MANAGEMENT / M&A・譲渡実務

デューデリジェンス(DD)とは 中小M&Aで調べられる項目・費用と、売り手が先に準備すること

公開 2026.10.01

デューデリジェンス(DD)とは、M&Aの最終契約の前に、主に買い手が専門家を使って売り手の財務・税務・法務・事業などを調べる工程です。調査項目と結果が価格・スキーム・表明保証に効く仕組み、費用と補助金、売り手の準備を中小M&Aガイドラインで解説します。

デューデリジェンス(DD)とは、最終契約の前に主に買い手が専門家を使って売り手の実態とリスクを調べる工程です。
  • 中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、DDを主に譲り受け側(買い手)がFAや士業等専門家を活用して、譲り渡し側(売り手)の財務・法務・ビジネス(事業)・税務等の実態を調べる工程と位置づけています。基本合意のあと、最終契約の前に行われます
  • DDで見つかった点は、最終契約の前に再交渉されます。ガイドラインは、財務DDで多額の簿外債務・偶発債務が見つかれば、株式譲渡から事業譲渡へスキームの変更を余儀なくされることもあると書いています。譲渡額だけでなく、表明保証・補償・クロージングの前提条件にも反映されます
  • 売り手にとって「調べられないほうが得」ではありません。ガイドラインは、調査が十分でない場合、売り手が最終契約で負う表明保証の範囲や補償額・補償期間の負担が増えうると明記しています。仲介者はDDを自ら実施すべきでないとされている点も押さえておく必要があります

M&Aの話が進み、買い手から「DDに入ります」と言われたとき、売り手の経営者が知りたいのは「何を見られるのか」「見つかったらどうなるのか」「何を準備すればよいのか」です。本稿が確認した検索上位の解説記事は、買い手の目線で調査の種類を並べ、費用の相場を出典なしで示すにとどまっています。本稿は、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」と事業承継・M&A補助金の公募要領を一次情報として、売り手の経営者が判断すべきことを順に整理します。M&A全体の工程と仲介・FAの選び方はM&Aの基本プロセス、売ったあとの税金と手取りはM&Aの税金と手取りの比較で扱っているため、本稿はDDに絞ります。

最初に結論:DDで何が調べられ、契約のどこに効くか

ポイント:DDは種類ごとに担い手と見られる対象が違います。見つかった問題は、譲渡額・スキーム・表明保証・クロージングの前提条件のいずれかに反映されることが多く、場合によってはM&Aの中止につながります。

ガイドラインは、DDの調査項目は「M&Aの規模や実施希望者の意向等により異なる」としたうえで、一般的には財務DDと法務DDから構成され、ほかにビジネス(事業)DD、税務DD、人事労務DD、知的財産DD、環境DD、不動産DD、ITDDといった多様なDDがあると整理しています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」用語集、令和6年8月)。中小M&Aで売り手の経営者がまず押さえるべき主要な種類を、ガイドラインの記述に沿って並べると次のとおりです。

まず見るべき判断表|DDの種類と、問題が見つかったときに効く場所

DDの種類主に見られる対象ガイドラインが挙げる主な担い手問題が見つかったときに効く場所
財務DD過去の実績、現在の財務状態、簿外債務・偶発債務、事業計画の基礎情報公認会計士譲渡額の修正、スキームの変更、中止の判断
税務DD過去の申告内容の誤り(追徴課税のリスク)、税務調査の履歴、欠損金の使用可能性税理士譲渡額の修正、表明保証・補償
法務DD株式・会社組織、重要な契約、資産・負債、人事・労務、訴訟・紛争、許認可・コンプライアンス・環境問題弁護士表明保証・補償、クロージングの前提条件、スキームの変更
ビジネス(事業)DD商流・収益構造、市場での競争力、事業の将来性、統合によるシナジー中小企業診断士譲渡額(将来の収益の見込み)、統合後の計画
人事労務DD未払残業代などの労務債務、就業規則・労働条件独立の担い手の記載なし(法務DD等に一部含まれることがある)譲渡額の修正、表明保証・補償

(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅴの公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士の各節および用語集をもとに編集部が整理)

DDは「調べて終わり」ではなく、最終契約の条件を決め直す材料です。売り手にとっての判断は、見つかりそうな問題を先に把握し、譲渡額で処理するか表明保証で処理するかを自分から交渉できる状態にしておくことです。

表の右端の列が本稿の主題です。DDは「調べて終わり」の手続ではありません。ガイドラインは最終契約の交渉を「デュー・ディリジェンス(DD)で発見された点や基本合意で留保していた事項について再交渉を行い、最終的な契約を締結する工程」と説明しています。つまり、DDで出てきた事実は最終契約の交渉材料になります。以下、定義、調べられる項目、契約への跳ね返り方、費用、頼む相手、売り手の準備の順に見ていきます。

