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バックオフィスDXの7つのステップ 電子帳簿保存法と電子申請の義務から着手順を決める

公開 2026.09.06

電子化は便利さではなく、やらないと不利益になる範囲から決めます。電子帳簿保存法で義務なのはどれか、電子申請の義務化は誰が対象か、賃金のデジタル払いに何が要るか。国税庁・厚生労働省・デジタル庁の一次情報から着手順を組み立てます。

バックオフィスの電子化は、法令が義務づけている「電子取引データの保存」から着手するのが最短です。
  • 電子帳簿等保存制度の3区分のうち、①電子帳簿等保存と②スキャナ保存は国税庁が【希望者のみ】と明記する一方、③電子取引データ保存だけが【法人・個人事業者は対応が必要】とされています。メールで受け取った請求書PDFを紙に出して原本を消す運用は、この時点で要件を外れます
  • 逆に、社会保険・労働保険の電子申請の義務化の対象は資本金等1億円超の法人等に限られ、罰則もありません。資本金等1億円超の法人が対象です。ここを取り違えると優先順位を誤ります
  • 電子化には見返りもあります。優良な電子帳簿で過少申告加算税が原則10%から5%に軽減され、個人事業者の青色申告特別控除は令和9年分以後65万円から75万円に引き上げられます

「会計ソフトを刷新し、電子契約も入れた。それなのに経理の残業が減らない」という相談は珍しくありません。原因の多くは、順番の設計を飛ばしてツールを重ねたことにあります。本稿は、ツールの機能比較から入らず、法令が決めている電子化の外堀——電子帳簿保存法、電子申請、賃金のデジタル払い——を先に押さえ、そこから業務の棚卸しと7つのステップ、公的な支援制度までを一本の線でつなぎます。根拠はすべて国税庁・厚生労働省・デジタル庁・中小企業庁の公表資料に置いています。

最初に結論:「やらないと不利益になるもの」から順に決める

電子化の検討が止まる最大の理由は、打ち手が全部同じ重さに見えることです。「守らないと違法・不利益になるもの」「やると得をするもの」「任意だが楽になるもの」の3層に分けると、順序はほぼ機械的に決まります。

01 / MUST

義務

電子取引データの保存。電子申請は資本金等1億円超の法人等のみ

02 / BENEFIT

優遇

優良な電子帳簿・デジタルシームレス保存。事前の届出が先に立つ

03 / OPTIONAL

任意

電子帳簿等保存・スキャナ保存・賃金のデジタル払い。紙のままでも違法ではない

まず見るべき判断表|電子化の3層と着手順

層制度対象位置づけ
第1層(義務)電子取引データ保存(電子帳簿保存法7条)所得税・法人税の保存義務者すべて電子で受け取った・送った取引書類は電子のまま保存。書面保存への置き換えは不可
第1層(義務)社会保険・労働保険の電子申請事業年度開始時の資本金等が1億円超の法人等特定の届書のみ。資本金等1億円超の法人が対象。罰則なし
第2層(優遇)優良な電子帳簿希望者(事前の届出が必要)過少申告加算税が原則10%→5%に軽減
第2層(優遇)デジタルシームレス保存希望者(事前の届出が必要)重加算税10%加重の適用除外(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税)
第2層(優遇)青色申告特別控除75万円個人事業者(電子申告が前提)令和9年分以後の所得税。65万円から引き上げ
第3層(任意)電子帳簿等保存・スキャナ保存希望者のみ紙で保存し続けても違法ではない
第3層(任意)賃金のデジタル払い労使協定と本人同意がある事業場使用者にも労働者にも導入義務はない
第3層(任意)e-Gov電子申請・GビズID誰でも義務の対象外でも利用できる。利用料は無料

第1層は「やるかどうか」を検討する対象ではありません。義務→優遇→任意の順に決め、ツールを買う前に届出や労使協定の手続を確認します。

(出典:国税庁電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?令和8年6月/厚生労働省特定法人に係る電子申請の義務化Q&A。3層の区分は編集部による整理)

この表を先に置く理由は2つあります。第一に、第1層は「やるかどうか」を検討する対象ではないからです。電子帳簿保存法7条は「保存しなければならない」と定めており、税務調査で提示できなければ、そもそも投資判断以前の問題になります。第二に、第2層と第3層は事前の届出や労使協定という手続が先に立つからです。ツールを買ってから届出が間に合わないと気づく順番では、優遇措置を1年分取り逃します。

そのうえで、電子化そのものの必要性は国も制度として認めています。デジタル化・AI導入補助金の公募要領は、事業の目的を「中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入)等に対応するため」と書いています(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)、2026年2月27日作成・2026年8月28日改訂)。バックオフィスから着手する理由は「便利だから」ではなく、制度変更が相次いで押し寄せる場所だから、というのが公的な整理です。

