでいる時点の公募状況は、必ずミラサポplusとJグランツで確認してください。
覚えておいてよいものは、次の6点です。
- 目的から入口を決める(設備・販路なら経産省系、人なら厚労省系)
- 公式の入口はミラサポplus、Jグランツ、J-Net21、自治体、商工会・商工会議所、よろず支援拠点
- GビズIDプライムは探し始めた日に申請する
- 交付決定日より前の発注・契約・支払いは対象外
- 補助金は後払い。10割を立て替える資金繰りが要る
- 審査は公開された観点で行われる。加点は上限数がある
制度が入れ替わっても、この6点は次の年度でも使えます。IT関連の補助金を検討している会社は、申請要件を満たすためだけでなく実務として、サイバーセキュリティの基礎も同時に整理しておくと、申請書の説得力が上がります。事業承継を視野に入れているなら、事業承継の5ステップと時期を合わせて制度を探すのが効率的です。
5問で確認する 補助金の申請準備度
制度を探し始める前に、取り返せない落とし穴を避ける準備ができているかを確かめる簡易チェックです。
SELF CHECK / 無料・登録不要
5問で確認|補助金・助成金の申請準備度
検討中の投資や採用の計画を思い浮かべて、いまの状態にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。
※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。
まとめ
補助金は制度名から探すのではなく、自社の投資計画を決めてから公式データベースを引くのが最短です。補助金は審査があり不採択があり、助成金は要件を満たせば原則支給される。準備の重心がまったく違います。そして補助金は後払いで、交付決定日より前の発注・契約・支払いは対象外です。制度が入れ替わっても、この順番は変わりません。
NEXT ACTION / 次にやること
今日、代表者のGビズIDプライムを申請する
制度が決まっていなくても、取得しておいて損はありません。マイナンバーカードがあればオンラインで速く作れますが、書類申請なら最大1か月かかります。取得したら有効期限(発行日から2年3か月)をカレンダーに入れ、J-Net21の支援情報ヘッドラインのメールマガジンも登録しておきましょう。
よくある質問
Q補助金と助成金は、どちらから手を付けるべきですか。
自社の投資計画によります。人を雇う・育てる・処遇を改善する予定があるなら、厚労省系の助成金は要件を満たせば原則支給されるため、確度の面で先に当たる価値があります。設備投資や販路開拓が主目的なら経産省系の補助金ですが、審査で不採択になる可能性があるため、補助金が出ない前提でも投資判断が成り立つかを先に確認してください。設備そのものの可否と上限額の決め方は設備投資の判断基準で扱っています。
Q採択されれば、補助金はすぐに振り込まれますか。
振り込まれません。採択の後に見積書等の提出と交付決定があり、交付決定日以降に補助事業を実施し、実績報告と補助金額の確定を経て、請求してから入金されます。小規模事業者持続化補助金の公募要領は「補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです」と明記しています。事業期間中は自社が全額を立て替えます。
Q採択通知が来たら、発注してよいですか。
いけません。発注・契約・支出ができるのは、補助金交付決定通知書に記載された交付決定日以降です。同公募要領は「補助金交付決定通知書の前に送付される採択通知書だけでは、補助事業を始めることはできません」「交付決定日前に行われた発注・契約・支出行為は、補助対象外です」としています。交付決定は採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があるとされているため、納期の逆算に織り込んでください。
QGビズIDの取得にはどれくらいかかりますか。
申請方法で変わります。2026年7月9日以降、法人代表者によるオンライン審査はアカウント作成・更新とも24時間365日速やかに行われるようになった一方、書類申請の審査期間は最大1か月です。マイナンバーカードの有無などで選べる方式が変わるため、GビズIDの公式サイトで自社が選べる申請方式を先に確認してください。発行が間に合わないことによる申請期日の猶予は用意されていません。
Q補助金を受け取ると税金はかかりますか。
受け取った補助金は原則として益金に算入されます。ただし、固定資産の取得または改良に充てるための国庫補助金等については、返還を要しないことが確定した事業年度に圧縮記帳を適用できる場合があります。返還不要が確定する時点は、補助金の額が確定してその通知を受けたときとされています。適用の可否は個別事情によるため、顧問税理士に確認してください。
Q補助金の申請を外部に丸投げできますか。
できません。小規模事業者持続化補助金では、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合、評価にかかわらず不採択・交付決定取消とされています。また、第三者の支援を受けた場合は、料金の支払いの有無にかかわらず、支援者名と金額(着手金・成功報酬を問わず)を申請時に申告する義務があります。外部は書き方の助言役と位置づけ、事業の中身は自社で決めてください。
Q自治体の補助金は、どこで探せば漏れがありませんか。
まずJ-Net21の支援情報ヘッドラインで、地域とカテゴリを指定して検索してください。国・都道府県の支援情報がまとまっており、RSSとメールマガジンで新着を受け取れます。ただし市区町村独自の制度は掲載されないことがあるため、本社所在地と事業所所在地の自治体サイト(産業振興課など)は個別に確認し、地元の商工会・商工会議所やよろず支援拠点にも当たるのが確実です。
出典・調査の対象範囲
- 厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月)・「事業主の方のための雇用関係助成金」 — 共通要件と不支給要件、勧誘への注意喚起。
- 小規模事業者持続化補助金事務局<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)(2026年7月) — 後払い、交付決定前の発注の扱い、審査の観点、加点の上限、第三者支援の記載。個別の補助金の例であり、他の補助金は各公募要領で確認してください。
- デジタル庁Jグランツ・事業者クイックマニュアル・GビズID
- 中小企業基盤整備機構J-Net21 支援情報ヘッドライン・よろず支援拠点、中小企業庁ミラサポplus(2026年9月参照)
- e-Gov法令検索補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律・法人税法、国税庁法人税基本通達 第10章第2節
- 近畿経済産業局経営力向上計画の申請について、関東経済産業局
※制度名・補助率・上限額・締切は年度で変わります。申請の可否と要件は、必ず最新の公募要領と事務局の案内でご確認ください。