デューデリジェンスとは 定義と、M&Aの流れの中での位置

ポイント:DDは基本合意のあと、最終契約の前に、主に買い手が専門家に頼んで行う調査です。目的は価格の精査だけでなく、買収後の改善と統合の材料集めにもあります。

ガイドラインの定義

デューデリジェンス(Due Diligence)は「DD」「デューデリ」と略されます。ガイドラインは、対象企業である譲り渡し側の各種のリスク等を精査するため、主に譲り受け側がFAや士業等専門家に依頼して実施する調査と定義しています。本文ではさらに、DDは譲渡対価の金額の精査や、判明した実態を踏まえてさらに事業の改善を行うこと等の目的で行われ、どの調査を実施するかは「譲り受け側の意向に従うこととなる」と書いています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(7)、令和6年8月)。

ここから、売り手の経営者が最初に理解しておくべき前提が2つ出てきます。1つ目は、DDの範囲を決めるのは基本的に買い手だということです。売り手が「この項目は調べないでほしい」と一方的に指定できる構造にはなっていません。ただしガイドラインは、仲介者に対し、売り手に過大な負担が生じないよう調査対象を適切な範囲内とし、結果を売り手にも開示するよう買い手に働き掛けることが望ましいとしており、売り手が範囲の適正化と結果の共有を求める余地はあります(後述)。2つ目は、DDの結果はまず買い手の判断材料になるということです。ガイドラインは、DDで得た情報がクロージング後の統合作業(PMI)にも活用されると書いており、買い手にとってDDは買収後の経営の準備でもあります。

流れの中での位置

中小M&Aの一般的な流れのうち、DDの前後だけを抜き出すと次のようになります。

  1. 基本合意:スキーム(株式譲渡か事業譲渡か)、DD前の時点での譲渡対価の予定額、役員・従業員の処遇などを仮に取り決める
  2. DD:買い手が専門家を使って売り手を調査する
  3. 最終契約の交渉・締結:DDで発見された点と、基本合意で留保した事項を再交渉する
  4. クロージング:株式・財産の譲渡と、譲渡対価の支払を行う

ガイドラインは、基本合意書について基本的に法的拘束力がないものの、独占的交渉権や秘密保持義務等には法的拘束力を認めることが通常だと説明しています。基本合意で示された金額はあくまで「DD前の時点」の予定額であり、DDの結果で動く前提の数字です。売り手の経営者がこの点を理解しないまま社内外に金額を前提とした話をしてしまうと、DD後に修正が入ったときに引っ込みがつかなくなります。

バリュエーション(企業価値評価)との違い

DDとよく混同されるのが、企業価値を数字で評価するバリュエーションです。ガイドラインはバリュエーションを「企業又は事業の価値を定量的に評価すること」とし、評価額は譲渡額を決める際の目安の一つとして扱われると説明しています。両者の関係を整理すると、バリュエーションが「いくらの価値があるか」を出す作業、DDが「その前提に誤りや隠れたリスクがないか」を確かめる作業です。DDで簿外債務が見つかれば、バリュエーションの前提が崩れ、評価額そのものを引き直すことになります。

項目デューデリジェンス(DD)バリュエーション(企業価値評価)
問い前提に誤りや隠れたリスクはないかいくらの価値があるか
主な実施者買い手が依頼する専門家仲介者・FA、士業等専門家
主な時期基本合意のあと、最終契約の前主にマッチング前(DDの結果を受けて見直すことがある=編集部)
結果の使われ方譲渡額・スキーム・表明保証・補償の再交渉譲渡額を決める際の目安の一つ

(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」用語集・第1章をもとに編集部が整理)

調べられる項目 財務・税務・法務・事業・人事労務

ポイント:株式譲渡では会社の法人格ごと引き継ぐため、簿外債務・偶発債務まで含めた全般的な調査になりやすくなります。売り手は「どの種類のDDで何を見られるか」を先に知っておくと、資料の準備が速くなります。

株式譲渡はDDが詳細になりやすい

ガイドラインは株式譲渡について、譲り渡し側の法人格に変動がないため、簿外債務(未払残業代等、貸借対照表上の数字には表れないもの)と偶発債務(紛争に関する損害賠償債務等、現時点では未発生だが将来的に発生し得るもの)のリスクが比較的高くなりやすく、「より詳細なデュー・ディリジェンス(DD)が実施される傾向にある」と書いています。一方の事業譲渡は、承継する財産を選べるため簿外債務・偶発債務のリスクを比較的遮断しやすいとされています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(8)、令和6年8月)。株式譲渡を選ぶ場合、売り手は「会社の過去をまるごと見られる」前提で準備するのが現実的です。

種類ごとに見られること

財務DDは、売り手の過去の実績の把握、現在の財務状態の調査による財務リスクの特定、将来の事業計画の基礎となる情報の入手を目的とします。調査範囲と手法は、買い手がどのスキームを前提にどの程度のリスクを容認できるか、どの程度の時間とコストを掛けられるかで変わり、依頼者と公認会計士が事前に合意して決めます。株式譲渡を前提とする場合には、簿外債務・偶発債務も含めた全般的な調査を要することが多いとされています。