❌ 「まず何を導入するか」から検討を始め、見積りが高くて止まる ⭕ 「いま違反していないか」から確認し、義務→優遇→任意の順で決める

外堀その1 電子帳簿保存法で義務なのは「電子取引データ保存」だけ

もっとも誤解が多いのがここです。電子帳簿保存法という一つの法律の中に、性格の違う3つの制度が同居しています。

区分対象位置づけ根拠
①電子帳簿等保存自分がパソコンで作成した帳簿・書類希望者のみ。紙に出して保存し続けてよい電子帳簿保存法4条・5条(「代えることができる」)
②スキャナ保存紙で受け取った領収書・請求書等希望者のみ。棚卸表・貸借対照表・損益計算書等は対象外電子帳簿保存法4条3項
③電子取引データ保存電子で授受した注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など法人・個人事業者は対応が必要電子帳簿保存法7条(「保存しなければならない」)

(出典:国税庁電子帳簿保存法の概要/同電子帳簿等保存制度特設サイト)

①と②は条文が「代えることができる」と書いており、任意です。紙の帳簿と紙のファイリングを続けている会社は、それだけでは何も違反していません。一方③だけは「保存しなければならない」であり、ここが唯一の義務です。

対象は請求書だけではない

国税庁のリーフレットは、対象を「取引に関して、書面でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当する電子取引データを受領又は交付した場合」と説明しています。受領だけでなく交付も含み、電子メールの添付ファイル、EDI、インターネット上のサイトを通じた授受も入ります。自社が発行してPDFでメール送信した請求書の控えも、電子取引データです。

つまり、通販サイトの領収書ダウンロード、クレジットカード明細のWeb取得、取引先からのメール添付見積書——このあたりが漏れやすい範囲になります。

保存時の3つの要件

原則的な保存ルールは3つです。

  1. 改ざん防止のための措置をとること。 ①タイムスタンプが付与されたデータを受領、②受領したデータにタイムスタンプを付与、③訂正・削除の履歴が残るシステム等で授受・保存、④改ざん防止のための事務処理規程を策定・運用・備付け——のいずれかで足ります。④は専用システムを導入しない方法で、国税庁は規程のひな形を公開しています
  2. 保存データを確認するためのディスプレイやプリンタ等を備え付けること
  3. 「日付・金額・取引先」の3つの要素で検索できること。 加えて、日付または金額での範囲指定検索と2つの要素を組み合わせた検索ができるか、税務調査等の際にダウンロードの求めに応じられるかのいずれかが必要です

3つめの検索要件については、国税庁自身が簡易な対応方法を示しています。表計算ソフトで索引簿を作る方法(連番・日付・金額・取引先・備考の列を並べる)と、規則性をもったファイル名を付けて特定のフォルダに集約する方法(20240331_110000_(株)霞商店.pdf のように日付・金額・取引先の順で表記する)です。専用システムは必須ではありません。

さらに、基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者等は、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば検索要件そのものを満たす必要がありません(出典:国税庁電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について、令和6年11月)。なお、この5,000万円は電子帳簿保存法の検索要件の基準であり、消費税の少額特例(基準期間の課税売上高1億円以下等)とは別の制度です。表記が似ているため、社内で混同しないよう注意してください。

猶予措置は事前届出なしで使える

原則ルールへの対応が間に合わない場合でも、次の2つを満たせば電子取引データを保存しておくだけで足ります。

  • 原則的な保存ルールに従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合
  • 税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求めと、それをプリントアウトした書面の提示・提出の求めの両方に応じられるようにしている場合

重要なのは、事前届出が不要で、「人手不足」「システム整備の資金不足」「システム整備が間に合わない」なども相当の理由として認められると国税庁が明記していることです。かつての宥恕措置と違い、電子データのダウンロードにも応じる必要がある点だけが変わりました。

裏を返せば、猶予措置でも「電子データを消さずに残しておくこと」は必要です。紙に出したから元のPDFを削除した、メールを整理して消した、という運用は猶予措置にも乗りません。ここが最低ラインです。

❌ メールで届いた請求書PDFを印刷してファイリングし、元のPDFは消している ⭕ 元のPDFを消さずにフォルダへ残し、当面は索引簿かファイル名で検索できる状態にする

外堀その2 電子化すると税制上の見返りがある 優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存

義務の話だけだと、電子化は「やらされ仕事」に見えます。実際には、要件を満たすと税制上の優遇が用意されています。2026年6月に国税庁が公開したリーフレットは、この点を正面から整理しています。

優遇措置内容満たす要件適用時期
過少申告加算税の5%軽減対象帳簿に関連する過少申告があっても、加算税の割合が原則10%から5%に優良な電子帳簿課税期間の初日から要件を満たしていること
重加算税10%加重の適用除外電子取引データに関連する仮装・隠蔽行為への10%加重の対象から外れるデジタルシームレス保存令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税
青色申告特別控除75万円65万円から75万円へ引上げ(個人事業者)優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存+電子申告令和9年分以後の所得税

(出典:国税庁電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?、令和8年6月)