中小企業庁の「中小M&A市場改革プラン」は、M&Aの確度を検討するための精緻な財務の把握として、損益計算書の側では一時的な損益を控除した正常収益力と、M&Aにより不要となるオーナーコスト(役員報酬等)の検証を、貸借対照表の側では資産の時価評価や現金相当物・負債相当物の精査を挙げています(出典:中小企業庁「中小M&A市場改革プラン」、2025年8月)。プランはこれをDDに限った話としてではなく、M&Aの確度を検討する段階の財務の把握として書いていますが、財務DDでも同じ観点、つまり「利益が本当はいくらか」「社長がいなくなると消える費用はいくらか」が問われると考えておくのが実務的です(編集部の見方)。

税務DDは、過去の申告内容の誤りによる追徴課税など、企業価値に影響する潜在的な税務リスクを把握するために行います。ガイドラインが挙げる一般的な手続は、経営陣・顧問税理士へのインタビュー、過去の税務申告書のレビュー、過去の税務調査・税務訴訟等の把握、過去の組織再編・資本取引等の税務処理の把握、税務上の欠損金の使用可能性や各種税制の適用状況の把握です。ガイドラインは、顧問税理士が資料の提供やインタビューに積極的に協力することが望ましいとも書いています。

法務DDは、弁護士が依頼者と協議して調査範囲を決めます。株式譲渡では法的なリスクをそのまま引き継ぎやすいため、全般的かつ網羅的に行うことが多く、その場合は株式・会社組織、重要な契約、資産及び負債、人事・労務、訴訟・紛争、許認可・コンプライアンス・環境問題等の観点から調査するケースが多いとされています。

ビジネス(事業)DDは、商流や収益構造といったビジネスモデルを整理し、市場における競争力、事業の将来性、買い手との統合によるシナジーを検討するものです。ガイドラインは中小企業診断士の業務として位置づけています。

人事労務で見られやすい未払残業代

ガイドラインは公認会計士の節で、中小M&Aでは名義株や所在不明株主の存在、未計上の退職給付債務や未払残業代等の簿外債務等が「問題となるケースが多く」と書いています。未払残業代が重く見られるのは、さかのぼって請求される期間があるからです。厚生労働省は、2020年4月1日以降に支払われる賃金について、賃金請求権の消滅時効期間を5年(旧法では2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年とされていると案内しています。賃金台帳などの記録の保存期間も、5年(当分の間は3年)です(出典:厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」)。期間は法改正で変わりうるため、DDの時点の制度を顧問の社会保険労務士等に確認してください。

賃金請求権の消滅時効(2020年4月1日以降に支払われる賃金)

5年

旧法の2年から延長。賃金台帳などの記録の保存期間も5年

当分の間の取扱い

3年

経過措置として当分の間は3年。この期間分の未払残業代がさかのぼって請求されうる

退職金制度を持つ会社では、将来の支払義務が貸借対照表に十分に計上されていないと、同じく簿外債務として扱われます。自社の制度が中退共・企業型DC・自社積立のどれかで、DDで見られる論点は変わります。制度の違いは退職金制度の設計で整理しています。

DDの結果は「価格・スキーム・契約条件」に跳ね返る

ポイント:DDで見つかった問題は、譲渡額の引き下げだけでなく、スキームの変更、表明保証と補償、クロージングの前提条件という形で最終契約に入ります。どの形で入るかで、売り手の手取りと売却後の責任が変わります。

跳ね返り方は4つある

ガイドラインの記述から、DDの結果が最終契約に反映される経路を整理すると次の4つになります。

DDの結果が最終契約に反映される4つの経路

経路何が起きるかガイドラインの記述
譲渡額の修正発見されたリスクの分だけ譲渡額が下がるDDの目的に譲渡対価の金額の精査がある。譲渡額は両当事者の希望やDDの結果を踏まえて交渉され、最終契約で確定する
スキームの変更株式譲渡をやめ、承継する財産を選べる事業譲渡に切り替える財務DDで多大な簿外債務・偶発債務が発見された場合、株式譲渡から事業譲渡へ変更を余儀なくされることもある
表明保証・補償売り手が「この事実は真実かつ正確だ」と保証し、違反時に補償する表明保証の範囲はDDの実施結果を踏まえ、問題が顕在化する可能性や影響の大きさ、譲渡対価への織り込みを勘案して擦り合わせる
クロージングの前提条件・中止問題の解消をクロージングまでの条件にする、またはM&Aそのものを取りやめる財務DDの結果は、譲渡対価やスキームを修正したり、中小M&Aそのものを取りやめたりする判断の重要な要素となり得る。クロージングの前提条件は最終契約の主要事項の一つ(DDの結果との結び付けは編集部の整理)

(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(8)・第2章Ⅴ1(2)④をもとに編集部が整理)

売り手から見ると、どの経路で処理されるかは大きな違いです。譲渡額で処理されれば、その指摘事項については売却後の補償の問題が残りにくくなります(ただし支払金の返還に関する条項など、売却後に金額が動く条項を別に置けば別です)。表明保証・補償で処理されれば、クロージング時の譲渡額は高く見えても、売却後に問題が顕在化したときに補償を求められる可能性が残ります。

表明保証とは何か

ガイドラインは表明保証条項を、契約の一方当事者が他方当事者に対して、一般的には最終契約締結時とクロージング時の両時点で、契約に関する事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する条項と説明しています。例として、従業員との労働紛争が存在しないと表明保証していたのに実際には紛争があり、M&A実行後に和解が成立した場合、和解金相当額を売り手(またはその経営者等)が負担するケースが挙げられています。

表明保証の範囲をめぐる紛争については、ガイドラインは(ⅰ)最終契約後に当初見込んでいたバリュエーションに見合った収益が実現しない場合や、(ⅱ)DDで検出されなかった問題が顕在化し、事後的な治癒が困難と判明した場合などに生じやすいとし、当事者間の感情面での対立が大きく、適切な損害額の算定も困難なことが多いため、請求が過大になりやすいと書いています。そのうえで、DDの結果を踏まえて双方が認識を擦り合わせる工程を経ることなく、「定型的に無期限、無制限の表明保証条項や適用場面が判然としない表明保証条項を設定することは慎重に検討すべきである」としています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(8)③、令和6年8月)。

譲渡額をあとで動かす条項には慎重に

DDの結果、買い手と売り手の評価が合わないときに、譲渡額を最終契約後に調整・修正する条項が提案されることがあります。ガイドラインは、クロージング後の一定期間(3年以内が多い)の業績目標の達成で追加の対価を払うアーンアウト条項、最終契約からクロージングまでの企業価値の変動を反映する株価調整条項、過去の投資に基づく損失や過年度決算の修正が発生した場合に支払済みの対価を払い戻す支払金の返還に関する条項を挙げ、いずれも解釈の相違で争いに発展するリスクがあるとしています。とくにアーンアウト条項については、DDや当事者間の調整を十分に実施したうえで確定していない具体的なリスクに対応して設定されるべきものであり、調整が十分に実施されていない段階で評価の差を埋める目的で設けるべきか、慎重に検討すべきだとしています。

❌ DDで評価が合わなかった差額を、とりあえずアーンアウト条項で埋めて最終契約に進む ⭕ 差額の原因になったDDの指摘事項を特定し、譲渡額で処理するか、範囲と期間を限った表明保証で処理するかを先に決める

契約書の条項をどの順番で読むかは、取引先との契約を例に契約書のチェックポイントで整理しています。M&Aの最終契約は金額が大きく、売却後に争えば感情面の対立も大きくなるため、署名前に弁護士の確認を受け、必要ならガイドラインが勧めるセカンド・オピニオンを取ってください。

「調べられないほうが得」は誤り 簡易DDと売り手の責任

ポイント:中小M&Aでは本格的なDDをせずに終えることもあります。しかし調査が薄いほど、売り手は表明保証で広い責任を負わされやすくなります。売り手にとってもDDは身を守る工程です。

中小M&Aでは簡易な調査で終えることもある

ガイドラインは、DDは想定し得るリスク全般を調べることもあれば、対象事項等を限定して簡易な形で行うこともあり、調査の密度は様々だとしています。そのうえで中小M&Aの実務について、譲り受け側が専門家費用を投じて本格的なDDを行うことなく、「譲り渡し側の数年分の税務申告書の確認及び譲り渡し側経営者へのヒアリング等の調査だけで終えることもある」と書いています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(7)、令和6年8月)。

薄い調査のしわ寄せは売り手に来る

売り手の経営者が誤解しやすいのは、「調べられる範囲が狭いほど問題が見つからず、高く売れる」という発想です。ガイドラインは逆の帰結を書いています。中小企業は一見問題なく経営されていても何らかの課題・リスクを抱えていることが少なくなく、経営者自身がそれを認識できていないケースもあるため、経営者からのヒアリングだけでリスクを評価することには限界があるとしたうえで、調査が十分になされない場合には、最終契約において譲り渡し側が負う各種義務(表明保証の範囲や補償額・補償期間等)の負担の増加に繋がりうる点に留意が必要だとしています。

編集部の見方では、理屈は単純です。買い手は調べていない部分のリスクを、売り手の表明保証で埋めようとします。調査で問題がないと確かめられた部分は表明保証を絞れますが、調べていない部分は「問題がないことを保証してほしい」と広く求められます。その結果、売り手は売却後も長い期間、自分でも把握していないかもしれないリスクの責任を負い続けることになります。ガイドラインがDDを「譲り渡し側・譲り受け側双方にとって重要なプロセス」とし、予算等の制約がある場合であっても、検討対象を絞るなどの工夫をして実施する調査の内容を検討することが望ましいとしているのも、この帰結と整合します。

❌ 「うちは問題ないから」と調査を最小限にしてもらい、そのかわりに包括的な表明保証に署名する ⭕ 簿外債務が出やすい労務・税務などは調査を受け入れ、調査を受けた範囲を根拠に、表明保証の範囲・期間・上限額を絞る交渉をする