優良な電子帳簿の要件は、訂正・削除・追加の事実および内容を確認できるシステムの使用、帳簿間での記録事項の相互関連性の確保、検索機能の確保の3つです(ダウンロードの求めに応じる場合、範囲指定検索と組合せ検索の機能は不要)。対象帳簿は仕訳帳、総勘定元帳、およびその他必要な帳簿(売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳、賃金台帳など)です。

デジタルシームレス保存は今回新しく整理された概念で、「請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組み」を指します。要件は①改ざん防止の確保(送受信と保存を訂正削除履歴が残るシステムまたは訂正削除できないシステムで行う)②記帳の適正性確保③電子帳簿との相互関連性確保の3つで、電子取引データ保存の要件を満たしていることが前提です。

ここで押さえておきたいのが、国税庁長官が定める基準に適合するシステムの中身です。①デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(「Invoice JP PINT」または「JP SelfBilling」)か、②預貯金口座における決済データ——のいずれかを扱えるシステムに限られます。デジタル庁は2021年9月からOpenPeppolのメンバーとなり、日本のPeppol Authority(Japan Peppol Authority)として標準仕様JP PINTを管理しています(出典:デジタル庁デジタルインボイス(JP PINT))。「PDFをメールで送る」ことと「デジタルインボイスを送る」ことは、制度上まったく別物だという点は、ソフトを選ぶ前に理解しておく必要があります。

インボイス制度そのものの経過措置や実務対応はインボイス制度の経過措置と実務対応で扱っています。本稿の関心は、その制度が電子化を後押しする外圧として働いているという一点です。

届出のタイミングだけは先に決める

優遇措置を受けるにはあらかじめ届出書を提出する必要があります。「あらかじめ」の意味は、適用を受ける年分(事業年度)の法定申告期限までです。個人事業者が令和8年分から優良な電子帳簿の軽減措置を受けたい場合、令和9年3月15日までに届出書を提出することになります。すでに優良な電子帳簿で青色申告特別控除65万円の適用を受けている場合は、改めて届出書を出さなくても75万円の適用が受けられます。

ソフト選びで迷うなら、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証マークが目印になります。「デジタルシームレスソフト」と「電子帳簿ソフト」の認証を受けたソフトは、優遇措置を受けるための機能要件を満たしています。ただし国税庁も注記しているとおり、認証ソフトが自社の作成している帳簿等に対応しているかは別途確認が必要で、機能要件のほかにシステムの説明書やディスプレイの備付け等の要件も満たす必要があります。

❌ 「うちは電子化しても得がない」と決めて、優遇措置の要件を調べないまま紙で回す ⭕ 過少申告加算税の軽減と控除額の引上げを金額で試算し、届出の期限だけ先に押さえる

外堀その3 人事労務 電子申請の義務化と賃金のデジタル払い

経理の次に制度が動いているのが人事労務です。ただしここは「義務の範囲が狭い」ことを正確に知ることが判断材料になります。

電子申請が義務なのは資本金1億円超の法人等

社会保険・労働保険の一部手続について、特定の法人には電子申請が義務づけられています。対象となる「特定法人」は次のとおりです。

  • 事業年度開始の時における資本金の額、出資金の額等の合計額が1億円を超える法人
  • 保険業法に規定する相互会社
  • 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資法人
  • 資産の流動化に関する法律に規定する特定目的会社

判定は事業年度開始の時に行い、本店・支店の区別なく法人単位です。事業年度の開始時に1億円を超えていれば、途中で減資しても当該年度は対象になり、逆に開始時が1億円以下なら途中で増資しても当該年度は対象外です。対象となる届書も限定されています。

管轄対象となる届書
日本年金機構(健康保険・厚生年金保険)被保険者報酬月額算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届/被保険者報酬月額変更届・70歳以上被用者月額変更届/被保険者賞与支払届・70歳以上被用者賞与支払届
ハローワーク(雇用保険)被保険者資格取得届/被保険者資格喪失届(離職証明書を含む)/被保険者転勤届/高年齢雇用継続給付の受給資格確認・支給申請(高年齢再就職給付金を除く)/育児休業給付の受給資格確認・支給申請
労働基準監督署(労働保険)継続事業(一括有期事業を含む)の年度更新に関する申告書(概算保険料申告書・確定保険料申告書・一般拠出金申告書)/増加概算保険料申告書

(出典:厚生労働省特定法人に係る電子申請の義務化Q&A/日本年金機構電子申請の義務化)

対象かどうかを届け出る手続は不要です。罰則もありません(Q&Aは「罰則はありませんが、電子申請による届出をするための環境が整い次第、順次、実施いただきますようお願いします」としています)。社会保険労務士を通じて手続を行う場合も義務化の対象に含まれます。

この義務は資本金等が1億円を超える法人にかかるものなので、まず自社の事業年度開始時の資本金を確認してください。ただし義務がないことと、使えないことは別です。e-Gov電子申請はデジタル庁が運営し、GビズIDのアカウントがあれば電子証明書を添付せずに手続できます。GビズIDの利用料は無料(デジタル庁は「将来にわたり無料であることを保証するものではありません」と注記)で、プライムはマイナンバーカードによるオンライン申請なら最短で即日発行、書類郵送なら不備がなければ最大1か月以内です。有効期間はアカウント発行日から2年3か月とされています(出典:デジタル庁GビズID/同よくある質問)。