表明保証の理由を聞いてよい

ガイドラインは、売り手は潜在的リスクを把握する観点から、DDの結果、買い手がどのような問題点を認識しているために当該表明保証の設定を求めているかについて確認を求め、その妥当性等を議論することが望ましいと書いています。また仲介者に対しては、可能であれば売り手に過大な負担が生じないようDDの調査対象を適切な範囲内とし、DDの結果を売り手にも開示して情報共有するよう買い手に働き掛けることが望ましいとしています。

つまり売り手は、DDの結果を「買い手の内部資料」として遠慮する必要はありません。表明保証の条項案が出てきたら、条項ごとに「どの指摘事項に対応するものか」を確認し、対応する指摘がない条項は範囲・期間・上限額を絞る交渉の材料にしてください。

❌ 表明保証の条項案を、仲介者から「一般的な内容です」と言われてそのまま受け入れる ⭕ 条項ごとに根拠となったDDの指摘を確認し、期間と責任の上限額が書かれているかを必ず確かめる

なお、表明保証違反に備える手段として表明保証保険があります。ガイドラインは、表明保証保険を購入すると表明保証違反に関するリスクを保険会社に引き受けさせることができ、表明保証や補償の範囲に関する交渉が円滑化する場合もあるとしています。ただし購入するには、一般的にDDの結果を報告したDDレポート等を保険会社に提出し、引受審査を経る必要があります。ここでもDDが前提になる点は同じです。

DD費用は誰がいくら払うか 相場ではなく「範囲」で決まる

ポイント:DDは通常、依頼した買い手が費用を負担しますが、その額は買い手の予算を通じて譲渡額にも影響しえます。費用に公的な相場はなく、調査範囲で決まります。費用の一部は事業承継・M&A補助金の対象になります。

費用を払うのは誰か

ガイドラインは、通常は譲り受け側がFAや士業等専門家に調査の実施を依頼すると書いています。仲介者はDDを直接実施すべきでないとされているため、買い手がDDで専門的な支援を必要とする場合は別の支援機関から支援を受ける場合もあり、その支払は買い手にとってM&Aに係るコストになります。ガイドラインは、このコストが最終的には売り手が受け取る譲渡額に影響する場合もあると指摘しています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅴ4(1)②、令和6年8月)。買い手の予算の総額が決まっていれば、DD費用が膨らむほど譲渡額に回せる額は減るという構造です。なお、中小M&Aでは少ないものの、売り手が自ら公認会計士や弁護士に依頼して事前にDDを行う「セラーズDD」もあるとガイドラインは書いています。この場合の費用は売り手が負担し、後述の補助金の売り手支援類型でもDD費用を補助対象経費にできます。

「相場」に出典はない

検索上位の解説記事では、中小企業のDDは100万〜500万円程度といった相場が示されています。しかし本稿が確認した範囲では、どれも調査や統計の出典が示されていません。編集部が確認した公的資料(中小M&Aガイドライン、中小M&A市場改革プラン、事業承継・M&A補助金の公募要領)にも、DD費用の相場を示す統計は見当たりませんでした。

ガイドラインが示しているのは、相場ではなく費用の決まり方です。財務DDの調査範囲と手法は、買い手がどのスキームを前提にどの程度のリスクを容認できるか、どの程度の時間やコストを掛けられるかによって異なり、依頼者と公認会計士が事前に合意して決めるとされています。つまり、費用は「何を、どの年度まで、どの深さで調べるか」で決まります。見積もりを比べるときは、総額ではなく調査範囲・対象年度・手法を揃えて比べてください。

事業承継・M&A補助金の対象になる

DD費用は、事業承継・M&A補助金の専門家活用枠で補助対象になります。ただし公募要領は、補助対象のDD費用から「仲介者がおこなうもの」を除いています。2026年9月公開の16次公募の要領の要点は次のとおりです。

項目買い手支援類型(Ⅰ型)売り手支援類型(Ⅱ型)
補助率補助対象経費の2/3以内1/2以内(営業利益率の低下または直近決算の赤字に該当すれば2/3以内)
補助上限額600万円(DDを実施する場合は200万円を加算)600万円(DDを実施する場合は200万円を加算)
DDの扱い補助対象経費に計上するかどうかを問わず、DDの実施が要件DD費用を補助対象経費にできる
クロージングしなかった場合上限額を300万円に変更し、原則DD費用のみを補助対象とする上限額を300万円に変更し、原則DD費用とシステム利用料を補助対象とする
申請受付期間2026年10月2日〜11月6日17時2026年10月2日〜11月6日17時

(出典:事業承継・M&A補助金事務局「専門家活用枠 公募要領(16次公募)」、2026年9月。小規模事業者等を対象とする「小規模売り手支援類型」(補助上限額450万円)は別の要領です)

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事業承継・M&A補助金 専門家活用枠(16次公募)の要点

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買い手支援類型(Ⅰ型)の補助率(以内)

600万円

補助上限額(Ⅰ型・Ⅱ型共通)

+200万円

DDを実施する場合の上限額の加算

出典:事業承継・M&A補助金事務局「専門家活用枠 公募要領(16次公募)」(2026年9月)。補助率・上限額は公募回ごとに変わります。

なお、200万円の加算は上限額の加算です。公募要領は、DD費用そのものも補助額ベースで200万円以内で申請するよう求めています(有資格者が財務・税務・法務などのDDを複数行う場合は、DD1種につき補助額ベースで200万円まで認める場合があります)。

この補助金には、DDの段取りに直結する注意点が2つあります。1つ目は、専門家との委託契約は交付決定日以降に結ぶ必要があることです。公募要領は、交付決定通知書の受理後に補助事業に着手(専門家との委託契約締結等)するよう求めています。交付決定の前にDDの契約を結んでしまうと、その費用は対象外になります。2つ目は、仲介・FAの費用が対象になるのはM&A支援機関登録制度に登録された支援機関に限られることです。ただし事務局のパンフレットは、DD業務のみの場合は登録不要としています(支援内容が実質的にFA業務または仲介業務と同等と認められる場合を除く)(出典:事業承継・M&A補助金事務局「専門家活用枠 16次公募のご案内」)。

❌ DDの日程を優先して専門家と契約し、あとから補助金を申請する ⭕ 補助金を使うなら、公募の締切と交付決定の時期から逆算してDDの契約日を決める

補助率・上限額・要件は公募回ごとに変わります。申請を検討する場合は、必ず事務局のWebサイトで最新の公募要領を確認してください。補助金全般の探し方と、申請に必要なGビズIDの取得は補助金・助成金の探し方で解説しています。

仲介者はDDをすべきでない 誰に頼み、何を確かめるか

ポイント:両当事者から依頼を受ける仲介者は、DDを自ら実施すべきでないとされています。DDを担うのは買い手が依頼する別の専門家です。仲介者が「DDもやります」と言うなら、その範囲を確認してください。

ガイドラインの規律

ガイドラインは、DDは一方当事者の意向が反映されやすいことから、「両当事者を依頼者とする仲介者はDDを自ら実施すべきでなく、DD報告書の内容に係る結論を決定すべきでない」としています。ただし、DDの実施者(買い手が依頼する別の支援機関または買い手自身)の下で、売り手の開示資料の整理・作成のサポートや、DDの実施スケジュールの調整・管理といった、調査内容の検討や評価・判断に直接影響しない範囲の支援は可能とされています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章、令和6年8月)。

さらにガイドラインは、仲介者・FAがDDに関してスケジューリングや書類準備の補助にとどまり自らDDを実施しない場合は、その旨を明確に説明し、DDは他の支援機関に依頼する必要があることを明確に伝えるよう求めています。

情報提供窓口が例示しているトラブル

中小企業庁とM&A支援機関登録制度事務局が2026年9月1日に公表した資料には、M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口の案内が添えられています。そこでは「M&A支援機関との契約・支援内容で、こんなことはありませんか?」として相談が想定されるトラブルの類型が例示されており、その一つに「適切なデュー・ディリジェンスが実施されなかった」があります。内容は、仲介者のM&A支援機関が自らDDを実施していたこと等でDDが不十分であったこと、弁護士や会計士等の専門家の意見を求めることができることについて知らされなかったこと、と説明されています。個別の事案として公表されたものではありませんが、窓口が典型例として挙げるほど想定されるトラブルだということです(出典:中小企業庁財務課・M&A支援機関登録制度事務局「不適切な営業行為に係るトラブルの発生を踏まえた対応について」、令和8年9月1日)。

売り手が確かめること

売り手の立場で確認すべきことを、ガイドラインの記述に沿って並べると次のとおりです。

  1. DDを誰が行うか:買い手側のFAや、買い手が依頼する公認会計士・弁護士等なのか、仲介者自身なのか。仲介者が調査や結論づけまで担うと言う場合は、ガイドラインの規律との関係を確認する
  2. 調査の範囲:どの種類のDDを、どの年度まで行うのか。範囲が狭いなら、表明保証が広く求められる可能性を念頭に置く
  3. 社内への非開示の段取り:ガイドラインは、社内に開示していない場合は非開示の役員・従業員に悟られずに実施する等の工夫が必要で、FAや士業等専門家の指示を守ることが重要だとしている。現地調査やインタビューの日時・場所を事前に決めておく
  4. 結果の共有:DDの結果のうち、表明保証の根拠になる指摘事項を開示してもらえるか

仲介とFAの構造的な違い、仲介契約で確認すべき条項はM&Aの基本プロセスで詳しく扱っています。

売り手が今から準備すること 資料の整理と「見える化」

ポイント:DDで時間がかかり評価を下げる原因になりやすいのは、資料がないことと、会社と社長個人の財産が混ざっていることです。DDの前、できれば相談の前から整理しておくと、交渉の主導権を保ちやすくなります。