GビズIDプライムは、後述する補助金の申請要件でもあります。義務の有無にかかわらず、取得だけは早めに済ませておくのが実務的です。

賃金のデジタル払いは「導入義務なし・手続は重い」

賃金のデジタル払いは、労働基準法施行規則7条の2第1項3号を根拠とします。条文は、資金決済法上の第二種資金移動業を営む資金移動業者のうち、厚生労働大臣の指定を受けた者(指定資金移動業者)の口座への資金移動を、労働者の同意を得た場合の支払方法として認めています。指定の要件には次のようなものが並びます。

  • 口座残高が100万円を超えることがないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下とする措置
  • 破産手続開始の申立て等により債務の履行が困難となったときに、全額を速やかに労働者に弁済することを保証する仕組み
  • 労働者の責めに帰することができない不正な為替取引等による損失を補償する仕組み
  • 最後に資金移動があった日から少なくとも10年間は債務を履行できる措置
  • 口座への資金移動が1円単位でできる措置
  • ATM等の通貨による受取が1円単位ででき、かつ少なくとも毎月1回は手数料なく受け取れる措置

(出典:e-Gov法令検索労働基準法施行規則第7条の2)

さらに条文のただし書きは、第1号(銀行等への振込み)または第2号(証券総合口座への払込み)を労働者が選択できるようにしたうえで、上記の要件に関する事項を説明し、同意を得なければならないと定めています。手続の流れは、①指定資金移動業者の確認、②サービスの検討、③労使協定の締結、④労働者への説明、⑤個別の同意取得、⑥給与支払実務、の6段階です。労使協定には「対象となる労働者の範囲」「対象となる賃金の範囲とその金額」「取扱指定資金移動業者の範囲」「実施開始時期」を記載します(出典:厚生労働省賃金のデジタル払いについて(使用者の方向け))。

指定資金移動業者は厚生労働大臣が個別に指定します。令和8年7月1日現在で指定されているのは4社——PayPay株式会社(令和6年8月9日指定)、株式会社リクルートMUFGビジネス(令和6年12月13日指定)、楽天Edy株式会社(令和7年3月19日指定)、auフィナンシャルサービス株式会社(令和7年4月4日指定)です(出典:厚生労働省資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について、令和8年7月1日現在)。最新の指定状況は同ページの一覧で確認してください。

労働者にも使用者にも導入義務はありません。優先順位としては第3層です。労使協定と個別同意という手続の重さに対して、経理の作業時間が減るわけではないため、他の施策を終えてから検討する順番で構いません。

❌ 「電子申請が義務化されたらしい」と聞いて、対象かどうか確認せず社労士に一括で依頼する ⭕ 事業年度開始時の資本金で対象を判定し、対象外ならGビズIDだけ取って任意で使い始める

業務の棚卸し 何時間かかっているかを測ってから決める

外堀を押さえたら、次は自社の中身です。ここで測るのは時間です。金額でも件数でもありません。

理由は制度側にもあります。デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領は、労働生産性の計算式を「(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の事業者当たり総労働時間」と定義し、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画で、1年後に労働生産性を3%以上向上させること、事業計画期間において年平均成長率を3%以上向上させることを求めています(IT導入補助金2023の通常枠A・B類型もしくはデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)、またはIT導入補助金2024・2025の通常枠もしくは複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、いずれも4%以上)。分母が「人数」ではなく「総労働時間」に固定されているのがこの制度の特徴です。

つまり、補助金を使う前提で進めるなら、時間を測っていないと申請書が書けません。使わない場合でも、時間で測ることには実利があります。残業を減らしている最中の会社は、人数当たりで測ると成果が見えず、時間当たりで測ると見えるからです。なお「労働生産性」の定義は制度ごとに異なるため、社内で使う算式を固定する必要があります。定義の違いと月次の回し方はKPIの設計と月次運用で扱っています。本稿は、その手前で分母となる時間をどう集めるかだけを扱います。

記録する項目は5つで足りる

2週間、経理・人事労務・総務の担当者に30分単位で記録してもらいます。以下は編集部が実務上の最小構成として整理したものです。

列記録する内容この列で決まること
業務名「請求書の発行」「経費精算の差戻し対応」など動詞で書く単位が揃い、集計できる
発生頻度日次/週次/月次/年次月間の合計時間に換算できる
所要時間1回あたりの実測(30分単位)削減見込みの分母になる
使用システム会計ソフト/表計算/紙/メール転記が何回起きているかが見える
実行できる人数1名/2名以上属人化しているものが特定できる

「実行できる人数」の列を入れる理由は、1名しかできない業務はDXの対象であると同時にリスクでもあるからです。同じ時間削減量なら、こちらを先に標準化するほうが得られるものが大きくなります。