相談の段階で用意するもの

ガイドラインは、支援機関に最初に相談する際には、直近3年分の税務申告書・決算書(損益計算書・貸借対照表を含む)・勘定科目内訳明細書の写しを用意すれば十分で、可能であれば会社案内や自社ホームページの写し等の事業の概要が分かる資料もあるとよいとしています。それ以外の詳細な資料は、支援機関からの指示を受けてから準備すれば足りるとされています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ2(1)、令和6年8月)。ガイドラインは仲介者・FAに対しても、DDでは買い手が売り手に大量の資料を要求するのが一般的であり、とくに小規模企業では会計帳簿や各種規程類等が整備されていない場合が多いことから、早い時期から書類やデータの整備を促す必要があるとしています。

DDの前に整えておく項目

ガイドラインが中小M&Aに先立つ「見える化」「磨き上げ」として最低限必要とする株式・事業用資産等の整理・集約と、士業の節で問題になりやすいと挙げている項目を、DDで見られる観点と対応させると次のようになります。

整えておく項目DDで問われることガイドラインの記述
株主名簿・名義株・株券売り手が本当に全株式を持ち、譲渡できるか株式譲渡では基本的に経営者が全株式を保有しておく必要がある。名義株がないか、株券が適切に管理されているかの確認が必要
株主総会・取締役会の議事録過去の重要な意思決定が適法に行われたか中小企業では株主名簿や議事録等の整備が不十分な者が少なくない
事業用資産の名義・担保・係争譲渡後も事業を続けられるか重要な事業用資産が第三者名義・担保設定・係争中だと事業継続に支障が生じ得る
会社と社長個人の財産の区分社長個人の名義の事業用資産、会社名義の私的な資産はないか役員社宅・役員貸付金・役員保険などの区分・分離。可能な限り最終契約前に整理することが望ましい
未払残業代・未計上の退職給付債務貸借対照表に出ない労務債務はいくらか未計上の退職給付債務や未払残業代等の簿外債務等が問題となるケースが多い
経営者保証社長個人の保証を譲渡と同時に外せるか保証の解除・移行をクロージング条件とすることや、解除されなかった場合の条項を盛り込むことが重要。ただし解除・移行の実施は最終的には金融機関等の判断による

(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ2(4)・Ⅱ3(8)、第2章Ⅴ1・2・4をもとに編集部が整理)

このうち経営者保証は、DDの論点というより最終契約とクロージングの論点ですが、金融機関との調整に時間がかかるため準備は早いほどよい項目です。金融機関との交渉材料の揃え方は金融機関交渉の進め方で解説しています。

マイナスの情報ほど先に出す

ガイドラインは、支援機関への相談の際には「自分にとってマイナスな情報や後ろめたい情報ほど先に伝えておく真摯な姿勢が望まれる」と書いています。DDの局面でも同じことが言えます。売り手が把握している問題をDDの前に開示しておけば、譲渡額に織り込んで処理するか、範囲を限った表明保証で処理するかを冷静に交渉できます。逆に、DDで買い手に見つけられた問題は、ほかにも隠れた問題があるのではという不信を生み(編集部の見方。ガイドラインも、買い手に不信感を与えないために資料の準備を支援する必要があるとしています)、調査範囲の拡大や包括的な表明保証の要求につながりやすくなります。

❌ 未払残業代の可能性を把握しているが、DDで指摘されなければそのままにしておく ⭕ 社会保険労務士に概算を出してもらい、DDの前に開示して譲渡額で処理するか、範囲と期間を限った表明保証で処理するかを交渉する

親族や社内への承継も含めて、譲渡までの準備を何年前から始めるかは事業承継の進め方で、逆算のスケジュールとして整理しています。

5問で確認する 売り手のDD準備度

買い手のDDに入る前に、売り手として整えておくべき項目を確かめる簡易チェックです。

SELF CHECK / 無料・登録不要

5問で確認|売り手のDD準備度

いまの自社の状態にいちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1直近3年分の税務申告書・決算書・勘定科目内訳明細書の写しをすぐに出せる
  2. Q2株主名簿が整い、名義株や所在不明株主がいないことを確認している
  3. Q3株主総会・取締役会の議事録と、事業用資産の名義・担保を整理している
  4. Q4会社と社長個人の財産(役員社宅・役員貸付金・役員保険など)を区分している
  5. Q5未払残業代や未計上の退職給付債務の有無を、専門家と概算している

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ

デューデリジェンス(DD)は、基本合意のあと最終契約の前に、主に買い手が専門家を使って売り手の財務・税務・法務・事業・人事労務などを調べる工程です。売り手の経営者が判断すべきことは、次の5点に集約できます。

第一に、DDの結果は最終契約の条件を決め直す材料になることです。譲渡額の修正、株式譲渡から事業譲渡へのスキーム変更、表明保証と補償、クロージングの前提条件、そしてM&Aそのものの中止まで、経路は複数あります。どの経路で処理されるかで、手取りと売却後の責任が変わります。