測る前に「やめる・減らす」を通す

記録が集まったら、システム化の検討に入る前に一度ふるいにかけます。誰も見ていない月次資料はないか。3段階の承認は金額基準を設けて1段階に減らせないか。不要な業務を自動化しても、無駄が高速化するだけです。

部門や拠点ごとに時間を見たい場合は、数字を分ける仕組みが先に要ります。分け方は部門別損益の作り方の考え方が使えます。

7つのステップ 各ステップに根拠か判断基準を置く

ここまでの材料を、着手の順序に並べ直します。各ステップには、公的な根拠か、迷ったときの判断基準を1つずつ置いています。

  1. 法令適合の確認(1〜2週目)。 電子取引データが消えずに残っているかを確認する。残っていなければ、まずフォルダに集約する。原則ルール(改ざん防止・ディスプレイ等・検索)に対応できているか、猶予措置に乗る状態かを判定する。判断基準: 事前届出は不要なので、この時点で税務署への手続は発生しない
  2. 業務の棚卸しと時間計測(3〜4週目)。 5列の記録を2週間分集める。判断基準: 集計の単位は「時間」に統一する。補助金の労働生産性の分母も年間総労働時間である
  3. やめる・減らす・変えるの決定(5週目)。 廃止する業務、承認段階を減らす業務、順序を変える業務を社長が決裁する。判断基準: ここで決めた廃止分は、ツールを入れなくても効果が出る。効果測定の基準線をこの時点で記録しておく
  4. 対象業務を1つに絞る(6週目)。 削減見込み時間が大きく、実行できる人が1名しかいない業務を優先する。判断基準: 全部門同時に着手しない。問題が起きたときに原因の切り分けができなくなる
  5. ツールの選定(7〜8週目)。 既存システムとのデータ連携方式(API/CSV/手入力)、無料トライアルでの実データ投入、初期費用・月額費用に加えた設定工数の総額を確認する。判断基準: 税制上の優遇を取りに行くなら、JIIMA認証の有無と、自社の帳簿に対応しているかを個別に確認する。補助金を使うなら、事務局に登録されたITツールでなければ対象にならない
  6. 並行運用と切替(9〜12週目)。 一部門・一業務で始め、旧手順を意図的に使えなくする。判断基準: 紙とデータの二重運用は最長1か月で打ち切る。並行期間が延びるほど現場の負担は増え、どちらが正本か分からなくなる
  7. 効果検証と次の対象へ(13週目以降)。 ステップ2と同じ方法で作業時間を再計測し、削減できた時間を何に振り向けたかまで記録する。判断基準: 「月20時間削減し、うち12時間を月次決算の早期化に充てた」という形まで書く。振り向け先が書けない削減は、次の投資の根拠にならない

ステップ5と6では、クラウドへの移行に伴って社外からアクセスできる経路が増えます。権限の棚卸しと多要素認証は、切替と同時に行うのが手戻りが少なくて済みます。対策の中身はサイバーセキュリティの基礎で整理しています。また、電子契約を検討する場合は、契約条項側の確認も並走させてください(契約書のチェックポイント)。

参考までに、企業のクラウド利用は着実に広がっています。総務省の令和7年通信利用動向調査では、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は83.5%、全社的に利用している企業も60.0%でした。利用しない理由ではなく利用する理由の側では「場所、機器を選ばずに利用できるから」が50.7%で最多です。ただしこの調査の企業編は常用雇用者規模100人以上の企業(6,040企業、有効回収2,489企業)が対象であり、小規模な事業者の実態をそのまま表すものではない点に注意してください(出典:総務省令和7年通信利用動向調査の結果、令和8年5月29日公表。調査時点は令和7年8月末)。

GOVERNMENT SURVEY

企業のクラウドサービス利用状況

83.5%

クラウドサービスを一部でも利用している企業

60.0%

全社的に利用している企業

利用する理由:場所、機器を選ばずに利用できるから50.7%
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」(令和8年5月29日公表、調査時点は令和7年8月末)。企業編は常用雇用者規模100人以上の企業が対象で、小規模事業者の実態をそのまま表すものではありません。

公的な支援 補助金・無料の相談窓口・GビズID

社内の人手だけで進める必要はありません。ここでは本稿執筆時点で実際に動いている制度だけを挙げます。

デジタル化・AI導入補助金2026

旧IT導入補助金です。令和7年度補正予算事業から名称が変わりました。実施主体は独立行政法人中小企業基盤整備機構で、事務局業務はTOPPAN株式会社が運営しています。申請は、事務局に登録されたIT導入支援事業者と共同事業体を組んで行い、事務局に登録されたITツールだけが補助対象になります。

枠・類型補助額(補助金の額)補助率主な補助対象経費
通常枠5万円〜150万円未満(1プロセス以上)1/2以内(一定の低賃金要件を満たす場合は2/3以内)ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費
通常枠150万円〜450万円以下(4プロセス以上)同上同上
インボイス枠(インボイス対応類型)ITツール:下限なし〜350万円〜50万円部分は3/4以内(小規模事業者は4/5)、50万円超〜350万円部分は2/3以内ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、ハードウェア関連費、導入関連費
インボイス枠(インボイス対応類型)PC・タブレット等〜10万円、レジ・券売機等〜20万円1/2以内ハードウェア関連費
インボイス枠(電子取引類型)ITツール:下限なし〜350万円中小企業・小規模事業者等 2/3以内、その他の事業者等 1/2以内クラウド利用費(最大2年分)※取引先に供するアカウント数の割合を乗じた額
セキュリティ対策推進枠5万円〜150万円中小企業 1/2以内、小規模事業者 2/3以内サービス利用料(最大2年分)

(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)、2026年2月27日作成・2026年8月28日改訂。表の金額は補助される額の上限であり、対象経費の上限ではありません)

上の表でバックオフィスDXにそのまま効くのはインボイス枠(電子取引類型)です。機能要件は「インボイス制度に対応した受発注の機能を有しているものでありかつ取引関係における発注側の事業者としてITツールを導入する者が、当該取引関係における受注側の事業者に対してアカウントを無償で発行し、利用させることのできる機能を有するもの」とされています。取引先に電子受発注のアカウントを配る側に立つなら、この類型が用意されているということです。

申請要件のうち、着手前に効いてくるのは次の3つです。

  • GビズIDプライムを取得していること
  • IPAが実施するSECURITY ACTIONの「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行うこと
  • 労働生産性について、1年後に3%以上向上、事業計画期間の年平均成長率3%以上(IT導入補助金2023の通常枠A・B類型等、2024・2025の通常枠等で交付決定を受けた事業者は4%以上)の3年間の事業計画を策定し実行すること

賃上げの要件も入りますが、階層を決めているのは金額だけではありません。「IT導入補助金2022〜2025の交付決定を受けたことがあるか」との2軸で決まります。

申請額過去の交付決定賃上げ要件
150万円未満なし申請要件にはならない(加点項目にとどまる)
150万円未満あり1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上+従業員への表明
150万円以上なし同3%以上+事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上+表明
150万円以上あり同3.5%以上+地域別最低賃金+30円以上+表明

初めて申請する150万円未満の事業者には、賃上げ目標が申請要件としてかかりません。この一点で、少額から始める会社の判断は変わります。なお保険医療機関・介護サービス事業者・社会福祉事業者・学校等はこれらの要件の適用外です。

未達の場合の扱いも、目標の種類で違います。事業場内最低賃金の目標が未達なら、補助金の額を計画目標年数である3年で除した金額に未達年以降の年数を乗じた額の返還(1年度目で未達なら全額)。1人当たり給与支給総額の目標が未達なら、補助金の全部の返還を求められる場合があります。ただし前者は付加価値額増加率が年平均成長率1.5%に達しない場合、後者は付加価値額が増加しておらず、かつ事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合には、いずれも返還を求めないとされています。天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合も同様です。

「補助金が出るから導入する」という順番が危ういのは、この返還条項があるためです。賃上げと生産性向上の計画がすでに立っている会社にとっては追い風ですが、そうでない会社が申請期限に合わせて拙速に決めると、要件に合わない製品を選んだうえに返還リスクを背負うことになります。

スケジュールは締切回ごとに公表されます。本稿執筆時点で事務局が公表しているのは、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠が2026年9月29日(火)17時締切(交付決定2026年11月9日予定、事業実施期間は交付決定から2027年4月30日17時まで予定)、複数者連携デジタル化・AI導入枠が2026年10月30日(金)17時締切(交付決定2026年12月10日予定)です(出典:デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール)。回によって条件が見直されるため、申請前に必ず公式サイトで最新の公募要領を確認してください。補助金一般の探し方とつまずきやすい場所は補助金・助成金の探し方にまとめています。

無料で使える相談窓口

  • IT経営サポートセンター(中小機構)。 中小企業・小規模事業者のIT活用やDX化に関する悩みを相談できる、1回60分のオンライン相談窓口です。何回でも無料で、ITコーディネータや中小企業診断士など実務経験のある専門家が対応します。「デジタル化の進め方がわからない」「適切なITツールを選びたい」といった、課題が明確でない段階でも相談できるとされています(出典:中小機構IT経営サポートセンター)
  • よろず支援拠点。 国が設置した無料の経営相談所で、47都道府県に設置されています。経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応します(出典:中小機構よろず支援拠点全国本部)

なお、デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領では、中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイト「デジwith」の「IT戦略ナビwith」またはIT経営サポートセンターの利用が加点項目として位置づけられています。相談すること自体が申請上も評価される設計です。

失敗する型 4つ

最後に、順序を誤ったときに何が起きるかを整理します。

ツールを先に選ぶ。 機能一覧の比較から入ると、比較軸が「機能の多さ」になります。しかし多機能なほど設定工数は増え、現場が使わない機能の分だけ運用が重くなります。棚卸しを先に済ませていれば、比較軸は「その業務の時間が何時間減るか」に変わります。