第二に、調べられないほうが得ではないことです。ガイドラインは、調査が十分でない場合に売り手の表明保証の範囲や補償額・補償期間の負担が増えうると明記しています。表明保証の条項ごとに、根拠となったDDの指摘を確認してください。

第三に、費用は相場ではなく範囲で決まることです。DD費用に公的な相場はなく、調査範囲・対象年度・手法で決まります。事業承継・M&A補助金の専門家活用枠では、DDを実施する場合に補助上限額が200万円加算されますが、専門家との契約は交付決定日以降に結ぶ必要があります。

第四に、仲介者はDDを自ら実施すべきでないことです。DDの実施者と範囲を確認し、補助金を使う場合は仲介者が行うDDの費用が対象外になる点にも注意してください。

第五に、準備は早いほど交渉が楽になることです。株主名簿・議事録・事業用資産の名義・会社と個人の財産の区分・労務債務を整理し、マイナスの情報ほど先に出す。それが、DDを価格を下げられる場ではなく、条件を確定させる場にするための準備です。

NEXT ACTION / 次にやること

株主名簿と直近3年分の決算書・申告書を揃え、気になる論点を1枚に書き出す

名義株、役員貸付金、未払残業代の可能性など、自社で把握しているマイナスの情報を先に一覧にしておくと、DDの前に開示の順番と処理の仕方を専門家と決められます。

よくある質問

Qデューデリジェンスとは、簡単に言うと何ですか。
A

M&Aの最終契約の前に、主に買い手が公認会計士・税理士・弁護士などの専門家を使って、売り手の会社の実態とリスクを調べる工程です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、譲渡対価の金額の精査や、判明した実態を踏まえた事業の改善等の目的で行われると説明しています。結果は譲渡額・スキーム・表明保証などの再交渉に使われます。

QDDの費用は売り手と買い手のどちらが払いますか。
A

通常は、調査を依頼する買い手が支払います。ガイドラインは、通常は譲り受け側がFAや士業等専門家に調査の実施を依頼すると書いています。ただし、買い手が払うDD費用はM&Aに係るコストとして買い手の予算に含まれるため、最終的に売り手が受け取る譲渡額に影響する場合もあるとガイドラインは指摘しています。

QDDにはどのくらいの期間がかかりますか。
A

ガイドラインや補助金の公募要領には、DDの標準的な期間は示されていません。期間は調査の種類・対象年度・資料の整い方で大きく変わります。調査範囲を決めた時点で、依頼先の専門家に日程の見込みを出してもらうのが確実です。社内に譲渡を開示していない場合は、現地調査やインタビューを従業員に悟られない日時に設定する必要があり、その制約も日程に影響します。

Q小さな会社の譲渡でもDDは行われますか。
A

行われることも、本格的なDDを行わずに終えることもあります。ガイドラインは、中小M&Aでは本格的なDDをせず、売り手の数年分の税務申告書の確認と経営者へのヒアリング等の調査だけで終えることもあると書いています。ただし、調査が十分でない場合には売り手の表明保証の範囲や補償額・補償期間の負担が増えうるとして、予算の制約がある場合でも、検討対象を絞るなどの工夫をして実施する調査の内容を検討することが望ましいとしています。

QDDで問題が見つかったら、M&Aは破談になりますか。
A

必ず破談になるわけではありません。ガイドラインは、DDの結果を受けて譲渡対価やスキームを修正したり、M&Aそのものを取りやめたりする判断がありうるとしています。たとえば多額の簿外債務・偶発債務が見つかった場合には、株式譲渡から、承継する財産を選べる事業譲渡へ変更することもあるとされています。問題の内容と金額によって、譲渡額の調整、表明保証の対象、クロージングの前提条件などの形で処理されます。

Q仲介会社がDDもやってくれると言っています。問題はありますか。
A

ガイドラインは、両当事者を依頼者とする仲介者はDDを自ら実施すべきでなく、DD報告書の内容に係る結論を決定すべきでないとしています。仲介者ができるのは、開示資料の整理・作成のサポートや日程調整など、調査内容や評価・判断に直接影響しない範囲の支援です。M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口も、仲介者が自らDDを実施していたこと等でDDが不十分だったケースを、相談が想定されるトラブルの類型として例示しています。DDの実施者と範囲を必ず確認してください。

Q売り手は、DDの前に何を準備すればよいですか。
A

最初の相談の段階では、直近3年分の税務申告書・決算書・勘定科目内訳明細書の写しがあれば十分だとガイドラインは書いています。DDに向けては、株主名簿と名義株の整理、株主総会・取締役会の議事録、事業用資産の名義と担保、会社と社長個人の財産の区分(役員社宅・役員貸付金・役員保険など)、未払残業代や未計上の退職給付債務の有無を確認しておくと、調査が速く進み、交渉の主導権も保ちやすくなります。

出典・調査の対象範囲

※判断表の整理・4つの経路・自己診断は、本誌が公的資料をもとに整理した判断支援情報です。個別のM&Aでの契約条項や税務・労務の判断は、弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

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