全部門同時に始める。 問題が起きたときに、原因が製品にあるのか、業務要件の詰めにあるのか、現場の慣れにあるのかを切り分けられなくなります。加えて、全社が同時に不便になるため、抵抗が一気に強まります。

紙とデータの二重運用を続ける。 これが最も静かに効きます。どちらが正本か曖昧なまま数か月が経つと、担当者は両方を確認するようになり、作業時間は導入前より増えます。旧手順を使えなくする踏み込みは、社長の決裁でしかできません。

担当者1人に依存する。 導入を推進した1人が退職した瞬間、設定変更もマスタ管理もできなくなります。棚卸しの段階で「実行できる人数」を記録する狙いはここにあります。導入後の運用でも、管理者権限を持つ人を最低2名にしておくのが現実的な線です。

❌ 補助金の締切に合わせて製品を決め、全部門で一斉に切り替える ⭕ 棚卸しで対象業務を1つに絞り、次の締切回に間に合う範囲で申請する

5問で確認する バックオフィス電子化の着手準備

ツール選びの前に、順番の設計ができているかを確かめる簡易チェックです。

SELF CHECK / 無料・登録不要

5問で確認|バックオフィス電子化の着手準備

経理・人事労務・総務の現状を思い浮かべて、いちばん近いものを選んでください。回答はこの端末の中だけで処理され、送信・保存されません。

回答の進捗0 / 5
  1. Q1メールなどで受け取った請求書PDF(電子取引データ)を、紙に出さず電子のまま検索できる形で保存している
  2. Q2優良な電子帳簿やデジタルシームレス保存の優遇を取りに行くか決め、届出の期限を把握している
  3. Q3経理・人事労務・総務の作業時間を、業務ごとに記録して測ったことがある
  4. Q4ツールを入れる前に、やめる業務・承認段階を減らす業務を決めている
  5. Q5切り替えは一部門・一業務から始め、紙とデータの二重運用を打ち切る期日を決めている

※一般的な検討項目を整理するための編集部独自の目安です。成果や適法性を判定・保証するものではありません。

まとめ 90日でここまで決める

専任の管理部門がなくても、社長の決裁でここまでは動きます。

1〜30日目。 電子取引データが消えずに残っているかを確認する。残っていなければフォルダに集約し、索引簿かファイル名の規則で検索できる状態にする。改ざん防止は事務処理規程の策定から始める。GビズIDプライムを申請する。経理・人事労務・総務の作業時間を2週間分、5列の様式で記録する。

31〜60日目。 やめる業務・承認段階を減らす業務を決裁する。対象業務を1つに絞る。優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存の要件を確認し、優遇措置を取りに行くかを決める。取りに行くなら届出の期限(適用を受ける年分・事業年度の法定申告期限)を手帳に書く。IT経営サポートセンターかよろず支援拠点に一度相談する。

61〜90日目。 ツールを選定し、無料トライアルに実務データを流す。補助金を使うなら、SECURITY ACTIONの宣言と、労働生産性・賃上げの計画が書けるかを先に確かめる。一部門・一業務で切り替え、旧手順を止める期日を宣言する。ステップ2と同じ方法で作業時間を再計測する日程を決めておく。

ここまでで発生する支出は、ツールの費用だけです。GビズIDも、国税庁の事務処理規程のひな形も、IT経営サポートセンターもよろず支援拠点も無料で、必要なのは社長の意思決定と社内の作業時間です。

バックオフィスのDXは、ツール導入プロジェクトではありません。法令が決めた最低ラインを満たし、そのうえで時間を測り、測った時間が減る順に手を入れるという業務改革です。順序を守るだけで、成功率は大きく変わります。

NEXT ACTION / 次にやること

電子で受け取った請求書・領収書が、消えずに残っているかを確認する

残っていなければ、まずフォルダに集約し、索引簿かファイル名の規則で検索できる状態にしてください。事前届出は不要で、今日から始められる第1層の対応です。

※本稿は2026年9月9日時点で公表されている国税庁・厚生労働省・デジタル庁・中小企業庁等の資料に基づいています。制度は改正されることがあるため、実際の判断にあたっては最新の公表資料と、顧問税理士・社会保険労務士の確認を経てください。

よくある質問

Q紙の帳簿とファイリングを続けています。電子帳簿保存法に違反していますか。
A

帳簿・書類を紙で保存すること自体は違反ではありません。電子帳簿保存法の3区分のうち、①電子帳簿等保存と②スキャナ保存は国税庁が【希望者のみ】と明記しており、条文も「電磁的記録の保存をもって書類の保存に代えることができる」という任意の規定です。義務にあたるのは③電子取引データ保存だけで、こちらは「保存しなければならない」と定められています。紙でやりとりしている分は紙のままで構いませんが、メール添付やWebサイトからダウンロードして受け取った請求書・領収書等は、電子データのまま残す必要があります。

Q電子取引データの保存要件に対応できていません。すぐに何をすればよいですか。
A

まず、電子データを消さずに保存してください。原則ルール(改ざん防止措置・ディスプレイ等の備付け・検索機能)に対応が間に合わない場合でも、①保存できなかったことについて所轄税務署長が相当の理由があると認め、②税務調査の際に電子取引データのダウンロードの求めと、それをプリントアウトした書面の提示・提出の求めの両方に応じられるようにしていれば、データを保存しておくだけで足ります。事前届出は不要で、「人手不足」「システム整備の資金不足」「システム整備が間に合わない」なども相当の理由として認められると国税庁が明記しています。ただし、事情がないのに単にデータを保存していない場合は対象になりません。

Q検索要件に対応するために、専用システムを買う必要はありますか。
A

必要ありません。国税庁は簡易な対応方法として、表計算ソフトで索引簿(連番・日付・金額・取引先・備考)を作る方法と、規則性をもったファイル名(日付・金額・取引先の順で表記)のデータを特定のフォルダに集約する方法を示しています。さらに、基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者等は、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば検索要件を満たす必要がありません。なお、この5,000万円は電子帳簿保存法の基準で、消費税の少額特例(基準期間の課税売上高1億円以下等)とは別の制度です。

Q社会保険の電子申請は、うちの会社も義務ですか。
A

事業年度開始の時の資本金の額・出資金の額等が1億円を超える法人等(ほかに相互会社、投資法人、特定目的会社)に限られます。判定は事業年度開始の時に行い、本店・支店の区別なく法人単位です。対象となる届書も、算定基礎届・月額変更届・賞与支払届、雇用保険の資格取得届・喪失届など、限定列挙されたものだけです。対象かどうかを届け出る手続は不要で、罰則もありません。資本金1億円以下の会社は義務の対象外ですが、GビズIDを取得すればe-Gov電子申請を任意で利用できます。

Q賃金のデジタル払いを導入したほうがよいですか。
A

導入義務はありません。使用者にも労働者にも強制されるものではなく、優先順位としては低い部類です。導入する場合は、労使協定(対象となる労働者の範囲、対象となる賃金の範囲とその金額、取扱指定資金移動業者の範囲、実施開始時期)を締結したうえで、労働者一人ひとりに他の受取方法(銀行口座への振込み等)も提示して説明し、個別の同意を得る必要があります。支払先は厚生労働大臣が指定した指定資金移動業者に限られ、令和8年7月1日現在で指定されているのはPayPay・リクルートMUFGビジネス・楽天Edy・auフィナンシャルサービスの4社です。最新の指定状況は厚生労働省のページで確認してください。

Qデジタル化・AI導入補助金は、いくらもらえますか。
A

枠と類型で異なります。通常枠は5万円から450万円以下(150万円未満は1プロセス以上、150万円以上は4プロセス以上)、補助率は1/2以内が原則です。インボイス枠(インボイス対応類型)のITツールは下限なしから350万円で、50万円以下の部分の補助率は3/4以内(小規模事業者は4/5)、50万円超の部分は2/3以内。セキュリティ対策推進枠は5万円から150万円です。これらは補助される額の上限であって、対象経費の上限ではありません。申請にはGビズIDプライムとSECURITY ACTIONの宣言が必要で、労働生産性と賃上げの目標が未達の場合は返還を求められます。

Q相談できる専門家がいません。無料で使える窓口はありますか。
A

2つあります。中小機構の「IT経営サポートセンター」は、ITコーディネータや中小企業診断士などが1回60分のオンライン相談に何回でも無料で応じる窓口で、課題が明確でない段階でも相談できます。もう1つは全国47都道府県に設置された「よろず支援拠点」で、経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応します。なお、デジタル化・AI導入補助金2026では、中小機構の「デジwith」の「IT戦略ナビwith」またはIT経営サポートセンターの利用が加点項目に位置づけられています。

出典・調査の対象範囲

  • 国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」(令和8年6月) — 3区分の位置づけと税制上の優遇。リーフレット
  • 国税庁「電子帳簿保存法の概要」・電子帳簿等保存制度特設サイト・「令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」(令和6年11月) — 概要/特設サイト/保存方法
  • デジタル庁「デジタルインボイス(JP PINT)」 — ページを見る
  • 厚生労働省「特定法人に係る電子申請の義務化Q&A」、日本年金機構 電子申請の案内、GビズID — Q&A/日本年金機構/GビズID/GビズID FAQ
  • 労働基準法施行規則第7条の2、厚生労働省「賃金のデジタル払いについて(使用者の方向け)」「資金移動業者の口座への賃金支払について」(令和8年7月1日現在) — 施行規則/使用者の方向け/指定資金移動業者
  • 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(令和8年5月29日) — 企業編は常用雇用者規模100人以上が対象。公表資料
  • 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」(2026年8月28日改訂) — 公募要領/スケジュール
  • 中小機構 IT経営サポートセンター、よろず支援拠点 — IT経営サポートセンター/よろず支援拠点

※3層の区分、7つのステップ、自己診断は編集部の整理です。制度は改正されることがあるため、最新の公表資料と顧問税理士・社会保険労務士の確認を経てください。

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